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洛陽動乱
陽人の戦い ~汜水関~ 2
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董卓軍が汜水関に到着して兵を配置が済んだ頃、反董卓連合軍に徐栄よりの贈り物が届けられたらしく、猛り狂ったような熱気や怒号が響いてくるようだった。
「怒ってるなぁ」
華雄は城壁の上から、反董卓連合の集合場所がある方向を見ながら言う。
「そりゃ怒ってるだろうなぁ。それが目的だって相国は言ってたしなぁ」
呂布も華雄の横で言う。
「で、虎牢関の守備責任者で、防衛軍総大将様がなんでこんなところに?」
「総大将だから、全軍の状況を把握しないといけないからなぁ」
董卓軍は呂布を総大将に、胡軫、華雄、張遼などの他、李儒との連絡役として伝令で李粛も参加している。
「ん? 呂布将軍、アレは何か聞いてますか?」
華雄が反董卓連合の陣に向かう騎馬の一軍を見つけた。
「いや、何も聞いていないが、アレは誰の隊だ?」
「旗から見ると、徐栄みたいですなぁ」
「徐栄かぁ。贈り物だけ届ければ良いのに、手柄が立てられないと思ったのかなぁ」
呂布と華雄は城壁の上から、抜け駆けする徐栄軍を観察している。
徐栄軍は五千前後。
騎兵を率いるにおいて、徐栄は董卓軍随一と言われている武将であり、一騎打ちの胡軫と集団戦の徐栄として名高い。
しかし、好戦的過ぎる上に残忍極まりない性格が災いして、階位は低いままである。
とはいえ本人は前線に出る事が出来るので、あまり高位の将軍位を望んでいないところがあった。
そこは地位にこだわる胡軫と違うところでもある。
「止めなくて良いんですか?」
「止めて聞くかなぁ?」
「まあ、聞かないでしょうね」
「うん。俺もそう思う。ひとまず徐栄には反董卓連合の実力を見せてもらう為にも、ひと暴れしてもらった方が良いだろうな。本人もそのつもりだろうし。念の為、いつでも援軍を出せるようにはしておいた方が良いね」
「了解です」
華雄は手近な者を捕まえて指示を出すと、呂布と一緒に城壁の上から徐栄の様子を見る。
連合は圧倒的大軍であると言う余裕からか、展開が遅い。
徐栄が向かったのは、その中でもっとも近くにありながら隙の目立つ鮑信軍を狙って突撃する。
「……上手いモンだなぁ」
呂布は城壁の上から、徐栄の戦いぶりに感心する。
とにかく攻撃力が高いのだ。
その攻撃力をもっとも活かせる場所を狙い、僅かな隙を爆発的に広げていく。
「あれは俺でも手を焼きそうだなぁ」
「それは無いでしょうなぁ」
呂布の呟きに、華雄は即答する。
「徐栄は確かに大したモノだとは思いますが、それでも呂布将軍の足元にも及ばない。将軍はご自身の事をまるで分かっていないみたいですが、俺は一度将軍の敵として向かい合った事がありますからな。徐栄は攻撃に特化してますが、それでも呂布将軍には届かないし迫力も圧力もまったく違う」
「買いかぶりだよ。どうも俺は過大評価されすぎる」
「将軍の自己評価が過小に過ぎるんですよ」
高順にもよく言われるが、どうも呂布の周りの武将達は呂布を人間扱いしていない気がしてならない。
実際に今戦っている徐栄の騎馬隊による攻撃力はかなり高く、おそらく攻撃力だけで言えば張遼にも匹敵すると思われる。
だが、強いて言うなら戦い方が荒く雜過ぎる。
攻撃は張遼に匹敵するといっても、全体的な戦術眼や用兵の柔軟さなどでは若いながらも張遼の方が上だろう。
それでも鮑信軍では手に余る実力差だと言うのは、見ているだけで分かった。
「しかし徐栄は凄いな。五千の騎兵で二万を超える鮑信軍を壊滅させそうじゃないか」
華雄は本気で感心しながら言う。
確かにこのまま行けば、徐栄は鮑信軍を壊滅させただろう。
だが、呂布はそう上手く行きそうにない事に気付いた。
「……いや、華雄、今すぐ徐栄を救出に行ってくれ」
