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お兄様の笑顔を守れ 2
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翌日、暗い表情で授業に行ったお兄様は、遊びに来られなかった。
食事の量はさらに減り、顔色もより悪くなった。
夜にまたお母様が話をしても、「大丈夫だよ。」としか言わなかった。
このままではお兄様が前世の私みたいになってしまう。そんなの嫌だ。2歳だって何か出来る筈だ!
眠るお兄様の頭を優しく撫でて、そう決意した。
翌日、笑顔も無くなって、トボトボと授業に向うお兄様の背中を見送った。
まずは状況の確認が必要だよね。実際の授業を見て、どうするか考えよう。そうと決まれば突撃だ!
「ふぃー、にーしゃま、じゅぎょー、いくよ!」
フィーにそう宣言し、子ども部屋から飛び出した。
「ああ、アレン様!そっちでは無く、こっちです!」
どうやら反対方向に行こうとしてしまったらしい。そういえば、どこでやってるか知らなかった……。
遅いかけ足で戻り、フィーの手を握り案内してもらう。とはいえ屋敷は広すぎる。ハァーハァーしてるのにまだ着かない。図書室より遠いよ……。
短い足と体力の無さを恨みがましく思っていると、セバスが現れた。
「アレン様、どちらへ行かれるのですか?」
しゃがみ、目線を合わせて話してくれるイケおじ執事。
「にーしゃま、じゅぎょー、いくの!」
お兄様が元気を無くした原因を究明しにいくんだ!
「確かに最近クリス様の様子がおかしいですね。」
ん?また心読んだ?あ、顔に出るんだっけ?
「どうでしょうね?」
意味ありげに微笑むセバス。相変わらずイケメンですね。
おっとそうだ!早く授業に行かないと!
走り出そうとしたら、体がフワッと浮いた……かと思ったら、セバスの腕に抱えられてしまった。
「私も一緒に行きます。きっと役に立ちますよ。」
パチッとウインクされてしまったら是非も無いです……。
大人しくセバスに運ばれる僕。暇だから腕の筋肉をポンポン叩いて固さをチェックした。やっぱりカチカチだ。何したらこんなになるのかな?
セバスを見たら、「秘密です。」って言われたけど……。やっぱり読んでるよね?
う~ん……。今日フィーがね、部屋の絨毯で躓いて転んじゃったんだけど。その時に下着がチラッと見えたんだ。何色だったと思う?なんと、可愛いレースの白だったよ!
「ん゛っ!?……ご、ごほん。何でもありませんよ。」
ほら~、やっぱり心を読んでるじゃん!セバス何者?
「……それはアレン様がもう少し大きくなったら教えますので。」
分かった。これで話せるのは便利だね。授業を見学出来るように、上手く先生に言ってね。
「はい。お任せください。」
うんうん。あ、フィーに変な風に思われて……無いな。そっか、知ってるんだね。
「こちらにクリス様がいらっしゃいます。」
いよいよか。セバスに床に降ろしてもらい、むん!と顔に気合いをいれた。僕が助ける!
セバスがノックし、「どうぞ。」と女性の声がした。セバス、僕、フィーの順で中へ入る。
顔色の悪いお兄様が机に座り、大きな黒板の前には、目のつり上がった40歳ぐらいの女性が立っていた。
「アレン……?」
うつろな目で僕の名前を呼んだ。こんなお兄様見てられないよ!
「にーしゃま!」
お兄様に駆け寄ろうとしたが、教師がカッと靴の踵を鳴らし立ち塞がる。そして腕を組み、僕を見下ろした。
「セバスさん、これは一体どういう事ですか?なぜこのような小さい子をここに?授業は遊びではないんですよ!」
より一層目をつり上げ、セバスに詰めよった。セバスは微笑みを崩さず話をする。
「連絡も無しにすみません。ですが、こちらのアレン様は大変優秀で、良ければクリス様と一緒に授業を受けさせたいと公爵が申しております。是非とも有能な先生の授業を見学させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
教師は少し考えるフリして、手で隠した口元にニンマリと笑みを浮かべた。
「そういう事でしたら、見学して構いません。公爵様によろしくお伝えください。」
「ええ、もちろんです。私はこれで失礼します。」
ナイスセバス、ありがとう。と心の中で言うと、扉を締める時にウインクされた。
これで邪魔されること無く見学が出来る。フィーが用意した椅子に座り、お兄様の隣で背筋を伸ばした。
アレンが来たことでクリスの表情は微かに和らいだ。
「授業を受ける姿勢はまぁ良いでしょう。邪魔だけはしないように。」
「はい。」
真剣な顔つきを意識し返事をした。先生は黒板に大きく『2×3=』と書いた。
「ではクリス様。この問題を解いてください。」
クリスはビクッとする。両手の指をキョロキョロと見て、何とか答えを絞り出した。
「5……です、か?」
先生は目をカッと見開き、黒板をバン!と叩いた。クリスは大きな音に体を縮こませ、目をギュッと瞑る。
「いいですか!?これは足し算では無く掛け算です!よく考えて!こんな簡単な問題、下級貴族の子どもでもすぐ答えられますよ!はい、答えは!?」
「え、えっと、あの……。」
クリスは先生の怒鳴り声に萎縮してしまって、上手く考えられず言葉も出ない。目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。
お兄様はこんな事されてたなんて……。こんなの授業とは言わないよ。
優しく分かりやすく教えるのでは無く、ただやれと怒鳴るだけ。これでは学べるものも学べない。これはただの暴力だ!
