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第二話
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言われたとおりに本当に一晩中挿入されていたからか、尻が変な感じしかしない。もぉ無理、もぉやだって言ってるのに、やっぱり離してはくれなかった。喘がされすぎて喉の調子も悪すぎるんだがね、文句を言えばその後は三日三晩コースだからなにも言えないんですわ。「文句を言えるようなら三日三晩も頑張れるよね?」と。そうなんですよぉ、もう体験済みなんですぅー、最悪なことにな! いくら講義に参加できるようにと体力を回復してくれていてもな、なぜかほんの少しだけだし、ただただ耐えるしか道がない。これが嫌だから他で発散してほしいのにさあ! なのになかなかうまくいかないのはどうしてなんだろうな!?
オレの心は鬱々としていたが、隣を歩くクソ野郎は変わらずにクソ野郎である。通学現在、なんかいまは締まりがないようなへらへらした笑みを浮かべているが、だというのに爽やか王子様が崩れていないのは知冬だからだろうか。ぎゅーっと手を繋いでいるのがそんなにも嬉しいのか? オレとしては何度言ってもやめてくれないから、もう諦めただけなんだよ。だから鼻唄を歌いだすのはやめろ! と言いたげに睨みつけるが、知冬はふんふんと歌い続けていく。
目立つ主な要因であろうアイスブルー色を極限まで薄めたような薄青色の髪は地毛でね、うなじを隠すような長さまで流れているんだ。見ようによっては銀色に見えなくもないな。それだけだというのに色気が半端ないんだよなぁ。ただその場に突っ立ているだけでも女の子の方から寄ってきてくれるしさ。羨ましさしかないわ。だいたいの女の子にとって、オレの方はただの石扱いだし。この差は泣けてくるよね。瞳だって宝石にも劣らない琥珀色をしているし、端正な顔立ちを彩るような長身痩躯でもあり、文武両道。これで家柄もよいとか、腹が立たないほうがおかしいだろ。ちょっとどころか勝てる要素がどこにもないんだから。いとこだというのに、この違いはなにかね!? オレは日々奥歯を噛みしめてますわ!
……いや、待てよ。よくよく考えてみれば、勝てる要素はあるにはあるのか。思考回路がネジ曲がっているところは一部の者しか知らないし、見た目に反して性欲がクソ強いのもごくごく親しい人しか解ってないからな。被害は主にオレにくるけど。――あ、ダメだこれ。オレが可哀想な話なだけだわ。これ以上は考えるのをやめよう。惨めになりたくない。
そりゃあオレは一度も髪を染めたことがない黒髪黒目の凡人だよ。背も百六十五からは一ミリだって伸びてはくれないし、どんなにトレーニングを積んでも陰陽師の能力値だって変わらずに下の下だし、運動や勉強の成績だって平均に届けばいい方であってだね、いいところなんて少ないよ。だけどな! オレはオレで一応頑張ってるんですよー! 陰陽師の要でもある式神の顕現は全然安定していないんだけども、ちゃんといるんですー! 皆は三体同時に呼び出せるとか可能だけどな! ――ダメだ、考えを変えてみても自分がクソ雑魚としか解らなかったわ!
そうだよ! オレは前髪が長めな陰キャなんだよ! オレだけだとなんの印象にも残らないただのモブだよぉ! 知冬がいるからちょっと物覚えがいいだけなのよねー。解ってますってば!
前髪はね、こっちは鬱陶しいからちゃんと切りたいんだけどさ、なんでかは知らないが、知冬が目を隠せ目を隠せとうるさいのよ。いやまあ、女の子と話す時は顔見知りの女の子以外とは緊張してうまく話せなくなるんで、キョドる姿が解りにくくなるからそれはそれでいいんだけど。家にいる時は縛るかヘアピンで留めてるし。クソ野郎自ら。
たぶん髪を染めれば少しでもイメチェンが出来るんだろうが、もともとの性格からして陽キャにはなれそうもないし、なにより知冬が怒るだろうから却下だ。三日三晩以上も犯されるとなると、死ぬしかない。知冬のことだから、淫紋をフル活用して辱めてくるに違いない。いまでさえ感度を上げられているというのに、フルパワーはアヘ顔にしかならんだろう。嫌だからな絶対に!
