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踊り子さんは入り浸りたい①
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まるでモデルルームみたいに整然とした部屋。シンプルで洗練された家具。
「どうかした?」
「いや、なんか生活感がないなって。すみません、悪い意味じゃないんだけど」
「そうだろうね。モデルルームに使われてた部屋を、そのまま家具付きで購入したから」
「え、購入?」
「知り合いに不動産関係の仕事してる奴が居て、間取りも1LDKだし、格安だったんだよ」
「生活水準がまるで違うわ」
「はは。それ舞花もよく言ってたな」
基本的にカレンダー通りの休みしか取れない亮司さんに合わせて、今日は俺も休みを取って、初めて部屋に遊びに来てる。
都内の高級住宅街に程近い、三階建てのデザイナーズマンションの最上階。
改めて部屋を見渡すと、俺が住んでるマンションなんて、ここと比べたらまるでボロアパートだと思えてくる。
「悪いな、勇樹」
「ん?」
「わざわざ休みを合わせて貰って」
「たまには良いよ」
「でもトレーニングだってあるだろう?」
「大丈夫。来る前にジムに行って来たし、時間は作ろうと思えば作れるから」
「そうか」
亮司さんはオープンカウンターのキッチンに立って、俺のために料理を作ってくれている。
その姿を眺めながら、カッコよくて金持ちで地位もあって、それでいて料理まで出来るなんてスペックが高過ぎて、俺なんかが釣り合うのかと正直不安になる。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか、亮司さんは手をひらひらさせて俺をキッチンに呼ぶと、盛り付けを手伝って欲しいと隣に並ばせて腰を抱き寄せる。
「こうやってゆっくり過ごす時間がなかなか取れなくて、今日になってやっと勇樹を部屋に呼べたよ」
「別に毎日ベッタリとかは望んでないから、大丈夫ですよ」
「そうか? 俺は目が覚めた時に、勇樹の顔を見たいけど」
「そういうの素で言うの心臓に悪いって」
「あれ、ドキドキした?」
「揶揄わないでくださいよ」
傍から見たらイチャつくバカップルにしか見えないやり取りをしつつ、取り出した皿に亮司さんが作った料理を盛り付けていく。
簡単な物しか出来ないなんて言いながら、亮司さんが作ってくれたのはブイヤベース風の魚料理と、野菜たっぷりで鶏肉入りのペペロンチーノ。俺には到底真似できない。
「こんなのよく作れるよね」
「親が共働きだったから、割と小さい頃からキッチンに立つことが多くてね」
「舞花は料理苦手って言ってたけど」
「だから、アイツは昔から食う専門だったよ」
思い出し笑いしながら、よく動くから食べる量も凄かったよと亮司さんが舞花の話を懐かしそうにする。
俺は結局、舞花との出会いの詳細を亮司さんにまだ話せていない。
ウリをしてたとか、喧嘩に明け暮れて警察の世話になって補導ばかりされていた話をするのは、やっぱりまだ勇気が要ることで言い出せないで居る。
亮司さんも大人だし、きっと本人にも抱えてるものはあるだろうし、彼の方から俺の過去を詮索されるようなこともない。
それが居心地良くもあり、バツの悪さを払拭出来ない二面性を抱えている。
「どこかに出掛けるなら、食事だけにしとこうか」
「あれ、亮司さん出掛けたいの」
「せっかくの休みなら、家にこもっててもつまらないんじゃないのか」
「俺は亮司さんと居られたら、別になにをしても良いよ」
「食事より勇樹を食べたくなるね」
「ほらまたそういうことを」
「ごめんごめん」
久々のゆっくりした時間で、確かにそっちに走りたい気持ちがない訳じゃないけど、まずは亮司さんが作ってくれた美味しそうな料理を食べたい。
結局ワインを開けることになって、食事と一緒に乾杯すると、最近の店での演目についての話なんかで盛り上がって、美味しい食事に会話が弾む。
「舞花はどんな店を目指してたんだろうな」
「実家みたいな感じじゃないかな」
「実家?」
「亮司さんにとっては違うかも知れないけど、舞花は姉御肌でみんなに懐かれてて、精神的な母親とでも言うか」
