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夢の過去
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「私たちは昔にテンペストに襲われました」
「……」
夢さんは今にも泣き出しそうな顔でゆっくりと過去に起きたことを話してくれました。
「夢香は本当に私よりも実力があり階級もすぐに上位に行くと思っていたんです」
夢香さん。さっきいたあの人の名前。
「だけど、上級クラスのテンペストと戦って戦死しました」
夢さんから自分を責めている。自分を許せないっていう感情が伝わってくる。
「私は二回も夢香に命を救われています」
「……」
私も砥部さんも何も言わずにただ黙って夢さんの話を聞くしかできない。
「一度目は両親が殺された日のことです。テンペストはいきなり我が家にやって来て、両親を殺し周囲の人たちも殺して周りました」
夢さんの顔が怒りで満ちている。
「私と夢香は村の外れてある牢屋だった場所に身を潜めてことなきを得ました。あの時、夢香がここに隠れようって言わなければ私は……私たちは今頃死んでいました」
誰かが死ぬのは悲しい。私には記憶がないけど、記憶の中にあるあの人が泣いている理由を知りたい。そして誰なのかも知りたい。
「両親が亡くなって一年後に私と夢香はテンペスト学園に入学しました。私は科学。夢香は医学のクラスにそれぞれ入り、夢香は怪我人の手当てをメインに技を極めていました」
「……」
姫乃が自分の過去を明かすとは思わなかった。俺がここに来た時は姫乃姉妹とはほとんど接点がなかった。
だが、一度だけ大怪我をした時に姫乃姉妹に助けられた。
あの時俺を看病してくれたのは姫乃姉ではなく姫乃妹だったのか?今になってはわからない。
「夢香は運動神経が良く、私はいつも置いてかれてばかり。だけど、私も運動は人より少しできた方なのでそこまで困りませんでした」
「……夢さん」
もう見てられない。夢さんが壊れそうになってる。ずっと自分を責めている。
「二度目は私が上級クラスのテンペストと最初に対面した時ですよ。あの時私は手も足も出なかった。ただやられるだけで何もできずに死ぬのだと思いました」
「姫乃。それ以上は……」
「でも私を庇って助けてくれた夢香を死なせてしまった。何もできずに。何もなし得ないまま夢香を死なせてしまった。結局あのテンペストに逃げられましたよ」
目から大粒の涙からこぼれ落ちる。夢さんは無理やり笑っているが、涙は止まっていない。
「夢さん!!!!!!!」
私は耐えきれずに夢さんを抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫ですよ」
その言葉には何の意味もない。ただの慰めの言葉にすぎない。
「うぅ。ヒクッ!わ、私は強く、なろうと頑張りました。グスン。誰よりも強くなりたくて……努力して。医学も勉強、して。夢香の想いを、継ぎたかった」
夢さんの体が震えている。わかる。何もできなかったから何も動けなかったから誰かを悲しませてしまったからだから自分を責めるしかなくて怖くて痛くて苦しい。
「夢さん。私はテンペストだけど、人間を守るテンペストになります」
私の言葉を聞いて少し落ち着いたのか夢さんは私をぎゅっと抱きしめ返しこう言った。
「テンペストは嫌いだけど、風華さんは好きです。あなたの心は優しい。だからあなたは他のテンペストとは違います」
「姫乃。お前は(誰よりも痛みを知っている。だから)強いやつだ」
「クスクス。ありがとうございます」
夢さんの過去を聞いたすぐに後にアディさんたちがやってきた。
「な、なにこれ⁉︎」
「おいおい。雨晴。お前……怪我増えたないか?」
私は心配しているのか二人は私たちの方へと駆け寄って来た。
「すみません。私が油断したのがいけないんです。責めるのなら私だけにしてください」
夢さんはそう言った。
「そんなことありませんよ!誰だって身内が……」
これ以上は言えなかった。言ってはいけない気がした。
「テンペストはこの学園を襲撃する」
砥部さんがいきなりそう言った。
「はあ?」
びっくりしすぎてその場に固まった松本さん。
「今日入ってきたテンペストがそう言ったのか⁇」
アディさんは冷静にそう言った。
砥部さんは頷き治療室の荒れに荒れた惨状を特別部隊の人たちが片付けていく。
「雨晴。お前、手足を切断されたのか?」
アディさんは私の目を見てそう質問した。
「はい。あのテンペストはきっと、上級クラスのテンペストです」
核が見てなかった。それに動きも早くて対処でなかった。
「俺も見たが(気配や殺気が)凄まじかった」
「と、砥部さん」
少し呆れた表情になった夢さんだが、とりあえず。みんな疲れているだろうからとアディさんが言い、明日緊急会議を開かれることになった。
つまり明日は上級の一のみなさんと顔を合わせることになる。私が今知っているのは四人だけ。後の九人はどんな人なのか少し怖いけど楽しみでもある。
「雨晴 風華。あの娘。芯が強い」
悔しい。