あ゛ー! と頭を掻き毟ると、知冬の笑みが聞こえてきた。喉で笑うくくってやつな。悪いが、お前は何様だと返す気はない。どうしたら強くなれるのか策を練らなければならないんでね。こういう時はひとりよりはふたりがいい。というわけで、式神を呼んでみる。練習は常にしないとダメだからな!
式神召喚の方法はといえば、自身の霊力を封じた人形を介して、式神の郷――霊狐が作り上げたらしい、式神が暮らすための亜空間――から呼び寄せるというものだ。どういう原理かはまったく解らないが、生まれ落ちた式神は『式神の郷』へと送られていく。そこで召喚されるのを待っているというわけだ。これはファンタジー世界でいうところの多次元世界なんだろう。ふたつの世界は同じような位置に同時に存在しているのだが、片方は高次元だかなんだかで存在の認識がし辛いとかそういうやつ。位相がなんたらかんたらとかねー。
指で挟んだ人形から淡い青白い炎が齎されて灰となった瞬間、指の先には小さな光の玉が現れた。かと思えば、ひとりでに形作られていく。光がパアッと四散した後に残ったのは、二頭身の女の子だった。いわばマスコットよ。その場でふわふわ浮いているマスコット。十二単のお姫様で、名は小姫。式神の名は最初のプレゼントになるから、頭をひねまくったわ。一人称は妾でもわしでもなくて私なんだよー。マジで可愛いのよ、うちの小姫ちゃんは。
だいたいの式神がマスコットな二頭身タイプなんだが、中にはドデカイものもいる。少なくても三体持ち、多くても十体が限度らしいが、知冬が持つものは二十体を超えているし、大きさも姿も大小様々いろいろあるので、どれだけ規格外かが解るだろう。ちなみに、オレの式神が小姫だけしかいないというのは一族の皆が知っていましてよ! 悲しいね! まあ、虚しさは小姫の可愛さに上書きされているから、大丈夫なんだけどもね!
「主殿ー、おはようございます」
「小姫おはよう。相談があるからこっちな」
頬に抱きついてきた小姫の頭を撫でて手の甲に導いてやると、ちょこんと座る。小さな扇をどこからか出して口元に添えた。扇は高貴な紫色であり、先端には白いふわふわがついている。豪華だな。うん、さすがお姫様だ!
「主殿、相談とは?」
「どうしたら強くなれる?」
「んん? はい?」
「強くなりたいんだよ、オレは」
「強くと申されても、主殿はもう十分にお強いのでは? 知冬殿を尻に敷いていますよね? 郷に存在しているすべての式神がそう認識しておりますよ?」
「いやいや、尻を大変な目に合わされているの間違いだろ? 終わったと思ったら塗り薬をたっぷり使われてぐちょぐちょにされたんだぞ? 指でも泣かされてるんだぞオレは」
「えっ? あっ、そ、それは大変でしたね……。毎回、その、泣かされているのですか?」
「小姫が知っているとおりだからな。オレは強くなって、クソ野郎に一泡吹かせてやりたいんだあ」
最終目標はそれだ。小姫はこうしてオレを気遣ってくれているが、反面、しっかりとクソ野郎に泣かされていることを理解している。思い出したくはないけど、オレが誰のものなのかを解らせるかのように、生まれてすぐの式神たちの前でもがっつりヤられているからな。鬼畜がすぎてヤバいだろ。式神たちもドン引きしてただろうね。
知冬の「どちらも哭かされてるの間違いじゃない?」という指摘は無視して話を続けていたが、「一泡吹かせる……? それは一生無理な話なのでは」と小姫が囁くように漏らした。おーい、尻に敷いているとか言っておいても、やっぱり皆オレが泣かされているだけだときちんと解ってらっしゃいますよね!? だけどな小姫ちゃーん、この世には言霊というのがあるでしょうが! 無理じゃないんだ! いつかは叶うんだよぉ! いつかはな!
「一泡吹かせたい、ねえ。ぎゃふんと言えばいいのかな? ぎゃふんぎゃふんぎゃふん」
「違うわバカっ!」
そんな軽く言う奴がいるかよ! オレの決意を無駄にさせやがってよぉ!
