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未知の武器と思惑
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「なあ、流石にこっちは…」
「ダメです。私たちの仕事でもあるのですから、ご遠慮なさらず」
「しょ、しょうがないなぁ」
う~む。美人の侍女に体を洗ってもらうなんてラッキーと思うかもしれないが、流石にこれは恥ずかしい。かといって、引きはがすのもできないし。
「うっ!」
「どうかなさいましたか?」
「い、いや…大丈夫だ」
「フフッ、私も失礼いたします」
「セレン、ほどほどになさい」
「は~い」
そんなこんなで無事に入浴を済ませると、着替えも手伝ってくれた。
「はぁ、慣れない」
「そんなに慣れないものですか?お召し物からすると、平民とはいえ名のある商家の方かと…」
「いや、別に普通の家庭だよ。ただ、俺の国はこういう繊維ものとか発達してたんだ」
というか科学分野だけどな。着ていたジャージも石油由来の生地が使われているしな。
「それでこれからの予定は?」
「ひとまず、今日のところはお疲れでしょうからこちらでお休みください。食事も後程お持ちいたします。明日は王女殿下より招待をされておりますので、そちらにご出席願います」
「そっか、この国には初めて来たから助かる。ふたりは?」
「私は今日以降もこちらに来ることはありますが、あまり頻繁には来ないでしょう。そういえば、自己紹介を忘れておりました。私はこの王宮の侍女をしております、エイラと申します」
「同じくセレンです」
「俺の名前は中原甲斐だ。カイと呼んでくれ」
「では、今後はこのセレンがカイ様のお世話を致します。何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとう」
「では、ひとまず食事の用意がございますので我々は一度失礼いたします」
「ああ」
バタン
俺を残し、2人の侍女は出ていった。
「ふぅ~、ようやく一息付けるな。それにしてもどっちも美人だったなぁ~。これが異世界特典ってやつか?シェルフィーナもミスティも美人だったし」
そんなことを思いながら俺はベッドに腰かけ、食事が来るのを待った。
「カイ様の様子は?」
「今は入浴を済ませ食事を待たれているところです?」
「どのような感じだったのです?」
「我々の応対に非常に困っているご様子でした。自分をただの平民だといっておられましたが、礼儀は知っておられましたし、どちらの国から来られた方なのですか?」
「それを調べているの。ただ、彼を怒らせるような真似はしないでね、セレン」
「かしこまりました、王女殿下」
「それほどあの青年を気に入られたのですか?」
「違います。彼の持っている銃という魔道具が気に入ったのです」
「ジュウ?聞きなれない魔道具ですね」
「そうね。でも、それを手に入れられればこの王国の未来が開けるのよ」
「そのような大切な魔道具を売ってくださるのですか?」
「まさか!それに、彼自身にもよくわからないらしいの。それであなたたちにもアプローチして欲しいのよ」
「承知いたしました。フォーガスト王国のため、この身を尽くします」
「エイラは魔導研究所へ使いをお願い。明日早速、解明に向けた会合を持ちたいの」
「会合ですか?」
「ええ、彼自身魔導に関する知識がないみたいだから協力してくれるのよ」
「…なるほど。承知いたしました」
「くれぐれも失礼のないようにと伝えておいてね」
「はっ!」
コンコン
「なに?」
「お客人の食事が用意できましたが、運んでもよろしいですか?」
「いいえ。これからあの者の世話はセレンに任せるわ。みんなにもそう伝えておきなさい」
「かしこまりました」
「…聞かれていないでしょうか?」
「大丈夫よ。あの子はまだ入ったばかりだもの。そんなにすぐ怪しい動きをしても意味がないわ」
「そうですね。では、また後程ご報告に参ります」
「ええ」
こうしてそれぞれの夜は過ぎていき、翌朝…。
「おはようございます」
「う、ん~?」
眼を開けると目の前には見たことのない美女が。
「いや、昨日自己紹介してもらったっけ。セレンだよな?」
「はい、カイ様」
「様付けって慣れないな」
「王女殿下の客人ですので当然でございます」
「しょうがないか。よっと!あ~、よく寝た」
頭もぼりぼり書きながら鏡台に向かう。
「しっかし、ちょっとこの服ダボついてないか?」
「昨日着ておられたお召し物を見せていただきましたが、確かにこちらは臨時のものでして…」
「着心地はいいから気にしないでくれ。どっちかって言うと普段こんなに袖口が開いた服を着ないだけだから」
「そうでしたか。異国の方ですし、服も違うのですね」
「ああ。昨日着てたみたいな服が主かな?まあ、文化圏によって全然違ったりするけど」
「そうなのですね。おっと、用件を忘れるところでした。朝の支度をしたいのですが、食事はとられますか?」
「うん?ああ。そういや、昨日の夕食美味しかったよ!」
「そう言っていただけて何よりです。では、朝食もすぐにお持ちいたします」
「ああ、頼んだ」
こうして俺は朝食も持って来てもらった。夕食ほど豪華ではなかったけど、十分な量と味だった。
「ふぅ、ごちそう様」
「いえ、おさげいたします。量は適切でしたか?」
「ああ」
「では、明日以降もこの量を基準にお持ちいたします。それと、今日の予定ですが、王女殿下より魔道具の件で相談があるとのことです」
「銃のことだな、分かったよ。何時からだ?」
「今は殿下も食事中ですから1時間ほど先になるかと」
「分かった。それじゃあ、時間になったら知らせてくれ」
「かしこまりました」
バタン