食事の量はさらに減り、顔色もより悪くなった。
夜にまたお母様が話をしても、「大丈夫だよ。」としか言わなかった。
このままではお兄様が前世の私みたいになってしまう。そんなの嫌だ。2歳だって何か出来る筈だ!
眠るお兄様の頭を優しく撫でて、そう決意した。
翌日、笑顔も無くなって、トボトボと授業に向うお兄様の背中を見送った。
まずは状況の確認が必要だよね。実際の授業を見て、どうするか考えよう。そうと決まれば突撃だ!
「ふぃー、にーしゃま、じゅぎょー、いくよ!」
フィーにそう宣言し、子ども部屋から飛び出した。
「ああ、アレン様!そっちでは無く、こっちです!」
どうやら反対方向に行こうとしてしまったらしい。そういえば、どこでやってるか知らなかった……。
遅いかけ足で戻り、フィーの手を握り案内してもらう。とはいえ屋敷は広すぎる。ハァーハァーしてるのにまだ着かない。図書室より遠いよ……。
短い足と体力の無さを恨みがましく思っていると、セバスが現れた。
「アレン様、どちらへ行かれるのですか?」
しゃがみ、目線を合わせて話してくれるイケおじ執事。
「にーしゃま、じゅぎょー、いくの!」
お兄様が元気を無くした原因を究明しにいくんだ!
「確かに最近クリス様の様子がおかしいですね。」
ん?また心読んだ?あ、顔に出るんだっけ?
「どうでしょうね?」
意味ありげに微笑むセバス。相変わらずイケメンですね。
おっとそうだ!早く授業に行かないと!
走り出そうとしたら、体がフワッと浮いた……かと思ったら、セバスの腕に抱えられてしまった。
「私も一緒に行きます。きっと役に立ちますよ。」
パチッとウインクされてしまったら是非も無いです……。
大人しくセバスに運ばれる僕。暇だから腕の筋肉をポンポン叩いて固さをチェックした。やっぱりカチカチだ。何したらこんなになるのかな?
セバスを見たら、「秘密です。」って言われたけど……。やっぱり読んでるよね?
う~ん……。今日フィーがね、部屋の絨毯で躓いて転んじゃったんだけど。その時に下着がチラッと見えたんだ。何色だったと思う?なんと、可愛いレースの白だったよ!
「ん゛っ!?……ご、ごほん。何でもありませんよ。」
ほら~、やっぱり心を読んでるじゃん!セバス何者?
「……それはアレン様がもう少し大きくなったら教えますので。」
分かった。これで話せるのは便利だね。授業を見学出来るように、上手く先生に言ってね。
「はい。お任せください。」
うんうん。あ、フィーに変な風に思われて……無いな。そっか、知ってるんだね。
「こちらにクリス様がいらっしゃいます。」
いよいよか。セバスに床に降ろしてもらい、むん!と顔に気合いをいれた。僕が助ける!
セバスがノックし、「どうぞ。」と女性の声がした。セバス、僕、フィーの順で中へ入る。
顔色の悪いお兄様が机に座り、大きな黒板の前には、目のつり上がった40歳ぐらいの女性が立っていた。
「アレン……?」
うつろな目で僕の名前を呼んだ。こんなお兄様見てられないよ!
「にーしゃま!」
お兄様に駆け寄ろうとしたが、教師がカッと靴の踵を鳴らし立ち塞がる。そして腕を組み、僕を見下ろした。
「セバスさん、これは一体どういう事ですか?なぜこのような小さい子をここに?授業は遊びではないんですよ!」
より一層目をつり上げ、セバスに詰めよった。セバスは微笑みを崩さず話をする。
「連絡も無しにすみません。ですが、こちらのアレン様は大変優秀で、良ければクリス様と一緒に授業を受けさせたいと公爵が申しております。是非とも有能な先生の授業を見学させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
教師は少し考えるフリして、手で隠した口元にニンマリと笑みを浮かべた。
「そういう事でしたら、見学して構いません。公爵様によろしくお伝えください。」
「ええ、もちろんです。私はこれで失礼します。」
ナイスセバス、ありがとう。と心の中で言うと、扉を締める時にウインクされた。
これで邪魔されること無く見学が出来る。フィーが用意した椅子に座り、お兄様の隣で背筋を伸ばした。
アレンが来たことでクリスの表情は微かに和らいだ。
「授業を受ける姿勢はまぁ良いでしょう。邪魔だけはしないように。」
「はい。」
真剣な顔つきを意識し返事をした。先生は黒板に大きく『2×3=』と書いた。
「ではクリス様。この問題を解いてください。」
クリスはビクッとする。両手の指をキョロキョロと見て、何とか答えを絞り出した。
「5……です、か?」
先生は目をカッと見開き、黒板をバン!と叩いた。クリスは大きな音に体を縮こませ、目をギュッと瞑る。
「いいですか!?これは足し算では無く掛け算です!よく考えて!こんな簡単な問題、下級貴族の子どもでもすぐ答えられますよ!はい、答えは!?」
「え、えっと、あの……。」
クリスは先生の怒鳴り声に萎縮してしまって、上手く考えられず言葉も出ない。目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。
お兄様はこんな事されてたなんて……。こんなの授業とは言わないよ。
優しく分かりやすく教えるのでは無く、ただやれと怒鳴るだけ。これでは学べるものも学べない。これはただの暴力だ!
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