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1.Cape jasmine
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夏休み中にあった全国大会で、ナオの野球部はベスト8まで進出した。
その事を、休み明けの朝礼で校長先生が嬉しそうに発表したものだから、野球部は俄然注目の的になってしまっていた。
元々ナオは女の子から人気あったけど、今まで以上にやっかまれるようになったおかげで、精神的なストレスがハンパない。
付き合ってないよ。
ただの幼馴染だよ。
何度もそう言って、そしてその事に疲れていた。
付き合ってないのは本当の事だ。でも、その頃にはもう、ナオとの関係が以前とは変わってしまっていたから、どこか後ろめたかったんだと思う。
「谷間がある」
長袖のゆったりとしたカットソーの襟首から、中を覗き込んでナオが言った。
ブラを着けてることに、ナオはすぐ気がついて…って、そりゃ触ればわかるに決まってる。シャープペンシルを握りしめながら、耳元にある顔を睨みつけた。ホント、ムダに睫毛が長いよね。
「寄せて上げるんだから当たり前だよ。それよりこの問題…」
興味を逸らそうとテーブルに広げたプリントを指差した瞬間、ふっ…と、胸元が軽くなった。ギョッとしたのは束の間、いつの間にか裾から入り込んでいた大きな手の平に胸を覆われてしまう。
「あのな、二乗は2掛けじゃないんだよ。8を二乗したら64だろ?」
「あっ」
声を上げたのはそのせいじゃなかった。両手で胸を鷲掴みにしたナオが、すっかり硬くなった先端を親指で押し潰したからだ。
「寄せて上げる、か…」
ふ…と鼻で笑うのが憎らしい。ブラよりこっちのが寄るな、とか、そーいう問題じゃないんだけど?!
「ちょ、離してよっ」
ガッツリ抱え込む腕を掴むけど、その間もナオの手が私の胸の形を変えて遊んでいる。胸を逸らして逃げようと身体をひねると、そのまま仰向けに押し倒されて、押さえ込むように唇を塞がれた。
その一瞬、チラリと見たテーブルの上に広がるプリントは、ケイマ君が塾でやってるのをナオがコピーして持ってきたヤツだ。
長篠に行くには数学がちょっとね?と言ったのは、長篠には行かないっていう遠回しの拒絶だったのに、ナオは毎日やってきては勉強だと言って、リビングに居座る。
でも、寒いからって膝の間に座らせて抱え込むのはどうなの?
これ、勉強にならなくない?
そう抗議するのに、ナオは笑って受け流すだけだ。そして私がそれを拒めないのを、ナオは知ってる。
あれ以来、ナオは遠慮が無くなった。
当たり前のようにキスするとか、夏休み前のあれはなんだったの?ってあきれるぐらいで、むしろこっちの反応を見て面白がってる様な感じが悔しくて、わざと平気なフリしてたのも良くなかったのかもしれない。
今もそうだ。ブラを外したらほぼぺったんこなのに、大きな手の平で膨らみを形作っては揉みしだく。その間も、差し込んだ肉厚な舌先に口の中を蹂躙されて、そうするとどっちのものかわからない唾液が舌下に溜まってくるから、もうそれを飲み込む事しか出来ない。
鼻の向きを変える時だけ僅かに離れる唇の隙間から、喘ぐ様に息をする度に体温が上がって、身体の内側に溜まっていく切なさに耐えきれずに身を捩った。
もう止めて、と言うつもりでナオのシャツを掴んで首を動かすと、逆に首の後ろを掴まれた。一層深く舌を差し込まれて苦しさに涙が滲む。
いつもより深いそれに、意識がボンヤリとしてきた時、ナオの反対の手の平がするりと脇腹を撫でてお尻に回された。
感触を確かめる様に優しく揉まれて、無意識に腰を揺らめかせると、その手がショートパンツに差し込まれる。そのまま、太腿を撫でる様に動いた手の平が内腿に滑り込み、ショーツの縁を押し除けてナオの指が中に潜り込んだ。
「っ―――?!」
前みたいな布越しじゃない。
ナオの指の形と温もりを直接感じて、反射的に腰が浮く。膝を立てて逃げようとしたのに、それより早くナオの指が探る様に動いて、割れ目の間へ押し込まれた。ぐりっと指の腹で擦られた途端、身体を貫く様な強い刺激にのけぞる。なのにナオの指はそこを挟み込む様にしながら、更に擦り上げた。
ぬるり、とナオの指が滑る。
まさかと思った。知らないうちに…?と思うと泣きたくなる。ナオの指がそれを擦り付ける様に円を描くと、その場所よりももっと奥深い場所が疼いて、一層滑りが酷くなってきた、その時。
ピコン―――、と。
あの電子音が鳴って、ナオの動きが止まった。
ピコン、ピコンッ―――
立て続けに鳴る音に、ナオが唇を離してため息をつきながら身体を起こす。急いで顔を背けて、震える腕を床に付いて身体を起こした。
胸元を庇う様に、片方の腕で反対の二の腕を掴みながら、大きく息を吸った所で、目の前にスマホの画面が晒された。
ロックが解除された画面を見て、ナオが顔を顰める。
「チーズケーキ…」
メッセージの相手はかなちゃみたいだ。最近はお菓子作りに目覚めたのか、頻繁にメッセージが送られてくる様になった。
居た堪れなさに俯いていると、不意に耳元に吐息がかかる。
「スミ」
呼ばれただけで、身体がぞわりと総毛立ち、思わず息を飲む。
「どうする?これ」
「…晩ご飯、作んなきゃ…」
やっとの思いでそう言いながら顔を上げると、ナオがスマホを持った手と反対の手―――指をまじまじと見つめているのに気がついた。
それを鼻先に近づけるのを見て、咄嗟に腕を掴んだ。
「洗ってっ!ソッコー!石鹸つけて!!」
信じられないっっ!!