「はい? 今俺がしゃしゃり出たら、徐栄は嫌がるんじゃないッスかねぇ」
「そんな余裕は無いかも知れない」
笑いながら言う華雄に対し、呂布は真剣そのものの表情で言う。
「上手く言えないんだが、鮑信軍の中に何か混ざっている。確かにここから見ているだけでも鮑信軍はへなちょこだし、この状況が続けばしゃしゃり出た方はキレられそうだが、今のまま攻めたら徐栄軍は全滅させられる」
「とてもそうは見えませんがねぇ」
「そう多く無い。鮑信軍二万から三万に対して、千から二千くらいだと思うが、その少数の部隊が明らかに鮑信軍とは違う動きをしているのがわからないか?」
呂布に言われ、華雄もそこに気をつけて戦況を見る。
相変わらず徐栄が暴力を振り回し、鮑信軍に好き放題の暴虐を繰り広げているようにしか見えないが、乱れて収集がつかない鮑信軍の中に隠れているが徐栄軍の後方や側面から徐栄軍を圧迫している部隊が確かにあった。
徐栄は気付いていないみたいだが、徐栄が蹂躙しているように見えて、実はその怪しげな部隊に誘導されている様にも見える。
「徐栄は自分の周りが猛威を奮っているから気付いていないが、もうすぐ行動限界点が来る。その時、鮑信軍の真っ只中で孤立する事になったら徐栄にはそこから脱出する体力が残されていないはずだ」
「了解。急いで行きます」
「あの異物の部隊は多くないから、千もあれば徐栄を救出する事は出来るはず。ここで徐栄を失うような事は避けたい」
呂布に言われ、華雄は頷くと自ら大刀を持って千の騎兵を率いて汜水関を出る。
華雄が打って出たその時、暴虐の限りを尽くしていた徐栄が異変に気付き、その行動限界点を迎えていた。
徐栄は十分暴れたと言う事で撤収しようとしたのだが、その時には後続の部隊は寸断され、徐栄軍は鮑信軍の中に孤立していた。
こうなっては騎馬の機動力も封じられ、これまでの攻撃力も維持出来なくなる。
元々攻撃力に特化した徐栄なので、それを活かせなくなっては極端に脆いと言うあからさまな弱点を晒す事になった。
大した被害も出していなかったはずの徐栄軍だったが、この状況に陥ってからは激的に兵力を削られ打ち崩されていく。
呂布が感じた異物の存在は、総数は鮑信軍の一割未満であり全体の戦闘を正面から左右する事は出来ないはずだが、要所への攻撃の時や場所が恐ろしく的確だった。
あの部隊は恐ろしく強い。
董卓軍の強さを支える攻撃力や、呂布軍精鋭の練度とは違う、正体不明なおぼろげでありながらも確実な強さ。
あの部隊の主は鮑信ではない。
旗印は鮑信軍のモノではあるが、確実に鮑信ではない何者かの命令で動いていた。
一瞬にして状況が逆転した鮑信軍は、これまでの鬱憤を晴らすかのように徐栄軍に襲いかかっていく。
本来であれば騎馬隊に対して歩兵をぶつける事は被害が拡大するだけなのだが、今の徐栄軍は鮑信軍に囲まれて騎馬の機動力を活かせない状況であり、こうなったら騎馬隊の強みが無くなってしまう。
今は鮑信軍が中心となって徐栄軍を追い詰めていくが、その中に呂布は異物を見つける事が出来なかった。
あの異物は徐栄軍を追い詰めた後は無理せずに鮑信軍に任せ、そのまま大軍の中に姿を隠してしまっているようだ。
徐栄軍が殲滅されてしまう寸前、華雄軍が間に合って鮑信軍に突撃する。
華雄の戦術眼は軍師である李儒も認めるところであり、ただでさえ精強とは言えない鮑信軍は徐栄軍に反撃する事に集中し過ぎていた為、より凶悪な破壊力を誇る華雄軍に背後を突かれる形となった。
呂布は汜水関から状況を見守る。
実は華雄軍は千前後しかいないため、鮑信軍は無理に華雄を止めようとせず、救出しようとしている徐栄軍と合流する直前まで引きつけて再度囲い込むと、剛勇を誇る華雄と言えど数で封殺される恐れがあった。
あの異物の部隊が近くにいれば華雄も徐栄と同じ目に遭う恐れがあったのだが、あの異物は隠れてしまったのですぐには現れる事が出来なく、華雄も目的を徐栄の救出に絞っていた為、退路を作ると無理に踏み込もうとせずに徐栄を救出するとすぐに撤収した。
