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彼の独占欲
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バスルームから出ると久々の余韻で腰が怠く、龍弥はバスタオルを腰に巻いたまま、ベッドの上に倒れ込むように寝転がった。
「風邪引くよ」
「大丈夫だろ。ちょっと横になるだけだよ」
なんとか寝返りを打って仰向けになると、大の字になって完全に脱力しきって大きく欠伸をする。
修が自分と同じく抱かれることに慣れていないのはもちろん知っている。けれど腕の中で艶かしく乱れる姿を何度も見ているせいで、彼は抱かれることにも満足していると思っていたが、それは大きな間違いだったらしい。
(でも俺もあの蕩けた顔見たいしなあ……)
無防備な姿で、龍弥に抱かれて喘ぎながら乱れる修を思い出して腰の辺りが少し反応する。
(いや、もう今日はそんな元気ない。これはただの生理現象だ)
実際バスルームでも翻弄されて龍弥はヘトヘトだったし、この後に修を抱く体力までは残っていなかった。
怠さで深く沈むように意識が遠のき、いつの間にかうとうとして龍弥はそのまま眠り込んだ。
「……風邪引くよ、龍弥」
「んん?」
頬を撫でる温かい手を掴むと、フッと笑う気配を感じる。
掌底で目元を擦りながら、ぼんやりする視界に目が馴染むと、ベッドに腰を下ろして龍弥を見つめるアクアブルーの目と視線が合った。
「おはよう。疲れさせちゃったね」
修は龍弥の額にキスをすると、せめて服を着るようにと冷えた体に指を滑らせる。
「俺どんぐらい寝てた?」
まだぼんやりする頭を押さえながら、ゆっくりと体を起こすと、修を抱き寄せて軽くおはようと呟きながらキスをする。
「どうかな。30分程度だと思うよ」
「カーテン閉めてくれたのか。じゃあまだ明るいんだな」
「さすがにその格好のままずっと寝かせとく訳にいかないからね。僕がまたムラッとしちゃうかも知れないし」
「……笑えねえよ」
二人して肩を揺らすと龍弥が突然くしゃみして、修は慌ててクローゼットから着替えを取り出す。
「とりあえず服着なよ。あと、さっきから何度もスマホが鳴ってるよ」
「こんな年末に誰からだよ。画面見えた?」
「凛太郎くんじゃないかな」
「なんだアイツ。なんか急用かな」
着替えを済ませて修をハグすると、リビングに移動してテーブルの上のスマホを手に取ってソファーに座る。
「げ。なんだよ、着信40件って」
「急ぎだったらいけないから、早めに折り返してあげなよ」
キッチンに立ってカウンターの向こうから、コーヒーでも淹れようかと修が電話を折り返すように急く。
「じゃあコーヒー頼む。悪いけどちょっと電話する」
修に断りを入れて凛太郎の着信からリダイアルすると、2コールも鳴らずにやっと繋がったと飄々とした声が聞こえてくる。
「悪い。昼寝してた」
『お前どこ?家?』
「そうだけど」
『今度から家に居るなら彼氏に電話出るように言っとけ。手間が省ける』
「悪かったって。んでなに。短時間に着信40件とかやめて。怖いよお前」
『それは途中から面白くなってきてワン切りして遊んでただけ。全然出ないし、まあ寝てるとは思ってたけど』
クッと喉を鳴らして面白そうに笑う凛太郎に、勘弁しろよと龍弥は溜め息を吐く。
ちょうどそのタイミングで修がマグカップを持って来て隣に座る。龍弥はテーブルに置いておくように指で合図すると、修の髪を梳くように撫でてにっこりと笑い掛ける。
「それで?なんの用だよ。今日大晦日だよ?お前は暇なの?」
『大晦日だからだろ。毎年のアレ。今から持って行くつもりだけどいい?』
「あー。そっか、悪い。うん。別にいいよ、今どこ」
『すぐ近くで時間潰してる。5分程度で行くわ』
「はいよ」
龍弥は電話を切ると、これから凛太郎が来ることを修に伝える。
「ごめん修。急だけど、今から凛太郎が餅持ってくる」
