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19話:ディー先生の訪問
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「こんにちはぁ!ゼンさん!!」
玄関の扉を開けると、屈託のない笑顔の青年が腰を屈め覗き込むように元気よく挨拶をする。前回より間近に見える体格とは裏腹な可愛らしい顔に、俺も思わずニッコリと笑顔で返した。部屋に招き入れるが、腕を後ろに組んだままディー先生は落ち着かない様子。どうしたのかと首を傾げると、ディー先生は辺りをぐるりと見渡した。
「ああ、ローレンスは書斎にいるんです。さぁ、ディー先生、こちらに…」
「あっ、いえいえ!そうではなく!」
ローレンスの書斎に連れて行こうとすると、ディー先生はブンブン頭を横に振った。
そうではないなら何なのだろう?とまた疑問が浮かぶ。
「あ、あのっ!これを!受け取って下さい!!」
そう言って、ディー先生の背後から勢いよく飛び出してきたのは大きな花束だった。
身体にすっぽりと隠れて見えなかったそれは、赤や黄色、青、白、色とりどり。
葉や茎の青々とした花束からは早朝の匂いが香る。
まるで、青年そのもののような花束だった。
差し出された勢いに驚いて、思わず受け取る。
すると、ディーは頬を真っ赤にしながら床に膝を付き、俺の手を取った。
「今まで貴方のように優しく美しい人に出会ったことはありませんっ! 僕の話を止めること無くのずっと聞いてくれたのもゼンさんがはじめて…。僕、貴方を好きになってしまいました!!」
ぎゅうっと手を握り俺の瞳を見つめるその瞳は、とても真剣。
俺はと言うと、花を受け取ったまま固まっていた。
まるでおとぎ話の王子様みたい…と俺の頭がお花畑になる。
「将来、たくさん稼げる男になる予定です! ゼンさんのことを誰よりも愛します! 守ります!! だから僕と結婚して下さいっ!」
あまりの勢いに驚きながら、グイグイと近寄る美形から後退りする。
えっと、待って俺のことが好き……?
一度しか会ったことのない一般成人済み男性だぞ?!
いやいや、何の間違いだよ、冗談?それとも新手の遊びか?
大体、俺の顔立ちは平凡だし、話を聞いたのも身辺調査でローレンスを拾ったのは大嘘、というか買って奴隷にしちゃってるし…。
むしろ、悪い方というか…、なんだか居た堪れん。
それに俺、今はローレンスの奴隷だから結婚とかはできない。
正直、真っ直ぐな告白に胸が高鳴ったのは事実。
こんなの、キュンって来ちゃうに決まってるだろ。
でも…、俺は……ローレンスのことが……。
「ご、ごめんね。私には、その……ローレンスがいるから。」
「ローレンスくんのことなら心配ありません!二人で育てましょうっ!」
「そ、育て…?」
育てるって、ローレンスはそれほどガキじゃないんだが!
「うぉっ」
「年下は、恋愛対象外ですか?」
ディー青年は、大きな体で花ごと俺を抱き込め、耳元で囁いた。
まるで、子犬のような表情。心なしか見えない尻尾まで見えてくる。
ドキドキと早く脈打つディーの心音。あたたかな温もりに包まれながら、どうしたものかと考える。
「えっ、あっ、えっえ、?!」
花が潰れて可哀想、だなんて思って眺めていると、綺麗だった花が一気に茶色く変色し干からびてしまった。
カラカラのパサパサになってしまった花は、俺とディーの胸の間でサラサラと朽ちていく。
花束に一瞬で何かが起こった。
「調子に乗るなよ小僧。」
「あ、ローレンス!お前の仕業か!」
「黙れ。さっさとソイツから離れろ、ゼン」
ローレンスに強く指示されると…、それが命令みたいになって指示通り身体が動いてしまう。
「来い」
強い眼光に囚われ、俺はフラフラと両手を広げたローレンスの腕の中に収まる。
ああ、先程とは打って変わって埋まるような腕の中ではない。細いが力のある腕の中だ。
怖い、俺だけに向けられた魔力の威圧が怖くて身体が震える。
「良いか小僧、覚えておけ。ゼンはオレのものだ。」
「ろ、ローレンスくんっ!悪いけど、ゼンさんのこと、僕に譲ってくれないかな! 僕は彼を愛しているんだ!」
「そうか、なら残念だったな。もう一度言うがゼンはオレのモノだ。」
「ひぃっ……」
怖い……!
服の下に隠している奴隷紋からローレンスの魔力が流れて、身体が震える。
それは、俺に恐怖を与えた。恐ろしくてしかたがない、きっと何を言われても従うことしかできないだろう。
今すぐにでも地に張り付きたいような気持ちもあるが、命令が無いので何もできずにいる。
ただ、俺の心臓はドクドクといって嫌な汗がダラダラと溢れ出した。
息が、上手く吸えない……!怖い、怖い、怖い、怖い、怖い…!
「はぁ…、はっ、…ひゅっ……」
「ああ、駄犬には躾をしないといけないなぁ。見ていくか…? ディー先生」
「な、なに…? ゼンさん…、大丈夫です、か、」
パチンッ……!!
