上 下
2 / 11

0日目

しおりを挟む
「ううっ、ここはどこだ?俺は一体…」

キョロキョロとあたりを見廻す。何だこの豪華な部屋は?俺の部屋は貧乏6畳間だったはずだ?思い出せ…俺はぎりぎりの生活をしていて、確か何とかメニューを増やしたくてその辺に生えてた緑成分を足して…。

「食べた後の記憶がない…まさかあの草、毒だったのか!」

だが、ここはどこだ?でっかいベッドに天蓋?もあるし、窓も調度品も恐ろしいほど豪華だ。まるで物語の貴族の邸のような…。

「そうだ。俺の名前は…」

名前を思い出そうとして必死に頭の中を探す。エディン…違う、サイラル王国…何だこの国名は?アーダン…そうだ俺の名前はアーダンだ。本当にそうか?そんな名前だったっけ。俺は日本人だぞ!ん?日本ってなんだ。

「うぐっ!頭が…」

余りの痛みに俺は体を動かしてベッドの淵などに手足が当たる。その音を聞いていたのか誰かが入ってきた。

「で、殿下!目覚められましたか!?誰か!殿下が目覚められました!」

だだっと入ってきた人物はすぐに出て行ってしまった。

「うぅ、痛い」

痛がっている間にも俺の記憶がどんどん整理されていく。俺の名前はアーダン。この国の第一王子だ。とは言っても側妃の生まれで正妃は他にいる。だが、この国では男児の第1子が継ぐことになっているので俺が次期国王だ。問題は…。

「こいつがただの自信過剰な男だってことだな」

残念ながらアーダン自身は自分を文武両道の完璧な人間だと思っていたようだが、力は貧弱で頭も悪い。現に記憶が整理された今、国の歴史や経済状況など、王族なら知っていそうなことはほぼ思い出せない。さっき、エディンに連れていかれそうになったのもただ単に力がないせいだ。だけど、顔は悪くないというかむしろイケメンだ。この顔にダンスもうまいのだから女子は寄ってくるだろう。

「実際、学園ではモテモテだったみたいだし、こりゃカン違いもするわな。にしても俺よく死ななかったな?」

「で、殿下!大丈夫ですか?」

「ああ、エディンか。大丈夫だ。でも、よく助かったな俺」

「はい。すぐに大神官様の回復魔法で治していただけましたので。ですが、出血もひどく危ないところだったのです。今後はあのような危険なことはおやめください」

「そうだな。俺みたいな非力な人間があんな大剣を持つなんて無謀だ。だけど、護身術ぐらいはあった方がいいから短剣でも今度習うよ」

「えっ、殿下。今何と…」

「だから、俺も今度は無理のないように短剣でも習うって…」

「誰か!誰かお医者様を呼んできてくださいませ!」

「ん?俺の傷は大神官とやらが治したんだろ?別に必要ないだろ」

「あ、ああ…殿下、殿下が、殿下がご乱心です!」

そこからはエディンが騒ぎ立てたおかげで上へ下への大騒ぎだった。もう少し落ち着いてくれたらいいのに…。


しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...