踊り子さんはその手で乱されたい。

藜-LAI-

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踊り子さんとオーナーと②

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 必死すぎただろうか。次から次へと言葉が止まらない俺を亮司さんは黙って見つめている。
 その状況に息が詰まりそうで、だけど必死に否定した方が良い気がして俺は否定の言葉を重ねていく。
 まさか亮司さんに、そんな風に思われているとは思わなかった。
 恋人を失った悲しみに暮れる男だと思ったから優しくしてくれていたんだろうか。そう思うと急に胸の奥が苦しくなって、少し興奮していた気持ちが沈んでいく。
「そうだろうね。前に街で見掛けた時、キミは随分と親しげな人と一緒だったし」
 一瞬なにを言われているのか分からなかった。
 街で見掛けたっていうのは、あの酔い潰れた晩のことだろうか。ならば親しげというのは和成のことだろうか。
 どう返事をして良いか分からずに、困惑して表情歪めると、亮司さんが饒舌に話し始める。
「人通りのない時間帯だとは言え、あんな場所で抱き合ってキスするくらいだ。しかし少ないと言えども人目はある。俺が見たくらいだから」
 険のある言い方に唖然としていると、それでもまた亮司さんの言葉は止まらずに俺を攻撃してくる。
「前後不覚になるほど酔って、身を委ねるほど親密なお相手だったんだろ」
「ちょ、ちょっと待ってください。亮司さんなにか誤解してますよ」
「誤解?」
「そりゃあの時は確かに酔い潰れてましたけど、キスなんかしてないですし、ぶっ倒れそうなのを抱き上げてもらっただけで」
「そうかな? そうは見えなかったけど」
「もしそうだったとしても、なんでそんなことで亮司さんが怒るんですか」
 みるみるうちに不機嫌になっていく亮司さんに対して、俺は俺で苛立ちが募っていく。
 こんなのは勝手に想像でキャラ付けされて、それが思い通りじゃなかったからって、八つ当たりされてるだけじゃないか。
 そう思うと苦しさと腹立たしさが濁流みたいに俺を呑み込んでいく。
「そうだな。俺が勝手に苛ついてるだけだ」
「だからなんで」
「キミが男に縋り付いてたからだろ!」
 叩きつけるように置かれたマグカップから、まだ僅かに湯気の立ったコーヒーが溢れてテーブルを汚す。
 この人は今なんて言ったんだろう。
(俺が男に縋り付いてた?)
 そうだったとして、なんでこんなに怒ってるんだ。
 訳が分からなくて亮司さんを見つめていると、不意にトモが言った言葉を思い出す。
『ゲイだってバレたんじゃねえの?』
 それを思い出した瞬間、クソくだらない理由だなと笑いが込み上げた。
 妹の恋人だと思い込んで親身にしてた奴が、薄汚れたゲイだと分かった瞬間、嫌悪が勝ったってことなんだろう。
 和成とはそんな関係ではないけど、この人の目にそう映ったならそれはそれで好都合だ。
 俺は確かに女の人を愛することはできないし、男性をそういう目で見てるのは事実なんだから。
「俺がゲイだから気色悪いってことですか」
 今度は俺が自嘲するように呟く。
(誰をどう好きになるかなんて俺の勝手だろ)
 信頼してた分、苛立ちが大きくて、俺は亮司さんに侮蔑を込めた視線を向けると、続け様に言い放つ。
「男とセックスするような男は、あんたにとっちゃ気持ち悪いってことですよね。残念ながら俺はそういう男です」
「…………」
 無言で俺を見つめる亮司さんに苛立って、俺は更に言葉を続ける。
「なんですか、その目。気色悪いから店も辞めろって? 良いっすよ、今日限りでこんな店辞めますよ」
 啖呵を切って立ち上がると、今度は焦ったように亮司さんが伸ばした手が俺の腕を掴む。
「待てジル、待ってくれ」
「気色悪いのによく触れますね」
「違うんだ、すまない。ちゃんと話をさせてくれないか」
「話? アンタがどんだけゲイが嫌いか聞けってことですか」
 亮司さんを睨み付けて腕を振り払うと、バッグを掴んで事務所の出口に向かう。
 だけどそれを追って来た亮司さんに背後から抱き竦められて、怒りと息苦しさで沸騰してた頭から熱が引いていく。
「なにしてんすか、アンタ」
「頼む、話を聞いてくれ」
 耳元で祈るように呟かれる声は、申し訳なさを滲ませた苦しそうな声だった。
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