「知冬なんか嫌いだからなぁ!」
ギリギリ奥歯を噛みしめて吐き出すと、「俺は愛してやまないよ」なんて返ってくる。続けて、「ああでも、嫌いはないよね。人の嫌がる言葉を言うなんて、やちちゃんは悪い子だね。たっぷりと躯に教え込まないと俺の愛が伝わらないようだから、今日も頑張ろうか、やちちゃん」と、囁いた。
――凄まじく恐ろしい悪魔の囁きである。
「い、やだぁぁぁぁ!」
こんなん逃げるしかないだろ! 離れられないのと酷使から逃れるのは違うんだよ! オレの体力はもう限界なんだから! ベッドの上ではねちっこいのなんのなんだからね!?
涙を浮かべながら走り去るオレの背中には痛いほどの視線を感じていたが、振り返りはしなかった。いやだって、怖いし。獣欲が籠もりまくった目でオレを見ているに違いないから。
オレの心は鬱々としていたが、隣を歩くクソ野郎は変わらずにクソ野郎である。通学現在、なんかいまは締まりがないようなへらへらした笑みを浮かべているが、だというのに爽やか王子様が崩れていないのは知冬だからだろうか。ぎゅーっと手を繋いでいるのがそんなにも嬉しいのか? オレとしては何度言ってもやめてくれないから、もう諦めただけなんだよ。だから鼻唄を歌いだすのはやめろ! と言いたげに睨みつけるが、知冬はふんふんと歌い続けていく。
目立つ主な要因であろうアイスブルー色を極限まで薄めたような薄青色の髪は地毛でね、うなじを隠すような長さまで流れているんだ。見ようによっては銀色に見えなくもないな。それだけだというのに色気が半端ないんだよなぁ。ただその場に突っ立ているだけでも女の子の方から寄ってきてくれるしさ。羨ましさしかないわ。だいたいの女の子にとって、オレの方はただの石扱いだし。この差は泣けてくるよね。瞳だって宝石にも劣らない琥珀色をしているし、端正な顔立ちを彩るような長身痩躯でもあり、文武両道。これで家柄もよいとか、腹が立たないほうがおかしいだろ。ちょっとどころか勝てる要素がどこにもないんだから。いとこだというのに、この違いはなにかね!? オレは日々奥歯を噛みしめてますわ!
……いや、待てよ。よくよく考えてみれば、勝てる要素はあるにはあるのか。思考回路がネジ曲がっているところは一部の者しか知らないし、見た目に反して性欲がクソ強いのもごくごく親しい人しか解ってないからな。被害は主にオレにくるけど。――あ、ダメだこれ。オレが可哀想な話なだけだわ。これ以上は考えるのをやめよう。惨めになりたくない。
そりゃあオレは一度も髪を染めたことがない黒髪黒目の凡人だよ。背も百六十五からは一ミリだって伸びてはくれないし、どんなにトレーニングを積んでも陰陽師の能力値だって変わらずに下の下だし、運動や勉強の成績だって平均に届けばいい方であってだね、いいところなんて少ないよ。だけどな! オレはオレで一応頑張ってるんですよー! 陰陽師の要でもある式神の顕現は全然安定していないんだけども、ちゃんといるんですー! 皆は三体同時に呼び出せるとか可能だけどな! ――ダメだ、考えを変えてみても自分がクソ雑魚としか解らなかったわ!
そうだよ! オレは前髪が長めな陰キャなんだよ! オレだけだとなんの印象にも残らないただのモブだよぉ! 知冬がいるからちょっと物覚えがいいだけなのよねー。解ってますってば!
前髪はね、こっちは鬱陶しいからちゃんと切りたいんだけどさ、なんでかは知らないが、知冬が目を隠せ目を隠せとうるさいのよ。いやまあ、女の子と話す時は顔見知りの女の子以外とは緊張してうまく話せなくなるんで、キョドる姿が解りにくくなるからそれはそれでいいんだけど。家にいる時は縛るかヘアピンで留めてるし。クソ野郎自ら。
たぶん髪を染めれば少しでもイメチェンが出来るんだろうが、もともとの性格からして陽キャにはなれそうもないし、なにより知冬が怒るだろうから却下だ。三日三晩以上も犯されるとなると、死ぬしかない。知冬のことだから、淫紋をフル活用して辱めてくるに違いない。いまでさえ感度を上げられているというのに、フルパワーはアヘ顔にしかならんだろう。嫌だからな絶対に!
