転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

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ザガルバ編

97.依頼達成……? 報告をするよ

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 ――ドラゴンを討伐した4日後。

「おおおおおお……あ、あの、店長?」
「ええ、何ですか?」
「ここここんないいもの、本当にもらっちゃっていいのかよ……?」
「もちろん、その為に作ったんですから」
「いや、でもサラの言いたいことは何となくわかるよ……これ、見た目は目立たないようにしてあるけどとんでもない代物だね」
「わ、私のワンドも、凄く手に馴染みます……! これなら、もっとスムーズに、魔法が使えそう……!」
「お気に召したようで何よりですよ」

 今、目の前のサラさんたちの手には、この4日間で俺が作り上げた新しい装備が収まっている。素材はもちろん、あの時討伐したアサルトドラゴンとロックドラゴンだ。
 いや、装備用の素材をちゃんと使えるようにするまでが正直大変だった……討伐したそのままでインベントリに入れていたドラゴンは、当然ながら肉やら内臓やらも一緒になってたわけで。
 あ、ちなみに食べられる分はしっかりおいしくいただきました。食べられないところはエリナさんがファイアショット連発で焼却処理して、目立たないようにどこぞに埋めておいたけど……腐らせるよりはいいだろう。

「それにしても、個々人に合うようにわざわざ素材の組み合わせを考えて作ってくれるなんて……」
「いやまあ、それは作る人間としては当たり前ですから」
「そうですよ。まあ、トーゴさんの作る装備が特級品なのは妻である私が保証します。いい素材を使ったなら、なおのことです」
「……旦那さんの作る装備は凄いけど、何でエリナさんがその大きい胸を張ってるの」

 いやいやいいんだよマルタさん、愛しい妻たるエリナさんなら自慢しても許されるってもんだ。
 ちなみにさっきもマルタさんが言ったけど、今回作った装備に関しては個々人で使用する素材を変えてある。

 大剣を使うサラさんは、鎧に関してある程度広範囲を覆っておいた方がいいと考えロックドラゴンの硬鱗でプレートアーマーを。
 槍と攻撃魔法を使うマルタさんは、アサルトドラゴンの鱗ではなく革で作った服にロックドラゴンの硬鱗で作ったパーツを要所要所に。そしてロックドラゴンの牙を穂先に、アサルトドラゴンの骨を柄にしたショートスピアも作ってあげた。
 そして回復魔法を使うクララさんは、アサルトドラゴンの鱗で胸当てと肩当て、そして籠手を。そしてさっき本人も言っていた通り、アサルトドラゴンの骨を使ってワンドも作っておいた。

 魔法を使うふたりにアサルトドラゴンの素材を使った装備を作ってあげたのは、それの魔力伝導率が高いためだ。エリナさんの受けていたという炎は、それを利用して本能的に魔法を放っているようなものだったらしい。……知性もそれなりに高かったということなので、それも影響してるのかな。
 そしてアサルトドラゴンとの一戦で破壊されたエリナさんの防具、ついでに俺の防具も新調することにした。基本線はマルタさんと同じような感じにしつつ、よりスタイリッシュにかつ範囲を広めに覆うように。
 武器については……今のところ困ってることもないし、まあおいおいってことで。

「それにしても旦那さん、見た目を目立たないよう地味にしたのには何か理由があるのかい? もっと派手なデザインになるのかと思ってたけど」
「……いや、あのですね。あまり派手にして目立っちゃったら俺たちがアサルトドラゴンとロックドラゴンを討伐したことがバレてしまうでしょう。せっかく隠してるのに、そんなところで露見させるのは愚かですよ」
「……ごめん、確かにその通りだね」

 うん、本当に危ない。本来であればこうして防具を作るのもリスクがありそうなもんだけど、意外と雰囲気とかでも目立たないからそこは助かったところかな……
 ちなみにあの時、結局その日のうちには帰れなくて組合の人にはかなり心配かけたんだよな……



