精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ

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第14章 四度目の春、帝国は

第363話 ティータイム

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 ところ変わってミルトさんの私室、トレナール王子を無事にノルヌーヴォ王国の在ヴィーヴァルト大使に引き渡して、みんなでお茶の時間としたところなの。

 あのあと、大慌てでやってきた大使はミルトさんに頭が上がらない様子だった。
 大使館の方でもオストエンデに人を送って探したみたいだけど、王子がオストエンデに着くのにこんなに時間が掛かるとは思っておらず、すでに捜索を打ち切っていたそうだ。

 本国からは草の根を分けても捜し出せと言われていて頭を抱えていたところだったみたい。


 貴人用の牢獄で目を覚ましたトレナール王子は、目を覚ますと大使をはじめとする大使館員に取り囲まれていたことに驚愕していた。
 そして、自分のいる場所がヴィーナヴァルトの貴人用の牢獄だと知ると、旅が終わったことを悟ったのだろう、そのまま項垂れてしまったの。

 トレナール王子を本国に護送するに当たっては、途中で逃げられないようにノルヌーヴォ王国まで無寄港の商船を利用するように、ミルトさんが大使に対して助言していたよ。
 ポルト公爵が運用している大型の高速帆船が既に就航していていると宣伝していた。ちゃっかりしている…。
 
 大使もわかっていることだろうけど、護送する人員を増やし一時たりとも目を離さないように、ミルトさんが念押ししていた。あの王子、人の目を盗んでいなくなるのが得意だものね。


     **********


「トレナール王子の件は一件落着ね。
 ターニャちゃん、本当に有り難うね。
 もう、こっちには関係ないことだと思っていたことが、ターニャちゃんのおかげで思わぬポイントを稼げたわ。」

「わたしこそ、面倒なことを引き受けてくれてミルトさんに感謝だよ。
 ミルトさんにお願いしないとトレナール王子を大使に引き渡すことができなかったからね。」

 ミルトさんはわたしに感謝してくれているようだけど、わたしとしてもミルトさんに任せるしか手はなかったんだ。
 トレナール王子が、魔導王国の再興なんて妄想を捨ててて、スタインブルグを探ることを諦めてくれれば 放置しても良かったのだけど……。あの様子では諦めてくれそうもなかったものね。

 こちらの行動の障害になるのなら、確実に排除しないとね。
 それには、ノルヌーヴォ王国の大使に引き渡してしまうのが一番確実だから。
 そのためには、ミルトさんに頼るしかないものね。

「トレナール王子は本国へ帰った後、どうなるんだろうね。
 あれだけ周りに迷惑かけたのだから、タダでは済まないよね。」


 わたしがミルトさんに尋ねると、凄く答え難そうな表情になったよ、ミルトさん。

「気になる?あんまり、子供に聞かせたくはないのよね、情操教育に良くないわ。」

 あっ、そう言うことですか…、以前リタさんがそんなことを言っていたね。

「おそらく船に乗るときは元気な自分の足で乗船するから安心してね。
 王族が他国で亡くなると、それだけで戦争の引き金になることもあるからね。」

 ええっと、それ全然安心できないのですけど、それって船を降りるときは無事かどうかわからないと言うことですよね。


「それはともかく、ターニャちゃん、随分と良いものを手に入れたみたいね。」

 いきなり話題を変えてきましたねミルトさん、トレナール王子の処遇についてはこれ以上は話したくないのですね。

「ええ、トレナール王子ってやっぱり頭は良いですね。
 スタインブルグのこれだけ詳細な見取り図が手に入ったのはラッキーでした。
 後はおチビちゃん達の情報を基に手を加えていけば、かなり正確な物に出来ると思います。」

 教皇の館らしき建物の空白部分は、おチビちゃん達が情報を持って来れば相当程度補足できると思う。

「そう、それは良かったわね。
 ただね、ターニャちゃん、本当にターニャちゃん達で『黒の使徒』を壊滅に追い込もうというの。
 もう、後はケントニスさん達、大人に任せれば良いのではないかな。
 何も、子供のターニャちゃんがやらなくてもいいじゃない、帝国の国民でもないのだし。」

 ミルトさんがわたしのことを心配して問い掛けてくるけど。

「わたしは売られた喧嘩を買うだけだよ、『黒の使徒』がわたしの命を狙ってくるのだから。
 それに、大人に任せると、双方共に傷つく人が出ると思う。
 わたし達がやれば誰も傷つけずに、『黒の使徒』を一網打尽にできるはずなの。」

 それに森の伐採や瘴気の拡散、『黒の使徒』のやっていることはわたしを育ててくれた精霊たちに対する敵対行為ばかりだよ。わたし達が決着をつけたほうが良いと思うんだ。

「やっぱり、決心は変わらないのね。
 でも計画は変わらないわよね、『黒の使徒』をもう少し弱らせてからなのよね。」

「もちろん、そのつもり。
 何度も言うようだけど、教皇とその周りの幹部は一網打尽にしたいの、二度と復活できないように。
 そのためには、地下に潜むだけの資金も枯渇させちゃわないと。」

 そんな遠い未来になることはないと思うけど、拙速は慎むつもりなんだ。

 それまで、ミルトさんの後ろに控えて黙っていたリタさんが、わたしとミルトさんの会話が終るのを見計らうように言ったの。

「しかし、トレナール王子も気の毒ですよね。
 せっかく命を懸けて船を抜け出して、王家の指輪の秘密の核心の場所にいたのに気付かなかったのですからね。
 やっぱり、『指輪継承の儀』のことを知らないと何もない場所としか思わないですものね。」

 ああ、トレナール王子が領主の館に侵入したと言う場所ね。
 わたしも、「何もない礼拝所みたいなところ」と聞いたときピンと来たんだ。
 きっとそこが、『指輪継承の儀』の式場だったのだろうって。
 でも、リタさんが読んだ手記を読んでいないとそこで儀式が行われたと分からないのだからね。
 しかたがないよ。

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