15 / 30
side:ローレンス
しおりを挟む閉め出された。
星の輝く夜空の下、魔力に包まれた空気が美味い。
もう一度言おう、オレは家から閉め出された。
手には重たい袋。金貨の大量に入った袋。こんなものをオレに渡して、娼館にでも行けという。あんなにもオレに執着しているのに、オレに他の女を抱けという。あんなにもオレが好きでたまらないような顔をして……、オレが触れると逃げる。確かに喜んでいたはずだ。そのまま抱かれればいいものの、なぜ拒否する? なぜ…、他の男には身体を許している?
近頃、べっとりと染み付いて匂うツェルダのマーキングには嫌気がさしていた。抱かれたいだけなら、オレでも良いだろう。魔族は縄張り意識が強い。自分の巣に他の雄のニオイがするなんてムカムカして仕方がない。
娼館など興味がない、どこに誰が居るかわからない宿で一晩過ごすのもリスクがある。だからゼンを言い包めて、家で眠ろうとドアノブを捻った。しかし、家の扉は開かない。鍵は簡単に解錠できる。だが、押そうが引こうがびくとも動かない。弾かれる感覚すらある。熱を感じて首元をに触れれば、奴隷紋が動いていた。かなり強い高度な奴隷紋を着けられたものだ。並のものでは壊せない。オレの魔力を持ってしてもまだ解除できないのだ。奴隷紋は主人となるものの意思が強く反映される。だからオレが家に入れないのは、ゼン意思。
「……明日には、帰って来いよ。」
もう、扉を爆破しようかとすら考えたときだ。
オレは、家に入るのをやめた。
今夜は森で野宿でもしよう、朝になれば扉も開いているはずだ。
ドアノブを握る手を力なく下ろし、歩き出す。
「俺とずっと居たのが良くなかったか…」
また聞こえた独り言に足がピタリと止まる。
『捨てられる』
そんな言葉が頭に浮かんだ。
いやいや待て待て、オレが捨てられる?何を馬鹿なことを考えているんだ。
捨てられるのはオレじゃない。捨てられるのはゼンの方。
オレがゼンを捨てるんだ。
滲む不安のようなものを感じて、ぎゅっと胸を押さえた。信じない、オレは誰も信じない。信じなければ、裏切られることもないのだ。逃げ去るように森へと走る。少し走ったくらいで息なんて上がらないのに、心臓がずっと強く脈打って痛かった。薄暗い森の中、魔物たちがオレの魔力から逃げていく。さっさと眠ってしまえと、芝生に身を預け、瞼を閉じた。
髪を優しく撫でる指先や何かを隠すように張り付いた笑み、オレを眺めて満足気な笑み、簡単な魔法でガキのようにはしゃぐ姿、心配そうな顔、疲れた顔、胡散臭い笑顔、怯えた顔、熱の籠もった視線。思い出される記憶が全てゼンで埋め尽くされていた。
「くそ、寒いだろうが……」
恨み続けてきた出来事よりゼンとの生活の方が鮮明に浮かんだ。
本当は、胸の何処かでこの生活が永遠に続けば良いとすら思っている。
温かな生活を、愛されていると勘違いしてしまうような生活を手放すのが怖い。
少しずつ、けれど確かに肥大する支配欲と独占欲。
魔力もなく非力なゼンを殺すなんて容易だ。奴隷紋すら使いこなせない男なのだから、自由を得るのも容易。
それでもオレはずっとゼンを殺せないでいる。
「そろそろ殺すか」
ため息交じりの独り言。
冷たい空気に流れて、静かな森に取り残されるみたいに自分の声が耳に残った。
45
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
Bランク冒険者の転落
しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。
◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公
◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;)
◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる