【完結】大金を手に入れたので奴隷を買った!

セイヂ・カグラ

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23話:不穏

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 夕暮れのギルドは、人が多い。ダンジョンから引き上げてきた冒険者達がワラワラと湧く。換金業務や書類を無心でまとめながらミールは、ふんわりとした髪を尖った耳に掛けた。この時間が一番うんざりする。

「やぁ、おねぇさん♡ 君、いい匂いするね」
「あら、やァね、えっち。」

 この一番うんざりするときに変な客に絡まれるなんて、本当に最悪。
 こっそり魔法でも発動させようか、なんて思いながら変な客に視線を向けた。

「フフ、魔族の匂いだ。僕の大好きな人と良く似た匂い♡」

 ミールは目を見開き、男の顔を見た。
 驚きで真っ白だった頭の中は、一瞬にし怒りで赤黒く燃え上がる。

「フォルディ!! アンタ、何をしに来た!」

 ミールは、瞬時にフォルディの首を掴み、爪を立てる。
 この男が、わざわざ自分の前に現れたということは何か良くないことを企てているのだろう。

「おー、怖い怖い。」
「答えなさい!!」

 フォルディは、父上のストーカーのようなもの。魔力はそれほど多くはないが、ずる賢い厄介なやつだ。こいつと関わるとろくなことがない。若返りの魔法で10代のように見せているが、こいつは魔族の中でも良い歳。いい加減ジジィだ。

「ミルゥラン、そんな態度無いだろう?」
「黙れっ!」
「反抗期かなぁ? パパ、悲しいなぁ」

 最悪なことに、この男は私の父親だ。
 母は、もう一人の父、ルジャンドル。魔族はオスメス関係なく孕み孕ませることができる。

「そういえば、まだローレンスは知らないんだね」
「ぁあ?」
「自分の母親が『ルジャンドル』だということを」

 ミールは、スカートの裾を握りしめた。
 この男の目的を早く知らなければ…。

「それがなによ!」

「ローレンスを貰っていく。王の御子息が亡くなられたんだよ。だからもう、ローレンスはから、ごめんね?」
「はっ、あ! 待って! 待ちなさい!!」

 フォルディは、ミールの手から簡単に抜け出すと人混みの中に消えていった。
 手を伸ばして追いかけるも、フォルディの姿はもうそこには無い。
 ミールは、職務を放棄した。そうして、長いスカートの裾を破り駆け出した。
 人の目など気にしていられない。日が沈んだ夜空と冷たい空気。

 おおよそ、50年ぶりの魔力開放だった。

 ピュルルルルルルルピュルルルルルル

 すると、けたたましい声を上げながら魔獣が何処からともなく現れた。
 ミールは、その鳥のような魔獣に跨り雑に頭を撫でて言った。

「久しぶりなのに悪いわね、ゼンのところへ行きたいの」

 ギュルルルルル!
 頷くように鳴き声を上げ、魔獣は飛び立った。





   ▼





 ズバァーーン!と突然扉がふっ飛ばされるように開きゼンは目玉をひん剥く。

 えっ?! 何?! 何事?!
 俺の家の扉、無くなっちゃったんだけど!!

 破られた扉の先には、片足を上げたミール。大胆に裂かれたスカートは非常に短い。ふんわりとした長い髪をひとまとめにした彼女の額には角が生え、口元には牙がある。さらには尻尾をもさらけ出し、月の光に照らされながら氷のような瞳で見下されると、なんとも言えぬ感覚がした。
 
「ローレンスが厄介なのに攫われたわ。話はあと、早く!!」

 言葉を返す間もなく、見たこともない魔獣に乗せられる。
 空高く舞い上がり、俺は恐怖で魔獣に必死にしがみついた。
 そのまま飛行を続ける魔獣の上で、俺はやっとミールに話しかけた。