「餅?」
少し驚いた顔をして修が龍弥を見つめる。
「あいつんち、大晦日に餅つきするのが習慣なんだよ。それを毎年お裾分けしてくれんの」
「そうだったんだね。随分素敵な習慣だね」
「今どき珍しいかもな。でも俺らの育ちは下町で、昔っから貰ってるから、それ食べないと年越した感じがしないんだよね」
「そういうのは羨ましいよ。凛太郎くんにはコーヒーでいいかな」
修は立ち上がってキッチンに向かうと、せっかく来るのに玄関先で追い返さないでよと龍弥に釘を刺す。
「凛太郎にそんなに気ぃ遣わなくていいよ」
「龍弥の大事な幼馴染みなんだ。僕もこれから顔を合わせることもあるかも知れないだろ」
修はそう言いながら適当にお菓子を盛り付けると、ケトルでお湯を沸かし始めた。
凛太郎は修の気遣いを遠慮なく受けてペロリとお菓子を平らげると、30分ほど世間話をしてから、彼女との約束があるからと爽やかな笑顔を浮かべて帰っていった。
もちろんちゃっかり修と連絡先の交換はしたようだが。
「凛太郎くんは龍弥の幼馴染みとは思えない好青年だね」
冷凍庫に入れておくねと餅を片付けると、修は換気扇の下でタバコに火を点ける。
「なんだよ。お前もアイツの見た目に騙されたのか?アイツ以上に腹の中がドス黒いヤツに俺は会ったことがないけどな」
「ふふ。またそんなこと言って。凛太郎くんに揶揄われたのまだ気にしてるの」
修が可笑しそうに肩を揺らしてコーヒーを飲むと、燻る煙が換気扇に吸い込まれていく。
そうなのだ。龍弥は襟ぐりに指を掛けると、ザックリと胸元が開いたカットソーから覗く、幾つも残された紅い痕を見つめてげんなりする。
「お前も分かってたんなら言えよな。おかげで親に見られるよりも恥ずかしい屈辱を味わったわ」
「ごめんね。独占欲が暴走したみたい」
「だからアイツはそんなんじゃねえし。直接会って分かっただろ……ったく」
龍弥は残りのコーヒーを飲み干すと、空になったマグカップをキッチンで洗うと、修の隣に立ってタバコを吸う。
「今度漯に会わせろよ」
「なぜ?」
「俺にも今日の仕返しさせろ」
わざとタバコの煙を吹き掛けると、修は声を出して笑ってお安い御用だよと龍弥の頬にキスをした。
「風邪引くよ」
「大丈夫だろ。ちょっと横になるだけだよ」
なんとか寝返りを打って仰向けになると、大の字になって完全に脱力しきって大きく欠伸をする。
修が自分と同じく抱かれることに慣れていないのはもちろん知っている。けれど腕の中で艶かしく乱れる姿を何度も見ているせいで、彼は抱かれることにも満足していると思っていたが、それは大きな間違いだったらしい。
(でも俺もあの蕩けた顔見たいしなあ……)
無防備な姿で、龍弥に抱かれて喘ぎながら乱れる修を思い出して腰の辺りが少し反応する。
(いや、もう今日はそんな元気ない。これはただの生理現象だ)
実際バスルームでも翻弄されて龍弥はヘトヘトだったし、この後に修を抱く体力までは残っていなかった。
怠さで深く沈むように意識が遠のき、いつの間にかうとうとして龍弥はそのまま眠り込んだ。
「……風邪引くよ、龍弥」
「んん?」
頬を撫でる温かい手を掴むと、フッと笑う気配を感じる。
掌底で目元を擦りながら、ぼんやりする視界に目が馴染むと、ベッドに腰を下ろして龍弥を見つめるアクアブルーの目と視線が合った。
「おはよう。疲れさせちゃったね」
修は龍弥の額にキスをすると、せめて服を着るようにと冷えた体に指を滑らせる。
「俺どんぐらい寝てた?」
まだぼんやりする頭を押さえながら、ゆっくりと体を起こすと、修を抱き寄せて軽くおはようと呟きながらキスをする。
「どうかな。30分程度だと思うよ」
「カーテン閉めてくれたのか。じゃあまだ明るいんだな」
「さすがにその格好のままずっと寝かせとく訳にいかないからね。僕がまたムラッとしちゃうかも知れないし」
「……笑えねえよ」
二人して肩を揺らすと龍弥が突然くしゃみして、修は慌ててクローゼットから着替えを取り出す。