鮑信軍は、突如現れた魔物の様な華雄に度肝を抜かれて、逃げていく華雄、徐栄軍を追撃する事を忘れていた。
何しろ華雄は本人の内面はともかく、剛勇を誇る董卓軍の中でも群を抜いて人間離れした外見をしている。
体は虎、腰は狼、頭は豹と例えられ、その身長も長身である呂布より高く体格も大きい為、とても同じ人間とは思えないのだ。
そんな外見の魔獣じみた大男が雄叫びを上げ、大刀を振り上げて歩兵を薙ぎ払っていく姿は、それだけで心臓が止まりそうな迫力がある。
結果、華雄軍自体はまったく無傷で徐栄軍を救出する事に成功した。
が、華雄軍は無傷であったとしても徐栄軍の被害は甚大で、五千の騎兵が今や七百前後にまで激減して、かろうじて殲滅されずに済んだと言う被害状況である。
この董卓軍対反董卓連合軍の初戦は、形だけで言えば、『都にいた袁家の者を虐殺した徐栄軍が調子に乗って連合軍に突撃を仕掛けたが、連合軍の前にその突撃を止められ、全滅だけは免れたものの、見るも無残に敗走していった』と言う事になり、連合軍は初戦の勝利を宣伝した。
しかし、それはあくまでも連合側の主張であり、董卓軍、特に徐栄軍は散々な目にあったにも関わらず自軍が敗れたとは思っていない。
確かに徐栄軍は五千の内四千以上を失うと言う大損害を受けたのだが、それに対した鮑信軍は二万五千の総数の内一万五千近くを失い、さらに鮑信の弟の一人である鮑韜と鮑信軍の武将ではないのだが、衛茲と言う武将を打ち取られている。
被害総数で言えば鮑信軍に対し三倍の被害を与え、武将を二名討ち取っているので、徐栄軍としては連合の数にこそ遅れを取ったが、自身の勝利を疑っていない。
双方が勝利を主張する初戦において、お互いに士気を下げる事にはならない結果となった。
呂布としては想定外の初戦の入りとなったが、両手を上げるほど良い結果とは言えないものの、今後に響くほど悪いとも言えない結果と言える。
華雄が徐栄を連れて汜水関に戻って来た時、連合の方も陣の立て直し、初戦は終了となった。
初戦の結果の中で呂布が注目したのは、徐栄の想定外の攻撃力の高さでも鮑信軍の弱小振りでもなく、本来その場にいないはずの武将である衛茲の存在だった。
「怒ってるなぁ」
華雄は城壁の上から、反董卓連合の集合場所がある方向を見ながら言う。
「そりゃ怒ってるだろうなぁ。それが目的だって相国は言ってたしなぁ」
呂布も華雄の横で言う。
「で、虎牢関の守備責任者で、防衛軍総大将様がなんでこんなところに?」
「総大将だから、全軍の状況を把握しないといけないからなぁ」
董卓軍は呂布を総大将に、胡軫、華雄、張遼などの他、李儒との連絡役として伝令で李粛も参加している。
「ん? 呂布将軍、アレは何か聞いてますか?」
華雄が反董卓連合の陣に向かう騎馬の一軍を見つけた。
「いや、何も聞いていないが、アレは誰の隊だ?」
「旗から見ると、徐栄みたいですなぁ」
「徐栄かぁ。贈り物だけ届ければ良いのに、手柄が立てられないと思ったのかなぁ」
呂布と華雄は城壁の上から、抜け駆けする徐栄軍を観察している。
徐栄軍は五千前後。
騎兵を率いるにおいて、徐栄は董卓軍随一と言われている武将であり、一騎打ちの胡軫と集団戦の徐栄として名高い。
しかし、好戦的過ぎる上に残忍極まりない性格が災いして、階位は低いままである。
とはいえ本人は前線に出る事が出来るので、あまり高位の将軍位を望んでいないところがあった。
そこは地位にこだわる胡軫と違うところでもある。
「止めなくて良いんですか?」
「止めて聞くかなぁ?」
「まあ、聞かないでしょうね」
「うん。俺もそう思う。ひとまず徐栄には反董卓連合の実力を見せてもらう為にも、ひと暴れしてもらった方が良いだろうな。本人もそのつもりだろうし。念の為、いつでも援軍を出せるようにはしておいた方が良いね」
「了解です」
華雄は手近な者を捕まえて指示を出すと、呂布と一緒に城壁の上から徐栄の様子を見る。
