魔王に見初められる

うまチャン

文字の大きさ
上 下
22 / 46

第21話 元聖帝vs炎帝・雷帝

しおりを挟む
 2人の攻撃を防いだ俺に、2人は離れた。

「わたしの攻撃を止めるなんてやるじゃない。さすが元聖帝なだけあるわね」

「燃え上がってきたぜ!『ハリククラ』!」

 ホムラの詠唱により火玉が作られ、俺に向かって放たれる。
 俺は聖剣で防ぐが、

「はぁぁあああ!」

「くっ!」

 ギィンシャー!

 ホムラの攻撃を防いだ瞬間、背後からミライが迫る。
ミライの剣と俺の剣が打ち合い、金属の擦れる音が響く。

「油断したな!『ヤドナール』!」

「ぐはっ!」

 ミライの攻撃に気を取られたせいで、火属性の魔法を纏ったホムラの拳が、俺の腹に命中した。
 俺は遠くへと突き飛ばされ、口に温かいものが来たと思った直後、大量の血を吐いた。
先程の攻撃で内臓が破裂したみたいだ。
 もう立ち上がることが出来ない。
目の前の視界が歪み始めている。
 これじゃあここに来た意味が無いじゃないか。

「ふん、残念だったわねルーカス。わたしが楽にしてあげるからね?」

 ミライは下卑た笑みを浮かべ、俺に近寄ると剣を振り上げた。
そして、力強く振り下ろし俺の心臓に突き刺した。

「ああああああああぁぁぁ!!!……」

「弱かったなこいつ」

「もうちょっと楽しみたかったのに」

「いやー面白かったよ」

「「―――!?」」

「2人がかりで襲いかかってくるなんて、なんて理不尽なんだろうか」

「はぁ!? 」

「な、何で生きてるのよ!」

「さぁ、何ででしょうね?」

 実はさっきまで2人に見せていたのは全て幻。
俺は少し遠い所で観戦していた。
この技は『ハバットアルダウ』と言って、光の粒子を集めて形を作っている。
人間が目で色彩を判別しているのは全て光の反射によるもの。
それを利用しているから、人は錯覚を起こしまるで実物を見ているかのように見えるんだ。
 だがしかし……やっぱこの登場の仕方かっこいいと思わない?

「まぁ同じことだミライ。もう1回殺せば良いんだからなぁ!」

「そうよね!」

 そう言って2人は再び身構える。
俺はその姿を見てニヤリとする。

「何笑ってやがる」

「くっくっ……。やっぱ哀れに見えてくるな、その姿を見ると……ははは! 笑いが止まらない」

「弱いあんたが何言ってんのよ! 死ね!」

 するとミライは俺に再び向かって来た。
全く見えないくらい速い。
 俺はそんなこともお構いなく、ゆっくりと目を瞑った。

「―――」

「―――きゃっ!?」

「ミ、ミライ!?」

 ミライは突然ものすごい勢いで吹き飛ばされた。
やっと、やっとこれを使える時が来たよ。

「あ、あぁ……」

 ミライはもう立つことなんて出来ないだろうな。

「てめぇ! ミライに何しやが―――!?」

「さてもうこれ以上時間を使いたくないんだ。だから冥土の土産にいいもの見せてあげるよ」

「な、なにが―――がっ! あぁああああああああぁぁぁ!!!!」

「ははは……やっとこいつらの鬱憤を晴らせた、わけないか。一生消えないなこれは。さて、あいつの所へ行くか」

 もちろん2人を殺してはいない。
冥土の土産とか言ってたけど、あれは脅迫でしかないからな。
 しかし、俺があれだけ下卑た笑いをしたのは何時ぶりだろうか。
しおりを挟む

処理中です...