あ゛ー! と頭を掻き毟ると、知冬の笑みが聞こえてきた。喉で笑うくくってやつな。悪いが、お前は何様だと返す気はない。どうしたら強くなれるのか策を練らなければならないんでね。こういう時はひとりよりはふたりがいい。というわけで、式神を呼んでみる。練習は常にしないとダメだからな!
式神召喚の方法はといえば、自身の霊力を封じた人形を介して、式神の郷――霊狐が作り上げたらしい、式神が暮らすための亜空間――から呼び寄せるというものだ。どういう原理かはまったく解らないが、生まれ落ちた式神は『式神の郷』へと送られていく。そこで召喚されるのを待っているというわけだ。これはファンタジー世界でいうところの多次元世界なんだろう。ふたつの世界は同じような位置に同時に存在しているのだが、片方は高次元だかなんだかで存在の認識がし辛いとかそういうやつ。位相がなんたらかんたらとかねー。
指で挟んだ人形から淡い青白い炎が齎されて灰となった瞬間、指の先には小さな光の玉が現れた。かと思えば、ひとりでに形作られていく。光がパアッと四散した後に残ったのは、二頭身の女の子だった。いわばマスコットよ。その場でふわふわ浮いているマスコット。十二単のお姫様で、名は小姫。式神の名は最初のプレゼントになるから、頭をひねまくったわ。一人称は妾でもわしでもなくて私なんだよー。マジで可愛いのよ、うちの小姫ちゃんは。
だいたいの式神がマスコットな二頭身タイプなんだが、中にはドデカイものもいる。少なくても三体持ち、多くても十体が限度らしいが、知冬が持つものは二十体を超えているし、大きさも姿も大小様々いろいろあるので、どれだけ規格外かが解るだろう。ちなみに、オレの式神が小姫だけしかいないというのは一族の皆が知っていましてよ! 悲しいね! まあ、虚しさは小姫の可愛さに上書きされているから、大丈夫なんだけどもね!
「主殿ー、おはようございます」
「小姫おはよう。相談があるからこっちな」
頬に抱きついてきた小姫の頭を撫でて手の甲に導いてやると、ちょこんと座る。小さな扇をどこからか出して口元に添えた。扇は高貴な紫色であり、先端には白いふわふわがついている。豪華だな。うん、さすがお姫様だ!
「主殿、相談とは?」
「どうしたら強くなれる?」
「んん? はい?」
「強くなりたいんだよ、オレは」
「強くと申されても、主殿はもう十分にお強いのでは? 知冬殿を尻に敷いていますよね? 郷に存在しているすべての式神がそう認識しておりますよ?」
「いやいや、尻を大変な目に合わされているの間違いだろ? 終わったと思ったら塗り薬をたっぷり使われてぐちょぐちょにされたんだぞ? 指でも泣かされてるんだぞオレは」
「えっ? あっ、そ、それは大変でしたね……。毎回、その、泣かされているのですか?」
「小姫が知っているとおりだからな。オレは強くなって、クソ野郎に一泡吹かせてやりたいんだあ」
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知冬の「どちらも哭かされてるの間違いじゃない?」という指摘は無視して話を続けていたが、「一泡吹かせる……? それは一生無理な話なのでは」と小姫が囁くように漏らした。おーい、尻に敷いているとか言っておいても、やっぱり皆オレが泣かされているだけだときちんと解ってらっしゃいますよね!? だけどな小姫ちゃーん、この世には言霊というのがあるでしょうが! 無理じゃないんだ! いつかは叶うんだよぉ! いつかはな!
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「違うわバカっ!」
そんな軽く言う奴がいるかよ! オレの決意を無駄にさせやがってよぉ!
「知冬なんか嫌いだからなぁ!」
ギリギリ奥歯を噛みしめて吐き出すと、「俺は愛してやまないよ」なんて返ってくる。続けて、「ああでも、嫌いはないよね。人の嫌がる言葉を言うなんて、やちちゃんは悪い子だね。たっぷりと躯に教え込まないと俺の愛が伝わらないようだから、今日も頑張ろうか、やちちゃん」と、囁いた。
――凄まじく恐ろしい悪魔の囁きである。
「い、やだぁぁぁぁ!」
こんなん逃げるしかないだろ! 離れられないのと酷使から逃れるのは違うんだよ! オレの体力はもう限界なんだから! ベッドの上ではねちっこいのなんのなんだからね!?
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