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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第142話 精霊の森を作ろう
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荒地に突然森ができるという奇跡の光景を目にした村人達は呆然と立ちすくしている。
「驚かしちゃったようでごめんなさい、彼女たちは人間じゃなくて精霊なんです。」
わたしが声をかけると村長さんが我にかえって言う。
「精霊というのは御伽噺に出てくる精霊のことですかな?」
「精霊は割りとどこにでも居るのですが、普通の人には見えないんです。
彼女たちは精霊の中でも上位の存在で、人の形になることができるのです。
上位の精霊になるとあんな奇跡のようなことができてしまうんです。」
村長さんはシュケーさんたちを精霊だと言ってもにわかには信じられない様子だ。
わたしの説明を聞いて戸惑っているのか黙り込んでしまった。
するとわたしの傍にいたロッテちゃんがフェイさん問いかける。
「おねえちゃんも精霊さんなの?」
「そうよ、私は水の精霊フェイ、私が作った泉は枯れることなく清浄な水が湧き出すわ。
泉の水はそのまま飲めてとっても体に良いのよ、だから汚さずに大切にしてね。」
「うん、おねえちゃん、きれいなお水を有り難う、大切にするね。」
あとで村長さんに聞いたのだけどこの村には井戸がなく、水は各自が魔法で生み出していたらしい。土が瘴気に汚染されているので最初から井戸を掘ろうとは思わなかったらしい。
水だけに魔力を使い切ってしまうことは出来ないため、水は節約して使わなければいけなかったみたい。
そのまま飲める水が湧き出していると聞いて村のみんなが喜んでいた。
わたしは、集まっている村のみんなに一つの提案をする。
「森は瘴気を浄化し清浄な空気を生み出す働きをしてくれます。
瘴気からみんなの体を守ってくれるんです。
でも、また『黒の使徒』の人たちが来て森を伐り払ってしまうかもしれません。
そこで、森の一部を人が手出しできないようにしてしまおうと思うのですが良いですか?」
「そんな事ができるのかね?」
「はい、できます。
ただし、そうすると『黒の使徒』の人だけでなく、村のみんなも森に手出しできなくなるんです。
そうすると、森で薪拾いもできないし、木材を手に入れることもできなくなります。
そこで、村の東西の森はそのままにして、泉のある北側の森だけを人が手を付けられないようにしたいと思うのです。」
どうするかって?
村の北側の森を王家の森と同じように精霊の森にしちゃおうって思っているの。
ソールさんにできるか聞いてみたら、精霊の森には多少狭いけどできるんじゃないかって。
村の三方の森を全部精霊の森にしてしまうと村が拡げられなくなっちゃうし、薪拾いや木材の入手もできなくなるので村のみんなに言ったように北側だけを精霊の森にするつもり。
村を拡げたいときや木材や薪を手に入れるときは東と西の森を利用してもらうの。
東と西の森は普通の森のままとするので、シュケーさんに燃えにくく、伐り倒し難い木を植えてもらったんだ。
オークの木が中心で、『黒の使徒』が火の魔法を撃ち込んでもちょっとやそっとでは燃えないといっていた。
村の人が木材調達のために伐るときは大変だろうけど、そこは頑張ってもらおう…。
村の人達にそう説明するとすんなりとお許しがもらえた。
元々荒地だったところをわたし達が森に変えたのだから、好きにしてかまわないって。
むしろ、東と西の森を自由にしてよいと言われた事が有り難いって。
森や林のない東部辺境地域では、材木や薪も貴重品で行商人に高いお金を払って買っていたんだって。
木材にいたっては取り寄せになるので手に入れること自体が大変だったらしい。
**********
村の人の許しが出たので、さっそく北の森を精霊の森にする作業に移る。
これは、ソールさんたちにお任せだ。
わたしやミーナちゃんはどうやって精霊の森にするのか何も聞かされていない。
わたし達を北の森の入り口にあるフェイさんの泉に残して、六人の上位精霊が森に入って行った。
どのくらい時間がたっただろうか、いきなり目の前におチビちゃんが湧いて出た。
それこそ、ポコポコと……。
「わあ!いきなり小人さんが湧いた!」
目の前に湧いて出た中位精霊をみたハンナちゃんが叫んだ。
「ここどこ?」
「そーるによばれた!」
「あたらしいもりにひっこし!」
「そーるどこ?」
おチビちゃん達がいっぺんに喋ってうるさい……。
「ソールさんたちは、あっちの森の中!」
わたしがそう言って森を指差すと、おチビちゃん達はわらわらと森に入って行った。
しばらくするとソールさん達が森から出てきた。
「ターニャちゃんが育った精霊の森から初期の住人を呼びました。
後は勝手に増えるでしょう。
おチビ達には自分達が勝手に弄くって良い範囲を指定し、そこに足を踏み入れた人間を排除するように指示しておきましたので、人間がこの森に手を出すことはできないでしょう。」
…どうやって呼んだのだろう?