連合は圧倒的大軍であると言う余裕からか、展開が遅い。
徐栄が向かったのは、その中でもっとも近くにありながら隙の目立つ鮑信軍を狙って突撃する。
「……上手いモンだなぁ」
呂布は城壁の上から、徐栄の戦いぶりに感心する。
とにかく攻撃力が高いのだ。
その攻撃力をもっとも活かせる場所を狙い、僅かな隙を爆発的に広げていく。
「あれは俺でも手を焼きそうだなぁ」
「それは無いでしょうなぁ」
呂布の呟きに、華雄は即答する。
「徐栄は確かに大したモノだとは思いますが、それでも呂布将軍の足元にも及ばない。将軍はご自身の事をまるで分かっていないみたいですが、俺は一度将軍の敵として向かい合った事がありますからな。徐栄は攻撃に特化してますが、それでも呂布将軍には届かないし迫力も圧力もまったく違う」
「買いかぶりだよ。どうも俺は過大評価されすぎる」
「将軍の自己評価が過小に過ぎるんですよ」
高順にもよく言われるが、どうも呂布の周りの武将達は呂布を人間扱いしていない気がしてならない。
実際に今戦っている徐栄の騎馬隊による攻撃力はかなり高く、おそらく攻撃力だけで言えば張遼にも匹敵すると思われる。
だが、強いて言うなら戦い方が荒く雜過ぎる。
攻撃は張遼に匹敵するといっても、全体的な戦術眼や用兵の柔軟さなどでは若いながらも張遼の方が上だろう。
それでも鮑信軍では手に余る実力差だと言うのは、見ているだけで分かった。
「しかし徐栄は凄いな。五千の騎兵で二万を超える鮑信軍を壊滅させそうじゃないか」
華雄は本気で感心しながら言う。
確かにこのまま行けば、徐栄は鮑信軍を壊滅させただろう。
だが、呂布はそう上手く行きそうにない事に気付いた。
「……いや、華雄、今すぐ徐栄を救出に行ってくれ」
「はい? 今俺がしゃしゃり出たら、徐栄は嫌がるんじゃないッスかねぇ」
「そんな余裕は無いかも知れない」
笑いながら言う華雄に対し、呂布は真剣そのものの表情で言う。
「上手く言えないんだが、鮑信軍の中に何か混ざっている。確かにここから見ているだけでも鮑信軍はへなちょこだし、この状況が続けばしゃしゃり出た方はキレられそうだが、今のまま攻めたら徐栄軍は全滅させられる」
「とてもそうは見えませんがねぇ」
「そう多く無い。鮑信軍二万から三万に対して、千から二千くらいだと思うが、その少数の部隊が明らかに鮑信軍とは違う動きをしているのがわからないか?」
呂布に言われ、華雄もそこに気をつけて戦況を見る。
相変わらず徐栄が暴力を振り回し、鮑信軍に好き放題の暴虐を繰り広げているようにしか見えないが、乱れて収集がつかない鮑信軍の中に隠れているが徐栄軍の後方や側面から徐栄軍を圧迫している部隊が確かにあった。
徐栄は気付いていないみたいだが、徐栄が蹂躙しているように見えて、実はその怪しげな部隊に誘導されている様にも見える。
「徐栄は自分の周りが猛威を奮っているから気付いていないが、もうすぐ行動限界点が来る。その時、鮑信軍の真っ只中で孤立する事になったら徐栄にはそこから脱出する体力が残されていないはずだ」
「了解。急いで行きます」
「あの異物の部隊は多くないから、千もあれば徐栄を救出する事は出来るはず。ここで徐栄を失うような事は避けたい」
呂布に言われ、華雄は頷くと自ら大刀を持って千の騎兵を率いて汜水関を出る。
華雄が打って出たその時、暴虐の限りを尽くしていた徐栄が異変に気付き、その行動限界点を迎えていた。
徐栄は十分暴れたと言う事で撤収しようとしたのだが、その時には後続の部隊は寸断され、徐栄軍は鮑信軍の中に孤立していた。
こうなっては騎馬の機動力も封じられ、これまでの攻撃力も維持出来なくなる。
元々攻撃力に特化した徐栄なので、それを活かせなくなっては極端に脆いと言うあからさまな弱点を晒す事になった。
大した被害も出していなかったはずの徐栄軍だったが、この状況に陥ってからは激的に兵力を削られ打ち崩されていく。
