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第10章 王都に春はまだ遠く
第260話 ご機嫌な皇太子妃とやつれた女官
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一の月も半ばを過ぎたが、王都はいまだに雪が降り続いている。
除雪をしていない場所はとうとう大人の背丈を越えるほどの積雪になっちゃったよ。
「これで本当に精霊の加護があるの?」って、フェイさんに聞いたら王都の位置ならば精霊の加護がなければもっととんでもない吹雪になっていると返ってきた。
春以降、雪解けの水が田畑を潤すためにはこのくらいの積雪が必要らしい。
そろそろ、みんなストレスが溜まり始めている頃で、わたしもどんよりした雪雲を見ると気が重い。
そんな中で、一人、ご機嫌な人物が目の前に。
「この国の滓になっていた貴族が一掃出来てすっきりしたわ。
まだ、ろくでもない連中は残っているけど、後は小者ばっかり。
旗頭だったアロガンツを失ったのでしばらく大人しくしているでしょう。
この冬は良い人材も手に入ったし、新年早々縁起がいいわ。」
ミルトさんは、不平貴族の中でも有力な家を軒並み取り潰しにできたのでご満悦みたい。
しかも、今まで目をつけていた才媛を自分の専属女官に引き抜けたのだから笑いが止まらないようだ。
新年早々縁起がいいって、ミルトさんにはそうだろうけど、取り潰された貴族家にとっては新年早々縁起が悪かったと思うよ。だいたい、この大雪の中、路頭に迷うなんてどんな虐めなんだ…。
「失礼な、この雪の中、路頭に迷わせるような非人道的なことはしませんよ。
王宮を何だと思っているのですか、アフターケアは万全です。」
ミルトさんが自慢げに話した内容はこのようなことだったよ。
経済的に破綻して貴族位を取り上げられた家の当主は不始末の責任を取らされて王宮を解雇されたそうだ。
でも、それは当主に限った話しで、幸い取り潰された家には成人した男子がおり、どの家も王宮に出仕させていたらしい。貴族特権で、家の跡継ぎは無試験で王宮に出仕できるからね。
彼らは、貴族特権は失うが平民の役人として王宮に勤め続けることが出来るそうだ。
家が潰れたのは彼らの責任ではないとの判断からみたいね。
そして、住む家を失った彼らには官舎が貸し与えられたらしい。
「寝室二つに、リビングとキッチン、それにトイレも付いているわ。
今王宮に仕えている平民の官僚は、みんな官舎に住んでいるの。
王宮に近くて便利だし、市井の貸家よりもずっと立派よ、家賃も相場の半分だし。
夫婦と子供二人を前提に作ってあるので、家族が多い貴族家が移り住むには少し手狭だろうけど、頑張れば八人くらいは詰め込めると思うわ。」
王宮の仕事は朝が早くて夜も遅くまでやっているらしい、登用試験課の人なんかリタさんのせいで徹夜仕事だなんて言っていたらしいしね。
なので、出仕するのに便利なように王宮の近くに官舎を造ったそうだ。しかし、王宮の周りは貴族街、あまりみすぼらしい建物を造るわけにはいかない。
というわけで周りの景観に配慮してそれなりに立派な官舎を造ったみたい。
すると今度問題になるのは家賃、王宮近くの一等地で、立派な部屋、普通なら平民に払える家賃ではなくなってしまう。
そこで、平民の官僚の給金でも十分に支払える家賃に抑えたところ相場の半分以下になったらしい。
安くてきれいだということで平民の官僚の大部分はこの官舎に住んでいるらしい。
特に平民に限っている訳ではないので、地方領主の二男坊以下で家を継げない貴族の子息が王宮の官僚になった場合にも官舎に住むのが普通みたい。
あと、王都の貴族の子息でも、結婚したての官僚なんかは家族に気兼ねなく新婚生活を楽しむために官舎に入る場合があるそうだ。
どうも、官舎というのは貴族の子息が住んでも不満が出ない水準の部屋みたいだね。
そんな部屋が相場の半額なのか…、王宮の官僚って給金が高いと聞くけど、実際はそれ以上に恵まれているんだね。王宮の官僚になりたいという人が多いはずだ。
わたしがそんな感想を漏らすと、ミルトさんが言う。
「そのくらいのフリンジベネフィットで良い人材が集まるなら安い物よ。
王宮は、いつでも人材不足で良い人材をもっと欲しいのよ。
王宮は給金以上に福利厚生面が良いと噂になって、人材が集まれば御の字ね。」
「フリンジ…、なに、それ。」
「ぶっちゃけて言えば『余禄』のことよ。
『余禄』というとズルっぽく感じるけど、そう言えばまともなモノに聞こえるでしょう。」
まあ、何でも言い方一つで印象が違って聞こえるからね…。
それはともかく、お取り潰しになった貴族に一応住居を提供したのはわかったよ。
でも、あの人達って今まで自分でご飯を作ったことのない人達だよね。
ちゃんと、ご飯食べているのかな?
