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54.お願い……
しおりを挟む悠のラムニットのセーターを捲り上げながら背中に手を這わすと、そこはしっとりと濡れていた。
ん?
これ、生肌じゃん。
セーターの下に何も着けないまま、俺ン家に来たってのかよ?
はぁ…もう可愛い。
しかもしっとり汗ばんでるし。
もしかして、悠もちょっと抱かれたいって期待してるのか?
視線を上げて悠を見れば、腰にズクンッとくるような、艶っぽい視線を投げつけられる。
うわ……っ。悠がエロい!
トロリと潤む瞳が、最高にエロいです悠さん!
──さすがエロ王子……。
誘いをかけてくる視線がハンパねぇ。
見つめるだけで、心臓がキュウキュウ絞られるように苦しくなる。
何これ、マジしんどいっ。
襲うなって言う方が、マジ無理だろッ!
「んっ、ンッ、ンッ!」
しんどみが辛すぎて、ちょい息継ぎ休憩!と逃げようとした俺の舌を、厚みのある悠の舌が執拗に追いかけてくる。
舌裏をぬるりと舐められただけで、腰から下がビクビク言っちゃうし、逃げるどころか悠の背中にぎゅっとしがみついちまった。
そんな俺の反応に、さらに目元を甘く蕩かしてきた悠が、舌先を軽く挟むように噛んでくるせいで『んアッ』て変な声まで漏れちまう。
悠、ちょい待った。待って!
これじゃあ、悠の服を脱がすどころじゃねーよ。
キスは気持ちいいけど、トロンとなりすぎて身体に力が入らねぇ。
早く服を脱がせてセックスしたいってのに、おでんに入ってるちくわ並みに身体がぐにゃぐにゃになっちまってる。
昂ぶったクララがこのままでは可哀想すぎる。
こんなに熱くな──って。
(んん?)
クララは元気だけど……熱いのは腹かも。
何か奥がキュンキュンするような……?
(は…?)
意味わかんねぇ。
何で腹がキュンキュンすんだよ。
普通キュンッて言ったら心臓だろ。
匂いのせいで頭どころか、腹までおかしくなっちまったのか?
とりあえずキュウキュウ痺れる腹を宥めるように擦っていたら、気づいた悠が唇を外して俺の腹に視線を注いでくる。
「……どうした?」
「ひぅ…ッ!」
ゼロ距離で話しかけてくんのヤメテ……。
悠の熱い息が唇に当たるだけで、何故か下半身に痺れが走る。
まじで俺の腹の具合がおかしい。
「腹が……」
「お腹? 痛いのか?」
腹を押さえる俺の手ごと、悠の手が包むように触れてくる。
「違っ、ぁ、へん……!」
心配して撫でてくれんのは嬉しい。が、今は余計な真似をしないでくれっ。
悠のデカイ手が腹を擦ってくる度に、「あっ、あっ」と甲高い声が勝手に飛び出るんだって!
痛いどころかこのままだと俺、間違いなく射精コースだ。
ビックリするくらい、下っ腹が気持ちいい!
ゾクゾク身体を震わせながら悠を見れば……あ。
またあのエロい表情。
もう腹なんか擦らなくていいから、今すぐそのケツを差し出してほしい。
尻の中をこれでもかってくらい、俺でいっぱいに満たしてやるのに。
──いや。
もうここは素直に『尻を出せ』って言ってもいいか。だって今の俺、すげー悠が欲しいし。
うん、シンプルイズベストだ。
飾らない言葉でそのまま伝えよう。
呼吸が乱れて苦しいけど、何とかしっかり言葉にしようと口を開く。
伝われ! この想い!
……いや、俺の昂ぶり!!
「ゆぅ…尻、ハァハァ…だしてっ。いっぱい中…満たして──」
『やるから』と最後まで言う前に、尻部分のパンツをぷりんと下ろされてしまった。
飛び出したのは、悠の引き締まった尻じゃない。
俺のかわいい桃の方だ。
「ひぁああッッ!?」
ビックリして悠の腹を押しのけるように手を付いたら……おっ? おぉっ!!