呂布が感じた異物の存在は、総数は鮑信軍の一割未満であり全体の戦闘を正面から左右する事は出来ないはずだが、要所への攻撃の時や場所が恐ろしく的確だった。
あの部隊は恐ろしく強い。
董卓軍の強さを支える攻撃力や、呂布軍精鋭の練度とは違う、正体不明なおぼろげでありながらも確実な強さ。
あの部隊の主は鮑信ではない。
旗印は鮑信軍のモノではあるが、確実に鮑信ではない何者かの命令で動いていた。
一瞬にして状況が逆転した鮑信軍は、これまでの鬱憤を晴らすかのように徐栄軍に襲いかかっていく。
本来であれば騎馬隊に対して歩兵をぶつける事は被害が拡大するだけなのだが、今の徐栄軍は鮑信軍に囲まれて騎馬の機動力を活かせない状況であり、こうなったら騎馬隊の強みが無くなってしまう。
今は鮑信軍が中心となって徐栄軍を追い詰めていくが、その中に呂布は異物を見つける事が出来なかった。
あの異物は徐栄軍を追い詰めた後は無理せずに鮑信軍に任せ、そのまま大軍の中に姿を隠してしまっているようだ。
徐栄軍が殲滅されてしまう寸前、華雄軍が間に合って鮑信軍に突撃する。
華雄の戦術眼は軍師である李儒も認めるところであり、ただでさえ精強とは言えない鮑信軍は徐栄軍に反撃する事に集中し過ぎていた為、より凶悪な破壊力を誇る華雄軍に背後を突かれる形となった。
呂布は汜水関から状況を見守る。
実は華雄軍は千前後しかいないため、鮑信軍は無理に華雄を止めようとせず、救出しようとしている徐栄軍と合流する直前まで引きつけて再度囲い込むと、剛勇を誇る華雄と言えど数で封殺される恐れがあった。
あの異物の部隊が近くにいれば華雄も徐栄と同じ目に遭う恐れがあったのだが、あの異物は隠れてしまったのですぐには現れる事が出来なく、華雄も目的を徐栄の救出に絞っていた為、退路を作ると無理に踏み込もうとせずに徐栄を救出するとすぐに撤収した。
鮑信軍は、突如現れた魔物の様な華雄に度肝を抜かれて、逃げていく華雄、徐栄軍を追撃する事を忘れていた。
何しろ華雄は本人の内面はともかく、剛勇を誇る董卓軍の中でも群を抜いて人間離れした外見をしている。
体は虎、腰は狼、頭は豹と例えられ、その身長も長身である呂布より高く体格も大きい為、とても同じ人間とは思えないのだ。
そんな外見の魔獣じみた大男が雄叫びを上げ、大刀を振り上げて歩兵を薙ぎ払っていく姿は、それだけで心臓が止まりそうな迫力がある。
結果、華雄軍自体はまったく無傷で徐栄軍を救出する事に成功した。
が、華雄軍は無傷であったとしても徐栄軍の被害は甚大で、五千の騎兵が今や七百前後にまで激減して、かろうじて殲滅されずに済んだと言う被害状況である。
この董卓軍対反董卓連合軍の初戦は、形だけで言えば、『都にいた袁家の者を虐殺した徐栄軍が調子に乗って連合軍に突撃を仕掛けたが、連合軍の前にその突撃を止められ、全滅だけは免れたものの、見るも無残に敗走していった』と言う事になり、連合軍は初戦の勝利を宣伝した。
しかし、それはあくまでも連合側の主張であり、董卓軍、特に徐栄軍は散々な目にあったにも関わらず自軍が敗れたとは思っていない。
確かに徐栄軍は五千の内四千以上を失うと言う大損害を受けたのだが、それに対した鮑信軍は二万五千の総数の内一万五千近くを失い、さらに鮑信の弟の一人である鮑韜と鮑信軍の武将ではないのだが、衛茲と言う武将を打ち取られている。
被害総数で言えば鮑信軍に対し三倍の被害を与え、武将を二名討ち取っているので、徐栄軍としては連合の数にこそ遅れを取ったが、自身の勝利を疑っていない。
双方が勝利を主張する初戦において、お互いに士気を下げる事にはならない結果となった。
呂布としては想定外の初戦の入りとなったが、両手を上げるほど良い結果とは言えないものの、今後に響くほど悪いとも言えない結果と言える。
華雄が徐栄を連れて汜水関に戻って来た時、連合の方も陣の立て直し、初戦は終了となった。
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