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「お、そろそろカウントダウンじゃねえか?」
「今30秒前だ」
「あと20秒」
「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0!」
「あけましておめでとう!」
新年を祝う言葉と拍手が、そこらじゅうから聞こえてきた。
彩香たちも、それぞれに「明けましておめでとうございます」などと新年の挨拶を交わした。
「お、動き出したぞ!」
「ほんとだ。ねえみんな、何お願いするか考えた?」
それぞれが決まったという顔や、まだ迷っているような顔をした。
「今年も楽しい年になるといいね」とゆず。
「そう言えばさ、2年になったらすぐ、修学旅行だよね」
明衣は楽しい行事だけはしっかりチェックしていた。
「ああ、京都とか言ってたぞ」
大和も同じらしい。
「うへえ。沖縄とかがいいのに!」
「そう?わたしは好きよ、昔住んでたし」
彩香が笑顔で言った。
「彩香、京都に住んでたの?」
「うん。小学生の頃、ちょっとだけね」
「訛りないね」
と明衣が彩香を覗き込んだ。
「うん。そんなに長くはいなかったからね。彩乃は時々京都弁になるけど」
「そうなの⁉︎なんかかわいい」
「うん。あどけない顔で、『そうやねえ』とか言われると、癒されるわよ」
思い出しただけで、彩香は癒されているようだった。
「うわぁ、聞いてみたい!ねえ彩香、言ってみてよ」
「わわわ、私も、彩香さんの、関西弁、聞いてみたい、です」
「えっ・・・だ、だって、いきなりは無理だよ。自然に出てこないと・・・」
明衣の無茶振りに、彩香はたじろいだ。
「彩香の可愛い顔で言われてみたいの!」
「そ、そうやね・・・だ、だめ、はずかしい・・・」
彩香は両手で顔を覆ってしまった。
「あー、もっとちゃんと言ってよ」
「む、無理!今度彩乃連れてくるから、たくさんお話しして。ちょこちょこ出てくるから」
「うわー楽しみ!今年のお願い事にしよっと!」
「・・・それでいいんだ」
彩香はジト目で明衣を見た。
階段を登りきった頃、とうとうゆずと大和は彩香たちから離れてしまった。
「あれ?鷹文たち・・・ゆずちゃん大丈夫か?」
「う、うん・・・」
ゆずは大和ダウンをしっかり握っていた。
「みんなとはぐれちまったみたいだな。まあ、お参りした後にでも合流すればいいか」
「そ、そう、だね・・・」
二人きりになってしまったと知ったゆずは、また顔を赤くしていた。
「ごめんな。俺がもう少しちゃんとしてれば」
「そ、そんなことないよ!私、だって・・・」
人波が揺れ動いて、ゆずと大和もはぐれそうになってしまった。
「ゆずちゃん!」
「あっ・・・」
自分の裾から離れそうになっていたゆずの手を、大和はしっかりと握りしめた。
「ごめん!でも、こうでもしてないと、俺たちもはぐれそうだから・・・」
心なしか大和の顔も赤くなっていた。
「う、うん・・・」
ゆずはすでに何も考えられなくなっている。
「このままで、いいかな?」
「う、うん。おね、がい・・・」
ゆずの手をもう一度握なおして、大和はなんとかゆずを引き寄せた。
「い、痛くなかった?」
「う、うん。大丈夫・・・」
「とりあえず、これではぐれないですみそうだな」
だんだん慣れてきたのか、大和はことも投げに手を握っていたが、ゆずのドキドキは治る気配がなかった。
それでもまだ不安なゆずは、大和の手を両手でキュッと握った。
「ゆず、ちゃん?」
「ご、ごめん・・・」
ゆずは恥ずかしくなって俯いてしまった。
ゆずの柔らかい小さな手が、必死に大和の手を握っている。
それに気づいた大和は、少しドキッとした。
「大和とゆず、見えなくなっちゃったね」
「えっ、大丈夫かな・・・」
心配そうに彩香は周囲を見回した。
「・・・お参り終わって待ってれば来るだろう」
と言いながらも、鷹文も周りを気にしていた。
「わわわ、私たちの順番来ました、よ」
彩香、鷹文、明衣、しのはそれぞれお賽銭を投げ入れ、お参りした。