「へえ」
「割と色んな事情を抱えた奴の、溜まり場的な場所だったりするんですよ、あの店は」
「なるほどね」
「どうかした?」
「いや、なんか生活感がないなって。すみません、悪い意味じゃないんだけど」
「そうだろうね。モデルルームに使われてた部屋を、そのまま家具付きで購入したから」
「え、購入?」
「知り合いに不動産関係の仕事してる奴が居て、間取りも1LDKだし、格安だったんだよ」
「生活水準がまるで違うわ」
「はは。それ舞花もよく言ってたな」
基本的にカレンダー通りの休みしか取れない亮司さんに合わせて、今日は俺も休みを取って、初めて部屋に遊びに来てる。
都内の高級住宅街に程近い、三階建てのデザイナーズマンションの最上階。
改めて部屋を見渡すと、俺が住んでるマンションなんて、ここと比べたらまるでボロアパートだと思えてくる。
「悪いな、勇樹」
「ん?」
「わざわざ休みを合わせて貰って」
「たまには良いよ」
「でもトレーニングだってあるだろう?」
「大丈夫。来る前にジムに行って来たし、時間は作ろうと思えば作れるから」
「そうか」
亮司さんはオープンカウンターのキッチンに立って、俺のために料理を作ってくれている。
その姿を眺めながら、カッコよくて金持ちで地位もあって、それでいて料理まで出来るなんてスペックが高過ぎて、俺なんかが釣り合うのかと正直不安になる。
そんな考えが顔に出てしまっていたのか、亮司さんは手をひらひらさせて俺をキッチンに呼ぶと、盛り付けを手伝って欲しいと隣に並ばせて腰を抱き寄せる。
「こうやってゆっくり過ごす時間がなかなか取れなくて、今日になってやっと勇樹を部屋に呼べたよ」
「別に毎日ベッタリとかは望んでないから、大丈夫ですよ」
「そうか? 俺は目が覚めた時に、勇樹の顔を見たいけど」
「そういうの素で言うの心臓に悪いって」
「あれ、ドキドキした?」
「揶揄わないでくださいよ」
傍から見たらイチャつくバカップルにしか見えないやり取りをしつつ、取り出した皿に亮司さんが作った料理を盛り付けていく。
簡単な物しか出来ないなんて言いながら、亮司さんが作ってくれたのはブイヤベース風の魚料理と、野菜たっぷりで鶏肉入りのペペロンチーノ。俺には到底真似できない。
「こんなのよく作れるよね」
「親が共働きだったから、割と小さい頃からキッチンに立つことが多くてね」
「舞花は料理苦手って言ってたけど」
「だから、アイツは昔から食う専門だったよ」
思い出し笑いしながら、よく動くから食べる量も凄かったよと亮司さんが舞花の話を懐かしそうにする。
俺は結局、舞花との出会いの詳細を亮司さんにまだ話せていない。
ウリをしてたとか、喧嘩に明け暮れて警察の世話になって補導ばかりされていた話をするのは、やっぱりまだ勇気が要ることで言い出せないで居る。
亮司さんも大人だし、きっと本人にも抱えてるものはあるだろうし、彼の方から俺の過去を詮索されるようなこともない。
それが居心地良くもあり、バツの悪さを払拭出来ない二面性を抱えている。
「どこかに出掛けるなら、食事だけにしとこうか」
「あれ、亮司さん出掛けたいの」
「せっかくの休みなら、家にこもっててもつまらないんじゃないのか」
「俺は亮司さんと居られたら、別になにをしても良いよ」
「食事より勇樹を食べたくなるね」
「ほらまたそういうことを」
「ごめんごめん」
久々のゆっくりした時間で、確かにそっちに走りたい気持ちがない訳じゃないけど、まずは亮司さんが作ってくれた美味しそうな料理を食べたい。
結局ワインを開けることになって、食事と一緒に乾杯すると、最近の店での演目についての話なんかで盛り上がって、美味しい食事に会話が弾む。
「舞花はどんな店を目指してたんだろうな」
「実家みたいな感じじゃないかな」
「実家?」
「亮司さんにとっては違うかも知れないけど、舞花は姉御肌でみんなに懐かれてて、精神的な母親とでも言うか」
「へえ」
「割と色んな事情を抱えた奴の、溜まり場的な場所だったりするんですよ、あの店は」
「なるほどね」
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