実話怪談・短編集◆とほかみ◆

茶房の幽霊店主

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◆瀬戸物別れ◆裏

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※(店主と友人の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)

★先に投稿されている【瀬戸物わかれ】の続編となっています。



二年間の結婚生活を解消し、ひとりになった友人は、一時レ○パレスに避難し、自力で物件を探して 無理のない家賃の新居を見つけていました。

『仕事を見つけるまで、もう少しだけお金も欲しいし、 ブランドのカバンや財布、貴金属とか、お母さんからもらっていたお祝いの品も、売れそうな物は  全部処分してしまったのだけど、“これ”どうしたらいいと思う?』

それは、五十センチほどの大皿で、 彼女の母親と縁がある陶芸家が焼いた作品なのですが、 なぜか父親が結婚記念に注文したものらしく、 皿の裏に、入籍した日付と、友人、元夫の名前が刻まれていて こういったものは査定外で買い取ってもらえないとのこと。

『陶芸家さんの銘だけなら、価値はあるらしいんだけど、お父さんもなんで要らない追加オプションを付けたのかな』 

『大きなお皿ね』

両手で大皿を持ったのですが、手首まで冷たくなりました。

『このお皿を焼いた人、今もご健在?』

『………窯の前で、何回か自○未遂しているらしいのよ。
心身症か何かで手が動かなくなって。繊細な陶芸家さんだったから。両親もその後、連絡していないんだってさ』

ここのまま放置してもいい場合もあるのですが、新しい生活を始めた彼女に障りそうな気もしています。

こういった時、直感ではなく、違和感を信じます。
ひらめきも大切とは思いますが、蓄積してきた経験の中での“違和感”がないか。

『手元に置いておきたい?』

ぶるぶると、友人は左右に激しく首を振りました。時計を見ると真昼の十三時。
さっさと終わらせたほうがいい。そう判断し、玄関ドアを開け放ちました。

この方法がいいとか、合っているとか、そういうことではないです。 
燻りだせるか試すことにしたのです。 

釣り人が場所や餌、仕掛けを変えながら魚を釣るのに似ています。 
百発百中などほとんどあり得ません。

具体的な所作を記すのは省きますが、 斜めから真昼の陽光が降り注いでいる中、トカゲのような、イモリのような、サンショウウオのような……。 それに似た、体長五十センチほどの黒い影が、大皿の中央から這い出し、玄関前のタイルの上を素早く移動して、駐車場まで駆け抜け、その先の田んぼの中へ消えていきました。

恐らく、たどってきた道から、戻っていったのだと思います。

相手の不安をできる限り取り除く。自分にできることなどそれぐらいのものです。

『なにあれ……!はじめて見たわ!』

友人にも見えていたようなので、 何かしら大皿から影響を受けていたのかもしれません。

『これ、疲れるから嫌なのよ』

『ごめん!ごめん!お疲れさま』

普段はこういった正直な気持ちを、 直接口にしないよう心がけているのですが、 中学生からの付き合いなので、思わず文句も出てしまいました。

『とっとと、実家に持っていって 、押入れで寝かせてあげるといい』

『何か起きたりしない?』

『起きないようにしたつもり』

陶芸家らしき人物の痛いほどの気持ちを、今さらこの母と子に伝えるのは残酷です。
大皿も、彼女の母親の側で休めるなら、騒ぐこともないでしょう。


※※※※※


【追 記】

 この一件の考察は控えさせていただきます。
 何かわかったとしても、どうにもならないからです。

2025年から体験談を手記として残すにあたり、 いろいろと考えさせられることもあり、全件に「つっこみ」を 入れられるわけではないので。

また、投下されている怪談に、 店主以外の誰かが関わっている場合、 連絡が取れる相談者には、文字として残すことの許可を得ています。
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