召喚者は一家を支える。

RayRim

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第2部

83話

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 話を聞くと、この赤いドラゴンは代々この溶岩溜まりを棲家に生き続けてきたらしい。
 知る限りでは2体目の守護竜、とでも呼ぶべきドラゴンになるだろうか?
 ダンジョンマスターの老龍は除外して。

『貴殿らにとっての古来より、僕たちは守護者としてこの地に住んでいます。理由はご存じの通り、モンスターの抑制。人が大地に降りて以来、人の最大の敵はモンスターだと言われています。
 ですが、本来この大地にモンスターは居ません。人の様々な思いが魔素となり、マナと結び付き、モンスターを生んでしまっているのです。』

 となると、サクラダンジョンのあれはバニラの思いの具現だったという事で間違いなさそうだ。
 あれはサクラのリソースが、マナの役割を果たした可能性もありそうだが。

『ただ、人が居る都市にはモンスターが生まれる事もありません。希望がある限り、モンスターは人々の中に生まれる事は出来ませんから。』
「実は、娘の手懐けたエレメントが子供を産んでだな…」
『エレメントは精霊に近い性質を持っているからなのでしょう。
 エレメントが子供を産むという事は、余程質の良い魔力に恵まれた環境のようですね。そうでなければ、居付くことも嫌がりますから。』

 なるほど。だからあのエレメント達は積極的に一家の輪に入ろうとしてくるのか。
 サクラダンジョンの件で子供達もレベルが上がったし、少し自由にさせても良いかもしれない。ノエミやジェリー、マリー達は気を付けさせないとダメだが。

『それはそうと、お前の力でこの溶岩を減らすことは出来ぬのか?このままではドワーフ達の国が消えてしまうぞ。』

 タマモが本題を切り出す。
 これで解決するなら容易いが…

『減らすには噴火させるしかありません。
 増えるのは自然によるものですし、僕にどうこうできるものではありませんから。』
『ただ住み着いておるだけじゃったか…』
『そのおかげでここにモンスターが現れないのですから、感謝して欲しいくらいですよ。』

 溶岩に浸かりながら胸を張る守護竜。
 討伐や追い出すのはかえって不利益という事か。

「一応、別に火口を作ってそこから噴火させようという案がある。それについてはどうだ?」
『出来るならやって見せてくださいとしか…
 そもそも、周囲は海ですし、作業も大変なのでは?』
「いや、魔法を使えば特に問題はないな。」

 海水が入らないように作業することも、地下深くまで掘ることも苦ではないし、時間もそう掛からない。

『恐ろしい…僕に地上は恐ろしすぎる所だ…』
『出来るのはこやつの周りだけじゃよ…』

 顔を青く?する赤い守護竜と、呆れるタマモ。

『そう言えば、1200年ほど前の伝承に噴火は竜がどうこうとあったの。お前の事ではないか?』
『ああ、きっと先代ですよ。ワシが人々を救ったのだ、と口癖のように言ってましたから。』

 色々混ざった結果があの伝承という事か。

『それに比べて僕は…ぐすん。』

 泣くな守護竜。お前はよくやっているよ。漬け物石や地蔵みたいなもんだが。

『役割を果たしているなら誇るが良い。暴れ狂う北の海のあれに比べたら立派じゃぞ!』
『本当ですか?僕も彼は苦手だったんですよね。ただ暴れるだけじゃないですか。挙げ句には封印までされてしまって。
 東の方はとても立派で、あの姿に憧れましたが。』
「東も代替わりしていたな。ヤンチャな小娘という印象で、ダンジョンマスターに鍛えられてたぞ。」

 オレの説明を聞き、目を剥く二人。

『ええ…あの方、去られていたのですか…』
『肝の据わったダンジョンマスターがおるのぅ…』

 理由は全く違ったようだが。

『外と繋がりが持てないのはいけませんね。世情に疎くなってしまいます…』
『とはいえ、妾みたいに分け身を預けるにしても人は選びたいからの。』
『なるほど。その手がありましたか。どれどれ…』

 そう言って念じると、タマモのようなサイズ感の竜人♂が現れる。だが、ご立派にも程がある!

『その禍々しい毒物をしまわぬか。』

 淡々と言うタマモ。意外とツッコミがキツい。

『ああ、これは失礼しました…』

 本体が指をちょいちょいとすると、オレと似た服装になった。

「服装についてはアリスに意見を貰おうか。もっと相応しい見た目のものを提案してくれるかもしれない。」
『それは楽しみですね。』

 分け身が会釈をするとオレの影に入る。繋がりが出来たところで再び姿を表した。

『数奇な運命の御方だ。付いていけば、退屈せずに済みそうですね。』
「その為には人工噴火を成功させないとな。失敗したら、多分お前は生きていられない。」

 梓や遥香が絶対に許さない気がする。落ち度がないと分かっていても、飲み込めるのは討伐後となるに違いない。

『命永らえる為に、精一杯お手伝いいたしましょう…』
「溶岩内を自由に移動できる味方は心強い。よろしく頼むぞ。」

 手を差し出すと、分け身の方がしっかりと握り返してくれた。

「名前はあるか?」
『赤いのと呼ばれる事が多かったですね。』
「じゃあ、レッドでいいか。恐らく、唯一無二…いやいや、遥香の所にファイアエレメントがいたな…」
『変わった名前じゃが意味はあるのかのう?』

