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2,主人公
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その日からというもの相川さんは僕に話かけてくるようになった。内容の薄い他愛のない話をするようになった。彼女みたいな人から話かけられるのは少々の気まずさがあったが悪い気はしなかった。
彼女と僕では文字通り住んでいる世界が違う。あのきっかけがなければ関わることもなかっただろう。
まあ会話は相変わらず彼女が主導権を握っているが、悪くはない。そう感じられた。
こうした関係が続くと余計なことも考えてしまう。例えば、相川さんに彼氏はいるかとか、好きなタイプは何だろうとか。
僕は普段彼女とか恋愛とかあまり考えたことはなかったのだが、相川さんと話すようになってからはどうしても意識してしまう。僕と相川さんでは釣り合うはずもないのに。
今日も今日とて退屈な授業が終わり、皆帰路についたり、部活の準備を行っている。僕もクラス委員の仕事の関係で今日は教室に残っている。
やらなければいけないことはそこそこにあるから今日は1,2本遅い電車で帰ることになるだろう。
僕が教室で作業をしていると
「あれ、川口なにしてんの」
僕を呼ぶ声が聞こえた。
顔を上げるとそこには、僕の友達……上原健也が立っていた。
「ああ……委員会の仕事」
「まじか。面倒くさいことやってんじゃん」
そういって上原くんはけらけらと笑った。
上原くんは僕の中学からの同級生だ。
彼を一言で表すとするならば……「主人公」。この言葉が一番彼を表している。
顔も良く、人好きのする笑顔と明るさを持ち、だれとでも親しく話しかける行動力を持つ。実際友達も多く他学年の人とも交流が深い。
さらに、頭も良く、面白い発想もできる。
まさしく完璧。まさしく主人公。それが上原くんという人間だった。
そんな主人公となぜモブが仲がいいのか。それはひとえに彼が主人公だからだろう。
優しく明るさを兼ね備えた主人公はぼくのような人間にも親しげに関わってくる。
主人公には主人公にふさわしい人間がもっといると思うのだが、彼のような人間にはそれは関係ないのだろう。
「今日部活は?」
「休み。今日休みでいいってさ」
上原くんはサッカー部に通っている。なんでも期待の有効株という扱いらしい。
なんとも格の違いを見せつけてくるものだ。
そんな彼がなんで僕に話しかけてくるのだろう。
「何か用?」
「いや、今日遊びにいかねって思ってさ」
「どこに?」
「んー。まあ適当に」
どうやら遊び誘ってくれるらしい。
上原くんは時折こうして遊びに誘ってくれる。二人きりだったり、ほかに友達がいたりとその時によってメンバーは変わる。
いずれにしても僕のような奴を誘うとはなんとも奇特……そう感じていた。ぼくと彼では住んでいる世界も違うというのに。
「うーん、行きたいのはやまやまなんだけど……委員会の仕事があるんだよね」
僕がそういうと上原くんは残念そうな顔で
「やっぱかー。オッケーわかった。また誘うわ」
そう言った。
その後も5分ぐらい他愛もない話をしてから上原くんは「じゃ、がんばれよ」といって帰っていった。
これまた嵐みたいな時間だった。
だが僕は上原くんと話すのは存外嫌いではなかった。彼は話すと面白いし、持ち前の明るさでこちらまで楽しくなる。
ただ……少し、ほんの少しだけすっきりしない気分にもなる。心のなかに一瞬だけ霧がかかるような、そんなもやもや感だ。
今もそんな気持ちが心の中にある。この気持ちを知りたいところだが、今の僕は目の前の仕事をおわらせなければならない。
僕は改めて机に向きなおした。
彼女と僕では文字通り住んでいる世界が違う。あのきっかけがなければ関わることもなかっただろう。
まあ会話は相変わらず彼女が主導権を握っているが、悪くはない。そう感じられた。
こうした関係が続くと余計なことも考えてしまう。例えば、相川さんに彼氏はいるかとか、好きなタイプは何だろうとか。
僕は普段彼女とか恋愛とかあまり考えたことはなかったのだが、相川さんと話すようになってからはどうしても意識してしまう。僕と相川さんでは釣り合うはずもないのに。
今日も今日とて退屈な授業が終わり、皆帰路についたり、部活の準備を行っている。僕もクラス委員の仕事の関係で今日は教室に残っている。
やらなければいけないことはそこそこにあるから今日は1,2本遅い電車で帰ることになるだろう。
僕が教室で作業をしていると
「あれ、川口なにしてんの」
僕を呼ぶ声が聞こえた。
顔を上げるとそこには、僕の友達……上原健也が立っていた。
「ああ……委員会の仕事」
「まじか。面倒くさいことやってんじゃん」
そういって上原くんはけらけらと笑った。
上原くんは僕の中学からの同級生だ。
彼を一言で表すとするならば……「主人公」。この言葉が一番彼を表している。
顔も良く、人好きのする笑顔と明るさを持ち、だれとでも親しく話しかける行動力を持つ。実際友達も多く他学年の人とも交流が深い。
さらに、頭も良く、面白い発想もできる。
まさしく完璧。まさしく主人公。それが上原くんという人間だった。
そんな主人公となぜモブが仲がいいのか。それはひとえに彼が主人公だからだろう。
優しく明るさを兼ね備えた主人公はぼくのような人間にも親しげに関わってくる。
主人公には主人公にふさわしい人間がもっといると思うのだが、彼のような人間にはそれは関係ないのだろう。
「今日部活は?」
「休み。今日休みでいいってさ」
上原くんはサッカー部に通っている。なんでも期待の有効株という扱いらしい。
なんとも格の違いを見せつけてくるものだ。
そんな彼がなんで僕に話しかけてくるのだろう。
「何か用?」
「いや、今日遊びにいかねって思ってさ」
「どこに?」
「んー。まあ適当に」
どうやら遊び誘ってくれるらしい。
上原くんは時折こうして遊びに誘ってくれる。二人きりだったり、ほかに友達がいたりとその時によってメンバーは変わる。
いずれにしても僕のような奴を誘うとはなんとも奇特……そう感じていた。ぼくと彼では住んでいる世界も違うというのに。
「うーん、行きたいのはやまやまなんだけど……委員会の仕事があるんだよね」
僕がそういうと上原くんは残念そうな顔で
「やっぱかー。オッケーわかった。また誘うわ」
そう言った。
その後も5分ぐらい他愛もない話をしてから上原くんは「じゃ、がんばれよ」といって帰っていった。
これまた嵐みたいな時間だった。
だが僕は上原くんと話すのは存外嫌いではなかった。彼は話すと面白いし、持ち前の明るさでこちらまで楽しくなる。
ただ……少し、ほんの少しだけすっきりしない気分にもなる。心のなかに一瞬だけ霧がかかるような、そんなもやもや感だ。
今もそんな気持ちが心の中にある。この気持ちを知りたいところだが、今の僕は目の前の仕事をおわらせなければならない。
僕は改めて机に向きなおした。
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