『……ロックドラゴンに遭遇したんですか? 本当に!?』
『本当ですよ、魔動車の方もその時に破壊されたんです』
『で、運よくこいつだけは生きててなー。その時の状況がしっかり記録されてるはずだから、調べてくんねえ?』
『記録用の魔道具……分かりました、確認させます。それにしても本当に災難で、よく知らせてくれました。戻るのにこれだけ時間がかかったのも納得というものです』
『途中の村で休めて助かったぜ。魔動車で1時間かかるところなんて歩きじゃ泊まり必須だからな』
『それに、エリナさんの怪我を治すのにクララが無理したから、少し休ませる必要もあったしね』
『怪我、って、サンタラ=ミズモトさん!? どうしたんですか、その防具!』
『あー、あはは。ドラゴンに襲われたときに、ちょっとやっちゃいまして』
『ちょっとやっちゃいましてで済む壊れっぷりじゃありませんよ!? 何にせよ、本当に無事でよかったです……!』
『ああうん、それはアタシたちも思ったぜ……それで、依頼の方なんだけど――』
『あ、ちょっと待ってください。ふん……ふん。分かりました、ありがとうございます。お待たせしました、先程の魔道具の件で内容が確認とれました。今までの証言とほぼ一致するということで、そのように処理させていただきます』
『よかった。それで依頼の方なんだけど――』
『鳥類の依頼につきましては、ドラゴン遭遇で達成扱いにします。標本がないのでその分はお支払いすることは出来ませんが、達成報酬については全額お渡ししますのでご安心ください。
 ドラゴンが発生しているならそんな余裕もないでしょうし、そもそも全くそれらしきものが見つからなかったということでもありますしね……同様の理由で魔動車の損賠請求も致しませんので。それにしても本当にどうやって生きて帰って来たんですか』
『それなー、アタシたちも何やかんやと混乱してるうちに逃げてきたからよく分かんねえんだよな』
『まあ、ロックドラゴンですから運が良ければそう言うこともありますかね。これがアサルトドラゴンなんかだともう絶望する前に死んでると思いますけど』
『ははは……はぁ』



 ……とまあ、結局現地でサラさんの言った通りになってくれたんだよな。まあそりゃそうか、アレで本来の依頼までこなせってのはちょっと酷だよなあ。
 ちなみに見ての通り、話に何の嘘も混じってはいない。説明していないところは多々あるけど、そこは許してほしいものだ。

「しかし、達成報酬だけでなくドラゴンの素材も山分けってのは、確かにマルタの言う通りもらいすぎな気もするけどなー」
「そうだね、何となく後でしっぺ返しが来そうで怖いよ僕は」

 苦笑交じりにそういうマルタさんに、サラさんとクララさんもやはり同じように苦笑交じりでうなずく。そんなに深く考える必要もないと思うんだけど……まあ、一応もうひとつ無理な理由付けでもしておこうか。

「まあ、確かに山分けしない方がいいのかもしれませんけど。俺たちふたりにはさっき言った理由以外にも一応理由があるんですよ」
「他の理由?」
「ええ――ドラゴン討伐に関する口止め料ってことで」

 まあとってつけたような理由ではあるけど、一応念のためかな。本当は売れないほど高額な素材をただ持ってるだけってのがもったいなかったから、っていう理由もあるんだけど……それをこの場で言ったらまず間違いなくフルボッコの憂き目にあうだろうから黙っておくことにした。

「まあ、あの一件についてはそれ以外にもいろいろと口止めの必要があるからな。んじゃあこの装備はアタシたち全員の秘密共有の証ってことで」
「仲間内で共有する秘密、か。ふふ、なるほど、なかなかいい響きじゃないか。僕は好きだよ、そういうの」
「わ、私は、皆さんの、お役に立てて、嬉しかったですから」
「……正直、あんなのはもう二度とごめんだけどね……でもいい経験出来たし、トーゴさんからまたプレゼントもらえたし、確かに悪い事は何もなかったわね」
「装備をプレゼントでひとくくりにするのもどうかと思うけどね……では皆さん、今回の件はそう言うことでお願いしますね?」
「「「「はーい」」」」

 ……やっと皆納得してくれた。やれやれ、本当に人の心を汲み取るっていうのは難しいもんだなあ……



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久しぶりの鍛冶スキル! 
ちなみにライセンスを組合に見せた結果ちゃんと仕事場は貸してくれました。

次回更新は06/24の予定です!
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