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本編
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「カークス、報告お疲れ~」
「なんだキルド、すっきりしてるな」
「ああ、ティアがお風呂用意してくれたからちょっと前に入ったとこなんだよ」
「それはよかったな。フォルトも入ったのか?」
「私は熱い方がいいからな。悪いがカークスが帰った後でと話をしてある」
「そうなんだ。じゃあ、私は後の方がいいのかな?」
「そういえばハーピーはお風呂とかって入ったりするの?」
「う~ん、水浴びぐらいかな。それでも翼が濡れるのを嫌がって、みんなそこまで好きじゃないかな?」
「なら、今回も簡単に汚れを取るだけなら、ティアに言って先に洗ってきたら?」
「ティアは奥?」
「そうだよ、寝室の方で休んでるはずさ」
「ティア、お風呂入りに来たよ~」
ドアの向こうからカリンの声が聞こえたので、私は書きかけの作業の手を止めてリビングの方へと向かう。
「あら、お話はもういいのね。じゃあ行きましょう。後、エミリーが寝てるからちょっと静かにね?」
しーっと指を立ててカリンに合図をする。コクコクと首を上下する姿が愛らしい。
「じゃあ、カリンとお風呂に行ってくるから、フォルトとカークスはもう少し待っててね」
「ああ、悪いな」
カリンを連れて小屋の裏に回る。
「カリンは翼までお湯に使って大丈夫かしら?」
「あんまり入ったことないけど、ティアたちも入っているし、1回入って見るね」
「それじゃあ、ちょっとぬるめのお湯から試してみましょう。熱いと思ったらそこで止めるから言ってね」
半分くらいお湯を桶に入れてから少しづつ温めていく。
「う~ん、ちょっと熱くなってきたかも」
「じゃあこの辺で止めましょうか、先に汚れを取るから服を脱いでね」
「は~い」
すぐにカリンは服を脱いで、こっちに来る。私はちょっとお湯に浸けた布で頭や体を拭く。簡単に拭き終えたところで翼に移る。
「カリン、翼を今から洗うけど何かあったらいってね」
「大丈夫、大丈夫」
私は翼をしっかり洗っていく、羽根はきれいに見えるけれどところどころ傷んでそうなところもある。
「ふふっ」
「どうしたのカリン?」
「ちょっとこそばいかな」
「我慢してね。もう少しで終わるから」
時折、くすぐったくて笑うカリンをよそに翼を洗い終えた。その後で爪も洗っていざ湯舟へ。
「翼がそのままだとちょっと入りきらないわね。ごめんなさいカリン、ちょっと翼を体の方に閉じてもらっていい?」
「こう?」
「そうそう、じゃあ風魔法でちょっと持ち上げるからね」
そう言って私は風魔法でカリンの体を浮かして、湯船に入れる。
「どう?熱かったりしない?」
「熱くはないよ。体が温かくって不思議な感じ」
「そう、よかったわ。…その翼の傷跡。私が深く考えずに風の魔法を使うように言ったから」
「ああ、今日飛竜に魔法弾かれちゃったとこね。羽根がちょっと抜けてるけど、また生えてくるし。エミリーに治してもらったから大丈夫だよ」
「良かった。ずっと気になってたの。あなた達にとって翼はとても大事なものだもの」
「そうだね。でも、わたしはうれしかったよ。そんなに役には立てなかったけど、飛竜と戦う手伝いが出来て」
「そんなことないわよ。あんな強くて大きい飛竜に立ち向かって、隙を作ってくれたんだから」
「ありがとうティア。でも、できればわたしは飛竜と戦えるようになりたいんだ」
「そう…。危険でもやめないんでしょうねカリンは」
「村を、みんなを守りたいから。両親みたいにね」
「カリンの両親は村を守っていたの?」
「うん、詩人さんに集団での戦い方を教わったって言ってた。見回りとかは2人が中心で次の長老候補だったんだから!…だけど飛竜たちが森の近くで襲ってきて、一緒にいた村のみんなを逃がして死んじゃった」
「ごめんなさい、カリン。つらいこと思い出させちゃったわね」