**********
ミルトさんの私室でそんな他愛のない話しをしていると、げっそりとやつれたリタさんがおぼつかない足取りで部屋に入ってきた。
何だろう、風邪でもひいたのかな。
「リタさん、どうしたの具合が悪いのなら治してあげようか?」
「ターニャちゃん、有り難う、でも少し疲れているだけだから平気よ。
ミルト様、ただいま新人研修を滞りなく終えてこちらに戻りました。」
どうも、ハードな研修を受講していたようだ、王宮の新人研修ってそんなにきついんだ。
「リタさん、お疲れ様でした。
どうでしたか研修は、仕事の手順とか根回しの仕方とか参考になったでしょう。」
ミルトさんはそう言うが、リタさんは納得がいかないみたいだよ。
「ミルト様、あれは今後このくらいの仕事はしてもらうから覚悟しておけという事でしょうか。
その心構えをさせるためにあそこに研修に行ったと理解してよろしいでしょうか。」
相当にこき使われたようで、リタさんは今後の業務について疑心暗鬼になっているみたい。
「何だ、そんな事心配していたの。
大丈夫よ、あんなに働かせるわけないじゃない。
あそこで学んできて欲しかったのは、人の蹴飛ばし方と締め上げ方よ。
優秀なあなたなら説明せずとも解るかと思ったのだけど…。」
蹴飛ばし方?締め上げ方?いったいどこへ行かされたのだろう?
「そんなの解るわけないじゃありませんか、考えている時間なんかありませんでしたよ。
生き地獄に送られて、延々と要求書の計算をさせられたのです。何かの虐めか、拷問かと思いました。」
生き地獄?そんな物騒な…。
「ねぇ、ミルトさん、リタさんに何をやらせたの?」
思わず、口を挟んでしまったよ、だって気になるもの。
「リタさんの新人研修なんだけどね、本来なら配属された部署でやるのよ。
でも、私付きの女官ってリタさんだけでしょう、ここでは研修のしようが無いのでどこか他へ頼もうということになったの。
本来ならばお義母様のところへ預けるのが筋なんでしょうが、あそこの女官っていかにも王家付きの女官という感じなのよ。
儀式とか式典とかそういう方向のことが得意で私が求めているモノと違うのよね。
それで、ターニャちゃんも会ったことあるでしょう、カリーナちゃんのお父さん、彼のところに預けたの。」
「ゲヴィッセン子爵だよね、皇太子様のお気に入りなんだっけ。たしか、主計の課長さんだ。
何やっているところなの?」
「主計というのはこの国の予算を作っているところなの。
予算についてはもう学園で習ったかしら。」
「うん、冬休み前に習ったよ。一年毎に決めるんだよね。
税収なんかの国の収入を見積もると同時に、どのような支出に配分するか決めるんだよね。
国のお役人は決められた予算に従って事業を遂行するの。」
「はい、よく出来ました。
その予算を作るのが主計の仕事よ。
予算を作る上で大事なのは人を蹴飛ばすことと人を締め上げることよ。」
「はあ?」
意味が解らないことを言われて、思わず間抜けな声を出してしまいました。
「あのね、予算を作るときは各部署に要求を出してもらうのだけど、黙っているとギリギリまで出してこないのね。
それだと、新年度に間に合わないのよ、だから各部署の人間を蹴飛ばして出来る限り早期に要求を出させるの。
そして、出てきた要求を重箱の隅を突っつくように細かく検討して銅貨一枚の無駄も無いようにするの。
だいたい各部署は多めに鯖読んで要求してくるから、それをネチネチと締め上げるのよ。
リタさんには、そのコツを学んできて欲しかったのだけど…。」
言い方は悪いけど、ミルトさんはリタさんに他部署の役人を上手に使うコツを掴んできて欲しかったみたい。
