金曜の夜、駅前に座る少年は彼女たちを癒しているのかもしれない

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生倉 湊

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「はい!これでどう?」
「え?これって、わたし・・・」
メイクしていない半分を隠された状態で自分の顔を見た私は、出来上がった状態に改めて驚いていた。
「アンタに決まってるじゃない。ほら半分は元のままでしょ。ちょっとこっち向きなさい」
といつのまにか私のスマホを持っていた智さんは、私が向くとすぐに写真を撮った。
「動画と一緒にこれも見れば、仕上がりも確認できるでしょ」
「は、はい!」
智さんは撮り終えたスマホを私に返してくれた。
「じゃあ、さっきの手順で、今度は自分でやってみなさい。動画見ながらでいいから」
「わ、わかりました!」
智さんに言われた通り動画を再生しながら、私は残り半分のメイクを始めた。
智さんは斜め後ろから見ている。その姿が鏡に映るので、私は緊張しながら自分の顔にメイクをしていった。
「そう・・・そんな感じね、アンタ意外とうまいじゃ・・・と思ったら、そこはもう少し・・・そう。そんな感じ」
智さんは私の手の動きを見ながらいろいろな注意点を教えてくれた。
「で、できた!」
「まあ、初めてならこんなもんね。あんたメイクのセンス意外にあるじゃない」
「そ、そうですか?」
褒められた私は鏡ごしに智さんを見た。一緒に鏡に映っている私は少しにやけていた。
「ええ。この前教えた子なんて、ここで3時間も練習してやっとある程度できたくらいよ。それだって私からすれば全然だったけど。あんたもこっちでよく見てみなさい」
智さんは私に大きな手鏡を渡してくれた。
「・・・ほ、ほんとだ!バランスとか塗り具合とか、全然違う!」
「そうよ。アンタ絵は描く?」
「学校の美術で描くくらい・・・」
どちらかというと絵を描くのは苦手。
「そう・・・メイクも芸術よ。本当なら会う相手や行く場所、時間によって変えた方がいいと私は思うの。でも、ほとんどの女は、いつでもどこでも同じパターンでメイクするだけ。自分の魅力を活かしきらないなんて、ほんともったいないって思うわ」
と智さんは小さくため息をついた。
「す、すいません・・・」
私は自分のことを言われているようで、つい謝ってしまった。
「アンタだけの話じゃないわ。だいたい、何のためにメイク道具持ち歩いてんのかしら」
「智さんも時間とかで変えてるんですか?」
「あったりまえじゃない!朝は学校だから、出来るだけナチュラルに。奏の演奏の日は少しメリハリつけて、でも目立ちすぎないようにって。でもその違いを見抜かれるようじゃまだまだね。気づかれないくらい少しだけ雰囲気を変えることで、女はより魅力的に見えるようになるの。さああんた、メイク落としてもう一度やってみなさい」
「は、はい」
私は洗面所でメイクを落として、またドレッサーの前に座った。
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