おチビちゃん達は早速、自分達の居心地の良いように森を作り変えていると言う。
今現在、この森の中で異郷が作られているんだね……。
明日辺りどうなっているか見ておこう。
シュケーさんに寄って行ったハンナちゃんがシュケーさんのスカートの裾を掴んでモジモジとしている。
「ハンナちゃん、どうかしましたか?」
何か言いたそうにしているハンナちゃんにシュケーさんが優しく尋ねる。
「シュケーおねえちゃん、精霊の森ならばあの甘い実が生るの?」
詳しく話を聞いてみると、王家に森に行ったときに精霊から貰ったモモをロッテちゃんにも食べさせてあげたいらしい。そういえば、ハンナちゃんのお気に入りだったね、モモ。
「困ったわね、モモの木は植えられるけどロッテちゃんは精霊の森に入れないわよ。」
それを聞いてシュンとしてしまったハンナちゃんを見てシュケーさんは言った。
「この泉の畔に何本か桃の木を植えておきましょう。森の中位精霊にこの木の世話をするように言っておきます。きっと甘い実を付けさせてくれますよ。」
「シュケーおねえちゃん、ありがとう!だいすき!」
喜ぶハンナちゃんを見てシュケーさんが目尻を下げている。
シュケーさんったら、ハンナちゃんに甘々だ……。
「驚かしちゃったようでごめんなさい、彼女たちは人間じゃなくて精霊なんです。」
わたしが声をかけると村長さんが我にかえって言う。
「精霊というのは御伽噺に出てくる精霊のことですかな?」
「精霊は割りとどこにでも居るのですが、普通の人には見えないんです。
彼女たちは精霊の中でも上位の存在で、人の形になることができるのです。
上位の精霊になるとあんな奇跡のようなことができてしまうんです。」
村長さんはシュケーさんたちを精霊だと言ってもにわかには信じられない様子だ。
わたしの説明を聞いて戸惑っているのか黙り込んでしまった。
するとわたしの傍にいたロッテちゃんがフェイさん問いかける。
「おねえちゃんも精霊さんなの?」
「そうよ、私は水の精霊フェイ、私が作った泉は枯れることなく清浄な水が湧き出すわ。
泉の水はそのまま飲めてとっても体に良いのよ、だから汚さずに大切にしてね。」
「うん、おねえちゃん、きれいなお水を有り難う、大切にするね。」
あとで村長さんに聞いたのだけどこの村には井戸がなく、水は各自が魔法で生み出していたらしい。土が瘴気に汚染されているので最初から井戸を掘ろうとは思わなかったらしい。
水だけに魔力を使い切ってしまうことは出来ないため、水は節約して使わなければいけなかったみたい。
そのまま飲める水が湧き出していると聞いて村のみんなが喜んでいた。
わたしは、集まっている村のみんなに一つの提案をする。
「森は瘴気を浄化し清浄な空気を生み出す働きをしてくれます。
瘴気からみんなの体を守ってくれるんです。
でも、また『黒の使徒』の人たちが来て森を伐り払ってしまうかもしれません。
そこで、森の一部を人が手出しできないようにしてしまおうと思うのですが良いですか?」
「そんな事ができるのかね?」
「はい、できます。
ただし、そうすると『黒の使徒』の人だけでなく、村のみんなも森に手出しできなくなるんです。
そうすると、森で薪拾いもできないし、木材を手に入れることもできなくなります。
そこで、村の東西の森はそのままにして、泉のある北側の森だけを人が手を付けられないようにしたいと思うのです。」
どうするかって?
