自由の宿エルファリア 栄光を求めて

乾為天女

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【第十三話:影を纏う者──封印を巡る陰謀】

シーン4:チーム内の葛藤

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 夜が明け、灰色の空が薄明るさを帯びてきた頃、キャンプ地の中央テントでは岡村、エリナ、将臣、銀次、ロイド、基一、裕翔、孝征が集まり、緊急会議を開いていた。エリナが昨晩の密会現場での出来事を報告し終えると、皆一様に重い表情をしている。
「つまり、その研究員が盗掘者とつるんでいる確証は得たけど、決定的な証拠がないってことか」と岡村が整理し、ロイドが「下手に問い詰めて逃げられると厄介だな」と苦い顔をした。
「でも、博士に伝えないとまずいんじゃないか?」と将臣が心配そうに言うと、銀次が「いや、確証がないまま告げ口しても、逆にこっちが疑われるだけだ」と冷静に答える。
「内部に協力者がいるなんて、博士も信じられないかもしれないしね」と基一が慎重な意見を述べると、裕翔が「じゃあ、しばらく様子を見て確実な証拠を押さえるしかないか」と肩をすくめた。
 孝征が「でもさ、もし次の襲撃があったらどうする? 博士が狙われるかもしれないんだぞ」と焦りを見せると、ロイドが「そうならねぇように、こっちが先回りして動くしかねぇ」ときっぱりと言う。
「じゃあ、俺たちが夜間の警備を強化して、密会現場を張り込む。それで新たな接触があれば現行犯で押さえる」と岡村が提案すると、銀次が「それで行こう。次は逃がさねぇ」と短くうなずく。
「それでも、博士に何も知らせないでいいのかな?」と将臣がまだ迷っていると、エリナが「博士を混乱させないためにも、今は私たちだけで動く方がいいわ」と毅然と言い切った。
 岡村が「よし、これで方針は決まりだ。次の夜に備えて昼間は休息を取ろう」と締めくくり、皆それぞれのテントへ戻っていった。
 その日の昼下がり、博士がテントの外で一人、地図を見ながら思案しているのを見た岡村がそっと声をかけた。「博士、少しお話してもいいですか?」
 博士は眼鏡を外して顔を上げ、「ああ、岡村君か。どうした?」と柔らかい表情を見せる。岡村が「封印解除が危険だという話、改めて考えてみたんです」と切り出すと、博士は静かに耳を傾けた。
「封印を解かないと遺跡の真相にたどり着けない。でも、盗掘者たちもその解除を狙っている。もし彼らが先に扉を開けてしまったら、どうなるんでしょうか」と真剣に尋ねる。
 博士は一瞬黙り込み、遠くを見つめながら答えた。「もし扉が無造作に開けられれば、内部の“歪められた魂”が解放され、ここ一帯が魔力の渦に飲み込まれるだろう。最悪、精神を蝕まれた者たちが化け物と化す可能性もある」
「そんな危険なものを解こうとしているんですね」と岡村がため息をつくと、博士は少し寂しげな笑みを浮かべた。「そうだ。しかし、私たちは真実を知る義務がある。古代の人々が何を恐れ、何を封じたのか、それを解き明かさなければならない」
 岡村は博士の決意を感じ取り、「俺たちも全力で守ります。博士が安心して研究できるように」と誓うように言った。
 夕方になり、再び警備が始まった。銀次が「今日こそ証拠を押さえてやる」と気合を入れ、エリナも「昨夜の場所を中心に張り込みましょう」と提案する。
 将臣が「俺が先に潜んでおく。魔力感知で動きを捉えられるかもしれない」と志願し、ロイドが「じゃあ、俺は別ルートから回り込んでおく」とサポートに回った。
 夜が更け、静寂が深まってきた頃、将臣が「来た……」と小声でつぶやいた。例の研究員が再び森の奥へと歩き出し、その背後にもう一つの影が続く。
「二人いる?」とエリナが驚き、小声で「気づかれないように」と警告する。ロイドも別方向から距離を詰め、銀次が「一網打尽にするチャンスだ」と刃を握りしめた。
 やがて、昨夜と同じ崖下で二人の男が落ち合い、再び密談を始めた。「扉の反応が弱まっている。次に強化するにはどうすればいい?」とローブの男が問いかける。
 研究員が「次は魔力の供給源を増やすしかない。博士の研究データがあれば、それを基に新しい魔力結晶を作れるはずだ」と応じた。
「なるほど……それを手に入れたら、あの力も我々のものになるな」と男が薄笑いを浮かべる。
 将臣が「やっぱり内部の情報を盗んでたんだ」と息を呑むと、エリナが「今だ、包囲するわよ」と合図を送る。
「待て!」とロイドが叫びながら飛び出し、銀次が即座に研究員の背後を抑え込む。将臣が火の魔法で退路を封じ、「もう逃がさないぞ」と威嚇する。
 ローブの男は不敵な笑みを浮かべ、「へぇ、バレてたか」とナイフを構えたが、エリナが素早く接近し剣を振るう。男は一瞬でバランスを崩し、銀次がとどめを刺そうとするが、その瞬間、ローブを脱ぎ捨て煙玉を投げつけた。
「くっ、煙幕か!」と将臣が叫ぶが、煙が晴れた時には男の姿はどこにもなかった。研究員だけは取り押さえたものの、主犯格の男を取り逃がしてしまった。
「やられた……」とロイドが悔しがり、エリナが「でも、これで内部の裏切り者は確保したわ」と安堵する。
「まだ終わりじゃねぇ。あいつが逃げた以上、次の襲撃が来る」と銀次が警戒を強め、岡村が「博士に報告しよう。封印を守るため、準備を固めないと」と決意を新たにした。
 キャンプへ戻る道中、将臣は逃げた男の不気味な笑みが頭から離れず、不安が胸を締め付けていた。シーン4[終]
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