ミルトさんの意図が伝わっていなかったのか、実際は計算係として馬車馬のように働かされたみたいだけど。
ミルトさんが言うには、王宮の官僚は大部分は勤勉な者だけど、歴史の長い貴族を中心に横柄でろくに仕事もしないで威張り散らしている者が結構いるらしい。
その中でアロガンツ家を中心に力を持っている貴族を十四家ほど取り潰しにしたが、まだ小者を中心にそんな貴族は多いみたい。
ミルトさんは綱紀粛正を掲げ、出退勤管理の厳格化や業務時間内の休憩室の閉鎖等を行ってきたんだっけ。それを今後も推し進めて働かない貴族を蹴飛ばして働かせたいそうだ。
「主計の人間がいくら予算の無駄を切り詰めても、貴族制度がある限り人件費の無駄を省くにも限度があるのよ。
この間みたいに屑貴族を取り潰せれば話は簡単なのだけどね。実際は、しがらみがあるからそう簡単にはいかないの。
だったら、人件費を無駄にしないために、尻を蹴飛ばして働いてもらうしかないでしょう。
だから、リタさんには人を蹴飛ばして働かせるのが上手い部署に研修に行ってもらったのよ。」
ミルトさんの右腕となって働くのならそういう方面のノウハウも必要らしい。
でも、ミルトさん、あまり締め付けすぎるとまた貴族から恨まれますよ。
お疲れ気味のリタさんには、とりあえず『癒し』を施しておきました。
ガンバ!
除雪をしていない場所はとうとう大人の背丈を越えるほどの積雪になっちゃったよ。
「これで本当に精霊の加護があるの?」って、フェイさんに聞いたら王都の位置ならば精霊の加護がなければもっととんでもない吹雪になっていると返ってきた。
春以降、雪解けの水が田畑を潤すためにはこのくらいの積雪が必要らしい。
そろそろ、みんなストレスが溜まり始めている頃で、わたしもどんよりした雪雲を見ると気が重い。
そんな中で、一人、ご機嫌な人物が目の前に。
「この国の滓になっていた貴族が一掃出来てすっきりしたわ。
まだ、ろくでもない連中は残っているけど、後は小者ばっかり。
旗頭だったアロガンツを失ったのでしばらく大人しくしているでしょう。
この冬は良い人材も手に入ったし、新年早々縁起がいいわ。」
ミルトさんは、不平貴族の中でも有力な家を軒並み取り潰しにできたのでご満悦みたい。
しかも、今まで目をつけていた才媛を自分の専属女官に引き抜けたのだから笑いが止まらないようだ。
新年早々縁起がいいって、ミルトさんにはそうだろうけど、取り潰された貴族家にとっては新年早々縁起が悪かったと思うよ。だいたい、この大雪の中、路頭に迷うなんてどんな虐めなんだ…。
「失礼な、この雪の中、路頭に迷わせるような非人道的なことはしませんよ。
王宮を何だと思っているのですか、アフターケアは万全です。」
ミルトさんが自慢げに話した内容はこのようなことだったよ。
経済的に破綻して貴族位を取り上げられた家の当主は不始末の責任を取らされて王宮を解雇されたそうだ。
でも、それは当主に限った話しで、幸い取り潰された家には成人した男子がおり、どの家も王宮に出仕させていたらしい。貴族特権で、家の跡継ぎは無試験で王宮に出仕できるからね。
彼らは、貴族特権は失うが平民の役人として王宮に勤め続けることが出来るそうだ。
家が潰れたのは彼らの責任ではないとの判断からみたいね。
そして、住む家を失った彼らには官舎が貸し与えられたらしい。
「寝室二つに、リビングとキッチン、それにトイレも付いているわ。
今王宮に仕えている平民の官僚は、みんな官舎に住んでいるの。
王宮に近くて便利だし、市井の貸家よりもずっと立派よ、家賃も相場の半分だし。
