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伯爵との会談と、新事業 1
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「おとうさま、はやくはやく!」
「分かった分かった。全く、余程早く行きたいんだなぁ。」
馬車の前に立ち、ゆっくり歩くお父様を急かす僕。
お茶会から2日経ち、今日は婚約について話し合いに伯爵家へ行くところだ。
「早く会いたいのは分かるが、約束の時間が決まっている。客を迎える準備があるから、早過ぎても迷惑になってしまうんだぞ。」
「うん。でもしんぱい……。」
この2日の間にシンシアが酷い目に合っていないか心配だ。前世と違ってスマホで簡単に連絡っていうのが出来ないから。彼女の無事を確認出来なくて、どうにももどかしい。
「そうか。伯爵には手紙で多少脅しておいたから、シンシアは大丈夫だ。」
お父様に強めにグリグリと頭を撫でられたけど、僕は不満だった。
伯爵はシンシアを酷い目に合わせている本人じゃないか。多少脅したところで変わるとは思えない。早く会って無事を確かめたい。
そわそわと落ち着かない僕を乗せた馬車は、ようやく伯爵家に到着。
執事に案内され、伯爵が待つ応接室に通された。伯爵の向かいにお父様、その隣に僕が座る。
伯爵は僕の予想と違い、優しそうな顔をしている。目の下にくまがあり、疲れきったような表情だ。
でもこの人がシンシアを……。そう思うと伯爵を睨み付けていた。
お茶を出した執事に誰も入れるなと指示を出すと、伯爵は視線を落としゆっくり口を開いた。
「こちらに来ていただくことになり、申し訳ございません。事情があり、私は屋敷の外へ出る事が出来ないのです。シンシアの婚約の事は大変ありがたく思います。どうぞ、娘をよろしくお願いいたします。」
伯爵は僕達に深々と頭を下げる。その様子をグランは険しい表情で見ていた。
「その事情とやらを聞かせてくれないか?それからシンシアを冷遇している事もだ。」
「はい……。」
伯爵は頭を上げ体を起こし、事情について話し始めた。
「実はあの女、名ばかりの妻ですが、弱みを握られています。この領地は経済状況が厳しく、あの女と結婚して他人の子を面倒見る事を条件に、あの女の実家に援助を受けています。機嫌を損なうような事があると圧力がかけられてしまう為、従うしかないのです。あの女がシンシアを嫌っていて、メイドを通して最低限の手助けしか出来ません。どうか娘を保護していただけないでしょうか?ここに居ればどうなるか。どうか、どうかお願いします!」
伯爵は悲痛な面持ちで何度も頭を下げた。
どうやら伯爵はシンシアの事嫌いな訳じゃなかったんだ。
隣に座るお父様を見上げると、顎に手を当て考えていた。僕の視線に気付いて、フッと微笑むと頭をポンポンとした。
何か良い案が浮かんだのかな?
「伯爵、頭を上げてくれ。受けている援助はいくらだ?」
「毎月100万ゴールドです。それでギリギリなんとかやっています。」
それを聞いたお父様はまた少し考えてから、膝をポンと叩いた。
「よし、伯爵。これから2年間、毎月200万ゴールド私が援助しよう。その間に領地の経済状況を建て直す。婚約するのだから、私も協力させてもらうぞ。」
伯爵は思ってもいなかった提案に理解が追い付かなかった。
「あ……。あぁ、ありがとう、ございます。これであの女を追い出せます。ありがとうございます!」
何度も深々と頭を下げ、何度もお礼を言った伯爵は、涙ぐんでいた。
「まだ解決した訳ではないんだ。お礼を言うのは終わった後にしてくれ。」
「そ、そうですね。」
解決の目処が立ったことで、伯爵の顔は少し明るくなった。じゃあそろそろ婚約して良いかな?
