引き篭もり姫

上野佐栁

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思い出の王子様

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 「フェリーナ。確かに僕は君の思い出の王子様に間違いはないようだ」

 「じゃあ......」

 「あの時どうして僕が君の国に居たと思う⁇」

 「......」

 「その顔理由はなんとなく察しているんだね?」

 「......はい」

 アッミンド王子はアルムース王国の生贄として捧げられて戦争が終わったから戻って来たのだと思います。ですが、その話をそのままアッミンド王子にしていいのでしょうか⁇

 「フェリーナ。僕はあの時後悔したんだ」

 「後悔ですか?」

 「ああ......君と離れるのがこんなにも辛いなんて知らなかった。だからもう一度君に会いたくて戻って来たんだ」

 「......」

 「約束しただろう⁇」

 「はい。確かに約束しました」

 「どうしたの?まるであやふやな記憶を辿っているような......」

 ドキッ

 「そ、そんなことはありません‼︎」

 「やはりあの日のことは覚えないよね?」

 「あの日のこと?」
  
 「ああ。君はあの日とてもショックを受けてそのまま君は......」

 「......っ⁉︎」

 私のアッミンド王子の話を聞いてとてもとても傷付きそのあとどうやって帰って来たか覚えいません。

 コンコン
  
 「フェリーナ。私だ。ここを開けてくれ」

 「......」

 「フェリーナ‼︎」

 ガチャ

 「......お父様」

 「フェリーナ。最近お前の様子が変だ。何があったのか話してくれないか?」

 「う、嘘つきに話すことなど何もありません‼︎」
   
 バタン

 「......フェリーナ⁇」

 皇帝の部屋

 「......」

 「う、嘘つきに話すことなど何もありません‼︎」

 「まさか思い出したのか?あの日のことを......」

 十年前

 「王子様!今日話して遊ぶ⁇」

 「フェリーナ!待ってよ。僕まだそんなに早く走れないよ」

 「あははは‼︎王子様遅ーい‼︎」

 「何を!」

 「あははは」
 
 「陛下。私は嬉しいです。どこか寂しそうにしていたフェリーナがあんなに楽しそうに笑うのがとても嬉しいです」

 「ああ。そうだな」

 「あの。陛下。私のアンティーク見ませんでしたか?」
  
 「アンティーク⁇ああ。灰にしてしまう魔法が掛かったアンティークか?」

 「はい。今朝目を覚ましたらアンティークが無くなっていたのです」

 「侵入者か?」

 「いいえ。もし侵入者ならアンティークを狙っても使えません」

 「確かにそうだ。他国の王族にアンティークを渡すのは法律上禁止されている」

 「そうですよね?どこかに落としてしまったのでしょうか?」

 「わからない。だが、もう一度この宮殿を探させよう」

 「ありがとうございます」

 「王子様!見て見て。お母様のお部屋で見つけたの」

 「うわー。綺麗なアメジスト色だね」

 「うん。あんまりにも綺麗だったから王子様に見て欲しかったの」

 「陛下⁉︎フェリーナの手に持っているのって......」

 「アンティーク⁉︎」

 「駄目よ。フェリーナ⁉︎」

 「なんだか不思議な力を感じる」

 「やめて!フェリーナ‼︎」

 ビクッ

 「お、お母様⁉︎」
  
 ピカッ

 「きゃっ⁉︎眩しい‼︎」

 「フェリーナ!伏せなさい‼︎」
  
 ギュッ

 「お母様⁇これは一体......」
  
 サァー

 「お、お母様⁇」

 え?何?お母様が崩れていく?まるで燃えた紙のように消えていく。

 「ユウリ⁉︎」

 「フェリーナ危ない‼︎」

 ドンッ

 「きゃあ⁉︎」

 ゴキッ

 「え......」

 ドサッ

 「きゃあああああ⁉︎」

 「しまった。早く王子を医者に見せろ!今ならまだ間に合う」

 「あ、ああ......ああ。私が。私がお母様のアンティークを持ち出したから......」

 私のせいで人が!

 「いや。いや。いやああああああああ⁉︎」

 その後の記憶もその前の記憶も私は失った。目を覚ました頃にはアッミンド王子はアルムース王国に帰るところだった。

 「必ず君の元に帰って来るから。だからそれまで待ってってね」

 「......王子様」

 「僕は君が大好きだから。だから君も待ってってね」

 「はい......」

 「僕のこの気持ちは本物でいつまだって君だけを見ているから」

 「......」

 「少しの間だけ離れ離れになるけど......フェリーナにこの命を捧げても愛してあることを誓うよ」

 「......はい!」

 その言葉さえあやふやなままだ。

 「ああ。君はあの日とてもショックを受けてそのまま君は何日も高熱を出し何もかも拒絶して部屋から出なくなったんだ」

 その言葉が何度もこだまするように私の心の中に響き続けている。

 「お父様の嘘つき。あの日のことはなんでもないって言いましたよね?」

 なのにあの言葉でお父様が嘘つき私に何もかも隠していたのだと。そしてそのまま隠し通すつもりなのだと悟った。

 そして私はまた外の世界と完全に関係を立ってしまった。いや。立ちそうになってしまった。まだ完全とは言えない。あの部屋で一生を過ごすことになりそうだ。

 「フェリーナ。僕の言葉を聞いて酷くショックを受けてた。今度遊びに行ってみよう」

 「アッミンド第三王子様!明日皇帝陛下がお会いしたそうです」

 「わかった。明日の朝に向かうと伝えてくれ」

 「御意!」

 「フェリーナ」

 今日は誰も眠れる夜ではなかったのであった。
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