夫婦と子供二人を前提に作ってあるので、家族が多い貴族家が移り住むには少し手狭だろうけど、頑張れば八人くらいは詰め込めると思うわ。」
王宮の仕事は朝が早くて夜も遅くまでやっているらしい、登用試験課の人なんかリタさんのせいで徹夜仕事だなんて言っていたらしいしね。
なので、出仕するのに便利なように王宮の近くに官舎を造ったそうだ。しかし、王宮の周りは貴族街、あまりみすぼらしい建物を造るわけにはいかない。
というわけで周りの景観に配慮してそれなりに立派な官舎を造ったみたい。
すると今度問題になるのは家賃、王宮近くの一等地で、立派な部屋、普通なら平民に払える家賃ではなくなってしまう。
そこで、平民の官僚の給金でも十分に支払える家賃に抑えたところ相場の半分以下になったらしい。
安くてきれいだということで平民の官僚の大部分はこの官舎に住んでいるらしい。
特に平民に限っている訳ではないので、地方領主の二男坊以下で家を継げない貴族の子息が王宮の官僚になった場合にも官舎に住むのが普通みたい。
あと、王都の貴族の子息でも、結婚したての官僚なんかは家族に気兼ねなく新婚生活を楽しむために官舎に入る場合があるそうだ。
どうも、官舎というのは貴族の子息が住んでも不満が出ない水準の部屋みたいだね。
そんな部屋が相場の半額なのか…、王宮の官僚って給金が高いと聞くけど、実際はそれ以上に恵まれているんだね。王宮の官僚になりたいという人が多いはずだ。
わたしがそんな感想を漏らすと、ミルトさんが言う。
「そのくらいのフリンジベネフィットで良い人材が集まるなら安い物よ。
王宮は、いつでも人材不足で良い人材をもっと欲しいのよ。
王宮は給金以上に福利厚生面が良いと噂になって、人材が集まれば御の字ね。」
「フリンジ…、なに、それ。」
「ぶっちゃけて言えば『余禄』のことよ。
『余禄』というとズルっぽく感じるけど、そう言えばまともなモノに聞こえるでしょう。」
まあ、何でも言い方一つで印象が違って聞こえるからね…。
それはともかく、お取り潰しになった貴族に一応住居を提供したのはわかったよ。
でも、あの人達って今まで自分でご飯を作ったことのない人達だよね。
ちゃんと、ご飯食べているのかな?
**********
ミルトさんの私室でそんな他愛のない話しをしていると、げっそりとやつれたリタさんがおぼつかない足取りで部屋に入ってきた。
何だろう、風邪でもひいたのかな。
「リタさん、どうしたの具合が悪いのなら治してあげようか?」
「ターニャちゃん、有り難う、でも少し疲れているだけだから平気よ。
ミルト様、ただいま新人研修を滞りなく終えてこちらに戻りました。」
どうも、ハードな研修を受講していたようだ、王宮の新人研修ってそんなにきついんだ。
「リタさん、お疲れ様でした。
どうでしたか研修は、仕事の手順とか根回しの仕方とか参考になったでしょう。」
ミルトさんはそう言うが、リタさんは納得がいかないみたいだよ。
「ミルト様、あれは今後このくらいの仕事はしてもらうから覚悟しておけという事でしょうか。
その心構えをさせるためにあそこに研修に行ったと理解してよろしいでしょうか。」
相当にこき使われたようで、リタさんは今後の業務について疑心暗鬼になっているみたい。
「何だ、そんな事心配していたの。
大丈夫よ、あんなに働かせるわけないじゃない。
あそこで学んできて欲しかったのは、人の蹴飛ばし方と締め上げ方よ。
優秀なあなたなら説明せずとも解るかと思ったのだけど…。」
蹴飛ばし方?締め上げ方?いったいどこへ行かされたのだろう?