何この凹凸……!?
何をどうしたら、こんなに腹が割れんの?
くそ。俺もこんな腹筋になりたかった。
いや、まだ割れるって信じてるけど。
腹筋のあまりの見事さに、パンツのことすら忘れて夢中になってしまう。
羨ましすぎて腹筋の割れ目をなぞりながら、はぁ…と熱いため息がこぼれた。
ほんと綺麗に割れてんなぁ。
つか、これってもう完全に歩く大理石像じゃん。
服着てんのが勿体無ぇよ。
うっとりサスサスしていたら、引き締まった悠の腹がピクリと反応した。
ん? さすがに触りすぎだったか?
ごめんごめん、と最後にもう一撫でしてから手を離したのに、ギュウウッと強く抱きしめられる。
──もしや無類のくすぐったがり屋さんだったのか?
OKOK。大丈夫だ。
もうこれ以上腹に触ったりしねぇから。
だからそんなに腰をグイグイ押し付けてくんなって。
あっ、くそっ。ごめんって。
頼むから腹いせに、俺の生尻をグニグニ揉まないで。パンツが上げらんねーよ!
てか、マズイ。
腹筋に擦れたちんこが……あ、あぁうんン!
き……気持ちいいな、コレ。あっ、う……。
腹筋の弾力と割れた境い目が、いい感じに鬼頭に擦れてフロント部分がジワリと濡れてくる。
(うぅう……悠のケツでイクどころか、このままだと腹オナでイっちゃいそう……!!)
そんな情けない真似が出来るか!と身体を離そうとして、あれ?とすぐに思い直す。
別にこのままでもいいか。
絶対悠の尻じゃないと嫌ってこだわりがあるわけでもねーし。
うん、気持いいならどこでもいいや。
ただ問題なのはアレだ。このままイクと、悠のセーターが汚れるんだよな。
自分の恥ずかしい染みが着いたセーターなんて、出来れば見たくねぇし、着てほしくねぇ。
よし、決めた。やっぱ全部脱いでもらお。
「ゆぅ…。これ…脱げよ」
服に手をかけて脱がそうとしたら、気付いた悠が自分からセーターを脱ぎだす。
お? おぉ。
さすが体型もイケメン様。身体に自信があるのか、いい脱ぎっぷりを披露してくれる。
脱いだ服は、もちろんすかさずキャッチ。
ついでにこのまま貰ってしまおう。
心配しなくても、帰りは俺のTシャツを貸してやるから安心してくれ。
(──にしても、このセーター…)
思った以上に軽くて肌触りがいいな。
あと、めちゃくちゃいい匂いがする……!
ゴクリと喉が鳴る。
仄かに温もりが残っているうちに……と、脱いだばかりのセーターに鼻を押し付けようとして、
「……っぷぇ…ッ!」
なぜだか俺のTシャツまで、悠に引っ剥がされた。
???
何で俺の服まで脱がしてくんの?
もしかしてお前も俺の腹で、その凶悪ペニスを擦りたいってクチか?
お前の馬みてーにデカイちんこなら、俺のペラい腹より、下の硬い床でゴリゴリ擦ってる方が気持ちいいと思うぞ。
まぁ使いたいなら、好きにしてくれ。
それより今は悠の服だ。
今度こそ匂いを嗅ごうと、手元から落ちてしまったセーターに腕を伸ばした所で、上から伸し掛かかってきた悠にベッドに縫い付けられる。
抗議しようとガバリと開けた口の中に、悠の舌が潜り込んできた。
「──ふんン……ッ!? 」
アホっ!! これじゃあ匂いが嗅げねぇよ!
せっかくの戦利品が……!
