【完結】大金を手に入れたので奴隷を買った!

セイヂ・カグラ

文字の大きさ
22 / 30

19話:ディー先生の訪問

しおりを挟む
「こんにちはぁ!ゼンさん!!」

 玄関の扉を開けると、屈託のない笑顔の青年が腰を屈め覗き込むように元気よく挨拶をする。前回より間近に見える体格とは裏腹な可愛らしい顔に、俺も思わずニッコリと笑顔で返した。部屋に招き入れるが、腕を後ろに組んだままディー先生は落ち着かない様子。どうしたのかと首を傾げると、ディー先生は辺りをぐるりと見渡した。

「ああ、ローレンスは書斎にいるんです。さぁ、ディー先生、こちらに…」
「あっ、いえいえ!そうではなく!」

 ローレンスの書斎に連れて行こうとすると、ディー先生はブンブン頭を横に振った。
 そうではないなら何なのだろう?とまた疑問が浮かぶ。

「あ、あのっ!これを!受け取って下さい!!」

 そう言って、ディー先生の背後から勢いよく飛び出してきたのは大きな花束だった。
 身体にすっぽりと隠れて見えなかったそれは、赤や黄色、青、白、色とりどり。
 葉や茎の青々とした花束からは早朝の匂いが香る。
 まるで、青年そのもののような花束だった。
 差し出された勢いに驚いて、思わず受け取る。
 すると、ディーは頬を真っ赤にしながら床に膝を付き、俺の手を取った。

「今まで貴方のように優しく美しい人に出会ったことはありませんっ! 僕の話を止めること無くのずっと聞いてくれたのもゼンさんがはじめて…。僕、貴方を好きになってしまいました!!」

 ぎゅうっと手を握り俺の瞳を見つめるその瞳は、とても真剣。
 俺はと言うと、花を受け取ったまま固まっていた。
 まるでおとぎ話の王子様みたい…と俺の頭がお花畑になる。

「将来、たくさん稼げる男になる予定です! ゼンさんのことを誰よりも愛します! 守ります!! だから僕と結婚して下さいっ!」

 あまりの勢いに驚きながら、グイグイと近寄る美形から後退りする。
 えっと、待って俺のことが好き……?
 一度しか会ったことのない一般成人済み男性だぞ?!
 いやいや、何の間違いだよ、冗談?それとも新手の遊びか?
 大体、俺の顔立ちは平凡だし、話を聞いたのも身辺調査でローレンスを拾ったのは大嘘、というか買って奴隷にしちゃってるし…。
 むしろ、悪い方というか…、なんだか居た堪れん。
 それに俺、今はローレンスの奴隷だから結婚とかはできない。
 正直、真っ直ぐな告白に胸が高鳴ったのは事実。
 こんなの、キュンって来ちゃうに決まってるだろ。
 でも…、俺は……ローレンスのことが……。

「ご、ごめんね。私には、その……ローレンスがいるから。」
「ローレンスくんのことなら心配ありません!二人で育てましょうっ!」
「そ、育て…?」

 育てるって、ローレンスはそれほどガキじゃないんだが!
 
「うぉっ」
「年下は、恋愛対象外ですか?」

 ディー青年は、大きな体で花ごと俺を抱き込め、耳元で囁いた。
 まるで、子犬のような表情。心なしか見えない尻尾まで見えてくる。
 ドキドキと早く脈打つディーの心音。あたたかな温もりに包まれながら、どうしたものかと考える。

「えっ、あっ、えっえ、?!」

 花が潰れて可哀想、だなんて思って眺めていると、綺麗だった花が一気に茶色く変色し干からびてしまった。
 カラカラのパサパサになってしまった花は、俺とディーの胸の間でサラサラと朽ちていく。
 花束に一瞬で何かが起こった。

「調子に乗るなよ小僧。」
「あ、ローレンス!お前の仕業しわざか!」
「黙れ。さっさとソイツから離れろ、ゼン」

 ローレンスに強く指示されると…、それが命令みたいになって指示通り身体が動いてしまう。

「来い」

 強い眼光に囚われ、俺はフラフラと両手を広げたローレンスの腕の中に収まる。
 ああ、先程とは打って変わって埋まるような腕の中ではない。細いが力のある腕の中だ。
 怖い、俺だけに向けられた魔力の威圧が怖くて身体が震える。

「良いか小僧、覚えておけ。ゼンはオレのものだ。」
「ろ、ローレンスくんっ!悪いけど、ゼンさんのこと、僕に譲ってくれないかな! 僕は彼を愛しているんだ!」
「そうか、なら残念だったな。もう一度言うがゼンはオレのだ。」
「ひぃっ……」

 怖い……!
 服の下に隠している奴隷紋からローレンスの魔力が流れて、身体が震える。
 それは、俺に恐怖を与えた。恐ろしくてしかたがない、きっと何を言われても従うことしかできないだろう。
 今すぐにでも地に張り付きたいような気持ちもあるが、命令が無いので何もできずにいる。
 ただ、俺の心臓はドクドクといって嫌な汗がダラダラと溢れ出した。

 息が、上手く吸えない……!怖い、怖い、怖い、怖い、怖い…!
  
「はぁ…、はっ、…ひゅっ……」
「ああ、駄犬には躾をしないといけないなぁ。見ていくか…? ディー先生」
「な、なに…? ゼンさん…、大丈夫です、か、」



 パチンッ……!!




 恐ろしさで涙を溜め込み震える俺の耳を指を弾く音がつんざいた。
 









ーーーーー
すみません、途中、なんだか文書ぐちゃぐちゃでしたね…怖い(読み返してびっくり)
修正しました。

p.s
本業が繁忙期のため更新、遅くなります。
よろしくお願いします
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...