「そんなの解るわけないじゃありませんか、考えている時間なんかありませんでしたよ。
生き地獄に送られて、延々と要求書の計算をさせられたのです。何かの虐めか、拷問かと思いました。」
生き地獄?そんな物騒な…。
「ねぇ、ミルトさん、リタさんに何をやらせたの?」
思わず、口を挟んでしまったよ、だって気になるもの。
「リタさんの新人研修なんだけどね、本来なら配属された部署でやるのよ。
でも、私付きの女官ってリタさんだけでしょう、ここでは研修のしようが無いのでどこか他へ頼もうということになったの。
本来ならばお義母様のところへ預けるのが筋なんでしょうが、あそこの女官っていかにも王家付きの女官という感じなのよ。
儀式とか式典とかそういう方向のことが得意で私が求めているモノと違うのよね。
それで、ターニャちゃんも会ったことあるでしょう、カリーナちゃんのお父さん、彼のところに預けたの。」
「ゲヴィッセン子爵だよね、皇太子様のお気に入りなんだっけ。たしか、主計の課長さんだ。
何やっているところなの?」
「主計というのはこの国の予算を作っているところなの。
予算についてはもう学園で習ったかしら。」
「うん、冬休み前に習ったよ。一年毎に決めるんだよね。
税収なんかの国の収入を見積もると同時に、どのような支出に配分するか決めるんだよね。
国のお役人は決められた予算に従って事業を遂行するの。」
「はい、よく出来ました。
その予算を作るのが主計の仕事よ。
予算を作る上で大事なのは人を蹴飛ばすことと人を締め上げることよ。」
「はあ?」
意味が解らないことを言われて、思わず間抜けな声を出してしまいました。
「あのね、予算を作るときは各部署に要求を出してもらうのだけど、黙っているとギリギリまで出してこないのね。
それだと、新年度に間に合わないのよ、だから各部署の人間を蹴飛ばして出来る限り早期に要求を出させるの。
そして、出てきた要求を重箱の隅を突っつくように細かく検討して銅貨一枚の無駄も無いようにするの。
だいたい各部署は多めに鯖読んで要求してくるから、それをネチネチと締め上げるのよ。
リタさんには、そのコツを学んできて欲しかったのだけど…。」
言い方は悪いけど、ミルトさんはリタさんに他部署の役人を上手に使うコツを掴んできて欲しかったみたい。
ミルトさんの意図が伝わっていなかったのか、実際は計算係として馬車馬のように働かされたみたいだけど。
ミルトさんが言うには、王宮の官僚は大部分は勤勉な者だけど、歴史の長い貴族を中心に横柄でろくに仕事もしないで威張り散らしている者が結構いるらしい。
その中でアロガンツ家を中心に力を持っている貴族を十四家ほど取り潰しにしたが、まだ小者を中心にそんな貴族は多いみたい。
ミルトさんは綱紀粛正を掲げ、出退勤管理の厳格化や業務時間内の休憩室の閉鎖等を行ってきたんだっけ。それを今後も推し進めて働かない貴族を蹴飛ばして働かせたいそうだ。
「主計の人間がいくら予算の無駄を切り詰めても、貴族制度がある限り人件費の無駄を省くにも限度があるのよ。
この間みたいに屑貴族を取り潰せれば話は簡単なのだけどね。実際は、しがらみがあるからそう簡単にはいかないの。
だったら、人件費を無駄にしないために、尻を蹴飛ばして働いてもらうしかないでしょう。
だから、リタさんには人を蹴飛ばして働かせるのが上手い部署に研修に行ってもらったのよ。」
ミルトさんの右腕となって働くのならそういう方面のノウハウも必要らしい。
でも、ミルトさん、あまり締め付けすぎるとまた貴族から恨まれますよ。
お疲れ気味のリタさんには、とりあえず『癒し』を施しておきました。
ガンバ!
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