「ローレンスに何があったんだ!」
「言ったとおりよ、攫われたの。ここ最近、10代くらいの若い男に会わなかったかしら? やたらと背の高い胡散臭い顔の男!」

 少しだけ頭を巡らせ、すぐに頭に浮かんだのは、フォルディという温厚そうな苦学生。

「ディー先生のことかな…。その人なら家庭教師として家に来てもらっていたよ。その人がどうかした?」

 そう聞くと、ミールはあっちゃ~と額を抑え込んだ。

「そいつよ、ソイツ!厄介男!アタシのクソ親父!!」

 クソ親父?親父、、、?
 ミールちゃんの父親って、英雄ルジャンドルじゃなかったか?
 俺の思考を読み取ったのか、ミールがため息混じりに話してくれる。

「フォルディもルジャンドルもどちらも私の父よ。産んだのは、ルジャンドルの方。だから人間で例えるならルジャンドルが母でフォルディが父。わかるかしら?」
「へっ、ぇ、じゃあ、ルジャンドルは女性ということ?」
「チッ…、父は正真正銘、男よ。魔族の特性。」

 ちっ、て…。今、ちっ、て舌打ちしましたよね?!
 ちょーと俺、傷ついちゃうなぁ!!

「そ、それでどうしてローレンスが攫われることに…」
「フォルディは、異常なルジャンドル狂いでね。自らの地位を捨て、魔王から花嫁であるルジャンドルを奪い、アタシを産ませた。」
「へっ、それって…」

 とんでもないことでは…??
 俺があんぐりとしていると、暗い夜空がさらに暗くなり、突如として息がしづらくなった。
 それに気が付いたミールが俺に何か魔法を掛けてくれる。すると、スッと呼吸が楽になった。

「魔界の入口に入った所。さぁ、行くわよ。貴方さえいれば、ローレンスの居場所がわかる。」

 そう言って、ミールは俺の首筋を撫でた…というより、奴隷紋に触れた。

 ピカーーッ!
 突然、眼の前が眩しくなった。
 何事かと驚いていると、魔獣が突然急降下をはじめた。

 ギュルルルルル!ギャルルルルルルル!

「きゃっ! 何⁉ シエル! どうしたの!?」
「あわわわわわ、あああああーー!」

 胃!胃が浮くぅうっ!!
 物凄い勢いで、降下している。いや、落ちている!
 俺達、空から落ちちゃってますけど!?

「シエル!! 大丈夫!? お願いっもう少しだけ耐えてっ!」
「ああああああああーーー!!」

 ドザザザザーーーーッ!

 地面につく直前、魔獣が少しだけ羽ばたいてくれたおかげで、俺達は地面に打ち付けられることは無かった。

 ふーふーふー、怖ぇー!
 怖かった…!! 怖かったぞ!!

 早く起き上がって、ミールに手を差し出さねばなんて考えながら膝を付くと、細く長い指が俺の前に差し出された。女の子に立ち上がらせて貰うって、俺、ダサくね、、? 一方、ミールはピンピンしていて全然へばっていない。労るように魔獣を撫で治癒魔法を施せば、魔獣は安心したかのように瞼を閉じた。

 ふと、明かりが灯っていることに気が付き、建物を見る。
 そこには普通の民家があった。家の扉がゆっくりと開く。

「お疲れ様、早かったね。さっそく、お茶でも如何かな?」

 ニコニコとしながら現れたのはフォルディ。
 ミールは、スタスタとフォルディに向かい歩き、立ち止まった。
 そして、、、

 ゴッ!!

「ぅっ……ぐっ、かはっ、」

 フォルディを殴った。大男は、ゴロゴロと人形のように地面に転がってうずくまる。
 鼻血がボタボタ落ちて、一瞬にして顔が腫れたようだ。

「何が目的? 話しなさい。」

 ミールはフォルディの襟ぐりを掴み、ガクガクと揺さぶった。

「そ、その瞳ぇ……ルジャンドル様にそっくり……。ま、まさか、覚醒したのか、ミルゥラン…!」
「お陰様で、どうやらそうみたいね。さぁ、洗いざらい話してもらうわよ。ローレンスを返しなさい!!」


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