「ううん。確かに悲しかったけど、村の人を助けたんだってそう思ったらわたしも頑張らなきゃって。2人もきっとそれを望んでるだろうって、自慢の両親だったから。だから、これからも魔法教えてね」
「もちろんよ。ちゃんとあなたが村を守れるように私も教えるわ。だけど、命を捨てちゃだめよ。ちゃんと村の人に無事な姿を見せるのよ。じゃないと、村の人たちも悲しむわ。自分たちだけが助かったってね」
「うん、もちろんだよ。わたしもまだまだやりたいことあるからね。例えば、ティアの住んでるところに行くとかね」
「じゃあ、とりあえずは今の状況を何とかしないとね」
「そうだね~」
2人で話していると、ちょっとカリンの顔がふやけてきた。
「カリン、ちょっとのぼせてない?」
「のぼせる~。のぼせるってなに~」
「お湯には普段入らないって言ってたんだっけ。ごめんなさい、すぐ出してあげる」
すぐに風魔法でカリンを湯舟から上げると、用意していた拭く用の布で拭いてあげる。最初はぼーっとしていたが、すこしずつ意識もはっきりしてきたようだ。
「よかったわ。言い忘れていてごめんなさい。お湯に長くつかるとのぼせる…頭がぼーっとしちゃうからほどほどにね」
「次は先に行ってねティア~」
「そうするわ。さあ、翼をもう少し広げてくれる?」
「あ~い」
よほどお風呂がよかったのか、目を閉じて気持ちよさそうだ。しかし、翼が思ったより水を含んでしまっているので一旦布を絞って再度拭こうとする。
「結構翼って水含んじゃうのね。ちょっと待ってねカリン」
「あっ、それなんだけど大丈夫だよ~」
そういうとカリンは目もあけずに翼を勢いよくはためかせた。私の目の前で。
「カ、カリン~」
「なあに、ティア…」
私はカリンの羽ばたきにより大量の水分を吹きかけられていた。まるで台風の時の大雨を正面から受けたみたいだ。
「次からはもう少し前を見てやりましょうか?」
ひくついているであろう、私のこめかみを見てカリンがひっと後ずさる。
「ごめんなさい…」
「まあ、長くお風呂に入れっちゃったのは私だし、次からは気を付けてね」
「はい!」
元気よくカリンが返事をする。そんなに改めなくても大丈夫だから。その後、拭き終えた私はカリンに服を着せてあげる。
「これでお風呂は終わりよ。カリンどうだった?」
「すっごく気持ち良かったよ。水浴びより好き」
「よかったわ。この辺に温泉でもあればカリンもいつでも入れるのにね」
「温泉?」
「いま、お湯は魔法で出したでしょう。火を使っても作れるけど、温泉っていうのは暖かいお湯が沸き出ているところよ」
「じゃあ、何もせずに入れるの?」
「ものによるけどね。熱すぎるところもあれば、ちょっとぬるいところもあったりするから」
「それでもあったらうれしいよ。わたしたちって基本的に火を起こすことが苦手だから」
「なら、この一件が終わったら探してみてもいいかもね。あんまり離れたところだったら大変だけど」
「そうだね。ありがとう貴重な情報を」
「いえいえ。それじゃあ体が冷えないうちに戻った方がいいわよ」
「は~い。じゃあまた食事の時にね」
「そうね。またね」
カリンが自分の家へと戻っていく。私は待っているであろうフォルトたちにお風呂が空いたことを告げに小屋へ戻った。
「フォルトいる?」
「ああ、お帰りティア。カリンはもういいのか?」
「ええ、意外にもあの子お風呂が気に入ったみたいだったわ」
「そうなのか、てっきり翼が濡れるから嫌がると思ったけど」
「私もそう思ってたけど、案外わからないものね。それはそうとお湯を用意するから来てもらえる?」
「ああ、分かった。すまないな」
もう一度、小屋裏へと向かう。湯船も特に汚れていないようだし、このまま継ぎ足してっと。
「とりあえず熱めってことでこのぐらいにしてみたけどどうかしら?」
「ふむ…。もう少し熱くしてもらえるか?」
「分かったけど、こんな熱いの大丈夫なの?今でも結構熱いわよ」
「ああ、本当はこのぐらいが好きなんだ。宿の風呂はみんなに合わせてあるから温くてな」
「確かにこの温度じゃ、他の人は入れないものね。っと、それじゃあ上がったらカークスに伝えてね。それとカークスには最後、お湯を捨てるように言っておいて」
