テンペスト

上野佐栁

文字の大きさ
15 / 29

無の心

しおりを挟む
 ゴオオオ
 
 火。あたり一面が火で覆い尽くされている。

 「お父さん?お母さん?」
 
 誰がそう叫ぶ。

 「風華逃げなさい!!!!!!!」

 母がそう言う。

 気を失うと決まってこの夢を見る。だけど目が覚めると何も覚えてない。

 私は逃げたくなかった。一緒にいたかった。

 だけど、数十秒後には母も父も帰らぬ人になった。

 瓦礫に潰され体が引きちぎれてしまった人であった死体。

 私は何もできずにただ誰かも一緒に逃げた。

 私の手を引いてくれた人。大切な人。誰だっけ?

 「必ず守ってやるからな」

 そう彼は言った。

 それならしばらくが経っただろうか⁇

 雨がポツポツと降り始める。

 私とその彼は森の中に逃げ込んでいた。

 火は少しづつ勢いを無くし投げ倒された木や小型の車や他にも諸々の残骸が残る。

 「風華はここから先ひとりで逃げろ」

 彼はそう言った。

 だけど、私は逃げたくないと言った。一緒ならなんとかなるって思っていたから。

 だけどすぐ後に私は左半分をほぼ失って死亡した。

 最後に彼とお話をした。あの状態でまだ息があり話せる状態なのは本当に奇跡だと思う。

 死ぬ間際彼は何度もごめんと謝り続けた。

 「守ってやれなくてごめんな」

 彼の目からは大粒の涙がこぼれ落ちる。

 ずっと自分を責めて責めて心が壊れてしまうのではないかと思うぐらいに自分を責め続けている。
 
 そんなこと言わないでよ。あなたが生きているだけ私は嬉しい。泣かないで。泣かないで。泣いているのは誰なの?

 私は最後にある言葉を残した。

 「ど、どうか……みんなを……未来を……世界を……すく、って」

 その言葉を最後に私は事切れた。

 ここで夢が終わる。

 「……」

 目が覚めた時にはすべてが終わっていた。

 「ここは……」

 「風華さん。よかった。目が覚めたんですね?」

 夢さんが心配そうに私を覗く。

 「あの砂蔓さんは……」

 私が砂蔓さんの名前を口にすると夢さんは暗い表情で一言言った。

 「砂蔓さんはもうこの世にはいません」

 腕をぎゅっと握りしめて夢さんがそう言った。

 悲しいはずのに涙が出てこない。何も感じないみたいに何も出てこない。

 「……」

 私が強ければもっとテンペストの力を使いこなせればあるいは……。

 「上級クラスのテンペストを二人で討伐成功したみたいですね?」

 「えっ……」

 私は全身につららが刺さった後の記憶がない。気を失っていたんだ。砂蔓さんはそんな状態で勝ったの?

 「言い忘れていましたが、テンペストを倒すとテンペストストーンと言った物がまれに落ちることがあります」

 説明。テンペストストーンは中級クラスから上級クラスのテンペストがまれに落とすストーンで、そのストーンはテンペストの固有スキルが備わっている時があり武器や防具などの道具に作る時に使われます。

 私や砥部さんが使っている刀もテンペストストーンからできたものでとても貴重なものであります。

 テンペストストーンが落ちている時は必ずテンペストが倒した証になります。

                  説明以上
 
 「テンペストストーンが落ちていたということはテンペストを倒したんですよ」

 「そう、ですか」

 心が暗い。モヤがかかったみたいに晴ない。

 「私は薄情なテンペストかもしれません」

 私がそう言うと、夢さんがどうしてと聞く。

 「涙が出てこないです」

 まるで私には無で何もない。そんな気持ちになる。

 「今は整理が必要な時期です。なのでゆっくりでいいから現実を受け止める時です」

 夢さんは厳しくもそう言った。

 自分んだって辛いはずのにそんな素振りを一切見せない。

 「私は……」
 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「美少女157人も召喚できるだと!?」社畜の俺、尖ったトラウマを全部『まあるく』収めて大賢者になる。── やっぱりせかいはまあるいほうがいい

あとりえむ
ファンタジー
『ヒロイン全員 挿絵付き』の異世界セラピーファンタジー。あなたの推しのヒロインは誰ですか? 「やはり、世界は丸いほうがいい……」 過労死した元データアナリスト参 一肆(まいる かずし)が女神様から授かったのは、アホみたいな数式から導き出された究極のハーレム召喚だった。 157人のヒロインたちに埋もれて、尖った世界を『まあるく』浄化しくしていく…… Dカップの村娘からIカップの竜の姫君まで、あらゆる属性のヒロイン達と一緒に、襲い来る「社畜のトラウマ」に立ち向かう。 全人類の半分の夢が詰め込まれた、極上のスキンシップの冒険譚が今開幕する!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

処理中です...