多々頼くんのよい人

白千ロク(玄川ロク)

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第一話

【 まえがき 】

■激強イケメンに愛されまくりつつも、劣等感を刺激されまくって腹立つ鬱々した日々をおくる自称凡人が、それでもイケメンを甘やかしてしまうお話です
(神経を逆撫でされつつも)身を持って解らせられているにせよ、なんであっても結局最後には甘やかしてしまうから苦労するのだよ。あ゛ー!と苛ついても自業自得な面もある。(愛してると言う顔に弱くて甘やかすから)
なお、この物語はフィクションです。作中に登場する人物・団体・事件・名称等は実在のものとは一切関係ありません。
内容紹介にも書いてありますが、陰陽道(陰陽師)、拝み屋業、あやかし関係は全て想像で綴っております。ある程度はインターネットで漁りますが、実際の業界事情などとは異なっており、一切関係ありません。

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

2023.10.14


………………


 始まりはとても単純だった。アイツのひとことから、オレの人生は狂わされてしまったんだ。いや――アイツと出会ってしまったことこそが間違いだったんだよな。振り返ってみればよく解りますわ。回避出来ない汚点は恐ろしすぎるだろ。やめてくださいよ、本当に。自分の運のなさに泣きたくなってくるからさあ。

 そして当の汚点野郎はといえば、ソファーに寝転がりながら読書中である。現在、タブレットでエロ本を読ませている最中なのであった。成年向け漫画ではなく、実写の。中高年向け用の大衆週刊誌に載っていたヌードグラビアを纏めたやつな。まあ、どちらであっても成年向けではあるんだが。オレは好きなんだけど、奴にはどうもお気に召さない様子らしい。顰められた顔を見れば嫌でも解るというものだよ。タブレットを押し付けるように返してくる動作からも察せられてしまう。嫌なら見るなというのが通用しないのが悲しいよ。見ないと解らないんだけども。

「大きいも小さいも等しく、胸に詰まってるのはただの脂肪だからね。夢と希望ではないから」
「呆れたように言うのはやめろ」
「中には整形で詰めてるのもあるんじゃない?」
「夢を壊すのもやめろぉ!」

 べしべし背中を叩きながら騒ぐオレの顎を伸ばした手でがっちりと掴んだあと、男はにやりと笑う。「口直ししようか」と。

「そういうのはいらないんで!」

 あはっと引くつく笑顔を返したが、こちらも気に入らなかったのか、すうっと目を細められた。これはこれ以上怒らせたら困ることになるな。朝までとか嫌だから。慌てて「口直しな口直し! いますぐしようか!」と繕うが、オレの考えなどお見通しの男は簡単に組み敷いてきやがった。

「口直しって言っただろ!」
「だから口直しでしょ」
「キっ、キスだけっ」
「――で終わると思ってるのなら、目出度いねえ。俺はさあ、読めと言われたから読んだんだよ? 好みでないものをこれでもかと」
「おっぱいはいいものだろ! ――ひぅっ!?」

 強く摘まれるのはオレの胸の先である。簡単に服ごと摘めるのは、アンダーシャツを着ていないからだ。家の中だし。

「いいものなのは否定しないけどね」
「ばっ、お前っ、変態っ」
「変態なのは乳首おっ勃ててる方じゃないの? やーちーちゃん♡」
「うるせぇ! こうなったのはお前がオレの乳首を弄びまくったからであってっ、オレの意思は少しも介入しとらんわ!」
「言い返せる元気があるようだから、朝まで頑張ろうか、やちちゃん」

 とても美しく笑う男に対し、一瞬躯が固まる。性欲が凄まじいから少しでも和らげようとしたんだけども、どうやら裏目にしか出なかったらしい。なんでだ。グラビアは皆好きだろ!?

「いやいやいやいや、やだ、嘘、ちょっと待って、待てって――ぁっ、バカっ」

 一度唇を塞がれて、あわや首筋に近づく顔から逃れようとどうにか暴れるが、体格差と身長差に泣かされるしかない。つまり、抵抗はあっさりと封じられてしまうのだ。美声でもって囁きながら。

「愛してるよ」
「う゛ぅーっ……!」

 ルームシェアを目論む話からして嫌な予感しかしなかったが、断るわけにはいかなかった。分家筋の家の者が本家筋の家の者に物申せるかよ。しかも霊狐――妖狐との違いがいまもっていまいち解らないが――の血が強く出た先祖返りの男に勝てる気なんて一ミリだってないわけだし。

 いまの時代に本家だ分家だと時代錯誤感が凄まじいのだが、強者中の強者が纏めなければ好き勝手に動き回る者たちばかりらしいので、しかたがない部分もあった。オレたち一族は占い師や古物商――古本屋やリサイクルショップ、骨董店、拝み屋なんかを営んでいたりする、いわゆる陰陽道の使い手である。癖が強い者の方が能力値が高いのだけは理解し辛いんだけどさ。

 始まりは星読みだったはずなのだが、独自に強さを求めた結果、「救外きゅうがい」という陰陽道が新たに作られた。とある流派の派生系だと捉えてもいいだろう。『理からための術』である。しかし救うといっても、護身術やら体術やらの武術と組み合わせた脳筋仕様の荒技なので、見ている方はボコっているようにしか見えないのが難点だったりするんだよね。初めて見た時には模擬戦形式の人対人だったのだが、一方的な蹂躙には苦笑いしか出なかった。あれは見る人によってはトラウマレベルだろ。といっても、やはり陰陽道ではあるので、自身の内なる霊力がものをいうらしく、強さがすべての世界でオレのような凡人弱者の生きる術など限られている。役立たずや無能の烙印を押されてしまえば居場所などすぐになくなるのだから、気をつけなければならないのだよ。

 生き残りをかけたその術とは、それこそ解り易さしかないものだった。――『長い物には巻かれろ』しかあり得ない。金魚のフンよろしく巻かれ続けた果てがこれですよ。セフレだよ、セフレ。全然これっぽっちもフレンドではないけどな。あと言っておくが、コイツはオレのことを本当に愛しているわけではないぞ。面白そうだからそう言葉にしているだけだ。意地の悪さは一番だからな。

 蕩けた顔だって演技なんじゃない? 雰囲気作りも大切だからね。コイツにはわざわざオレを選ぶ理由がないものね。解ってますよ、それぐらい。

 それでもオレは――多々頼たたらい弥智やちは離れられない。美しさと儚さと可憐さがものの見事に合わさっている奇跡のような男から。この世のものとは思えない神秘的な姿の人間なんて、コイツ以外には知らないんだから。

 名を安郷あごう知冬ちふゆ。見た目が目立つからか、通う大学でも有名人である。

 一緒にいると劣等感を刺激されまくるだけだし、人の話は聞いてくれないしで嫌なんだが、蕩けた顔はめちゃくちゃレアなんだよぉ。オレのこの複雑な気持ちを解ってくれるよね? 解らなくても解ってくださいお願いします。
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