人を愛したら魔女と呼ばれていた

トトヒ

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第8章

仲間「飲み会には飽き飽きなのだけれど」

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リアに今夜の集まりについて事情を説明すると、彼女は小躍りして私に抱きついた。
ジェイドが自分を気にかけていたことが嬉しかったみたい。
ルチルも参加するということに難色を示していたけれど、ジェイドに接近する機会だからとそこは納得したようだった。


出勤終わりに会社前に集合し、ジェイドが決めたお店に向かった。
私達は目立つようで、帰宅する社員からジロジロ見られた。

案内されたお店はジェイドや他の戦闘課達がよく来るようで、店員はジェイドとブライトと顔馴染みのようだった。
ただの居酒屋だとジェイドは言っていたけれど、メニューを見るとどれも値段が高かい。
さすがエリート集団が使うお店ね。

案の定、リアはジェイドの前に陣取っている。
事務課と戦闘課が向い合せで座る形になっており、私はリアとルチルに挟まれている。
ルチルはずっと仏頂面ね。

「ジェイドさん。先日は無神経な事を聞いてすみませんでした」

席に着いた途端、リアはジェイドに謝罪した。
軽く頭を下げた後、ジェイドを上目遣いで見つめる。
練習でもして来たのかしら。

「いや、こっちこそ悪かったな。今日は俺の奢りだから、皆好きな物頼んでくれ。後、この後もう一人来るから」

あら、今日の飲み会はこのメンバーだけじゃなかったのね。
数分後、お店の中をバタバタと走る音が聞こえた。
私達が座っている席に現れたのは、青い髪を一つに束ね、ほとんどスッピンの女性だった。
ヨレたシャツにサイズが大きくダボついたズボンといういで立ちで、髪も乱れていた。

「す、すみませんジェイド先輩。遅くなりました」

「騒々しいな。店に迷惑だろ。ほら、お前の席そこ」

ジェイドはルチルの前の席を指さした。
その女性は恐縮しながら席に着く。
リアはキョトンとした顔でその女性を見つめていた。
ジェイドが女性を呼んだことと、その女性の風貌両方に驚いているみたい。
リアが私の方をチラッと見て、首を傾げる。
リアは戦闘課社員の全員を把握していると思っていたけれど、女性社員は眼中にないのかしら。