 不思議そうに言うタマモ。固有名詞として認識されて、本来の言葉の意味としては伝わっていないのか。

「オレ達の言葉で赤だよ。遥香のモンスターはどれも色になってる。」
『そうじゃったか。確かに、こやつ以上に色が相応しい者もおらぬ。』

 ミニドラゴンも髪が炎のように赤く、一部に見える鱗も赤い。なんとしてもレッドと呼びたいが…

「遥香、今良いか?」
『うん。いいよ?』

 通話器で呼び掛けると返事がすぐに来る。
 その様子にミニドラゴンは本体共々驚いていた。

「レッドという名前のヤツはいるか?」
『まだいないよ。スカーレットちゃんはいるけど。』

 女子でした。
 それを聞いてホッとする。他に良さげな名前が思い付かなかったからな。

「そうか。じゃあ、レッドは使わせてもらうことにする。」
『なに?どういうこと?』

 理由が分からない遥香が不満そうに尋ねてくる。また、何か拾ったとか思われてそうな気配だ。
 通話器をミニレッドに向けると、丁寧に礼をしながら、

『この度、ヒガン様に名付けていただきました守護者のレッドと申します。
 未熟者ではございますが、火山の人工噴火にも協力させていただきますので、何卒よろしくお願いします。』
『しゅごしゃ?』

 一斉に声が聞こえてくる。

「赤くて大きなドラゴンだ。東のあれとは違って話がしやすい。」
『ベラは今頃くしゃみをしているだろうな。』

 更に龍神さまに叱られて言い訳する所まで想像できる。元気にやっているだろうか?

『お主らが驚かぬ理由が分かった。既にそこまで距離の近い守護者がおったのだな…』
「話したと思ったが?」
『話し半分だと思うじゃろ!?ブラックドラゴンとか東の海の守護者じゃぞ!それを食べ物で手懐けるとか誰が信じるのじゃあ!!』

 爆発しそうなくらい、頭の上で尻尾を膨らませて騒ぐタマモ。
 言われてみればそうだが、実際に手懐けてしまったのだから仕方ない。

『うぐぐ…ここから離れられないのが口惜しい…』
『レッド!お前もか!?』
『昔は虫を食べたりしましたが、今は食事なんてしていませんからね。マナを吸って生きているだけですので。』
『そう言われると、憧れる気持ちは分かるのう…』

 タマモも手懐けられた側で、よく子供達と尻尾を振りながらおやつを食べる姿を見ている。

『じゃあ、落ち着いたら名産品で何か作ろう。ここは何が取れるんだ?』
『茸栽培が盛んらしいんだー。使わなくなった坑道を使って育ててるんだってノラから聞いたよー』
『茸か…シチュー、鍋には早いな…』
『串で焼いて食べれば良いんじゃない?困ったらカレーという手もあるしー』

 キノコカレーは気になるが想像がつかないな…

『ベラにも振る舞った焼きそばモドキが無難かもしれないが、味を見てから決めよう。口に合うかは分からないが。』
『楽しみにしております。』

 ニコニコ顔の分け身。
 本体の方は、いまいち喜ぶ表情が分かりにくいな。驚く顔は口や目が大きく開かれるからよく分かるのだが。

『ヒガン、お母様の到着は明日のお昼らしいけどどうする?』

 ジュリアが義母殿の予定を伝えてくれる。
 空路のおかげか超特急のようだな。

「朝に戻ろう。何もないだろうが、一晩様子を見ておきたいし、体も慣らしておきたい。どうあっても、溶岩の近くで作業することになるだろうしな。」
『魔法と魔導具はどうだ?』

 作品が気になる様子のバニラ。
 近い環境での試験も出来なかったからな。

「顔が日焼けみたいになるのはどうしようもなさそうだな。それ以外は快適に過ごせているよ。」
『日焼けはもうガスマスクくらいしか手がないんだ。それか日焼け止めだな。製薬だから父さんの領分だよ。』
「時間があったら作っておこう…」

 そう言われるほど精通している訳ではないのだが、必然的にそうなってしまっている。
 まあ、やれるだけの事はしてみよう。母や娘達、特にバニラは毎年やたら良い色に焼けるのが悩みらしいしな。3人の中で一番良い色に焼けてしまうが、ココアは北方エルフだからなのか赤くなるだけである。
 この後もとりとめのない話が続き、夕飯になった所で話は打ち切られた。

「じゃあ、こっちも夕飯にしよう。
 残り物のプレストーストだが食べるか?」
『興味があるのでいただきましょう。』

 軽く温め直した物を、分け身の方が表情を何度も変えながらペロリと食べ終えた。
 本体には小さすぎるか。

『お主も人化すれば良いものを。』
『服がありませんので。』
『律儀じゃのう…』

 裸マントがもう一人増えそうだが、溶岩に耐える素材がないのが不憫である。
 話し相手が増えた溶岩溜まり観測は、二人の話が途切れぬまま翌朝を迎えたのであった。
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