「とりあえず服着なよ。あと、さっきから何度もスマホが鳴ってるよ」
「こんな年末に誰からだよ。画面見えた?」
「凛太郎くんじゃないかな」
「なんだアイツ。なんか急用かな」
着替えを済ませて修をハグすると、リビングに移動してテーブルの上のスマホを手に取ってソファーに座る。
「げ。なんだよ、着信40件って」
「急ぎだったらいけないから、早めに折り返してあげなよ」
キッチンに立ってカウンターの向こうから、コーヒーでも淹れようかと修が電話を折り返すように急く。
「じゃあコーヒー頼む。悪いけどちょっと電話する」
修に断りを入れて凛太郎の着信からリダイアルすると、2コールも鳴らずにやっと繋がったと飄々とした声が聞こえてくる。
「悪い。昼寝してた」
『お前どこ?家?』
「そうだけど」
『今度から家に居るなら彼氏に電話出るように言っとけ。手間が省ける』
「悪かったって。んでなに。短時間に着信40件とかやめて。怖いよお前」
『それは途中から面白くなってきてワン切りして遊んでただけ。全然出ないし、まあ寝てるとは思ってたけど』
クッと喉を鳴らして面白そうに笑う凛太郎に、勘弁しろよと龍弥は溜め息を吐く。
ちょうどそのタイミングで修がマグカップを持って来て隣に座る。龍弥はテーブルに置いておくように指で合図すると、修の髪を梳くように撫でてにっこりと笑い掛ける。
「それで?なんの用だよ。今日大晦日だよ?お前は暇なの?」
『大晦日だからだろ。毎年のアレ。今から持って行くつもりだけどいい?』
「あー。そっか、悪い。うん。別にいいよ、今どこ」
『すぐ近くで時間潰してる。5分程度で行くわ』
「はいよ」
龍弥は電話を切ると、これから凛太郎が来ることを修に伝える。
「ごめん修。急だけど、今から凛太郎が餅持ってくる」
「餅?」
少し驚いた顔をして修が龍弥を見つめる。
「あいつんち、大晦日に餅つきするのが習慣なんだよ。それを毎年お裾分けしてくれんの」
「そうだったんだね。随分素敵な習慣だね」
「今どき珍しいかもな。でも俺らの育ちは下町で、昔っから貰ってるから、それ食べないと年越した感じがしないんだよね」
「そういうのは羨ましいよ。凛太郎くんにはコーヒーでいいかな」
修は立ち上がってキッチンに向かうと、せっかく来るのに玄関先で追い返さないでよと龍弥に釘を刺す。
「凛太郎にそんなに気ぃ遣わなくていいよ」
「龍弥の大事な幼馴染みなんだ。僕もこれから顔を合わせることもあるかも知れないだろ」
修はそう言いながら適当にお菓子を盛り付けると、ケトルでお湯を沸かし始めた。
凛太郎は修の気遣いを遠慮なく受けてペロリとお菓子を平らげると、30分ほど世間話をしてから、彼女との約束があるからと爽やかな笑顔を浮かべて帰っていった。
もちろんちゃっかり修と連絡先の交換はしたようだが。
「凛太郎くんは龍弥の幼馴染みとは思えない好青年だね」
冷凍庫に入れておくねと餅を片付けると、修は換気扇の下でタバコに火を点ける。
「なんだよ。お前もアイツの見た目に騙されたのか?アイツ以上に腹の中がドス黒いヤツに俺は会ったことがないけどな」
「ふふ。またそんなこと言って。凛太郎くんに揶揄われたのまだ気にしてるの」
修が可笑しそうに肩を揺らしてコーヒーを飲むと、燻る煙が換気扇に吸い込まれていく。
そうなのだ。龍弥は襟ぐりに指を掛けると、ザックリと胸元が開いたカットソーから覗く、幾つも残された紅い痕を見つめてげんなりする。
「お前も分かってたんなら言えよな。おかげで親に見られるよりも恥ずかしい屈辱を味わったわ」
「ごめんね。独占欲が暴走したみたい」
「だからアイツはそんなんじゃねえし。直接会って分かっただろ……ったく」
龍弥は残りのコーヒーを飲み干すと、空になったマグカップをキッチンで洗うと、修の隣に立ってタバコを吸う。
「今度漯に会わせろよ」
「なぜ?」
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