セレンは食事を下げに部屋を出ていった。
「ふぅ~、なんだかんだ言って昨日も良く寝られたし、結構いい世界に迷い込んだみたいだな」
なんて俺はこの時、簡単に考えてしまっていた…。
「ダメです。私たちの仕事でもあるのですから、ご遠慮なさらず」
「しょ、しょうがないなぁ」
う~む。美人の侍女に体を洗ってもらうなんてラッキーと思うかもしれないが、流石にこれは恥ずかしい。かといって、引きはがすのもできないし。
「うっ!」
「どうかなさいましたか?」
「い、いや…大丈夫だ」
「フフッ、私も失礼いたします」
「セレン、ほどほどになさい」
「は~い」
そんなこんなで無事に入浴を済ませると、着替えも手伝ってくれた。
「はぁ、慣れない」
「そんなに慣れないものですか?お召し物からすると、平民とはいえ名のある商家の方かと…」
「いや、別に普通の家庭だよ。ただ、俺の国はこういう繊維ものとか発達してたんだ」
というか科学分野だけどな。着ていたジャージも石油由来の生地が使われているしな。
「それでこれからの予定は?」
「ひとまず、今日のところはお疲れでしょうからこちらでお休みください。食事も後程お持ちいたします。明日は王女殿下より招待をされておりますので、そちらにご出席願います」
「そっか、この国には初めて来たから助かる。ふたりは?」
「私は今日以降もこちらに来ることはありますが、あまり頻繁には来ないでしょう。そういえば、自己紹介を忘れておりました。私はこの王宮の侍女をしております、エイラと申します」
「同じくセレンです」
「俺の名前は中原甲斐だ。カイと呼んでくれ」
「では、今後はこのセレンがカイ様のお世話を致します。何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとう」
「では、ひとまず食事の用意がございますので我々は一度失礼いたします」
「ああ」
バタン
俺を残し、2人の侍女は出ていった。
「ふぅ~、ようやく一息付けるな。それにしてもどっちも美人だったなぁ~。これが異世界特典ってやつか?シェルフィーナもミスティも美人だったし」
そんなことを思いながら俺はベッドに腰かけ、食事が来るのを待った。
「カイ様の様子は?」
「今は入浴を済ませ食事を待たれているところです?」
「どのような感じだったのです?」
「我々の応対に非常に困っているご様子でした。自分をただの平民だといっておられましたが、礼儀は知っておられましたし、どちらの国から来られた方なのですか?」
「それを調べているの。ただ、彼を怒らせるような真似はしないでね、セレン」
「かしこまりました、王女殿下」
「それほどあの青年を気に入られたのですか?」
「違います。彼の持っている銃という魔道具が気に入ったのです」
「ジュウ?聞きなれない魔道具ですね」
「そうね。でも、それを手に入れられればこの王国の未来が開けるのよ」
「そのような大切な魔道具を売ってくださるのですか?」
「まさか!それに、彼自身にもよくわからないらしいの。それであなたたちにもアプローチして欲しいのよ」
「承知いたしました。フォーガスト王国のため、この身を尽くします」
「エイラは魔導研究所へ使いをお願い。明日早速、解明に向けた会合を持ちたいの」
「会合ですか?」
「ええ、彼自身魔導に関する知識がないみたいだから協力してくれるのよ」
「…なるほど。承知いたしました」
「くれぐれも失礼のないようにと伝えておいてね」
「はっ!」
コンコン
「なに?」
「お客人の食事が用意できましたが、運んでもよろしいですか?」
「いいえ。これからあの者の世話はセレンに任せるわ。みんなにもそう伝えておきなさい」
「かしこまりました」
「…聞かれていないでしょうか?」
「大丈夫よ。あの子はまだ入ったばかりだもの。そんなにすぐ怪しい動きをしても意味がないわ」
「そうですね。では、また後程ご報告に参ります」
「ええ」
こうしてそれぞれの夜は過ぎていき、翌朝…。
「おはようございます」
「う、ん~?」
眼を開けると目の前には見たことのない美女が。
「いや、昨日自己紹介してもらったっけ。セレンだよな?」
「はい、カイ様」
「様付けって慣れないな」
「王女殿下の客人ですので当然でございます」
「しょうがないか。よっと!あ~、よく寝た」
頭もぼりぼり書きながら鏡台に向かう。
「しっかし、ちょっとこの服ダボついてないか?」
「昨日着ておられたお召し物を見せていただきましたが、確かにこちらは臨時のものでして…」
「着心地はいいから気にしないでくれ。どっちかって言うと普段こんなに袖口が開いた服を着ないだけだから」
「そうでしたか。異国の方ですし、服も違うのですね」
「ああ。昨日着てたみたいな服が主かな?まあ、文化圏によって全然違ったりするけど」
「そうなのですね。おっと、用件を忘れるところでした。朝の支度をしたいのですが、食事はとられますか?」
「うん?ああ。そういや、昨日の夕食美味しかったよ!」
「そう言っていただけて何よりです。では、朝食もすぐにお持ちいたします」
「ああ、頼んだ」
こうして俺は朝食も持って来てもらった。夕食ほど豪華ではなかったけど、十分な量と味だった。
「ふぅ、ごちそう様」
「いえ、おさげいたします。量は適切でしたか?」
「ああ」
「では、明日以降もこの量を基準にお持ちいたします。それと、今日の予定ですが、王女殿下より魔道具の件で相談があるとのことです」
「銃のことだな、分かったよ。何時からだ?」
「今は殿下も食事中ですから1時間ほど先になるかと」
「分かった。それじゃあ、時間になったら知らせてくれ」
「かしこまりました」
バタン
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