「わかった。伝えておく。疲れてるのに済まなかったな」
「お互い様よ。みんなが万全じゃないと、あいつには勝てないしね」
「それはそうだな。じゃあ遠慮なく入らせてもらう」
「ごゆっくり」
その後、小屋に戻った私は書きかけの冊子を完成させるべく執筆作業に戻ったのだった。
「ティア、ティア起きてるか?」
「起きてるわ」
ドアの向こうからフォルトの声がする。なんだろうと思ってドアを開けた。
「何か書いていたのか?もう食事の時間だぞ」
「もうそんな時間なのね。じゃあエミリーを起こすからちょっとだけ待ってて」
「分かった」
ドアを閉めて、すぐにエミリーを起こす。
「エミリー起きて、食事の時間よ」
「う、ん…ごはん」
「そうよ。今からご飯だから準備して」
「ふわぁ。はあ~い」
と言いながら言葉とは裏腹に手早く準備をする。その姿に苦笑しながらも、自分の準備もする。3分ほどで準備もでき、リビングへ向かう。
「ごめんなさい、準備できたわ」
「完了~」
「いや、みんな疲れていただろうから気にするな」
「そうそう、さっき3人で話してたんだけど、明日は休養日にしようって。流石にみんな疲れてるからね」
「いいの?」
「ああ、それに俺も少し疲れがたまってる自覚もある。とはいっても何かあれば集まれるようにだけはしてくれ」
「分かったわ、多分だけど私は明日もカリンと魔法の練習をするだろうからそこにいるわ」
「ええっ明日もするの?少しは休みなよ~」
「時間があったらそうしたいけど…。それに、するといっても午前か午後のどっちかよ。ちゃんと休むから」
「それならいいけど」
「それより、ひとまず食事に行こう。みんなを待たせちゃうよ」
「そうね、みんな行きましょうか」
私たちは食事の為に広場へと向かう。広場につくと子供たちがはしゃいでいる。何かいいことがあったのだろうか?そばにいたカリンに聞いてみる。
「ねえ、カリン。子供たちやけに嬉しそうじゃない。何かあったの?」
「何言ってるのティア。今日はミゾジカ捕まえたじゃない。みんな待ちきれないんだよ」
「ああ、頑張って持ち帰ってたあれね。そういえばおいしいって言ってたものね」
「この辺の奴は植物しか食べないから。柔らかいらしいよ」
「それで子供にも人気なのね」
「何だったらティアも食べる?」
「流石に生肉はね。明日も魔法の練習するのに寝込んじゃうかもしれないわ」
「残念。また、食べる機会があったらあげるよ」
「楽しみに待っておくわ。そうそう、明日の練習だけど午前と午後どっちにする?」
「じゃあ午前かな。先にやっておいて休みたいから」
「じゃあ今日より少し遅めに待ち合わせしましょう」
「分かったよ。じゃあ時間になったら私が小屋の方に行くね」
「おねがい。それにしても、サーリさんの料理はおいしいわね。同じ料理でもなんだか昨日よりもおいしいわ」
「みんなの反応見て味つけちょっと変えてるんじゃ無いかな?」
「そうなの?ありがたいわね」
何種類かあるうちの1つは定番メニューらしいのだが、日々おいしく感じられる。食べ慣れたのかなと思っていたのだけど、私達に合わせてくれたようだ。その横では子供たちが一所懸命にミゾジカを食べている。みんな大好きなんだなあとほほえましく感じた。そして食事も終わり、いつも通り小屋へと戻ってくる。
「今日も料理美味しかったね~」
「そうだよね。ちょっとずつ人間向けって言うのかな、味変わってるよね?」
「あら、キルド。気づいてたの流石ね」
「ティアもわかったの、ちぇっ」
「残念だけど私はカリンに教えてもらったの。食べ慣れてきたのかなって思ってたわ」
「そうだったんだ。作ってるのサーリさんたちでしょ。食事中とかあんまり話してないのに、よく分かるよね」
「気を使わないように私たちを見て、変えてくれてるんでしょうね」
「言ってくれれば答えるのにな。俺たちに気を配ってくれてるんだろう」
「本当にここに来れてよかったわ」
「だね~」
「さて、今日はみんな疲れてるだろうからもう休もうか」
「そうだよね、みんなお休み~」
キルドがそそくさと奥のところで休む。私たちも今日は疲れているので2人で寝室へ向かう。
「みんなおやすみなさい」