もしかしたら…かも知れないのだ。ナオもそれに気付いたのか、ニヤリと笑っただけで、スマホを置いて立ち上がると、後ろ向きのまま手を振ってベランダへ出て行った。
それを見送って、深く、ため息をつく。
いつもと変わらない、ナオに。
名前を呼ばれるだけでおかしくなる自分に。
「これ、なんて読むの?」
名前を漢字で書くようになると、必ずそう聞かれるようになった。
―――佳人薄命の“佳”に、淑女の“淑”で、“佳淑”
「えー、そう読めるんだ?」
「うん、まあ。…当て字だよね。」
新しく出会う度に、繰り返してきた会話だ。
「カスミの“佳”に意味は無いんだよ。」
接頭語だからね、と父は言っていた。
「“か弱い”とか“か細い”っていうだろ?だから、カスミの“真名”は、「淑」なんだよ。」
「マナ?」
「そう、とても大事な、本当の名前だ。だから、大切だと思う人にだけ教えてあげるんだよ、でないと…」
とらわれてしまうからね?―――
その事を、休み明けの朝礼で校長先生が嬉しそうに発表したものだから、野球部は俄然注目の的になってしまっていた。
元々ナオは女の子から人気あったけど、今まで以上にやっかまれるようになったおかげで、精神的なストレスがハンパない。
付き合ってないよ。
ただの幼馴染だよ。
何度もそう言って、そしてその事に疲れていた。
付き合ってないのは本当の事だ。でも、その頃にはもう、ナオとの関係が以前とは変わってしまっていたから、どこか後ろめたかったんだと思う。
「谷間がある」
長袖のゆったりとしたカットソーの襟首から、中を覗き込んでナオが言った。
ブラを着けてることに、ナオはすぐ気がついて…って、そりゃ触ればわかるに決まってる。シャープペンシルを握りしめながら、耳元にある顔を睨みつけた。ホント、ムダに睫毛が長いよね。
「寄せて上げるんだから当たり前だよ。それよりこの問題…」
興味を逸らそうとテーブルに広げたプリントを指差した瞬間、ふっ…と、胸元が軽くなった。ギョッとしたのは束の間、いつの間にか裾から入り込んでいた大きな手の平に胸を覆われてしまう。
「あのな、二乗は2掛けじゃないんだよ。8を二乗したら64だろ?」
「あっ」
声を上げたのはそのせいじゃなかった。両手で胸を鷲掴みにしたナオが、すっかり硬くなった先端を親指で押し潰したからだ。
「寄せて上げる、か…」
ふ…と鼻で笑うのが憎らしい。ブラよりこっちのが寄るな、とか、そーいう問題じゃないんだけど?!
「ちょ、離してよっ」
ガッツリ抱え込む腕を掴むけど、その間もナオの手が私の胸の形を変えて遊んでいる。胸を逸らして逃げようと身体をひねると、そのまま仰向けに押し倒されて、押さえ込むように唇を塞がれた。
その一瞬、チラリと見たテーブルの上に広がるプリントは、ケイマ君が塾でやってるのをナオがコピーして持ってきたヤツだ。
長篠に行くには数学がちょっとね?と言ったのは、長篠には行かないっていう遠回しの拒絶だったのに、ナオは毎日やってきては勉強だと言って、リビングに居座る。
でも、寒いからって膝の間に座らせて抱え込むのはどうなの?
