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初めてのお城訪問

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 この日、レオンは生まれて初めてお城の中に入った。小さいころから外から眺めているだけだった壮麗なお城――。その中に入ってみると内側も立派で豪華で、レオンはその迫力に圧倒された。
 レオンはお城の中庭に面する部屋へと案内される。広く滑らかな床は、白い大理石が敷き詰められたものだ。見上げるほど高い天井からは、精巧なガラス細工が施されたまばゆいシャンデリアがいくつもぶら下がっている。まだ昼間だというのに、シャンデリアのろうそくには惜しげもなく火が灯され、王家の豊かさを物語っていた。客人のために惜しみなく蝋燭に火を灯すことは、おもてなしという意味もあるのだろう。
 蝋燭のゆらめく炎がシャンデリアのガラスのパーツに反射して、白い大理石の床の上にふわふわと雲のように浮かび上がって見える陰影を映し出している。レオンは平らな硬い床の上に立っているのに、まるで雲の上にいるような不思議な感覚に陥った。
 そこかしこに色とりどりの花が飾られていて、部屋の中には甘い香りが漂う。小鳥たちの可愛いさえずりも聞こえてくる。バルコニーに面した窓の外に目をやれば、緑豊かな中庭が見える。
 真ん中にある噴水では、小鳥たちが水浴びをしているようだ。パシャパシャパシャ!という水音が時々聞こえてくる。中庭の木々にたわわに実る果実の甘酸っぱい香りに誘われて、たくさんの小鳥たちがやって来るのだろう。これまで見たこともない目にも鮮やかな色とりどりの珍しい鳥たちもいた。異国から取り寄せた物か、異国の使者から献上された物なのだろう。
 噴水の両サイドにはなんと言うのだろうか、屋外用のティールームがあった。四本の白い柱に支えられたオレンジ色のドーム型の屋根があり、その下にテーブルセットが置かれている。あすこでお茶会を開いてくださるんだな。今日はお天気だし、気持ち良さそうだ。
 ああ、天国ってこんな感じなのかもしれないなぁ。良かった。お嬢さんはこんな天国みたいなお城で、幸せに暮らしているんだ……。
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