恐ろしさで涙を溜め込み震える俺の耳を指を弾く音が劈いた。
ーーーーー
すみません、途中、なんだか文書ぐちゃぐちゃでしたね…怖い(読み返してびっくり)
修正しました。
p.s
本業が繁忙期のため更新、遅くなります。
よろしくお願いします
玄関の扉を開けると、屈託のない笑顔の青年が腰を屈め覗き込むように元気よく挨拶をする。前回より間近に見える体格とは裏腹な可愛らしい顔に、俺も思わずニッコリと笑顔で返した。部屋に招き入れるが、腕を後ろに組んだままディー先生は落ち着かない様子。どうしたのかと首を傾げると、ディー先生は辺りをぐるりと見渡した。
「ああ、ローレンスは書斎にいるんです。さぁ、ディー先生、こちらに…」
「あっ、いえいえ!そうではなく!」
ローレンスの書斎に連れて行こうとすると、ディー先生はブンブン頭を横に振った。
そうではないなら何なのだろう?とまた疑問が浮かぶ。
「あ、あのっ!これを!受け取って下さい!!」
そう言って、ディー先生の背後から勢いよく飛び出してきたのは大きな花束だった。
身体にすっぽりと隠れて見えなかったそれは、赤や黄色、青、白、色とりどり。
葉や茎の青々とした花束からは早朝の匂いが香る。
まるで、青年そのもののような花束だった。
差し出された勢いに驚いて、思わず受け取る。
すると、ディーは頬を真っ赤にしながら床に膝を付き、俺の手を取った。
「今まで貴方のように優しく美しい人に出会ったことはありませんっ! 僕の話を止めること無くのずっと聞いてくれたのもゼンさんがはじめて…。僕、貴方を好きになってしまいました!!」
ぎゅうっと手を握り俺の瞳を見つめるその瞳は、とても真剣。
俺はと言うと、花を受け取ったまま固まっていた。
まるでおとぎ話の王子様みたい…と俺の頭がお花畑になる。
「将来、たくさん稼げる男になる予定です! ゼンさんのことを誰よりも愛します! 守ります!! だから僕と結婚して下さいっ!」
あまりの勢いに驚きながら、グイグイと近寄る美形から後退りする。
えっと、待って俺のことが好き……?
一度しか会ったことのない一般成人済み男性だぞ?!
いやいや、何の間違いだよ、冗談?それとも新手の遊びか?
大体、俺の顔立ちは平凡だし、話を聞いたのも身辺調査でローレンスを拾ったのは大嘘、というか買って奴隷にしちゃってるし…。
むしろ、悪い方というか…、なんだか居た堪れん。
それに俺、今はローレンスの奴隷だから結婚とかはできない。
正直、真っ直ぐな告白に胸が高鳴ったのは事実。
こんなの、キュンって来ちゃうに決まってるだろ。
でも…、俺は……ローレンスのことが……。
「ご、ごめんね。私には、その……ローレンスがいるから。」
「ローレンスくんのことなら心配ありません!二人で育てましょうっ!」
「そ、育て…?」
育てるって、ローレンスはそれほどガキじゃないんだが!
「うぉっ」
「年下は、恋愛対象外ですか?」
ディー青年は、大きな体で花ごと俺を抱き込め、耳元で囁いた。
まるで、子犬のような表情。心なしか見えない尻尾まで見えてくる。
ドキドキと早く脈打つディーの心音。あたたかな温もりに包まれながら、どうしたものかと考える。
「えっ、あっ、えっえ、?!」
花が潰れて可哀想、だなんて思って眺めていると、綺麗だった花が一気に茶色く変色し干からびてしまった。
カラカラのパサパサになってしまった花は、俺とディーの胸の間でサラサラと朽ちていく。
花束に一瞬で何かが起こった。
「調子に乗るなよ小僧。」
「あ、ローレンス!お前の仕業か!」
「黙れ。さっさとソイツから離れろ、ゼン」
ローレンスに強く指示されると…、それが命令みたいになって指示通り身体が動いてしまう。
「来い」
強い眼光に囚われ、俺はフラフラと両手を広げたローレンスの腕の中に収まる。
ああ、先程とは打って変わって埋まるような腕の中ではない。細いが力のある腕の中だ。
怖い、俺だけに向けられた魔力の威圧が怖くて身体が震える。
「良いか小僧、覚えておけ。ゼンはオレのものだ。」
「ろ、ローレンスくんっ!悪いけど、ゼンさんのこと、僕に譲ってくれないかな! 僕は彼を愛しているんだ!」
「そうか、なら残念だったな。もう一度言うがゼンはオレのモノだ。」
「ひぃっ……」
怖い……!
服の下に隠している奴隷紋からローレンスの魔力が流れて、身体が震える。
それは、俺に恐怖を与えた。恐ろしくてしかたがない、きっと何を言われても従うことしかできないだろう。
今すぐにでも地に張り付きたいような気持ちもあるが、命令が無いので何もできずにいる。
ただ、俺の心臓はドクドクといって嫌な汗がダラダラと溢れ出した。
息が、上手く吸えない……!怖い、怖い、怖い、怖い、怖い…!
「はぁ…、はっ、…ひゅっ……」
「ああ、駄犬には躾をしないといけないなぁ。見ていくか…? ディー先生」
「な、なに…? ゼンさん…、大丈夫です、か、」
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よろしくお願いします
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