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鬼の章
日常1
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あの変わった女は、あれから毎日屋上に来るようになった。
俺と同じペースで授業をサボっていることになるが、果たして大丈夫なのかと何故かこちらが心配になってしまう。
女が来るようになってもう一週間が経つ。
そんなに会話があるわけではなかったが、俺はむしろそれがありがたかった。
最初こそ妙な質問をしてきたが、あれ以降そこまで変なことを訊かれたりしない。
でも、あの日訊かれた「君は人間?」という問いの答えを、俺は見つけられていない。
見つけられそうにもない。
そして今日も今日とて、女は何故か楽しそうに俺の隣にぺたりと座って空を見ている。
こいつが何をしたいのか、正直全く分からない。
そういえば。
俺は隣を見た。
「なあ」
女はそれはそれは嬉しそうに俺の方を見た。
どうしてこいつ、いつもこんなに嬉しそうなのだろうか…。
「なに?なになに?」
「…………。」
少しだけイラッとした。
「お前の名前は?」
女は一瞬ぽかんとして、それからニヤニヤしながら言った。
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものじゃないの?」
ニヤニヤしているせいか、少しではなくとてもイラっとした。
「俺は…俺は、夜部悠久。名乗ってやったんだからお前も名乗れ」
「あたしは暁浦優!ステキなあだ名をつけてくれると嬉しいよ!」
「は?」
なんで俺があだ名なんてつけなきゃならないんだ…面倒くさい。
「え、付けてくれないの?ケチだなー」
心を読んだ?!
「心読んだ?みたいな顔してるけど、その不満そうな顔見たら分かるよー」
なんか、いちいち腹が立つ奴だな。
名前は暁浦優か。今まで話したことがなかったな。だが確かこいつ…。
俺は暁浦の方を見た。
確かこいつ、あの有名な元特待生じゃないのか?
暁浦はのほほんとした顔をして、間延びした口調で言った。
「なにー、あたしの顔そんなに変だっけ」
この様子からは、とても頭が良さそうには思えないが。
俺は中等部まで、一族が経営する他の学園に通っていた。だから詳しいことは知らないのだが、前にクラスメイトが話しているのを聞いたことがある。
曰く、「自分から特待生を辞退した変わり者がいる」とか。
曰く、「成績は全体的に良かったが頻繁にトラブルを起こしていた」とか。
その噂になっていた奴が、あきうらという名前だった気がする。
それにしても、頻繁にトラブルを起こしていた、か。
現在進行形で授業をサボっているし、噂もバカにならないな。
そんなことを考えているといつのまにか静かになっていたので、俺は隣を見た。
「ぐー…」
「…………」
暁浦は寝ていた。
「って、唐突すぎるだろ?!」
「ぐー…」
思わず大音量でつっこんでしまったが、暁浦は起きなかった。
なんて自由な…いくら俺でもここまですぐは寝られない。
しかも揺さぶっても起きそうにない。
俺はため息をついた。
名前はわかったが、それ以外は何一つとして理解できない。
まあ、気長に知ればいいか。
俺に対して態度を変えないこいつを、俺は意外にも快く思っているようだ。
そんな自分にかすかに驚きながら、俺はあくびをしたのだった。
俺と同じペースで授業をサボっていることになるが、果たして大丈夫なのかと何故かこちらが心配になってしまう。
女が来るようになってもう一週間が経つ。
そんなに会話があるわけではなかったが、俺はむしろそれがありがたかった。
最初こそ妙な質問をしてきたが、あれ以降そこまで変なことを訊かれたりしない。
でも、あの日訊かれた「君は人間?」という問いの答えを、俺は見つけられていない。
見つけられそうにもない。
そして今日も今日とて、女は何故か楽しそうに俺の隣にぺたりと座って空を見ている。
こいつが何をしたいのか、正直全く分からない。
そういえば。
俺は隣を見た。
「なあ」
女はそれはそれは嬉しそうに俺の方を見た。
どうしてこいつ、いつもこんなに嬉しそうなのだろうか…。
「なに?なになに?」
「…………。」
少しだけイラッとした。
「お前の名前は?」
女は一瞬ぽかんとして、それからニヤニヤしながら言った。
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものじゃないの?」
ニヤニヤしているせいか、少しではなくとてもイラっとした。
「俺は…俺は、夜部悠久。名乗ってやったんだからお前も名乗れ」
「あたしは暁浦優!ステキなあだ名をつけてくれると嬉しいよ!」
「は?」
なんで俺があだ名なんてつけなきゃならないんだ…面倒くさい。
「え、付けてくれないの?ケチだなー」
心を読んだ?!
「心読んだ?みたいな顔してるけど、その不満そうな顔見たら分かるよー」
なんか、いちいち腹が立つ奴だな。
名前は暁浦優か。今まで話したことがなかったな。だが確かこいつ…。
俺は暁浦の方を見た。
確かこいつ、あの有名な元特待生じゃないのか?
暁浦はのほほんとした顔をして、間延びした口調で言った。
「なにー、あたしの顔そんなに変だっけ」
この様子からは、とても頭が良さそうには思えないが。
俺は中等部まで、一族が経営する他の学園に通っていた。だから詳しいことは知らないのだが、前にクラスメイトが話しているのを聞いたことがある。
曰く、「自分から特待生を辞退した変わり者がいる」とか。
曰く、「成績は全体的に良かったが頻繁にトラブルを起こしていた」とか。
その噂になっていた奴が、あきうらという名前だった気がする。
それにしても、頻繁にトラブルを起こしていた、か。
現在進行形で授業をサボっているし、噂もバカにならないな。
そんなことを考えているといつのまにか静かになっていたので、俺は隣を見た。
「ぐー…」
「…………」
暁浦は寝ていた。
「って、唐突すぎるだろ?!」
「ぐー…」
思わず大音量でつっこんでしまったが、暁浦は起きなかった。
なんて自由な…いくら俺でもここまですぐは寝られない。
しかも揺さぶっても起きそうにない。
俺はため息をついた。
名前はわかったが、それ以外は何一つとして理解できない。
まあ、気長に知ればいいか。
俺に対して態度を変えないこいつを、俺は意外にも快く思っているようだ。
そんな自分にかすかに驚きながら、俺はあくびをしたのだった。
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