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第13章 何も知らない子供に救いの手を
第345話 単なる偶然です、意図した訳ではないのです…
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さて、ザイヒト皇子だけど、呆れたことに帝国にいた時も皇宮から出たことが殆んど無く、帝都の様子すら良く知らないという。
ましてや王都を歩いたことなど、留学して三年が経とうというのに一度も無いそうだ。
いったい何のために留学してきたのやら……。
ちなみに、ザイヒト皇子の幼少の頃からの侍女は皇子が王国に留学することを声高々に反対していたみたい。
王国の気風はザイヒト皇子の健全な精神を蝕みかねないなんて失礼なことを言っていたらしいよ。
ザイヒト皇子に王国の自由な雰囲気に馴染んで欲しくなかったので、侍女が皇子を学園の外に出さなかったのではないかとみんなが言っていた。
それで、ザイヒト皇子は市井の様子を知った方が良いという事になり、今日はポルトの町を散策に来ているの。
「ここがポルトの町か、留学してくる時もこの港に寄ったのだが、すぐ馬車で移動したので町の様子を見ている暇も無かったのだ。
随分と賑やかな街なのだな、留学するときに船に乗った帝国の港町は人影が疎らで、元気がない雰囲気だったぞ。
吾の侍女は、港町なんてどこも寂れたところばかりだと言っていたのだがな。」
そうなのかな?ルーイヒハーフェンは結構賑やかな街だった気がするけど…。
いったいどこの港町から船に乗ったのだろうか。
ポルトの繁華街や港の市場などを巡ると初めて街中を歩くと言うザイヒト皇子は色々な物に興味を惹かれるようで、初めてこの町に連れて来た時の孤児達みたいにフラフラとお店に吸い寄せられていた。
「この町にあるものは初めて目にする物ばかりで非常に興味深い。
物があふれているし、町行く者達は皆表情が明るく楽しげだ。
この町は本当に豊かなんだな。」
まあ、この国有数の大都市だし、最大の貿易港だからね。
ただ、テーテュスさんから聞いた話だと、貿易港って色々な国の人や物が行き交うので基本的には栄えているし、賑わっているみたいだよ。
どこも寂れているって、それは商売が上手くいっていないのでは…。
**********
そうこうしている内にわたし達は港の岸壁にまで辿り着き、目の前にはテーテュスさんの巨大な商船、そしてそれを前にして船乗りに色々と指示を出しているテーテュスさんの姿があった。
「おう、ターニャじゃないか。
今日は診療所の日じゃないんだな。食べ歩きにでも来たのか?」
イヤだな、その言い方だとわたしがよっぽど食い意地が張っているようじゃない…。
「いえ、今日はこの子に町を案内しているんです。」
わたしの答えにテーテュスさんはザイヒト王子を見て顔をしかめた。そして…。
「今日はまた、随分と小汚いガキを連れているんだな、珍しい。」
と言った。小汚いって……。
「おい、何だ、この無礼な女は…」
ザイヒト皇子が声を荒げようとするのを遮るようにヴィクトーリアさんが会話に加わってきたの。
「テーテュス様、お久し振りです。
先般はお世話になりました。
テーテュス様が帝国製の魔導具を大量にご購入頂いたおかげで、当初計画を大幅に上回る食料品を王国から買い付けることが出来ました。」
「ああ、皇后か、久しいな。
こちらこそ礼を言わねばならん、あの魔導具で大分儲けさせてもらったからな。
小型の魔導具であれば幾らでも仕入れるから、今後とも余剰があったら声をかけてくれ。」
ああ、以前テーテュスさんが帝国製の魔導具を仕入れたいという話をヴィクトーリアさんにしていたみたいだね。
食料品を少しでも多く買付けして帝国に送りたいヴィクトーリアさんとして渡りに船だったみたい。
「そうそう、テーテュス様、ご紹介します。
これは、帝国の第二皇子でザイヒトと申します。よろしくお願いします。
ザイヒト、この方は南大陸で大きなご商売を営まれているテーテュス様です。
先般、我が国の魔導具を大量にご購入いただいたのですよ。
おかげで、予定より大分多くの食料を帝国に送ることが出来たのです。」
ザイヒト皇子は、ヴィクトーリアさんがテーテュスさんを目上の人のように扱うものだから混乱しているようだ。そうだよね、帝室の人は一番偉いと習ってきたんだものね。
それよりも、わたしはテーテュスさんがこちらをみてニヤニヤと笑っているのが気になる。
そして、ついにテーテュスさんはお腹を抱えて笑い出してしまった。
「ターニャ、おまえ最高だよ!おまえ、ドンだけいい性格しているんだ。」
はあ?わたし、何かそんなに受けることしただろうか?
