精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ

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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ

第175話 水の女神様? ①

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 わたしがその気配に気が付いたとき、ハンナちゃんが元気な声で言った。

「だいせーれーさまだよね、えーと、水のせーれーだから、ウンディーネさまだ!
 こんにちは!ウンディーネさま!」

 大きな声だった、具体的には別荘に向かって歩いていたみんなに聞こえるくらい…。

 ハンナちゃんの声に何事かとみんながこちらに振り返った。
 それはハンナちゃんの目の前にウンディーネおかあさんがちょうど姿を現したところだった。

 いきなり姿を現した人物、しかも湖面に立っている。

 みんなこちらに振り向いた姿勢で固まってしまった、驚くのは無理もないね…。


「姿を消していたのに私の気配に気が付くなんてハンナちゃんはなかなか鋭いのね。
 それにしても、一度会っただけなのに良く私のことを覚えていたわね。偉いわよ、ハンナちゃん。
 それに引き換え、ターニャちゃんはおかあさんに挨拶もないの?おかあさん、悲しいわ。」

 みんなの視線も気にせずウンディーネおかあさんはわざとらしく悲しそうな素振りをした。

「ウンディーネおかあさん、お久し振りです。思わぬところで会えてとっても嬉しいです。
 でも、人の目がないところに出てきてもらえればもっと嬉しかったんですが…。」

 わたしの返事にウンディーネおかあさんは、フローラちゃん達を見て、自分のいる所を確認して、

「あら、ごめんなさいね。」

と言った。

 
 驚きのあまり声をなくしたみんなはわたし達のやり取りを黙って見ていたが、ルーナちゃんが何かに気付いたようなハッとした表情を見せた。
 そして、ウンディーネおかあさんを指差して、

「あっ、水の女神様だ!」

と言った。こら、人を指差したらいけないと習ったでしょうに…。

 たしかに、純白の薄絹の衣装を纏ったウンディーナおかあさんの姿は女神様と言われても納得してしまう神々しさはあると思う、水の上に浮かんでいるしね。

 ルーナちゃんの一言にエルフリーデちゃん達地元のみんながざわついてしまってどう収拾しようかと思っているとフローラちゃんが歩み出てきた。

「ウンディーネ様ご無沙汰しております、フロ-ラでございます。
 再びお目にかかれて光栄でございます。
 ターニャちゃんとお話しすることもたくさんあるでしょうから、私の別荘にお招きしたいのですがいかがでしょうか。」

 フローラちゃんがウンディーネおかあさんの前で跪いて言った。

「おお、フローラか、久しいな。そう畏まるでない、立ち上がって楽にせい。
 息災であったか、その後体調は悪くしてはいないか?」

「はい、おかげさまで今までになく健やかに日々を送らせていただいております。
 ルナさんにも気を配っていただいておりますので、瘴気中毒をぶり返すこともございません。」

「そうか、それはよかった。
 そうだな、周りのものを驚かしてしまったみたいだし、お招きを受けることにしようか。」


     **********


 場所を移して、ここは王様が使っている応接室、ソファーの王様が座る位置には何故かウンディーネおかあさんが座らされている。

 それを見て困惑するエルフリーデちゃんがこそっとフローラちゃんに尋ねた。

「あの、そちらの方はどちら様でしょうか?
 学園の入学式のときに貴賓席から入学式を見てらした方ですよね。」
 
 フローラちゃんはどう答えたものかと思案しているようだ。

 
 そんな二人を尻目にわたしはウンディーネおかあさんに尋ねる。

「ウンディーネおかあさんはどうしてここにいたの?
 わたしに会いに来てくれたのかな?」

「どうしてもなにも、人が訪れる以前のはるか昔からこの湖は私のお気に入りの場所だよ。
 私のお気に入りの場所はなにも王家の森の泉だけじゃないからね。
 精霊の森にいるとエーオースの奴がこき使うものだから、たまには自分のテリトリーに戻って骨休みをしないとね。
 もう一月近くここにいたのだけど、なにやらターニャちゃんの気配がしたものだから様子を見に来たんだ。
 姿を消してこっそりとターニャちゃん達の様子を窺っていたんだけど、ハンナちゃんに突然声をかけられて、うっかり出て来ちゃった。」

 ああ、ウンディーネおかあさんも自主的に夏休みをとっていたんだ。
 二千年も瘴気の森の浄化ばかりしていると飽きるものね…。

 その時、ルーナちゃんがわたしに声をかけてきた。

「ねえ、もしかして、ターニャちゃんも神様なの?」

「ふぇ?」
 
 あ、変な声が出た、そんな質問されるとは思わなかったから。

「だって、そちらの方、水の女神様だよね。
 さっき、人が訪れるよりずっと昔からこの湖にいたって言ってた。
 じゃあ、女神様の娘のターニャちゃんも神様なんじゃないの?
 だから、あんな奇跡みたいなことができるのかなって。」

 あ、さっきのウンディーネおかあさんとの会話を聞いていたんだ。

「うん、私は女神なんてものになったことは一度もないぞ?」

 ウンディーネおかあさんがそう言った時、その言葉に被せるようなタイミングでフローラちゃんが尋ねた。

「ウンディーネ様、ウンディーネ様のことをここにいるみんなにご紹介してよろしいでしょうか?」

「えっ、私のこと?別にかまわないわよ、ターニャちゃんが学園でお世話になっている子達なんでしょう。」

 そっか、フローラちゃんは大精霊であるウンディーネおかあさんのことを話して良いものか迷っていたんだね。
 
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