「おやすみ~」
「おやすみ」
「ああ、また明日」
「ぉやすみ~」
キルドの返事も遠くから聞こえてきたのを確認して、私たちは寝室に入った。
「じゃあエミリー、今日はもう寝ましょう。途中寝てたけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。ティアこそ今日は書かないの?」
「あなたが寝てる間に結構進んだのよ。だから今日はこれ以上はお休み」
「そうなんだ。じゃあ、一緒に寝よ」
エミリーと一緒にベッドにもぐりこむ。
「今日はお疲れ様。お休みティア。」
「おやすみなさい、エミリー」
私は目をつむる。自分で思っている以上に疲れていたようで、すぐに眠りに落ちた。
すやすやと寝息を立てる親友の寝顔を見る。いつもはベッドに入っても少し起きているのに、今日はそれだけ疲れているのだろう。すぐに眠ってしまった。
「全く、無理しちゃって」
そう言いながらわたしはティアの髪をなでる。
「うぅん」
ちいさく声を出すティア。とても気持ちよさそうな顔をしている。
「いつもこれぐらい素直だったらいいのにね。今日はとっても心配したんだから」
飛竜に向かっていったり、飛び込んだり気が気ではなかった。みんなも心配だけど、ティアは特に向こう見ずだから心配だ。
「お風呂に入ってるときにこっそりここから見てたけど、傷跡が無くてよかったよ」
ちょうどこの部屋がお風呂のすぐ横なのでちょっと覗いていたのだ。ティアはあんまり気にしてないみたいだけど、もうちょっと気を付けて欲しいなぁ。
「ふわぁ。結構寝たはずだけど、まだ寝足りないみたい。おやすみ…」
ティアの髪をもう一度撫でてから、わたしも眠りについた。
「なんだキルド、すっきりしてるな」
「ああ、ティアがお風呂用意してくれたからちょっと前に入ったとこなんだよ」
「それはよかったな。フォルトも入ったのか?」
「私は熱い方がいいからな。悪いがカークスが帰った後でと話をしてある」
「そうなんだ。じゃあ、私は後の方がいいのかな?」
「そういえばハーピーはお風呂とかって入ったりするの?」
「う~ん、水浴びぐらいかな。それでも翼が濡れるのを嫌がって、みんなそこまで好きじゃないかな?」
「なら、今回も簡単に汚れを取るだけなら、ティアに言って先に洗ってきたら?」
「ティアは奥?」
「そうだよ、寝室の方で休んでるはずさ」
「ティア、お風呂入りに来たよ~」
ドアの向こうからカリンの声が聞こえたので、私は書きかけの作業の手を止めてリビングの方へと向かう。
「あら、お話はもういいのね。じゃあ行きましょう。後、エミリーが寝てるからちょっと静かにね?」
しーっと指を立ててカリンに合図をする。コクコクと首を上下する姿が愛らしい。
「じゃあ、カリンとお風呂に行ってくるから、フォルトとカークスはもう少し待っててね」
「ああ、悪いな」
カリンを連れて小屋の裏に回る。
「カリンは翼までお湯に使って大丈夫かしら?」
「あんまり入ったことないけど、ティアたちも入っているし、1回入って見るね」
「それじゃあ、ちょっとぬるめのお湯から試してみましょう。熱いと思ったらそこで止めるから言ってね」
半分くらいお湯を桶に入れてから少しづつ温めていく。
「う~ん、ちょっと熱くなってきたかも」
「じゃあこの辺で止めましょうか、先に汚れを取るから服を脱いでね」
「は~い」
すぐにカリンは服を脱いで、こっちに来る。私はちょっとお湯に浸けた布で頭や体を拭く。簡単に拭き終えたところで翼に移る。
「カリン、翼を今から洗うけど何かあったらいってね」
「大丈夫、大丈夫」
私は翼をしっかり洗っていく、羽根はきれいに見えるけれどところどころ傷んでそうなところもある。
「ふふっ」
「どうしたのカリン?」
「ちょっとこそばいかな」
「我慢してね。もう少しで終わるから」
時折、くすぐったくて笑うカリンをよそに翼を洗い終えた。その後で爪も洗っていざ湯舟へ。
「翼がそのままだとちょっと入りきらないわね。ごめんなさいカリン、ちょっと翼を体の方に閉じてもらっていい?」
「こう?」
「そうそう、じゃあ風魔法でちょっと持ち上げるからね」