わたしが大笑いするテーテュスさんを訝しげに見ているとテーテュスさんは言うの。
「そいつだろう、あの頭のおかしい連中が御輿に担ぎたがっている皇子は。」
「あれ?わたし、その話をテーテュスさんに話しましたっけ?」
いや、した覚えがないよ。わたしの問い掛けにテーテュスさんが笑いながら言った。
「いやな、私の船に並んだ形で停泊している三隻の小船があるだろう。
あれな、そいつを拉致しに来た連中の船なんだよ。
瘴気塗れの奴らが後ろに停泊したんで鬱陶しいから少し探りを入れてみたんだ。
あいつらな、そいつを拉致して帝国に連れ帰って、皇太子を殺す計画らしいぞ。
皇太子をそいつに挿げ替えるんだと。
もうとっくに、ポルトに戻ってきても良い筈なのに、王都に拉致しにいった仲間が戻ってこないので気を揉んでいるようなんだ。
わざわざ、そいつがターニャ達の掌中にあることを見せ付けに来たんだろう。
奴らの悔しがる顔が目に浮かぶよ。
それで馬鹿共を釣り出そうってか?」
な、何という偶然。
テーテュスさんに言われて岸壁を見るとテーテュスさんの船に続くように同じ型の船が三隻停泊している。
小船というけど、従来のこの大陸の基準で言えば十分大きな船だよ。
よく見るとご丁寧にバラの紋章の旗を掲げているじゃない。
そういえば、連中がザイヒト皇子の拉致に成功した場合、どうやって国外に連れ出すつもりだったのかまで気が回らなかった。
魔獣に襲われるリスクがある瘴気の森の中を通る訳にいかないのであれば、海路を使うしかないじゃない。
やんごとなき方を乗せるのだから当然専用の船を用意しているよね。
まさか、その辺の交易船に便乗すると言う訳にはいかないものね。
テーテュスさんの言う通り、これは船で待機している『黒の使徒』の連中を釣り出すチャンスかも。
別荘に帰ったらみんなに相談してみよう。
ましてや王都を歩いたことなど、留学して三年が経とうというのに一度も無いそうだ。
いったい何のために留学してきたのやら……。
ちなみに、ザイヒト皇子の幼少の頃からの侍女は皇子が王国に留学することを声高々に反対していたみたい。
王国の気風はザイヒト皇子の健全な精神を蝕みかねないなんて失礼なことを言っていたらしいよ。
ザイヒト皇子に王国の自由な雰囲気に馴染んで欲しくなかったので、侍女が皇子を学園の外に出さなかったのではないかとみんなが言っていた。
それで、ザイヒト皇子は市井の様子を知った方が良いという事になり、今日はポルトの町を散策に来ているの。
「ここがポルトの町か、留学してくる時もこの港に寄ったのだが、すぐ馬車で移動したので町の様子を見ている暇も無かったのだ。
随分と賑やかな街なのだな、留学するときに船に乗った帝国の港町は人影が疎らで、元気がない雰囲気だったぞ。
吾の侍女は、港町なんてどこも寂れたところばかりだと言っていたのだがな。」
そうなのかな?ルーイヒハーフェンは結構賑やかな街だった気がするけど…。
いったいどこの港町から船に乗ったのだろうか。
ポルトの繁華街や港の市場などを巡ると初めて街中を歩くと言うザイヒト皇子は色々な物に興味を惹かれるようで、初めてこの町に連れて来た時の孤児達みたいにフラフラとお店に吸い寄せられていた。
「この町にあるものは初めて目にする物ばかりで非常に興味深い。
物があふれているし、町行く者達は皆表情が明るく楽しげだ。
この町は本当に豊かなんだな。」
まあ、この国有数の大都市だし、最大の貿易港だからね。
ただ、テーテュスさんから聞いた話だと、貿易港って色々な国の人や物が行き交うので基本的には栄えているし、賑わっているみたいだよ。
どこも寂れているって、それは商売が上手くいっていないのでは…。
**********
そうこうしている内にわたし達は港の岸壁にまで辿り着き、目の前にはテーテュスさんの巨大な商船、そしてそれを前にして船乗りに色々と指示を出しているテーテュスさんの姿があった。
「おう、ターニャじゃないか。
今日は診療所の日じゃないんだな。食べ歩きにでも来たのか?」