これ、勉強にならなくない?
そう抗議するのに、ナオは笑って受け流すだけだ。そして私がそれを拒めないのを、ナオは知ってる。
あれ以来、ナオは遠慮が無くなった。
当たり前のようにキスするとか、夏休み前のあれはなんだったの?ってあきれるぐらいで、むしろこっちの反応を見て面白がってる様な感じが悔しくて、わざと平気なフリしてたのも良くなかったのかもしれない。
今もそうだ。ブラを外したらほぼぺったんこなのに、大きな手の平で膨らみを形作っては揉みしだく。その間も、差し込んだ肉厚な舌先に口の中を蹂躙されて、そうするとどっちのものかわからない唾液が舌下に溜まってくるから、もうそれを飲み込む事しか出来ない。
鼻の向きを変える時だけ僅かに離れる唇の隙間から、喘ぐ様に息をする度に体温が上がって、身体の内側に溜まっていく切なさに耐えきれずに身を捩った。
もう止めて、と言うつもりでナオのシャツを掴んで首を動かすと、逆に首の後ろを掴まれた。一層深く舌を差し込まれて苦しさに涙が滲む。
いつもより深いそれに、意識がボンヤリとしてきた時、ナオの反対の手の平がするりと脇腹を撫でてお尻に回された。
感触を確かめる様に優しく揉まれて、無意識に腰を揺らめかせると、その手がショートパンツに差し込まれる。そのまま、太腿を撫でる様に動いた手の平が内腿に滑り込み、ショーツの縁を押し除けてナオの指が中に潜り込んだ。
「っ―――?!」
前みたいな布越しじゃない。
ナオの指の形と温もりを直接感じて、反射的に腰が浮く。膝を立てて逃げようとしたのに、それより早くナオの指が探る様に動いて、割れ目の間へ押し込まれた。ぐりっと指の腹で擦られた途端、身体を貫く様な強い刺激にのけぞる。なのにナオの指はそこを挟み込む様にしながら、更に擦り上げた。
ぬるり、とナオの指が滑る。
まさかと思った。知らないうちに…?と思うと泣きたくなる。ナオの指がそれを擦り付ける様に円を描くと、その場所よりももっと奥深い場所が疼いて、一層滑りが酷くなってきた、その時。
ピコン―――、と。
あの電子音が鳴って、ナオの動きが止まった。
ピコン、ピコンッ―――
立て続けに鳴る音に、ナオが唇を離してため息をつきながら身体を起こす。急いで顔を背けて、震える腕を床に付いて身体を起こした。
胸元を庇う様に、片方の腕で反対の二の腕を掴みながら、大きく息を吸った所で、目の前にスマホの画面が晒された。
ロックが解除された画面を見て、ナオが顔を顰める。
「チーズケーキ…」
メッセージの相手はかなちゃみたいだ。最近はお菓子作りに目覚めたのか、頻繁にメッセージが送られてくる様になった。
居た堪れなさに俯いていると、不意に耳元に吐息がかかる。
「スミ」
呼ばれただけで、身体がぞわりと総毛立ち、思わず息を飲む。
「どうする?これ」
「…晩ご飯、作んなきゃ…」
やっとの思いでそう言いながら顔を上げると、ナオがスマホを持った手と反対の手―――指をまじまじと見つめているのに気がついた。
それを鼻先に近づけるのを見て、咄嗟に腕を掴んだ。
「洗ってっ!ソッコー!石鹸つけて!!」
信じられないっっ!!
もしかしたら…かも知れないのだ。ナオもそれに気付いたのか、ニヤリと笑っただけで、スマホを置いて立ち上がると、後ろ向きのまま手を振ってベランダへ出て行った。
それを見送って、深く、ため息をつく。
いつもと変わらない、ナオに。
名前を呼ばれるだけでおかしくなる自分に。
「これ、なんて読むの?」
名前を漢字で書くようになると、必ずそう聞かれるようになった。
―――佳人薄命の“佳”に、淑女の“淑”で、“佳淑”
「えー、そう読めるんだ?」
「うん、まあ。…当て字だよね。」
新しく出会う度に、繰り返してきた会話だ。
「カスミの“佳”に意味は無いんだよ。」
接頭語だからね、と父は言っていた。
「“か弱い”とか“か細い”っていうだろ?だから、カスミの“真名”は、「淑」なんだよ。」
「マナ?」
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とらわれてしまうからね?―――
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