「私は呪いに負けたのに、なんであんたは呪いに負けないの?私だって……夢を守りたいのに!」
「……」
夢さんは今にも泣き出しそうな顔でゆっくりと過去に起きたことを話してくれました。
「夢香は本当に私よりも実力があり階級もすぐに上位に行くと思っていたんです」
夢香さん。さっきいたあの人の名前。
「だけど、上級クラスのテンペストと戦って戦死しました」
夢さんから自分を責めている。自分を許せないっていう感情が伝わってくる。
「私は二回も夢香に命を救われています」
「……」
私も砥部さんも何も言わずにただ黙って夢さんの話を聞くしかできない。
「一度目は両親が殺された日のことです。テンペストはいきなり我が家にやって来て、両親を殺し周囲の人たちも殺して周りました」
夢さんの顔が怒りで満ちている。
「私と夢香は村の外れてある牢屋だった場所に身を潜めてことなきを得ました。あの時、夢香がここに隠れようって言わなければ私は……私たちは今頃死んでいました」
誰かが死ぬのは悲しい。私には記憶がないけど、記憶の中にあるあの人が泣いている理由を知りたい。そして誰なのかも知りたい。
「両親が亡くなって一年後に私と夢香はテンペスト学園に入学しました。私は科学。夢香は医学のクラスにそれぞれ入り、夢香は怪我人の手当てをメインに技を極めていました」
「……」
姫乃が自分の過去を明かすとは思わなかった。俺がここに来た時は姫乃姉妹とはほとんど接点がなかった。
だが、一度だけ大怪我をした時に姫乃姉妹に助けられた。
あの時俺を看病してくれたのは姫乃姉ではなく姫乃妹だったのか?今になってはわからない。
「夢香は運動神経が良く、私はいつも置いてかれてばかり。だけど、私も運動は人より少しできた方なのでそこまで困りませんでした」
「……夢さん」
もう見てられない。夢さんが壊れそうになってる。ずっと自分を責めている。
「二度目は私が上級クラスのテンペストと最初に対面した時ですよ。あの時私は手も足も出なかった。ただやられるだけで何もできずに死ぬのだと思いました」
「姫乃。それ以上は……」
「でも私を庇って助けてくれた夢香を死なせてしまった。何もできずに。何もなし得ないまま夢香を死なせてしまった。結局あのテンペストに逃げられましたよ」
目から大粒の涙からこぼれ落ちる。夢さんは無理やり笑っているが、涙は止まっていない。
「夢さん!!!!!!!」
私は耐えきれずに夢さんを抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫ですよ」
その言葉には何の意味もない。ただの慰めの言葉にすぎない。
「うぅ。ヒクッ!わ、私は強く、なろうと頑張りました。グスン。誰よりも強くなりたくて……努力して。医学も勉強、して。夢香の想いを、継ぎたかった」
夢さんの体が震えている。わかる。何もできなかったから何も動けなかったから誰かを悲しませてしまったからだから自分を責めるしかなくて怖くて痛くて苦しい。
「夢さん。私はテンペストだけど、人間を守るテンペストになります」
私の言葉を聞いて少し落ち着いたのか夢さんは私をぎゅっと抱きしめ返しこう言った。
「テンペストは嫌いだけど、風華さんは好きです。あなたの心は優しい。だからあなたは他のテンペストとは違います」
「姫乃。お前は(誰よりも痛みを知っている。だから)強いやつだ」
「クスクス。ありがとうございます」
夢さんの過去を聞いたすぐに後にアディさんたちがやってきた。
「な、なにこれ⁉︎」
「おいおい。雨晴。お前……怪我増えたないか?」
私は心配しているのか二人は私たちの方へと駆け寄って来た。
「すみません。私が油断したのがいけないんです。責めるのなら私だけにしてください」
夢さんはそう言った。
「そんなことありませんよ!誰だって身内が……」
これ以上は言えなかった。言ってはいけない気がした。
「テンペストはこの学園を襲撃する」
砥部さんがいきなりそう言った。
「はあ?」
びっくりしすぎてその場に固まった松本さん。
「今日入ってきたテンペストがそう言ったのか⁇」
アディさんは冷静にそう言った。
砥部さんは頷き治療室の荒れに荒れた惨状を特別部隊の人たちが片付けていく。
「雨晴。お前、手足を切断されたのか?」
アディさんは私の目を見てそう質問した。
「はい。あのテンペストはきっと、上級クラスのテンペストです」
核が見てなかった。それに動きも早くて対処でなかった。
「俺も見たが(気配や殺気が)凄まじかった」
「と、砥部さん」
少し呆れた表情になった夢さんだが、とりあえず。みんな疲れているだろうからとアディさんが言い、明日緊急会議を開かれることになった。
つまり明日は上級の一のみなさんと顔を合わせることになる。私が今知っているのは四人だけ。後の九人はどんな人なのか少し怖いけど楽しみでもある。
「雨晴 風華。あの娘。芯が強い」
悔しい。
「私は呪いに負けたのに、なんであんたは呪いに負けないの?私だって……夢を守りたいのに!」
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