明日は、屋上で会おう。

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第二章 竜胆楓 城戸早苗

味方

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 澤村先生は、3年生の副担任である。直毛の綺麗な髪をくしゃくしゃに掻き、教師用の記録表を持って話しかけた。
「あっ、す…すみません!!」
「…ん、あー、コスプレイベント…そういうのあったね。君たち出るの?」
 少し言葉を詰まらせた後、愛莉が言った。
「そうです。出ます。」
「すごいじゃん」
 短い言葉であり、興味のなさそうなトーンだった。
「俺も去年出たんだよね。写真見る?」
「そ、そうなんですか!?すごい!!」
「ほら」
 最新型の重そうなスマホをポケットから出し、3人に見せつけた。先生は女子生徒からモテているほどイケメンであるため、再現度は凄まじかった。
「これ…ライジェネのエクレールくん!?」
 楓は両手で口を押さえ、驚いた。早苗は少し困ったようにして訊いた。
「…とは、誰でしょうか…?」
「『ライク•ライク•ジェネシス』っていうゲームの、『バース=エクレール』ってキャラだよ!これめちゃくちゃ似てる…」
 楓はその場にあった、学習用のタブレットでキャラクターを検索し、比較として早苗に見せた。
「照れるなぁ。俺のパートナーがこのゲームのファンで。強制的にさせられたんだよな。露出度が高くて恥ずかしかったよ。」
 澤村先生はケータイをポケットに入れた。早苗が訊いた。
「パートナー、いらっしゃるんですね。」
「あぁ、彼氏だよ、俺の」
「えっ!?」
 楓と愛莉は高い声で叫んだ。パートナーと聞き、彼女だと思い込んでいた。
「B、、、す、凄いですね!」
「竜胆はライジェネやってるのか?やってるならコスプレをオススメするぞ」
 積極的な澤村先生にビビりながら、答えた。
「い、いいんですかね…?」
「あっ、楓ちゃん。このキャラいいんじゃないですか?」
 早苗が楓のタブレットを触っていた。指を指した所には、金髪で装飾が多く、長めのコートを着た元気な少年だった。
「あぁ、『エクリプス•ドュ•ソレイユ』か。いいじゃないか。ソレイユの衣装的に胸部は隠せると思うぞ」
 澤村先生が真剣に考え始めた。髪を掻き、「それならー」と呟いた。
「他にコスプレする奴いないのか?3人でやるつもりなのか?」
「あっ、ウチは衣装作り担当で、早苗と城戸さんが出ます。」
「ならちょうどいい。城戸は『エクリッシ•ルナーレ』…ソレイユのパートナー役をすればいいんじゃないか?」
 早苗がキーボードを叩いた。ルナーレというキャラクターは、白髪のロン毛で、剣を持ったクールで美青年のキャラクターだった。
「なるほど…これは意外といけそうですね。」
「はは、楽しみになってきてるじゃねえか。」
 澤村先生がふふ、と笑った。だが、愛莉は少し心配しているようだった。
「でも、どうしよう。作業する所なんてないよ…どこかの家でやる?」
 2人は「確かに…」と言って、黙り込んでしまった。急に現実味が無いことに気がつき落ち込んでいると、澤村先生がポケットから鍵を取り出し、金属がぶつかり合う音を鳴らした。
「んじゃ、俺の教室を貸してやるよ。3年B組の、横の教室な。」
 澤村先生がニヤリと笑った。
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