大人の話が一区切りしたところで、僕にとって一番大事な事を伝えた。
「ぼくとシンシアのこんやくをおねがいします。」
「そうだな、婚約の書類を先に作ろう。伯爵、内容を確認したらここにサインを。」
お父様が出した書類に目を通し、サラサラとサインを記入した。お父様は確認すると、一枚は伯爵に渡し、一枚は手元に置き、それを僕に見せた。
「アレン、これで婚約成立だ。良かったな。」
やったー!これでシンシアと婚約者になれた。早く会いたいなぁ。
「あの、シンシアにあえますか?」
「ああそうだね、すぐ呼ぼう。」
執事にシンシアを連れて来るよう指示をだした。
数分そわそわしながら待っていると、パタパタと走る足音が聞こえてきた。
「ア、アレン、きてくれた!」
部屋に飛び込んできたシンシアは、そのままの勢いで僕に抱きついた。よろけずに受け止められたのはセバス先生の剣術講座のお陰だろう。
たった2日なのに、すごく久しぶりな気がする。お茶会の時より顔色が良くなったみたいだ。
「やくそくしたからね。シンシアにあいたかったよ。」
「わたしもあいたかった。」
シンシアは笑顔になると、アレンの隣に座った。伯爵が少し残念そうな顔をしたけど、婚約の事を話した。
「シンシア、アレン君との婚約が成立したよ。おめでとう。」
「はい、ありがとうございます……。」
「分かった分かった。全く、余程早く行きたいんだなぁ。」
馬車の前に立ち、ゆっくり歩くお父様を急かす僕。
お茶会から2日経ち、今日は婚約について話し合いに伯爵家へ行くところだ。
「早く会いたいのは分かるが、約束の時間が決まっている。客を迎える準備があるから、早過ぎても迷惑になってしまうんだぞ。」
「うん。でもしんぱい……。」
この2日の間にシンシアが酷い目に合っていないか心配だ。前世と違ってスマホで簡単に連絡っていうのが出来ないから。彼女の無事を確認出来なくて、どうにももどかしい。
「そうか。伯爵には手紙で多少脅しておいたから、シンシアは大丈夫だ。」
お父様に強めにグリグリと頭を撫でられたけど、僕は不満だった。
伯爵はシンシアを酷い目に合わせている本人じゃないか。多少脅したところで変わるとは思えない。早く会って無事を確かめたい。
そわそわと落ち着かない僕を乗せた馬車は、ようやく伯爵家に到着。
執事に案内され、伯爵が待つ応接室に通された。伯爵の向かいにお父様、その隣に僕が座る。
伯爵は僕の予想と違い、優しそうな顔をしている。目の下にくまがあり、疲れきったような表情だ。
でもこの人がシンシアを……。そう思うと伯爵を睨み付けていた。
お茶を出した執事に誰も入れるなと指示を出すと、伯爵は視線を落としゆっくり口を開いた。
「こちらに来ていただくことになり、申し訳ございません。事情があり、私は屋敷の外へ出る事が出来ないのです。シンシアの婚約の事は大変ありがたく思います。どうぞ、娘をよろしくお願いいたします。」
伯爵は僕達に深々と頭を下げる。その様子をグランは険しい表情で見ていた。
「その事情とやらを聞かせてくれないか?それからシンシアを冷遇している事もだ。」
「はい……。」
伯爵は頭を上げ体を起こし、事情について話し始めた。
「実はあの女、名ばかりの妻ですが、弱みを握られています。この領地は経済状況が厳しく、あの女と結婚して他人の子を面倒見る事を条件に、あの女の実家に援助を受けています。機嫌を損なうような事があると圧力がかけられてしまう為、従うしかないのです。あの女がシンシアを嫌っていて、メイドを通して最低限の手助けしか出来ません。どうか娘を保護していただけないでしょうか?ここに居ればどうなるか。どうか、どうかお願いします!」
伯爵は悲痛な面持ちで何度も頭を下げた。
どうやら伯爵はシンシアの事嫌いな訳じゃなかったんだ。
隣に座るお父様を見上げると、顎に手を当て考えていた。僕の視線に気付いて、フッと微笑むと頭をポンポンとした。
何か良い案が浮かんだのかな?
「伯爵、頭を上げてくれ。受けている援助はいくらだ?」
「毎月100万ゴールドです。それでギリギリなんとかやっています。」
それを聞いたお父様はまた少し考えてから、膝をポンと叩いた。
「よし、伯爵。これから2年間、毎月200万ゴールド私が援助しよう。その間に領地の経済状況を建て直す。婚約するのだから、私も協力させてもらうぞ。」
伯爵は思ってもいなかった提案に理解が追い付かなかった。
「あ……。あぁ、ありがとう、ございます。これであの女を追い出せます。ありがとうございます!」
何度も深々と頭を下げ、何度もお礼を言った伯爵は、涙ぐんでいた。
「まだ解決した訳ではないんだ。お礼を言うのは終わった後にしてくれ。」
「そ、そうですね。」
解決の目処が立ったことで、伯爵の顔は少し明るくなった。じゃあそろそろ婚約して良いかな?
大人の話が一区切りしたところで、僕にとって一番大事な事を伝えた。
「ぼくとシンシアのこんやくをおねがいします。」
「そうだな、婚約の書類を先に作ろう。伯爵、内容を確認したらここにサインを。」
お父様が出した書類に目を通し、サラサラとサインを記入した。お父様は確認すると、一枚は伯爵に渡し、一枚は手元に置き、それを僕に見せた。
「アレン、これで婚約成立だ。良かったな。」
やったー!これでシンシアと婚約者になれた。早く会いたいなぁ。
「あの、シンシアにあえますか?」
「ああそうだね、すぐ呼ぼう。」
執事にシンシアを連れて来るよう指示をだした。
数分そわそわしながら待っていると、パタパタと走る足音が聞こえてきた。
「ア、アレン、きてくれた!」
部屋に飛び込んできたシンシアは、そのままの勢いで僕に抱きついた。よろけずに受け止められたのはセバス先生の剣術講座のお陰だろう。
たった2日なのに、すごく久しぶりな気がする。お茶会の時より顔色が良くなったみたいだ。
「やくそくしたからね。シンシアにあいたかったよ。」
「わたしもあいたかった。」
シンシアは笑顔になると、アレンの隣に座った。伯爵が少し残念そうな顔をしたけど、婚約の事を話した。
「シンシア、アレン君との婚約が成立したよ。おめでとう。」
「はい、ありがとうございます……。」
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