公爵令嬢の護衛のうちのひとりなんですが、異母兄である三男様が離してくれません!

白千ロク(玄川ロク)

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10話

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 その多くが美男美女とされるエルフで凡人なのはオレだけかもな~。まあ、元々も女顔なだけの凡人だったからな~、転生しても凡人なのはしかたがないことなんだよなあ。転生できただけでも有り難いことなのよ、オレとしては。そりゃあ、もう少し能力はよくしてほしかったけど。

「ちぃちゃんにプライベートはないから」
「酷いこと言ってますけど!?」
「大丈夫、俺のことだけを考えればいいだけだよ」
「大丈夫な気がしないわ~!」

 そういう考えをしていたのかお前は! いやでも、コイツはいつもべったりだから、確かにプライベートな時間はない。トイレ以外は。よくよく思い出すと、入浴も一緒だったわ。大浴場ではなく、個室に備えられた方だよ。大人ふたりで入るとなると、ちょっと狭いんだぞ。しかも洗った髪の毛を拭いて拭いてとうるさい。あ、なんか遠い目になる。お行儀よくする精霊たちを見習え。

「怖いことを言う暇があるなら、三人目の説明をプリーズ」

 ほらほら早く言うと言いたげに手の平を差し出すポーズをすると、「チェルチ来たです~!」との明るい声とともに、横にある窓がバーンと開く。それはそれは勢いよく。こちらは「ひょっ」と小さな声と同時に躯が跳ねた。ビビらせんなっ!

「来たねー」
「ルーくんが落ち着いてるのが腹立つ」
「チェルチ~、ケットが来たです~!」
「どうやって来たんだ!?」
「飛んできたですよ~」

 窓を破壊せんとする勢いのままオレの胸に飛び込んできたのはケット・シーなんだが、この子は出会った当初から首にリボンが巻かれていた。薄いピンク色で白いレースがついたリボンが。このリボンはどこかで見たことがあるような気がしているんだが、未だに思い出せなかったりする。そしてこの子はオレの領地にいる子だ。つまり、この地から馬車で五日ほどかかる場所からやって来たのだ。田舎だよ、田舎! そこからふよふよ飛んで来たとなると大変だっただろう。精霊だから飲食の心配はしなくてよかっただけで。

 そしてケット・シーだからここにいる護衛は反応しなかったのか。妹ちゃんに覆い被さるように庇っているだけで、剣に手は伸びていない。ちなみに、女性に付く護衛は女性が優先になる。騎士団であろうと冒険者であろうと変わらない。なにか間違いがあってはいけないからな。例外は冒険者に対しての指名での護衛依頼しかない。今回は異母兄とその友人に当たる人物なので、特例なのだろう。顔見知りだし、オレとルーくんがお互いに落ち着いているし。

「ケット、チェルチといたかったですから、クエルトルフにずっと頼んでいたですよ~! そうしたら、今日から一緒にいられるようになったです~! 願いが叶って嬉しいですよ~! でもケット、疲れちゃったですぅ……」
「遠いもんな~」

 どういうルートを通ったのかを聞く必要があるが、ケット・シーは肩口で頬擦りを繰り返してから「ふみゅ~」と小さく鳴いた。疲れが溜まっていたのか、満足したのかは聞いてみないと判断がつかないが、今度はうつらうつらとし始める。うん、遠いところから来たから、疲れたんだろうなあ。後で聞くしかないか。起こすのは可哀想だし。ケット・シーの背中をぽんぽんと撫でながらもルーくんに視線を遣ると、「この子が三人目だよ」と言った。言い切った。訂正はない。

「よく許したな」
「この子だけは特別だから」

 ルーくんもケット・シーの頭を撫でる。ルーくんの話によると、初めて出会った当日の夜から、毎日一緒にいたいとせがまれていたらしい。――夢の中で。それ大丈夫なのか? ちゃんと眠れているのか? 撫でていた手から覗うように視線を上げると、ルーくんはへにょりと笑った。笑っている場合か!

「睡眠時間は取れているから大丈夫だよ」
「ならいいけど」

 撫でられるのが気持ちよかったのかなんなのか、完全に寝落ちしたらしいケット・シーを膝に置いて話を進めようと前を見る。妹ちゃんたちは妹ちゃんたちで佇まいを直し終えていたようだった。早い。さすがお嬢様。

「じゃあ、細かいところを詰めていこうか」

 ルーくんの言葉にうんん? と疑問が湧く。細かいところを決めていなかったのか? 『辞令』というものは細かいところを決めてから発令されるものではないのか? あれ? 違った? 大雑把でもよかった? 元はただの大学生だから、その辺がよく解らない。会社勤めをしていたら解ったかもしれないが、会社によって違うこともあるようだし、大学ニ回生で転生したのだから、考えても無駄かもな。

 話し声を聞くに、護衛は一週間交代らしい。交代までは自由に過ごすことが可能。報酬は公爵家から出る、と。緩すぎる気がするが、問題ないのかな? 妹ちゃんの護衛が口を出さずに頷いているし、問題はないようなんだが、やっぱりちょっと緩いと思ってしまうな。下っ端が口を出すことではないけど。ルーくんのお蔭で騎士団でも緩く過ごしていたわけだし、延長線だと思えばいいのかね。

 学院では従者や護衛を付き従えるが、多くても三名までと決まっている。家格の違いは考慮しないと言われているので、一律である。だから妹ちゃんの護衛も三人ずつの六名なのだ。これは従魔を含まないので、契約している精霊や魔物がいる人はもう少し増えるかもね。魔術具に関しては、護身用なら使用可だ。あまり強い性能の物は使用を控えてほしいらしいが、お貴族様に伝わるかどうかだな。
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