村の北側の森を王家の森と同じように精霊の森にしちゃおうって思っているの。
ソールさんにできるか聞いてみたら、精霊の森には多少狭いけどできるんじゃないかって。
村の三方の森を全部精霊の森にしてしまうと村が拡げられなくなっちゃうし、薪拾いや木材の入手もできなくなるので村のみんなに言ったように北側だけを精霊の森にするつもり。
村を拡げたいときや木材や薪を手に入れるときは東と西の森を利用してもらうの。
東と西の森は普通の森のままとするので、シュケーさんに燃えにくく、伐り倒し難い木を植えてもらったんだ。
オークの木が中心で、『黒の使徒』が火の魔法を撃ち込んでもちょっとやそっとでは燃えないといっていた。
村の人が木材調達のために伐るときは大変だろうけど、そこは頑張ってもらおう…。
村の人達にそう説明するとすんなりとお許しがもらえた。
元々荒地だったところをわたし達が森に変えたのだから、好きにしてかまわないって。
むしろ、東と西の森を自由にしてよいと言われた事が有り難いって。
森や林のない東部辺境地域では、材木や薪も貴重品で行商人に高いお金を払って買っていたんだって。
木材にいたっては取り寄せになるので手に入れること自体が大変だったらしい。
**********
村の人の許しが出たので、さっそく北の森を精霊の森にする作業に移る。
これは、ソールさんたちにお任せだ。
わたしやミーナちゃんはどうやって精霊の森にするのか何も聞かされていない。
わたし達を北の森の入り口にあるフェイさんの泉に残して、六人の上位精霊が森に入って行った。
どのくらい時間がたっただろうか、いきなり目の前におチビちゃんが湧いて出た。
それこそ、ポコポコと……。
「わあ!いきなり小人さんが湧いた!」
目の前に湧いて出た中位精霊をみたハンナちゃんが叫んだ。
「ここどこ?」
「そーるによばれた!」
「あたらしいもりにひっこし!」
「そーるどこ?」
おチビちゃん達がいっぺんに喋ってうるさい……。
「ソールさんたちは、あっちの森の中!」
わたしがそう言って森を指差すと、おチビちゃん達はわらわらと森に入って行った。
しばらくするとソールさん達が森から出てきた。
「ターニャちゃんが育った精霊の森から初期の住人を呼びました。
後は勝手に増えるでしょう。
おチビ達には自分達が勝手に弄くって良い範囲を指定し、そこに足を踏み入れた人間を排除するように指示しておきましたので、人間がこの森に手を出すことはできないでしょう。」
…どうやって呼んだのだろう?
おチビちゃん達は早速、自分達の居心地の良いように森を作り変えていると言う。
今現在、この森の中で異郷が作られているんだね……。
明日辺りどうなっているか見ておこう。
シュケーさんに寄って行ったハンナちゃんがシュケーさんのスカートの裾を掴んでモジモジとしている。
「ハンナちゃん、どうかしましたか?」
何か言いたそうにしているハンナちゃんにシュケーさんが優しく尋ねる。
「シュケーおねえちゃん、精霊の森ならばあの甘い実が生るの?」
詳しく話を聞いてみると、王家に森に行ったときに精霊から貰ったモモをロッテちゃんにも食べさせてあげたいらしい。そういえば、ハンナちゃんのお気に入りだったね、モモ。
「困ったわね、モモの木は植えられるけどロッテちゃんは精霊の森に入れないわよ。」
それを聞いてシュンとしてしまったハンナちゃんを見てシュケーさんは言った。
「この泉の畔に何本か桃の木を植えておきましょう。森の中位精霊にこの木の世話をするように言っておきます。きっと甘い実を付けさせてくれますよ。」
「シュケーおねえちゃん、ありがとう!だいすき!」
喜ぶハンナちゃんを見てシュケーさんが目尻を下げている。
シュケーさんったら、ハンナちゃんに甘々だ……。
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