【完結】大金を手に入れたので奴隷を買った!

セイヂ・カグラ

文字の大きさ
8 / 30

7話:はじめてのおつかい

しおりを挟む


 今日からギルドのダンジョンに入るローレンスは、指示通り早起きをして支度を済ませていた。二人で朝食をしっかり取ったあと、俺も身支度を整え一緒に家を出る。

「なぜ、ついてくるんだ。」

 途中までは黙っていたのに突然立ち止まって、尻尾をしまい込んだローレンスが心底面倒くさそうに言ったのだ。

「なぜって、ローレンスが心配だから。」
「オレは、ガキじゃない。」
「ガキだなんて思ってないぞ。お前に変な虫が付くのが嫌なんだ。」
「変な虫…。」
「ローレンスはとびきり美人なんだぞ。一人で居たら、危ないだろ。ローレンスは、俺のものなのに盗まれたら困る! ダンジョンに入るまでは、見送らないと俺の気が済まないんだ。忘れるなよ、ローレンスは俺のものだからな!」

 まったく、これだから無自覚の美形は…。
 当たり前のことを言わせないでくれ。
 毎日毎日、綺麗だと伝えているのにローレンスは自分が美しいということを知らない。
 だから、余計に心配なんだ。

 やれやれと呆れたように態とらしく溜息を吐いてやった。そしたら、それがローレンスを苛立たせたらしい。一度、ギッと睨むと俺を置いて足早に歩きはじめた。俺も歩幅を少し大きくして、ローレンスの歩みに合わせる。

「いいか、オレは男だ。その辺の奴らなんか簡単に殺せる。お前こそ忘れるなよ、オレが魔族であるということを。」

 やだ、脅されちゃった。

「でも心配だからついて行くのはやめない‼」
「…ちっ、勝手にしろ。」
「あっ! なぁなぁ、今日は肉が食いたいな♡」
「、、どういう意味だ」
「ダンジョンで食えそうな肉獲ってこい!」

 そうこうしているうちにギルドに到着。早朝のギルドは混む。案の定、あちこちから女が湧いてきた。小賢しい虫どもをいつもの笑顔で適当に追い返しながら、俺はダンジョンに入るローレンスを見送った。夕方には、また迎えに来ると伝えてある。ダンジョンの中までついていけないのが悔しい!

 見送りが完了したので俺は一旦、家に帰る。調味料がなかったので買い足して、水場や部屋の掃除と洗濯をする。畑で実った野菜たちを収穫して、夕飯の下準備。今日はトマトを煮込んでトマトソースを作る。多めに作って瓶に詰めておけば、どんな料理にでも使える!と近所のばぁさんに教えてもらった。そうこうしているうちに丁度良い時間。そろそろローレンスを迎えに行くか!

「俺、まじで奥様じゃん」

 ひゃっ、って一人でなんだか恥ずかしくなる。
 物心ついた頃から俺は男が恋愛対象だ。
 それもかなりの美形好きで、どちらかというと抱かれたい。
 だが、残念ながら俺は平凡な上にタッパがでかいだけの無能な男。
 理想だけいっちょ前に高い俺は、25年の人生で恋愛経験0。
 まぁ、別にローレンスに恋をするつもりはないけど。
 むしろ、好きになっちゃいけないと思っている。
 恋は何度かしてきた、それは全て苦しいばかりだった。
 だけど…、あんな美形が近くにいて何も思わないでいるのも難しい。
 人間なんて矛盾ばっかだ。

 ぐるぐる考え事しているうちにギルドへたどり着く。中に入ると、一際美しい銀髪の青年が壁に背をもたれていた。この時間帯は比較的人が少なくて、治安も心なしか良い。それでも通り過ぎる人がチラチラとローレンスを見る。気だるそうに髪をかき上げるしぐさすらも情欲的。やっぱり、俺の魔物は最高だ。

「ローレンス!迎えに来たよ。」

 そう声をかけ、手を振る。ローレンスは顔を上げて俺を確認すると、こちらに向かって歩いてきた。ざっと見た感じ、怪我は無さそうだ。むしろ、今朝より肌艶が良い。近付くと少し違和感を感じる。なんとなく、今までと違う。

「あれ…、なんか綺麗になった?あと、デカくなった?」
「ダンジョンの魔力のせいだ。オレたちは、魔力が少ないとエネルギーを消費しないように小さくなる。」
「えっ!じゃあ、俺よりデカくなるのか?!」
「……いや、これがオレの元々の身体だ。」
 
 俺と頭1個分違った身長だったが、今は俺の目元くらいに頭がある。身体を小さくしてエネルギーの消費を抑えるのか。魔族ってすごいな。じゃあ、ダンジョンに潜るのは魔族からすれば、健康に良いことなのか。感心していると、気がつけばローレンスが受付にいた。どうやら換金してるようだ。受付に視線をやると、あの日から態度の変わったミールが親しげに手を振ってきた。イラッとしながらも、俺はいつもの顔を貼り付ける。

「はじめてのダンジョンだったけど、どうだった?ローレンス」

 肩にポンポンと触れ、外面モードでローレンスに話しかけた。そんな俺にローレンスが視線で「気持ち悪い」と言ってくる。ローレンスが袋から出し、受付の器に広げたのは摘めるくらいの小さな石、数粒。赤い石が4つと、緑色の石が1つ。ローレンスの服は少し砂が付いているくらいでさほど汚れていない。ダンジョンの仕組みはよく知らないけど、小さい石を見るに、今日は数百ピラールくらいだろう。まぁ、初日だからこんなもんか、なんて思う。

「へっ……?」

 その石を見て、ミールも拍子抜けしたみたいな声を出した。
 まぁまぁ、そう言ってやるな…。

「今日は初日だからな。はじめて入ったダンジョンで、何かを得て帰ってこれるなんてローレンスはすごい子だ! えらいえらい、俺は感動したぞ!」
「……少し、遊んだだけだ。」

 慰めついでに、しっかり褒めてやる。
 叱るより、褒めたほうが伸びると噂で聞いたからな。

「初日…、まだ初日よね? これを何処で…?」

 さっきから石を眺めてだんまりしていたミールが小さな声でそう言った。

「なんだ、これじゃあ値が付かないのか。」

 ローレンスが、珍しく弱気に聞く。

「今日は、どこの階層まで下りたの?」
「…はじめは15階層、飽きて32階層まで下りた。」
「32階層…⁉ どんな魔物からこの石を?」
「牙のある獣を4体、大蛇を一匹。大したことはなかった。」

 ミールの表情がみるみる険しくなる。
 そして、途端にいつもとは違う真面目な声色に変わった。
 なんだか急に緊張感のある空気に俺も背筋が伸びる。
 そしてミールは、小声でひそめるように顔を近づけた。

「良いかしら…、よく聞いて。今日、貴方が倒した獣の魔物は、A級がS級に上がるときに一体でも倒せれば良い魔物よ。それから、大蛇の魔物だけど、S級なら一人でも倒せる。ただ、大きな怪我は免れない。そして今までに開拓されたダンジョンの最下層は36階層よ。その記録は、英雄ルジャンドルが突破してから、もう80年も破られていない。」
「それって……」
「すごい功績だわ。でも、とても危険よ。」
「危険…?」
「ローレンス様が魔族であることがバレてしまう可能性がある。」
「は……?」
「ああ、それは困るな。」
「は?」







しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

Bランク冒険者の転落

しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。 ◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公  ◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;) ◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...