六つの魔弾

弓立歩

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撃てる…撃てるんだ!

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「一体、どこだここ?夢でも見てんのか?」

格好もベッドの上にいたままの私服姿だ。そして手には…ずっしりとした感覚が。

「は?お、俺の銃が金属になってる!?確かに見た目は金属も使ってあったが、ここまで重量はなかったぞ?」

手に持ったままだった銃をもう一度じっくり観察する。

「な、中はどうなってるんだ?」

中身の方も気になったので、シリンダーも確認する。

「ま、まるで、本物の銃みたいだ。ちょっと、違う部分もあるけど」

撃鉄が当たる部分には何か赤い宝石のようなものがはまっていた。それが何かは分からないが、さっきまではなかったものだ。

「一体どうなってるんだ?」

とりあえず、状況も分からないまま銃を見る。というのも、今はこれ以外何もわからないからだ。

「ひとまず、一発だけ撃ってみるか?え~っと、試しに撃てるところはと…」

俺は近くにあった気に向けて構える。そして、シリンダーをセットすると撃鉄を起こした。

ガラガラガラ

「なっ、何だ!?」

試し撃ちをしようとすると、林の奥から大きな音が聞こえてきた。

「逃げろ!追いつかれるぞ」

「ば、馬車!?」

奥から出てきたのはアニメとかでよく見る馬車だった。前の席に乗っている男が必死に馬に話しかけながら鞭を入れている。

「この展開は…」

嫌な予感がした俺はすぐに林の方から離れた。

ウガァー!

「と、トラ!?しかも、でけぇ…」

そこに現れたのは4mあろうかという、巨大なトラだった。

「嘘だろ…。こんなバケモンがいるはずが…」

「うわぁ~~~!」

とうとう馬車を率いていた男は逃げ出した。しかし、その動きがトラの目に留まったのか、直ぐに飛び掛かられる。

「うがっ!」

バリバリ

「うっ…な、なんだ、この光景」

嘘だと思う自分とこの体に受ける風が真実と告げる自分の板挟みになる。

「ど、どっちにしろ、どうにかしないと…」

今は男を食べているからこっちに向かないが、居るのがばれたら…。

「ひ、姫様。こちらへ」

「ありがとう。魔物は…」

「今は御者が引き付けております。さあ!」

「ええ」

その時、放置された馬車から二人の女性が出てきた。ひとりは騎士の格好を、ひとりはドレスを身にまとっている。どちらも顔がちらっと見えたが、美女だった。

グルルル

「はっ!?もう、こちらに気が付いたのか!」

「いけないわ、逃げましょう!」

「いえ、姫様だけ先に。ここは私が引き受けます!」

「そんな!」

「あいつは逃がしてくれるような相手ではありません。私が時間を稼ぎますから!」

「ダメよ」

「いいえ。これまでお仕え出来て幸せでした」

「ミスティ…ごめんなさい」

「な、なに言ってるんだあいつら!」

まだ、周りで起きていることに整理がつかないまま俺は現状をなんとか把握しようとする。今まで男に向いていたバケモノの意識は馬車の方を向いている。俺とは反対側を向きながら見たから、まだ俺は助かるかもしれない。

「こ、こいつが本物だったら…」

でも、このまま走って逃げてあんなバケモノから逃げられるか?

「今なら、こいつを当てて注意ぐらいは引けるんじゃ」

そしたらあの騎士風のやつが倒してくれたり…。

「そんなバカなことはないか。でも!」

注意は引けるはずだ。こいつだってガスガンなんだ。多少の反応は返すはず。

「俺だって男だ!やってやる!」

改めて銃を構えるとバケモノの頭に照準を合わせる。距離は10m、これなら外すはずはない…。

「…喰らえ!」

バァン

俺は小さくつぶやくと引き金を引いた。

「なっ!?なんだ、今の音は!!」

引き金を引くと鼓膜を破るかのような大きな音が響く。そう、まるで実銃のような…。

ガ…ゥ…?

巨大なトラがこっちを向く。しかし、そのすぐ後に倒れこんだ。

ドゥ

「ど、ど、どうなってんだ?たかがガスガンで…?」

「誰だ!?」

「あ、いや…」

「まあ!助けて下さったのですか?」

「姫様、危険です。そのようなものに近づいては…」

「いいえ。先ほどの音から察するに、何か魔道具を使用されたのでしょう。しかも、バスタータイガーを一撃で仕留めるほどの威力ですよ」

「そ、それは…」

「バスタータイガー?」

「ご存じありませんの?」

「あ、ああ、この辺には詳しくなくて…。それより本当にそいつは倒しているのか?」

「自分で倒したのではないのか?」

「多分。だけど、実際にバケモノへ使ったのは初めてなんだ」

「そうか。姫様、私が確認を」

「気を付けてね、ミスティ」

「はっ!」

女騎士がバスタータイガーと呼ばれたやつに近づいて生死を確認している。

「よくあんなおっかないことができるな」

「…姫様。絶命しております」

「そうですか、ありがとう」

「こちらはどういたしましょう?そちらの正体不明の男に任せますか?」

「そうですね。どういたしましょう?」

「ど、どうといわれても俺も急に目の前が光ったと思ったらここに飛ばされて…」

「まぁ!そうでしたの?では、こちらの出身ではないのかしら?」

「ああ、恐らく違うと思う」

「では、この魔物はこちらで回収いたします。あっ、もちろん、城に着きましたら相応のお金は支払いますので」

「そうしてくれると助かる。それと魔物って?」

「貴様、魔物も知らんのか?どこからか転移されてきたようだが、怪しいやつだな」

ジャキン

「ま、待ってくれ!本当にここがどこか分からないんだ。さっきもこいつを使ったけど、本来はこんなに威力のある銃じゃないんだ!」

「じゅう?そちらの魔道具のことですか?」

「魔道具が何かわからないけど、多分そうだ」

「姫様。どういたしましょう?このものが嘘をついているとも思えませんが…」

「一緒に王城に来ていただきましょう。身元は分かりませんが、助けていただいたことには変わりありません。よろしいですか?」

「ああ、そうしてくれると俺も助かる。行き場がないんだ」

「分かりました。それでは向かいましょう…えっと、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「俺の名前は中原甲斐だ」

「名前がナカハラ様ですか?」

「いや、名前は甲斐だ」

「では、カイ様とお呼びしても?」

「あ、ああ」

話をしているとだんだん落ち着いて来た。そうすると、こんな美女2人に話しかけられている実感がわいてきて、急に恥ずかしさが込み上げて来る。

「どうかしましたか?」

「いえ。お気遣いなく」

「決まりですね。ミスティ、馬車はどうですか?」

「なんとか王都までは持ちそうです」

「では、参りましょう」

こうして俺は訳も分からぬまま、よくわからない場所で馬車に乗ることになった。

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