ダグラス君

坂田火魯志

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第五章

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「いいな」
「凄く嫌な現実だけれど認識しました」
「その様にな、ではだ」
 ここまで話してだ、銅像は勝手に告げた。
「私は別の場所に行く、ジープがある」
「車で移動されるんですか」
「私自身が運転してな」
「元帥でもご自身で」
「昔は運転させていたが」
 それがと言うのだ。
「私は今は自分で運転するのが好きでな」
「だからですか」
「それで今は自分で運転してだ」
「基地の中を運転されていますか」
「そうだ、ではな」
「はい、じゃあ私これで寝ますんで」
「また会おう」
「いや、出来るなら夜遅くには来ないで下さい」 
 そこはしっかりと言ってだった、勝手は銅像が事務所を出るのを見送ってから眠りに入った。そして翌日の朝事務所に来た坪川達にこのことを話すと。
 するとだ、坪川は勝手にこう言った。
「ああ、昨日来たか」
「厚木の人ならだれでも知ってるって言ったましたけれど」
「有名な話だよ」 
 それこそという返事だった。
「俺が当直の時も時々来てな」
「そうしてですか」
「ああ、そしてな」
「事務所の中で色々話してきてですか」
「帰ってるんだよ、それでな」
「厚木のあちこち巡ってるそうですね」
「そうだよ、自分でジープを運転してな」
 そうしてというのだ。
「パトロールとかしてるんだよ」
「あの人ご自身が言ってたみたいに」
「そうだよ、大抵夜に動いてるけれどな」
「映画館とか図書館にも出入りしてるって言ってました」
「そこで会う時もあるからな」
「会った時はですか」
「挨拶位しろよ」
 坪川は勝手にこう話した。
「何しろ基地では一番偉い人なのは事実だしな」
「だからですね」
「ああ、しっかりとな」
 そこはと言うのだった。
「しておけよ」
「わかりました」 
 こうしてだった、勝手は銅像のことを受け入れた。というか厚木にいる限り受け入れるしかないことを理解した。
 それで銅像を見る機会があれば見たが。
 昼は確かに大抵その場所にいるがいない時がたまにあり彼はそうした時は同僚達に考える顔で言った。
「今はいないですね」
「ああ、図書館か?」
「それか映画館か」
「何処かに行ったか?」
「そうしたか?」
「そうなんですね」
 その今は主のいない座を見て言った。
「実際にお昼にいない時もあるんですね」
「ああ、別に大したことじゃないさ」
「厚木じゃ普通だよ」
「いる時があればいない時もあるんだよ」
「いない時はパトロールか娯楽だよ」
 そうしたことをしているというのだ。
「パトロールはしっかりしてるからな」
「それでアメリカ軍や自衛隊の人を結構助けてもいるからな」
「あれで有り難い人なんだよ」
「元帥で生まれた時から偉そうだったそうだけれどな」
 ぞの人格は傲岸不遜だったと言われている。
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