彩香は両手を合わせ、静かに祈っている。
「彩香・・・」
先にお参りが済んだ鷹文は、彩香を見てキレイだなとふと思っていた。
お参りを終えた彩香たちが、人の流れから外れて待っていると、しばらくしてゆずと大和の姿が見えた。
「ゆず、大和!よかったぁ」
「みんな、すまん!」
「でも、ゆずは見失わなかったんだね。ゆず、大丈夫だった?」
「う、うん。大和、くんが、守ってくれた、から・・・」
ゆずは恥ずかしそうに答えた。
「そうなんだぁ。大和、ゆず守ってあげたんだあ」
「あ、当たり前だろ。友達なんだから」
「ともだち・・・」
ゆずは少ししょんぼりした。
結衣は、文芸部の先輩で受験生の小野田麻希と一緒に初詣に来ていた。
「せ、先輩・・・」
「結衣ちゃん、大丈夫?」
「ひと、多いですね」
「ええ。普段は誰もいないのにね・・・」
静かな場所が好きな麻希は、普段からよくここに来ていた。
「私たちの番、来ましたよ」
「お参りしましょうか」
二人は賽銭箱の前にたち、お賽銭を投げ入れ、お参りをした。
「どうか先輩が合格しますように。ついでに私も来年、合格できますように・・・」
結衣はなぜか声に出してお参りをした。
「結衣ちゃん、ありがとう」
参拝を済ませた二人は帰る人の波に乗って歩いていった。
「麻希さん!あっちにふみにいたちいますよ!」
鷹文の姿に気づいた結衣が、麻希に声をかけた。
「えっ、どこ?」
麻希は慌てて辺りを見回した。
「あっち、左の方です」
と目で鷹文たちの方を指した。
「せ、先輩・・・着物?」
「着物ですか?・・・ああ、あれ、彩香さんですよ。やっぱりキレイだなぁ」
着物姿の彩香に気づいた結衣は、いつも以上にキレイなその姿に見とれていた。
「さいか、さん?」
「はい。彩香さんは、ふみにいの家で家政婦のバイトしてるんです。ふみにいと同じ学年なんですよ。遠くから見ても彩香さんってキレイですよね。髪もアップにしてて、和服すごく似合ってるし」
「・・・そう、ね」
麻希も鷹文の隣にいる彩香を呆然と見つめていた。
「今30秒前だ」
「あと20秒」
「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0!」
「あけましておめでとう!」
新年を祝う言葉と拍手が、そこらじゅうから聞こえてきた。
彩香たちも、それぞれに「明けましておめでとうございます」などと新年の挨拶を交わした。
「お、動き出したぞ!」
「ほんとだ。ねえみんな、何お願いするか考えた?」
それぞれが決まったという顔や、まだ迷っているような顔をした。
「今年も楽しい年になるといいね」とゆず。
「そう言えばさ、2年になったらすぐ、修学旅行だよね」
明衣は楽しい行事だけはしっかりチェックしていた。
「ああ、京都とか言ってたぞ」
大和も同じらしい。
「うへえ。沖縄とかがいいのに!」
「そう?わたしは好きよ、昔住んでたし」
彩香が笑顔で言った。
「彩香、京都に住んでたの?」
「うん。小学生の頃、ちょっとだけね」
「訛りないね」
と明衣が彩香を覗き込んだ。
「うん。そんなに長くはいなかったからね。彩乃は時々京都弁になるけど」
「そうなの⁉︎なんかかわいい」
「うん。あどけない顔で、『そうやねえ』とか言われると、癒されるわよ」
思い出しただけで、彩香は癒されているようだった。
「うわぁ、聞いてみたい!ねえ彩香、言ってみてよ」
「わわわ、私も、彩香さんの、関西弁、聞いてみたい、です」
「えっ・・・だ、だって、いきなりは無理だよ。自然に出てこないと・・・」
明衣の無茶振りに、彩香はたじろいだ。
「彩香の可愛い顔で言われてみたいの!」
「そ、そうやね・・・だ、だめ、はずかしい・・・」
彩香は両手で顔を覆ってしまった。
「あー、もっとちゃんと言ってよ」
「む、無理!今度彩乃連れてくるから、たくさんお話しして。ちょこちょこ出てくるから」
「うわー楽しみ!今年のお願い事にしよっと!」
「・・・それでいいんだ」
彩香はジト目で明衣を見た。
