公爵令嬢の護衛のうちのひとりなんですが、異母兄である三男様が離してくれません!

白千ロク(玄川ロク)

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11話

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 ほらさ、買える魔術具もお貴族様の家格によっては違うわけだしさ、金と権力がある家は財力を見せつけるようにするわけじゃないですか。貧乏は悲しいよね。貧乏だって解らせられるからね。騎士兼冒険者としての活動をしているいまはそこまで卑下しないけど。貧乏男爵だと影で笑われているのは知っているしな。ルーくんが隠していてもだよ。悪口を言った人を精霊とともに脅さなくても大丈夫だからね? 公爵家に擦り寄った貧乏男爵なのは本当のことだからさ。みんな落ち着いてね。

 騎士団と公爵令嬢の護衛と両方の仕事が出来るのかという疑問は即座に切り捨てた方がいい。問題はないのだから。これは第四騎士団だからこそ可能なことだった。

 オレたちが所属している第四騎士団は、騎士団であって騎士団ではない。どういうことかというと、南の森を監視するために作られた砦を管轄としているのだ。騎士団は第一から第五まであり、第一は王族を守護する人の集まり、第二は王城での門番や常時護衛、街の見回りをする人の集まり、第三は魔物を討伐する人の集まり、第四は砦に詰める人の集まり。これに魔術士を纏める第五がある。が、これは大きな括りであって、そこから細分化するので全部は覚えられていない。細かく別ければいいというものでもないと思うんだが、適材適所はあるわけだからね。第四騎士団については人が多めに配属されているので、オレとルーくんのふたりが抜けようがどうとでもなるわけだ。他の騎士団よりも人が多い理由は簡単である。いざという時には剣となり盾となるようにだ。オレたちは砦からここまで転移陣で簡単に飛んできたんですよ。歩きだと一週間以上かかるんでないですかね。砦が作られた場所は辺境と呼ばれているからね。

 遥か彼方に広がっている南の森の向こうには魔族領があるようで、同盟国となっているようだった。なんだかんだで交易もしているらしいよ。どこの森も緩衝地帯となっているみたいだね~。商人は砦を通過するだけだから話す機会なんてそんなにない。その時に護衛依頼があるようなんだが、オレたちは参加したことがないんだよな~。

 なぜ南の森を監視する必要があるのかといえば、森の奥にはが封じられているからだ。遥か昔の話であるが、この世界に違う世界の神が突如として現れた。その神はこの世界を手に入れようとしたが、女神様が遣わした一体のドラゴンにより倒された。世界樹の力を使って。だからこの世界には世界樹はない。世界樹があった場所には大きな穴があるだけなのだ――。その戦いの様子を知る精霊たちが話したことを纏めた学者のお蔭で、この話は真実として語られている。世界樹がないにもかかわらず、いまも新たな精霊が生まれるのは、世界樹から放出されていた魔素が残っていたからだ。あと数年もすれば精霊は生まれなくなるとルーくんが言っていた。この堕ちた竜の話は絵本にもなっているから、小さい子でも知っているよ。

 話を戻して、では魔族領からの商人がどうやってこの地に来るのかというと、森の浅いところを通る安全ルートが築かれている他ならない。元々は森を沿うような形で迂回する道が開かれていたんだが、迂回だから時間がかかる。安全ルートならば道の両脇には結界が張られており、魔物に遭遇することもない。たとえ結界を破って攻撃してきたとしても、護衛をする精霊たちにぶっ飛ばされるだけだ。どちらを選ぶかは聞かなくとも解るだろう。いまも迂回ルートはちゃんと存在しているので、使いたい方を使えばいいんだよ。砦に続くこの長い道を作ったのは人の手ではなく精霊たちだからな。……なんかね、魔族領から遊びに来た精霊に対して、オレが「魔族領のおいしいものを食べたいな~」と言ったようなんだよ。八歳ぐらいの時に。言った記憶はないんだが、その日のうちに精霊たちによる南の森の改革が始まり、なんと三日で終わらせた。三日なのは、試験運転をするための商人がなかなか見つからなかったらしいよ。安全ルートを作るのには本当は一日もかかってないんだって。精霊からの構われ方が異常な気がしていたが、理由が解ったのはこの後だった。

 ルーくんと一緒に絵本を読み終えた後に、これ、精霊が堕ちた竜をどうにかすればよくないか? とケット・シーたちに言ったことがあるんだが、助けたい気持ちはずっとあるが、いち精霊ではどうすることも出来ないのだと返された。女神様に力を授けられた者でなければ、堕ちた竜は救えないのだと。それがこの世界の理なのだと。みんな泣きそうな顔で言ったんだよ。――『女神様に力を授けられた者は、最後の最後の希望』なのだと。

 もしかしなくとも、オレとルーくんは『女神様に力を授けられた者』ではないのか。オレの方は怪しいままだが、ルーくんの方は間違いなくそうだろ。だから精霊たちはオレたちに構うのだ。堕ちた竜を救えるひとつの駒として。精霊たちは絶対に神竜を助けたいから。世界樹を元に戻す鍵は神竜が持っているんだろうね。

 オレたちが入団直後であるにもかかわらず、第四騎士団に即配属されたのは、冒険者として経験を積んでいたことが買われたわけではなく、『女神様に力を授けられた者』としての能力目当てだったんだなと、いまになって解る。振り返ってみるとそうとしか思えない。ルーくんはなにも言わないが、解っているんだろうね。オレより頭がいいんだから、解らないわけがないんだよなあ。
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