君が女の子

papporopueeee

文字の大きさ
16 / 83
1日目

ボクが女の子

しおりを挟む
 仕切り役である弥生も、誰にでも噛みついていた久野絵も、挑発的なイヨも。誰もが口を開けない中、睦美に問いかけられたのは小陽だけだった。

「ど、どういうこと? 睦美、何を言ってるの? 睦美は、ちゃんと男の子でしょ?」
「うん、それはそう……だけど、ボクは男の子にそこまで強いこだわりは無いかな。久野絵さんの言うように、いつまでもこんな所に閉じ込められたくないって気持ちもあるし……何より、皆で喧嘩する方が嫌かなって。だから、女の子が一人見つかればそれで解決するって言うなら、別にそれがボクでも構わないよ」
「で、でも……睦美は男の子だよ! そんな、消去法みたいに女の子になるのはおかしいよ!」
「私もそう思いますよ、北条君。身代わりという考え方は良くありません。確かにいつまでも此処に居るわけにもいきませんが、事を急く必要もありません。皆も落ち着いて話し合いましょう」

 小陽に同調して睦美をなだめる弥生。そこに割り込んできたのはジジだった。

「身代わり……だったら、ジジでもいいよ? ジジも男の子にこだわり無いし……ムツミ、代わろうか?」
「ええ!? ジジくんまで何言ってるの!?」
「ミコト、声おっきぃ……」

 ジジの参戦によって再び混沌へと戻りかけた場は、久野絵によって抑えられた。

「いいじゃねえか、話が早くて。勝手にさせとけよ朝比奈、如月。本人が良いって言ってるんだ、止める理由もねえだろ?」
「わたくしもクノエさんに同意致します。自己犠牲は好ましくありませんが、これがおふたりなりの告白という可能性もあるのではないでしょうか。わたくしはその意思を尊重したく思います」
「所詮は心の性別の話だしな……男が女を演じるのも、その逆も別に珍しい話じゃないし。そこまで重く考える必要も無いだろ」
「アタシもトーパイセンと同感かなー。ムッツリンもジっちゃんも素材としては悪く無いし、むしろこれを機に化けちゃうかもだしー……お化粧デビューしちゃおうぜ!」
「い、いいのかなぁ……なんだかふたりに悪いような……。で、でも、ぼくは女の子なんて嫌だし、恥ずかしいし……仕方ないのかなぁ……」

 自分が女の子じゃなければ後はどうでもいいという者も居れば、女の子として学校生活を送ることを重く捉えていない者も居る。小陽と弥生を除く全員が、睦美とジジのどちらかを女の子として差し出すことに同意していた。

「皆、落ち着いてください。これは繊細な問題ですから、こんな多数決のような決め方は良くありません。今日の所は一度お開きにして、冷静になってから再度話し合うべきです」
「黙ってろよ如月。てめえだって、多数決で生徒会長になったんじゃねえのか? 立候補して、票を集めて、それで選ばれたんだろうが。北条と鳳がしてんのも同じことだ。てめえがとやかく言うことじゃねえはずだぜ」
「っ……それは……しかし……」

 久野絵の主張に弥生は反論できないらしい。悔しそうに顔を歪ませたものの、その口は押し黙ってしまった。
 民主主義的多数決において小陽と弥生は敗者であり、それを覆すだけの武器も無い。せめて睦美ではなくジジが、と小陽は一瞬だけ考えてしまったが、それもあえなく打ち砕かれた。

「ジジちゃん、今回はボクに譲ってくれないかな? 自分から言い出した手前、ここで後輩に譲っちゃったらちょっとカッコ悪いかなって……いいかな?」
「……うん、ムツミがそうしたいなら良いよ」

 此れを以て議論は終結し、結論は固く結ばれた。9人の男子生徒の中に紛れ込んでいた女子は北条睦美。本人からの自白と、過半数である6名の肯定に依って、その確かさは証された。

「睦美……」
「ごめんね、ハル君。でも、そんなに悲しそうな顔はしないで欲しいかな……性別なんて関係なく、ボクはボクでしょ?」
「それは、そうだけど……」

 その目が、その声が、その気まずそうな仕草が、全てを物語っていた。本人は口にはしなかったが、小陽には嫌という程伝わって来た。

 睦美は小陽を庇ったのだ。万が一にも小陽が女の子にならないように、その身を捧げたのだ。
 それがわかっているのに何も言えない自分が嫌だった。ジジのように代わりを申し出ることもできない自分が嫌だった。

(だって……だって、僕は……男の子だから……)

 男の子である小陽には、睦美の代わりに女の子になることはできなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

処理中です...