階段を登りきった頃、とうとうゆずと大和は彩香たちから離れてしまった。
「あれ?鷹文たち・・・ゆずちゃん大丈夫か?」
「う、うん・・・」
ゆずは大和ダウンをしっかり握っていた。
「みんなとはぐれちまったみたいだな。まあ、お参りした後にでも合流すればいいか」
「そ、そう、だね・・・」
二人きりになってしまったと知ったゆずは、また顔を赤くしていた。
「ごめんな。俺がもう少しちゃんとしてれば」
「そ、そんなことないよ!私、だって・・・」
人波が揺れ動いて、ゆずと大和もはぐれそうになってしまった。
「ゆずちゃん!」
「あっ・・・」
自分の裾から離れそうになっていたゆずの手を、大和はしっかりと握りしめた。
「ごめん!でも、こうでもしてないと、俺たちもはぐれそうだから・・・」
心なしか大和の顔も赤くなっていた。
「う、うん・・・」
ゆずはすでに何も考えられなくなっている。
「このままで、いいかな?」
「う、うん。おね、がい・・・」
ゆずの手をもう一度握なおして、大和はなんとかゆずを引き寄せた。
「い、痛くなかった?」
「う、うん。大丈夫・・・」
「とりあえず、これではぐれないですみそうだな」
だんだん慣れてきたのか、大和はことも投げに手を握っていたが、ゆずのドキドキは治る気配がなかった。
それでもまだ不安なゆずは、大和の手を両手でキュッと握った。
「ゆず、ちゃん?」
「ご、ごめん・・・」
ゆずは恥ずかしくなって俯いてしまった。
ゆずの柔らかい小さな手が、必死に大和の手を握っている。
それに気づいた大和は、少しドキッとした。
「大和とゆず、見えなくなっちゃったね」
「えっ、大丈夫かな・・・」
心配そうに彩香は周囲を見回した。
「・・・お参り終わって待ってれば来るだろう」
と言いながらも、鷹文も周りを気にしていた。
「わわわ、私たちの順番来ました、よ」
彩香、鷹文、明衣、しのはそれぞれお賽銭を投げ入れ、お参りした。
彩香は両手を合わせ、静かに祈っている。
「彩香・・・」
先にお参りが済んだ鷹文は、彩香を見てキレイだなとふと思っていた。
お参りを終えた彩香たちが、人の流れから外れて待っていると、しばらくしてゆずと大和の姿が見えた。
「ゆず、大和!よかったぁ」
「みんな、すまん!」
「でも、ゆずは見失わなかったんだね。ゆず、大丈夫だった?」
「う、うん。大和、くんが、守ってくれた、から・・・」
ゆずは恥ずかしそうに答えた。
「そうなんだぁ。大和、ゆず守ってあげたんだあ」
「あ、当たり前だろ。友達なんだから」
「ともだち・・・」
ゆずは少ししょんぼりした。
結衣は、文芸部の先輩で受験生の小野田麻希と一緒に初詣に来ていた。
「せ、先輩・・・」
「結衣ちゃん、大丈夫?」
「ひと、多いですね」
「ええ。普段は誰もいないのにね・・・」
静かな場所が好きな麻希は、普段からよくここに来ていた。
「私たちの番、来ましたよ」
「お参りしましょうか」
二人は賽銭箱の前にたち、お賽銭を投げ入れ、お参りをした。
「どうか先輩が合格しますように。ついでに私も来年、合格できますように・・・」
結衣はなぜか声に出してお参りをした。
「結衣ちゃん、ありがとう」
参拝を済ませた二人は帰る人の波に乗って歩いていった。
「麻希さん!あっちにふみにいたちいますよ!」
鷹文の姿に気づいた結衣が、麻希に声をかけた。
「えっ、どこ?」
麻希は慌てて辺りを見回した。
「あっち、左の方です」
と目で鷹文たちの方を指した。
「せ、先輩・・・着物?」
「着物ですか?・・・ああ、あれ、彩香さんですよ。やっぱりキレイだなぁ」
着物姿の彩香に気づいた結衣は、いつも以上にキレイなその姿に見とれていた。
「さいか、さん?」
「はい。彩香さんは、ふみにいの家で家政婦のバイトしてるんです。ふみにいと同じ学年なんですよ。遠くから見ても彩香さんってキレイですよね。髪もアップにしてて、和服すごく似合ってるし」
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