そう言って私は風魔法でカリンの体を浮かして、湯船に入れる。
「どう?熱かったりしない?」
「熱くはないよ。体が温かくって不思議な感じ」
「そう、よかったわ。…その翼の傷跡。私が深く考えずに風の魔法を使うように言ったから」
「ああ、今日飛竜に魔法弾かれちゃったとこね。羽根がちょっと抜けてるけど、また生えてくるし。エミリーに治してもらったから大丈夫だよ」
「良かった。ずっと気になってたの。あなた達にとって翼はとても大事なものだもの」
「そうだね。でも、わたしはうれしかったよ。そんなに役には立てなかったけど、飛竜と戦う手伝いが出来て」
「そんなことないわよ。あんな強くて大きい飛竜に立ち向かって、隙を作ってくれたんだから」
「ありがとうティア。でも、できればわたしは飛竜と戦えるようになりたいんだ」
「そう…。危険でもやめないんでしょうねカリンは」
「村を、みんなを守りたいから。両親みたいにね」
「カリンの両親は村を守っていたの?」
「うん、詩人さんに集団での戦い方を教わったって言ってた。見回りとかは2人が中心で次の長老候補だったんだから!…だけど飛竜たちが森の近くで襲ってきて、一緒にいた村のみんなを逃がして死んじゃった」
「ごめんなさい、カリン。つらいこと思い出させちゃったわね」
「ううん。確かに悲しかったけど、村の人を助けたんだってそう思ったらわたしも頑張らなきゃって。2人もきっとそれを望んでるだろうって、自慢の両親だったから。だから、これからも魔法教えてね」
「もちろんよ。ちゃんとあなたが村を守れるように私も教えるわ。だけど、命を捨てちゃだめよ。ちゃんと村の人に無事な姿を見せるのよ。じゃないと、村の人たちも悲しむわ。自分たちだけが助かったってね」
「うん、もちろんだよ。わたしもまだまだやりたいことあるからね。例えば、ティアの住んでるところに行くとかね」
「じゃあ、とりあえずは今の状況を何とかしないとね」
「そうだね~」
2人で話していると、ちょっとカリンの顔がふやけてきた。
「カリン、ちょっとのぼせてない?」
「のぼせる~。のぼせるってなに~」
「お湯には普段入らないって言ってたんだっけ。ごめんなさい、すぐ出してあげる」
すぐに風魔法でカリンを湯舟から上げると、用意していた拭く用の布で拭いてあげる。最初はぼーっとしていたが、すこしずつ意識もはっきりしてきたようだ。
「よかったわ。言い忘れていてごめんなさい。お湯に長くつかるとのぼせる…頭がぼーっとしちゃうからほどほどにね」
「次は先に行ってねティア~」
「そうするわ。さあ、翼をもう少し広げてくれる?」
「あ~い」
よほどお風呂がよかったのか、目を閉じて気持ちよさそうだ。しかし、翼が思ったより水を含んでしまっているので一旦布を絞って再度拭こうとする。
「結構翼って水含んじゃうのね。ちょっと待ってねカリン」
「あっ、それなんだけど大丈夫だよ~」
そういうとカリンは目もあけずに翼を勢いよくはためかせた。私の目の前で。
「カ、カリン~」
「なあに、ティア…」
私はカリンの羽ばたきにより大量の水分を吹きかけられていた。まるで台風の時の大雨を正面から受けたみたいだ。
「次からはもう少し前を見てやりましょうか?」
ひくついているであろう、私のこめかみを見てカリンがひっと後ずさる。
「ごめんなさい…」
「まあ、長くお風呂に入れっちゃったのは私だし、次からは気を付けてね」
「はい!」
元気よくカリンが返事をする。そんなに改めなくても大丈夫だから。その後、拭き終えた私はカリンに服を着せてあげる。
「これでお風呂は終わりよ。カリンどうだった?」
「すっごく気持ち良かったよ。水浴びより好き」
「よかったわ。この辺に温泉でもあればカリンもいつでも入れるのにね」
「温泉?」
「いま、お湯は魔法で出したでしょう。火を使っても作れるけど、温泉っていうのは暖かいお湯が沸き出ているところよ」
「じゃあ、何もせずに入れるの?」
「ものによるけどね。熱すぎるところもあれば、ちょっとぬるいところもあったりするから」
「それでもあったらうれしいよ。わたしたちって基本的に火を起こすことが苦手だから」