イヤだな、その言い方だとわたしがよっぽど食い意地が張っているようじゃない…。
「いえ、今日はこの子に町を案内しているんです。」
わたしの答えにテーテュスさんはザイヒト王子を見て顔をしかめた。そして…。
「今日はまた、随分と小汚いガキを連れているんだな、珍しい。」
と言った。小汚いって……。
「おい、何だ、この無礼な女は…」
ザイヒト皇子が声を荒げようとするのを遮るようにヴィクトーリアさんが会話に加わってきたの。
「テーテュス様、お久し振りです。
先般はお世話になりました。
テーテュス様が帝国製の魔導具を大量にご購入頂いたおかげで、当初計画を大幅に上回る食料品を王国から買い付けることが出来ました。」
「ああ、皇后か、久しいな。
こちらこそ礼を言わねばならん、あの魔導具で大分儲けさせてもらったからな。
小型の魔導具であれば幾らでも仕入れるから、今後とも余剰があったら声をかけてくれ。」
ああ、以前テーテュスさんが帝国製の魔導具を仕入れたいという話をヴィクトーリアさんにしていたみたいだね。
食料品を少しでも多く買付けして帝国に送りたいヴィクトーリアさんとして渡りに船だったみたい。
「そうそう、テーテュス様、ご紹介します。
これは、帝国の第二皇子でザイヒトと申します。よろしくお願いします。
ザイヒト、この方は南大陸で大きなご商売を営まれているテーテュス様です。
先般、我が国の魔導具を大量にご購入いただいたのですよ。
おかげで、予定より大分多くの食料を帝国に送ることが出来たのです。」
ザイヒト皇子は、ヴィクトーリアさんがテーテュスさんを目上の人のように扱うものだから混乱しているようだ。そうだよね、帝室の人は一番偉いと習ってきたんだものね。
それよりも、わたしはテーテュスさんがこちらをみてニヤニヤと笑っているのが気になる。
そして、ついにテーテュスさんはお腹を抱えて笑い出してしまった。
「ターニャ、おまえ最高だよ!おまえ、ドンだけいい性格しているんだ。」
はあ?わたし、何かそんなに受けることしただろうか?
わたしが大笑いするテーテュスさんを訝しげに見ているとテーテュスさんは言うの。
「そいつだろう、あの頭のおかしい連中が御輿に担ぎたがっている皇子は。」
「あれ?わたし、その話をテーテュスさんに話しましたっけ?」
いや、した覚えがないよ。わたしの問い掛けにテーテュスさんが笑いながら言った。
「いやな、私の船に並んだ形で停泊している三隻の小船があるだろう。
あれな、そいつを拉致しに来た連中の船なんだよ。
瘴気塗れの奴らが後ろに停泊したんで鬱陶しいから少し探りを入れてみたんだ。
あいつらな、そいつを拉致して帝国に連れ帰って、皇太子を殺す計画らしいぞ。
皇太子をそいつに挿げ替えるんだと。
もうとっくに、ポルトに戻ってきても良い筈なのに、王都に拉致しにいった仲間が戻ってこないので気を揉んでいるようなんだ。
わざわざ、そいつがターニャ達の掌中にあることを見せ付けに来たんだろう。
奴らの悔しがる顔が目に浮かぶよ。
それで馬鹿共を釣り出そうってか?」
な、何という偶然。
テーテュスさんに言われて岸壁を見るとテーテュスさんの船に続くように同じ型の船が三隻停泊している。
小船というけど、従来のこの大陸の基準で言えば十分大きな船だよ。
よく見るとご丁寧にバラの紋章の旗を掲げているじゃない。
そういえば、連中がザイヒト皇子の拉致に成功した場合、どうやって国外に連れ出すつもりだったのかまで気が回らなかった。
魔獣に襲われるリスクがある瘴気の森の中を通る訳にいかないのであれば、海路を使うしかないじゃない。
やんごとなき方を乗せるのだから当然専用の船を用意しているよね。
まさか、その辺の交易船に便乗すると言う訳にはいかないものね。
テーテュスさんの言う通り、これは船で待機している『黒の使徒』の連中を釣り出すチャンスかも。
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