引き篭もり姫

上野佐栁

文字の大きさ
10 / 18

ライバル

しおりを挟む
 ズゥーン

 「ふ、フェリーナ⁇だ、大丈夫だよ。確かに来月は婚約パーティーがあるけど......そこまで嫌がらなくてもいいじゃないのか?」

 「だ、だって......大勢の人の前に出るのが怖いんです!」

 こんばんわ。フェリーナです。私たちは今、婚約パーティーに向けて準備をしているのですが、私はまだ家族や親しい人以外は怖くて目を合わせられません‼︎

 「フェリーナ。僕が側に居るから元気出して。ねぇ?」

 「はい......」
  
 めちゃくちゃ泣きそうな顔をしている。可愛い。

 「ところで、フェリーナはなぜ準備中も部屋から一歩も出ないの?」

 「ゔっ!」

 「君が引き篭もって三週間経過したよ?僕が散歩に誘おうとしたタイミングでメイドたちに邪魔されるのはなんで?」

 「そ、それは......」

 「もしかしてまだ出るのが嫌なの?」

 ギクッ

 「そそそそそそそそ、そんなことはありませんよ」

 「動揺しすぎだよ」
  
 「ゔっ......ぐのでも出ない」

 「あ、あはは......」

 「私は以前に比べれば外へ出るようになりました。ですが、まだこの部屋から出ると息苦しくて怖くて......あの時の記憶が痛くて......痛くて......辛いのです」

 「......」

 「まだ何も成し得ていません。まだ変われていません。ですから心の準備とかそんなことよりもまずは出ることを考えないといけませんね」

 「フェリーナ。君はそのままでいい。君のままで君が望む未来を見つめていればいい。僕が守ってあげるから」

 「アッミンド」

 「じゃあ張り切って準備しよう!」

 「はい」

 ズゥーン
 
 「テンション下がってるな」

 そう思いつつフェリーナのその顔が愛しと思ったアッミンドなのであった。

 そして婚約パーティー当日

 「アッミンド王子様!フェリーナ姫様!婚約おめでとうございます」

 「......」

 「ありがとうございます」
  
 「これから絶対に幸せになろうね?」

 「はい!」

 フェリーナは案の定テラスに避難。

 「はあー。まだまだ駄目ですね⁇また逃げてしまいました」

 「ねぇ?あんたがフェリーナ姫様⁇」
  
 「え、えと?どちら様ですか?」

 「わたくしはダウナー伯爵の娘、シャイリン.ダウナーですわ」

 「ダウナー伯爵令嬢ですね?私に何の用ですか⁇」

 「単刀直入に言います。あんたなんかにアッミンドはふさわしくない!」

 「え......」

 「わたしくは五年もの間アッミンドを想い続けてきましたの。だからあんたみたいな中途半端な恋心を持たれる方がお嫌いなのですわ」

 「......」

 「何も言い返さないのですね?それではわたくしはこの辺で。フェリーナ姫様。ごきげんようですわ」

 「あ......」

 行ってしまいました。私は何も言い返さずにただ黙って聞いていただけ。あの方の言う通りなのかもしれません。私のこの想いはただ都合のいいようにできているだけの中途半端な恋心。

 「フェリーナ!居た居た!早く戻ろう。戻って一緒に踊ろうよ」

 「アッミンド王子ごめんなさい。今日は帰ります。なので失礼します」

 「え?フェリーナ⁇どうゆーことなの?説明してよ?」

 「ごめん......なさい」

 「フェリーナ⁉︎」

 私はアッミンドの声を無視しそのまま家へと帰宅しまた引き篭もってしまった。

 「うぅゔ......私は最低です。自分の良いように相手を利用し......不利になると逃げてしまう。そんな自分が大っ嫌い」

 その日は泣くことができなかった。私は何もわかっていなかった。アッミンドの気持ちと私の気持ちは多分違う。

 そうひとりで悩み一週間が経過したのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...