と思ったけど、素肌から香ってくる悠の匂いを嗅いでいるうちに、何だかどうでも良くなってきた。
どっちもいい匂いだし。あとキス、気持ちいい。ふわふわする。好き。好き。
「ん……っぅ、んん……ふ……っ」
キスしていた唇が口から逸れて、段々と下に下りてくる。
もっとキスしたかったのに……と物足りなく思っていたら、首筋をきつく吸いあげられた。
「……っ!」
痛ぇっ。
けど、何か興奮する。
もしや俺ってドM? 痛いけど『もっと…』って気分。
唇を押し付けられる度に、産毛が総毛立つような快感が襲って来る。
俺も興奮し過ぎてハァハァうるせーけど、悠もなんかヤバそう。
いつものクールさはどこに行ったんだってくらい、さっきから首筋にすげー熱い息がかかってるし。
ゾワゾワする感覚に堪えきれずに身体を捩ろうとしたら、首筋をねろりと舐められた。
「ひゃ……ぁ…っ」
濡れた感触に、ブルリと身体が震える。
「……**だ」
悠が低い声で何かを呟いたかと思うと、突然両腕をガシッと強い力で押さえ込まれた。
え?と思う間もなく、突然食いちぎられるような激痛が首筋に走る。
「痛っだぁああ~~~~っっ!!」
噛まれた痛みで頭がキーンとする。
痛い痛い痛い痛いぃいい!!
何すんだこの野郎!
おかげで我に帰ることが出来たわこのボケがっ、ふざけんな!!!
つーか、ホント何してんの俺たちっ!?
ヤバすぎるこの状況も問題だけど、それ以上に首がジンジンして痛ぇよっ!
「このあほっ! クソッ、噛むなって言ってんだろっ! 泣くぞ!」
「……分かった。今度は優しく噛む」
「だから……っ! くそっ、噛もうとしてくんな!おいこら腕を離せっての!」
大丈夫かこいつ?
悠の言動がおかしい。
いや、そもそもこの状況自体がおかしすぎるんだって。
何ノリノリでキスしてんだよ!
いや、フェロモンだっけ? フェロモンがどうとか言ってた気がする。
あああ、記憶がだんだん繋がってきた。
俺ってば大事なクララを、悠のケツにブチ込むとかイキッてなかったか? 死にたい!
ちょっともう自分の記憶に堪えられない!
アホか俺は。なに積極的に悠の服を脱がせようとしてんだよ!
匂いでボーッとしていたとは言え、なんたる不覚! もうこのまま布団を被って寝てしまいたいっ。
てかその前に、上にいるコイツをなんとかしなきゃだな。
何でフェロモン出してる張本人が、こんなに正気を失ってんの?
「悠。なぁちょっと落ち着けよ。今ホットミルクでも作ってきてやるから退い……ぐおぉおっ、重い!!」
身体を捩って下から抜け出ようとしたら、阻止するかのように悠が体重をかけてきた。
(アホかこいつ……!)
自分のウェイトくらい、ちゃんと把握してくれ!
冗談じゃなくこのままだと俺、圧死しちゃうッ!
「いらない。ミルクならアキのここから絞ればいい。いっぱい出してくれるんだろ?」
「頼むから正気に戻ってくれ!!!」
本格的に悠がおかしい。なんだこの陳腐な下ネタ。
悠の世迷い言に頭が痛くなってくるけど、近づいてくる顔は相変わらずイケメンだ。
顔とのギャップが酷すぎる。
てかどんどん近づいてくる。
うわ…、何? またキスするつもりか?
一体どうしたら、悠を正気に戻せるんだよっ?
頭は酔いが冷めた状態だけど、身体はまだ本調子じゃねえのか、力が入んねぇ。
この状態でキスなんかしたら、また頭がパーに逆戻りしそう。
「ちょ、悠……っ、ほんと頼むって……!」
必死で悠を押し留めようと力を込めているのに、唇との距離がますます近付いてくる。
くそっ。頭とは裏腹に、身体は勝手に受け入れ体制を整え始めているのか、指が縋りつくような動きを見せだした。
(あ、あ、あ、無理!くっつく……!)
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