「なら、この一件が終わったら探してみてもいいかもね。あんまり離れたところだったら大変だけど」
「そうだね。ありがとう貴重な情報を」
「いえいえ。それじゃあ体が冷えないうちに戻った方がいいわよ」
「は~い。じゃあまた食事の時にね」
「そうね。またね」
カリンが自分の家へと戻っていく。私は待っているであろうフォルトたちにお風呂が空いたことを告げに小屋へ戻った。
「フォルトいる?」
「ああ、お帰りティア。カリンはもういいのか?」
「ええ、意外にもあの子お風呂が気に入ったみたいだったわ」
「そうなのか、てっきり翼が濡れるから嫌がると思ったけど」
「私もそう思ってたけど、案外わからないものね。それはそうとお湯を用意するから来てもらえる?」
「ああ、分かった。すまないな」
もう一度、小屋裏へと向かう。湯船も特に汚れていないようだし、このまま継ぎ足してっと。
「とりあえず熱めってことでこのぐらいにしてみたけどどうかしら?」
「ふむ…。もう少し熱くしてもらえるか?」
「分かったけど、こんな熱いの大丈夫なの?今でも結構熱いわよ」
「ああ、本当はこのぐらいが好きなんだ。宿の風呂はみんなに合わせてあるから温くてな」
「確かにこの温度じゃ、他の人は入れないものね。っと、それじゃあ上がったらカークスに伝えてね。それとカークスには最後、お湯を捨てるように言っておいて」
「わかった。伝えておく。疲れてるのに済まなかったな」
「お互い様よ。みんなが万全じゃないと、あいつには勝てないしね」
「それはそうだな。じゃあ遠慮なく入らせてもらう」
「ごゆっくり」
その後、小屋に戻った私は書きかけの冊子を完成させるべく執筆作業に戻ったのだった。
「ティア、ティア起きてるか?」
「起きてるわ」
ドアの向こうからフォルトの声がする。なんだろうと思ってドアを開けた。
「何か書いていたのか?もう食事の時間だぞ」
「もうそんな時間なのね。じゃあエミリーを起こすからちょっとだけ待ってて」
「分かった」
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「エミリー起きて、食事の時間よ」
「う、ん…ごはん」
「そうよ。今からご飯だから準備して」
「ふわぁ。はあ~い」
と言いながら言葉とは裏腹に手早く準備をする。その姿に苦笑しながらも、自分の準備もする。3分ほどで準備もでき、リビングへ向かう。
「ごめんなさい、準備できたわ」
「完了~」
「いや、みんな疲れていただろうから気にするな」
「そうそう、さっき3人で話してたんだけど、明日は休養日にしようって。流石にみんな疲れてるからね」
「いいの?」
「ああ、それに俺も少し疲れがたまってる自覚もある。とはいっても何かあれば集まれるようにだけはしてくれ」
「分かったわ、多分だけど私は明日もカリンと魔法の練習をするだろうからそこにいるわ」
「ええっ明日もするの?少しは休みなよ~」
「時間があったらそうしたいけど…。それに、するといっても午前か午後のどっちかよ。ちゃんと休むから」
「それならいいけど」
「それより、ひとまず食事に行こう。みんなを待たせちゃうよ」
「そうね、みんな行きましょうか」
私たちは食事の為に広場へと向かう。広場につくと子供たちがはしゃいでいる。何かいいことがあったのだろうか?そばにいたカリンに聞いてみる。
「ねえ、カリン。子供たちやけに嬉しそうじゃない。何かあったの?」
「何言ってるのティア。今日はミゾジカ捕まえたじゃない。みんな待ちきれないんだよ」
「ああ、頑張って持ち帰ってたあれね。そういえばおいしいって言ってたものね」
「この辺の奴は植物しか食べないから。柔らかいらしいよ」
「それで子供にも人気なのね」
「何だったらティアも食べる?」
「流石に生肉はね。明日も魔法の練習するのに寝込んじゃうかもしれないわ」
「残念。また、食べる機会があったらあげるよ」
「楽しみに待っておくわ。そうそう、明日の練習だけど午前と午後どっちにする?」
「じゃあ午前かな。先にやっておいて休みたいから」
「じゃあ今日より少し遅めに待ち合わせしましょう」
