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第十九話:仕事は、まだ見えていない未来のために
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春がすぐそこまで近づいてきた三月中旬。
卒業式も終わり、1年生の教室はほんのりとした寂しさと、未来への静かな期待に包まれていた。
「……なあ、これから“何をしていけばいいんだろうな」
帰り支度をしながら雅也がぽつりとつぶやく。
「仕事って、“一生のこと”だと思ってたけど、もしかして“今この瞬間”にも始まってるのかも、って」
「うん。“未来の自分”がすることを、今の自分が“準備”してるんだよね」
そう返したのは、友希だった。
彼女はこの一年で、人前で自分の得意を話せるようになった。
「私、ずっとインドアで、人の前に出るの苦手だったけど……
あのボランティア活動で、“黙って見てるだけ”じゃもったいないって、気づいたんだ」
「“人前に立つこと”が、得意じゃなくても、“話したいこと”があるなら、それは意味があると思う」
恵美が微笑みながら続ける。
「誰に見られてなくても、“自分がしてきたこと”って、ちゃんと未来につながってる。
それがわかったら、もう一歩、踏み出せるよね」
その週末。雅也たちは、地域主催の「未来のしごと博」に招待されていた。
地元の企業やNPOがブースを出し、中学生や高校生に“働くこと”のリアルを伝える場だ。
「……行ってみようよ」
優花が言った。
「見るだけでもいい。話を聞くだけでも。
でも、“知らないまま過ぎていく”のは、もったいないと思う」
雅也は、ゆっくりと頷いた。
週末。市民ホールで開催された「未来のしごと博」は、大人も子どもも入り混じったにぎやかな会場だった。
雅也たちは、班で行動しながら、いくつかのブースに立ち寄った。
最初に訪れたのは、地元鉄道会社のブース。
制服姿の職員が、車掌体験のパネルを使って説明してくれる。
「“正確さ”と“安全”を守るっていう意味で、この仕事は“信頼の積み重ね”です」
華がメモを取りながらうなずく。
「なんか、派手じゃないけど、“誰かの時間を守る仕事”なんだなって思った」
次に行ったのは、福祉施設のブース。
そこでは、介護職員の女性が穏やかに話しかけてくれた。
「“相手に寄り添う”ことが、一番難しいけど、一番大切なんです。
話すスピードを合わせる、目線の高さを工夫する、手を差し伸べるタイミングを読む──
全部、“観察”と“共感”の力なんですよ」
「まるで“感情を支える仕事”だね」
恵美のその言葉に、職員は嬉しそうに笑った。
会場の奥には、小さな展示スペースがあった。
そこには、「災害対応ドローン」や「地域防災のネットワーク構築」など、まだ実証段階の技術や仕事が紹介されていた。
「これは、“今すぐの仕事”じゃないけど、“これからの未来”に絶対必要なことです」
ブースの担当者は言った。
「10年後、20年後。君たちが大人になったとき、この分野が当たり前になっているかもしれない。
“今はまだない仕事”が、君たちの手で生まれるんですよ」
その言葉が、雅也の胸に強く残った。
(“今ない仕事”……)
(自分たちが、将来“その何か”を担う可能性があるってことか)
帰り道、雅也は呟いた。
「“今見えてる職業”だけが、すべてじゃないんだな。
“仕事”って、“まだ見えていない未来”の中に、これから生まれるものもあるんだ」
「うん。そしてその種は、もう自分の中にあるかもしれない」
拓馬のその言葉に、雅也は、はっきりと頷いた。
(第十九話 了)
卒業式も終わり、1年生の教室はほんのりとした寂しさと、未来への静かな期待に包まれていた。
「……なあ、これから“何をしていけばいいんだろうな」
帰り支度をしながら雅也がぽつりとつぶやく。
「仕事って、“一生のこと”だと思ってたけど、もしかして“今この瞬間”にも始まってるのかも、って」
「うん。“未来の自分”がすることを、今の自分が“準備”してるんだよね」
そう返したのは、友希だった。
彼女はこの一年で、人前で自分の得意を話せるようになった。
「私、ずっとインドアで、人の前に出るの苦手だったけど……
あのボランティア活動で、“黙って見てるだけ”じゃもったいないって、気づいたんだ」
「“人前に立つこと”が、得意じゃなくても、“話したいこと”があるなら、それは意味があると思う」
恵美が微笑みながら続ける。
「誰に見られてなくても、“自分がしてきたこと”って、ちゃんと未来につながってる。
それがわかったら、もう一歩、踏み出せるよね」
その週末。雅也たちは、地域主催の「未来のしごと博」に招待されていた。
地元の企業やNPOがブースを出し、中学生や高校生に“働くこと”のリアルを伝える場だ。
「……行ってみようよ」
優花が言った。
「見るだけでもいい。話を聞くだけでも。
でも、“知らないまま過ぎていく”のは、もったいないと思う」
雅也は、ゆっくりと頷いた。
週末。市民ホールで開催された「未来のしごと博」は、大人も子どもも入り混じったにぎやかな会場だった。
雅也たちは、班で行動しながら、いくつかのブースに立ち寄った。
最初に訪れたのは、地元鉄道会社のブース。
制服姿の職員が、車掌体験のパネルを使って説明してくれる。
「“正確さ”と“安全”を守るっていう意味で、この仕事は“信頼の積み重ね”です」
華がメモを取りながらうなずく。
「なんか、派手じゃないけど、“誰かの時間を守る仕事”なんだなって思った」
次に行ったのは、福祉施設のブース。
そこでは、介護職員の女性が穏やかに話しかけてくれた。
「“相手に寄り添う”ことが、一番難しいけど、一番大切なんです。
話すスピードを合わせる、目線の高さを工夫する、手を差し伸べるタイミングを読む──
全部、“観察”と“共感”の力なんですよ」
「まるで“感情を支える仕事”だね」
恵美のその言葉に、職員は嬉しそうに笑った。
会場の奥には、小さな展示スペースがあった。
そこには、「災害対応ドローン」や「地域防災のネットワーク構築」など、まだ実証段階の技術や仕事が紹介されていた。
「これは、“今すぐの仕事”じゃないけど、“これからの未来”に絶対必要なことです」
ブースの担当者は言った。
「10年後、20年後。君たちが大人になったとき、この分野が当たり前になっているかもしれない。
“今はまだない仕事”が、君たちの手で生まれるんですよ」
その言葉が、雅也の胸に強く残った。
(“今ない仕事”……)
(自分たちが、将来“その何か”を担う可能性があるってことか)
帰り道、雅也は呟いた。
「“今見えてる職業”だけが、すべてじゃないんだな。
“仕事”って、“まだ見えていない未来”の中に、これから生まれるものもあるんだ」
「うん。そしてその種は、もう自分の中にあるかもしれない」
拓馬のその言葉に、雅也は、はっきりと頷いた。
(第十九話 了)
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