「トリン先輩、大丈夫でしたか?」

ブライトが彼女に声をかけ、メニューを渡す。

「こってり絞られました……」

彼女は情けない表情でため息をついた。

「お前がトレーニングマシンを壊すからいけないんだろ! 2年目なんだから、そろそろ力の加減を覚えろよな」

どうやら彼女が遅れた理由は、戦闘訓練中に使っていたトレーニングマシンを破壊し、上官に呼び出しをくらっていたことが原因だったみたい。

「はじめまして、トリンさん。事務課のダチュラと申します。こちらは後輩のリア」

リアも軽く会釈した。

「は、はじめまして! 戦闘課2年目のトリンです。お二人のことは知っていますよ! めちゃめちゃ美人だって、うちの課では専らの噂ですから!」

とても元気そうな女性ね。
声が大きいわ。

「お前は力だけじゃなくて声もでかいんだよ! せっかく呼んでやったんだから、もう少し大人しくしとけよ。今日の主役はダチュラだからな」

「す、すみません。昇進されたと聞きました。おめでとうございます。勝手に参加してすみません!」

トリンは私にペコペコ頭を下げる。
けれど彼女は無垢な少女のように微笑んでいる。
悪い子では無さそうね。

それから料理が運ばれ、私の昇進祝いが始まった。

「よく3人でこのお店に来るんですか?」

リアがジェイドに質問をした。
質問の意図は、ジェイドとトリンの関係について知りたいのだろう。

「時々だな。だいたいがトリンの悩み相談みたいな」

ジェイドが料理を頬張りながら答える。

「へ~……、悩みですか」

リアの話方が気もそぞろになっている。

「実はさ、トリンは戦闘課で一番能力値が高いんだ。力が強すぎて、今日みたいにいろいろ壊すことが多くてよく泣いてやんの。おまけにバカだし」

ジェイドが笑う。

「ちょっとジェイド先輩! ばらさないでください!」

トリンは顔を赤らめている。
この子が一番能力値が高いのね。
知らなかったわ。
うちの会社でもあまり有名な子じゃないのに。

「で、でも、ルチルさんのアドバイスどおり訓練したら、マシンを壊す頻度が低くなったんです! 今日はそのお礼も言いたくて来ました!」

トリンはルチルにへらっと笑った。
ルチルは軽く会釈するだけ。

「あ、ルチルさん! お酒注ぎますよ!」

「いえ、自分で」

「いえいえいえいえ! いつもお世話になっております! 本当に!」

トリンとルチルの押し問答が始まった。
それをニヤニヤしながら眺めているジェイド。

なるほどね、この会の本当の目的が分かったわ。
たぶんトリンはルチルに気があるみたい。
ルチルはあの性格だから、なかなか二人に接点ができないのでしょうね。
それでジェイドはこの会を開いてルチルを無理やり誘い、トリンを呼んだという流れじゃないかしら。
トリンの悩み相談の中に、恋愛相談もあったかもしれない。
ジェイドはこう見えて、後輩想いの良い先輩なのね。
案外ルチルも隅に置けないものね。

リアも早く気づけばいいけど……。

「ルチルって前髪切らないのか?」

ジェイドが急に話を振った。
皆が思っていても誰も言わなかったことを。

「……業務に支障がありませんので」

「いや、切った方がいいって。意外と男前なんだよ。そう思うだろトリン」

トリンはジェイドに振り向き慌てふためいていた。
これは確定ね。

「わ、私はそのままでもいいと思います。なんていうか、その……ミステリアスというか」

トリンは顔を赤くして俯いた。
可愛らしいわね。
これで分かったかしらと私はリアに振り向いてみた。
なんとなく察したようだけれど、リアは混乱しているようで顔を引きつらせている。

「まあ、トリンも人の事言える髪型じゃねーけどな。ボサボサだぞ」

「えっ? 早く言ってくださいよ!」

「一応女なんだから鏡くらい見ろよ! 俺でも見てるぞ! ブライトなんて、いつも1時間も見てるぞ!」

「ちょっと待ってください! そんなに見てませんよ!」

ブライトは私の方を見て首を振った。
その後、真っ赤になってジェイドを睨みつける。
ジェイドはケラケラ笑っていた。
この3人は仲が良さそうね。

「トリンはブライトよりも女子力が低いのは確実だ。化粧したところも見たことないし。ルチルからも言ってやってくれよ。事務課女子社員の爪の垢を煎じて飲むようにさ~」

トリンは大慌てで髪を整えようとしている。
でも不器用なのか、なかなかまとまらない。
むしろ崩している……。

「その必要は無いのでは」

そんなトリンをよそに、ルチルは淡々と答えた。

「そ、そうですよね……。私が髪を整えたところで女子力が上がるとは思えませんよね」

トリンは作り笑いをしながら手を止めた。

「女子力というものを上げなければならない理由があるのですか?」

「え? いえ……そういうわけでは……」

トリンはブツブツ言いながらもじもじしている。

「では、そこまで身だしなみに気を使う必要はありませんよ。戦闘課と事務課の役割は違います。事務課の特に女性社員は、外部からのお客様を対応する受付業務がありますので、身だしなみが重要です。戦闘課は非常時以外は常に訓練することが仕事になりますので、髪が乱れるのは当然です。トリンさんは安全面に配慮して、一つに束ねているので問題はありません。訓練では汗もかきますから、化粧も邪魔です。戦闘課の身だしなみは、式典などの際、常識の範囲内で行えば良いでしょう。トリンさんには何の問題も無いと思いますが」

ルチルにそんなつもりは無いのだろうけど、これはトリンという人間にとって最大限のフォローになっていると思う。
彼女はぐちゃぐちゃな髪の毛をそのままに、輝く双眸をルチルに向けていた。
きっと彼女は他の女の子よりも不器用、でも他の女の子と同様に外見を気にする気持ちもある。
他の男性が見た目で判断する中、ルチルは理詰めの思考な為、彼女の見た目に対して批判的では無い。
それは幸か不幸か、トリンがルチルに惹かれる大きな要因になったのでしょうね。

「確かにそうかもな。良かったなトリン!」

ジェイドがトリンにサムズアップをした。
トリンは照れ笑いをしている。



その後も談笑が続き、私の昇進祝いだったのか不明な会は終わった。
帰り道、途中まで私とリアが一緒に帰ろうとしたところを物凄い勢いでトリンが追いかけてきた。
相変わらず落ち着きがない。

「お二人とも! 明日少しお時間もらえませんか!」

驚いている私とリアに対し、トリンは真剣な眼差しを向けている。
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