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特攻で死にたくない!僕はまだ童貞なんだ! 前編

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昭和20年の4月×日 飛行訓練から帰ったら、戦友が「おめでとう!」と言うんです

そして黒板を見たら僕の名前が特攻編成に入っていたんです

僕が特攻隊に?!

血の気が引きました 

なにがめでたいのかと 内心は思いました

僕は24才で 海軍少尉です 女々しいそぶりはできませんから 平然としてましたけど

僕は彼女がいました 

けど一度も シテないどころか 肌にも触れたこともない
こんなことで 死ぬなんて・・慟哭もいいところです

まもなく赤ら顔の上官から訓示がありました。「おまえたちを『正気隊』という部隊名に命名する。

本土決戦だというのに 上官たちは朝から酒を喰らい 淫売宿に連日浸っている有様  

何が正気だ、気ちがい沙汰だ 童貞のまま 死ねるかよ! と本気で思った

「近く鹿児島の串良基地へ進出して特攻作戦に参加してもらう。ひとつ頑張ってもらいたい」

否応なしの命令でした その日までもう4日しかないじゃないか!

前線から帰ってくる士官や下士官が戦況を話してくれた 異口同音に「今度の戦争は勝てない。物量も兵器の性能も違う」と、報道とは全く違う実情を語っていた。

都市は連日の爆撃に晒されて 日増しに敗色が濃くなっているのは誰の目にも明らか・・

軍部の勇ましい勝利放送とは裏腹に 厭戦気分とヤケクソムードすら漂っていた

それに、特攻機だって 整備もままならないし、燃料にも事欠いていた。 目標地にたどり着けるかどうかさえわからない。

しかし みんなは特攻に参加すると言ってるし 自分だけ抜けるワケにもいかない・・

翌朝 僕は静岡の航空基地からほど近い 彼女のもとを 訪ねることにした
今生の別れを告げると同時に 契りたい一心だった

僕の彼女の名前は ちづるといいます 婚約者なんです

ちづるの家は 貧しい農家・・ちづるの兄は戦死し 病身の父親と母親の3人家族

私が訪ねていくと ちづると母親が迎えてくれて 父親は 病床から起きて挨拶してくれた。

4日先には鹿児島行きなんだ そこから出撃が決まったと告げた

【そうなの? 急な話ね 私どうしたらいいの?】

ちづるの可愛い顔がみるまに くしゃくしゃになり 泣き崩れ 両親も言葉なくうなだれた

【あの・・今夜泊っていただけますか 娘がこのままだと あまりに不憫です)

母は 二階にいる僕たちにお茶を運んで気遣ってくれた

【僕は君や家族のために死ぬんだ 誰のためでもないし 最後は君を思って逝きたい・・】

【立夫さん・今夜はゆっくりしましょうね・・今夜も明日もね・・】

僕はいよいよちづると結ばれるのだと思った。

20歳の豊かな黒髪・・そしてモンペから伸びる白い足・・
ふくよかな胸の隆起・・

もうすぐ なにもかも この世の見納めになるかと思うと 胸が張り裂けんばかりだ・・

後編につづく
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