「分かったよ。じゃあ時間になったら私が小屋の方に行くね」
「おねがい。それにしても、サーリさんの料理はおいしいわね。同じ料理でもなんだか昨日よりもおいしいわ」
「みんなの反応見て味つけちょっと変えてるんじゃ無いかな?」
「そうなの?ありがたいわね」
何種類かあるうちの1つは定番メニューらしいのだが、日々おいしく感じられる。食べ慣れたのかなと思っていたのだけど、私達に合わせてくれたようだ。その横では子供たちが一所懸命にミゾジカを食べている。みんな大好きなんだなあとほほえましく感じた。そして食事も終わり、いつも通り小屋へと戻ってくる。
「今日も料理美味しかったね~」
「そうだよね。ちょっとずつ人間向けって言うのかな、味変わってるよね?」
「あら、キルド。気づいてたの流石ね」
「ティアもわかったの、ちぇっ」
「残念だけど私はカリンに教えてもらったの。食べ慣れてきたのかなって思ってたわ」
「そうだったんだ。作ってるのサーリさんたちでしょ。食事中とかあんまり話してないのに、よく分かるよね」
「気を使わないように私たちを見て、変えてくれてるんでしょうね」
「言ってくれれば答えるのにな。俺たちに気を配ってくれてるんだろう」
「本当にここに来れてよかったわ」
「だね~」
「さて、今日はみんな疲れてるだろうからもう休もうか」
「そうだよね、みんなお休み~」
キルドがそそくさと奥のところで休む。私たちも今日は疲れているので2人で寝室へ向かう。
「みんなおやすみなさい」
「おやすみ~」
「おやすみ」
「ああ、また明日」
「ぉやすみ~」
キルドの返事も遠くから聞こえてきたのを確認して、私たちは寝室に入った。
「じゃあエミリー、今日はもう寝ましょう。途中寝てたけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。ティアこそ今日は書かないの?」
「あなたが寝てる間に結構進んだのよ。だから今日はこれ以上はお休み」
「そうなんだ。じゃあ、一緒に寝よ」
エミリーと一緒にベッドにもぐりこむ。
「今日はお疲れ様。お休みティア。」
「おやすみなさい、エミリー」
私は目をつむる。自分で思っている以上に疲れていたようで、すぐに眠りに落ちた。
すやすやと寝息を立てる親友の寝顔を見る。いつもはベッドに入っても少し起きているのに、今日はそれだけ疲れているのだろう。すぐに眠ってしまった。
「全く、無理しちゃって」
そう言いながらわたしはティアの髪をなでる。
「うぅん」
ちいさく声を出すティア。とても気持ちよさそうな顔をしている。
「いつもこれぐらい素直だったらいいのにね。今日はとっても心配したんだから」
飛竜に向かっていったり、飛び込んだり気が気ではなかった。みんなも心配だけど、ティアは特に向こう見ずだから心配だ。
「お風呂に入ってるときにこっそりここから見てたけど、傷跡が無くてよかったよ」
ちょうどこの部屋がお風呂のすぐ横なのでちょっと覗いていたのだ。ティアはあんまり気にしてないみたいだけど、もうちょっと気を付けて欲しいなぁ。
「ふわぁ。結構寝たはずだけど、まだ寝足りないみたい。おやすみ…」
ティアの髪をもう一度撫でてから、わたしも眠りについた。
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会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
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バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
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前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
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