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兄と弟と聖剣
――発砲音が耳に届くよりも速く
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溜めた力を一瞬にして爆発させ、地面を滑るように跳躍するカイナ。リザンの振り下ろした軍刀の切っ先はチェルの背に掠ったが、軍刀から指に伝播したのは肉ではなく硬い感触だった。
「外套の下に何か着こんでやがる! イレオン!!」
リザンの警告もその速度の前では意味を為さなかった。一足飛びにカイナはイレオンの懐へと肉薄し、指が引き金を引くよりも速く大剣は空を切り裂いた。
突進の勢いをそのままに体重を乗せた大剣の振り下ろしは躱しきれず、イレオンは拳銃ごと右肩から先を失った。
「わああああああぁぁっ!?」
響き渡ったのはチェルの情けない悲鳴だった。
イレオンの横を翔け抜け、大剣を地面に擦ることで勢いを殺して停止するカイナ。その背に引っ付いていたひ弱な腕力では慣性に耐えることができず、チェルはカイナの後方の宙を舞っていた。
「ぐっ……があぁっ……っ!」
苦悶の声を上げながら左手からライフルを落とし、膝を着くイレオン。左手で右肩を抑えるがその出血を止めることは敵わず、落としたライフルにも大量に血がかかる。
リザンはイレオンに駆け寄ると、真っ先にライフルを拾い上げてカイナに向けて銃口を向けた。イレオンを気に掛けることも介抱することもなく、まっすぐにターゲットへと殺意を向けていた。
そして、不利状況を覆した後でもカイナに油断は無かった。大剣を前に構えて防御しながら、その銃口が狙う先を見切っていた。
少なくとも、カイナ自身に油断しているつもりはなかった。
「見事だな、カイナ・ユーリィ。その強さは私たちを圧倒していると認める他無いらしい。私たち二人を相手にして、たった一人にここまで一方的にやられるとは思わなかった」
「……」
相変わらずリザンの言葉には何の反応もしないカイナ。それでも構わずにリザンは言葉を続けた。
「ただ一つだけ、運はこちらに傾いたようだ……お前たちの負けだよ」
「……――っ!?」
カイナの本能が告げていた。リザンの言葉は油断を誘うための方便ではないと。
この状況でも成立するカイナの敗北条件はチェルに殺害以外にありえない。カイナはリザンから銃口を向けられているにも関わらず、無防備に背を晒した。
「チェルっ!!」
振り向いたカイナの視界に映ったのは三人の人間だった。
一人は地面に倒れ伏すチェル。その顔は恐怖にひきつっており、カイナの呼びかけも聴こえていないようだった。
二人はリザンと同じ軍服に身を包んだ男が二人。川を挟んだ向こう岸から、チェルにライフル銃を向けていた。
「屈め、チェルっ!!」
考えるよりも早く、反射でカイナは駆け出した。そして一か八か、大剣をチェルの前方へと振り下ろした。
チェルとの距離は凡そ3メートル。飛び込みながらであれば大剣の届く距離であり、チェルの小さな身体なら屈んでいれば十分にカバーできる。問題なのは大剣の振り下ろしが間に合うかどうかであり、後方のリザンからの弾はカイナの体で覆えばいい。
全神経を集中させ、指先に全ての力を集中させるカイナ。振り上げられた大剣は目にも止まらぬ速度で振り下ろされ、ライフルが発砲されるよりも早くチェルの身体を射線から遮った。
「っ……くそっ」
小さく、カイナは悪態を吐いた。
チェルを狙っていたライフルの銃口は大剣を振るった後の無防備なカイナへと向けられており、カイナの視線と真っ黒な銃口が交差したその瞬間――
「チェル……」
――発砲音が耳に届くよりも速く、カイナの身を衝撃が襲った。
「外套の下に何か着こんでやがる! イレオン!!」
リザンの警告もその速度の前では意味を為さなかった。一足飛びにカイナはイレオンの懐へと肉薄し、指が引き金を引くよりも速く大剣は空を切り裂いた。
突進の勢いをそのままに体重を乗せた大剣の振り下ろしは躱しきれず、イレオンは拳銃ごと右肩から先を失った。
「わああああああぁぁっ!?」
響き渡ったのはチェルの情けない悲鳴だった。
イレオンの横を翔け抜け、大剣を地面に擦ることで勢いを殺して停止するカイナ。その背に引っ付いていたひ弱な腕力では慣性に耐えることができず、チェルはカイナの後方の宙を舞っていた。
「ぐっ……があぁっ……っ!」
苦悶の声を上げながら左手からライフルを落とし、膝を着くイレオン。左手で右肩を抑えるがその出血を止めることは敵わず、落としたライフルにも大量に血がかかる。
リザンはイレオンに駆け寄ると、真っ先にライフルを拾い上げてカイナに向けて銃口を向けた。イレオンを気に掛けることも介抱することもなく、まっすぐにターゲットへと殺意を向けていた。
そして、不利状況を覆した後でもカイナに油断は無かった。大剣を前に構えて防御しながら、その銃口が狙う先を見切っていた。
少なくとも、カイナ自身に油断しているつもりはなかった。
「見事だな、カイナ・ユーリィ。その強さは私たちを圧倒していると認める他無いらしい。私たち二人を相手にして、たった一人にここまで一方的にやられるとは思わなかった」
「……」
相変わらずリザンの言葉には何の反応もしないカイナ。それでも構わずにリザンは言葉を続けた。
「ただ一つだけ、運はこちらに傾いたようだ……お前たちの負けだよ」
「……――っ!?」
カイナの本能が告げていた。リザンの言葉は油断を誘うための方便ではないと。
この状況でも成立するカイナの敗北条件はチェルに殺害以外にありえない。カイナはリザンから銃口を向けられているにも関わらず、無防備に背を晒した。
「チェルっ!!」
振り向いたカイナの視界に映ったのは三人の人間だった。
一人は地面に倒れ伏すチェル。その顔は恐怖にひきつっており、カイナの呼びかけも聴こえていないようだった。
二人はリザンと同じ軍服に身を包んだ男が二人。川を挟んだ向こう岸から、チェルにライフル銃を向けていた。
「屈め、チェルっ!!」
考えるよりも早く、反射でカイナは駆け出した。そして一か八か、大剣をチェルの前方へと振り下ろした。
チェルとの距離は凡そ3メートル。飛び込みながらであれば大剣の届く距離であり、チェルの小さな身体なら屈んでいれば十分にカバーできる。問題なのは大剣の振り下ろしが間に合うかどうかであり、後方のリザンからの弾はカイナの体で覆えばいい。
全神経を集中させ、指先に全ての力を集中させるカイナ。振り上げられた大剣は目にも止まらぬ速度で振り下ろされ、ライフルが発砲されるよりも早くチェルの身体を射線から遮った。
「っ……くそっ」
小さく、カイナは悪態を吐いた。
チェルを狙っていたライフルの銃口は大剣を振るった後の無防備なカイナへと向けられており、カイナの視線と真っ黒な銃口が交差したその瞬間――
「チェル……」
――発砲音が耳に届くよりも速く、カイナの身を衝撃が襲った。
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