『蛇淫の楔 ~双剛に穿たれ堕ちる乙女~』

西嶽 冬司

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第3話:『熱と契約』

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 泥の塊が飲み込まれ、夜の公園には死んだような静寂が戻ってきている。
 だが、上倉かみくら かなえの身体の中で暴れ狂う嵐は、鎮まるどころかその勢いを増すばかりだった。

 心臓が、恐怖が去った後もなお早鐘を打ち続けている。 通常の動悸ではない。 下腹部の奥底から全身へと波及する、灼けつくような脈動だった。

 泥と粘液にまみれた地面に、未だかなえは、無防備にへたり込んだまま動けないでいた。
 白衣は泥と妖魔の粘液でまだらに汚れ、破れた袴の隙間から覗く瑞々しい太腿が、夜気に晒されて震えている。

(まだ、熱い……。 どうして……?)

 夜風は刃のように冷たい。 なのに、露出した肌を粟立たせるその冷気さえ、今のかなえには、焼け石に水をかける程度の気休めにしかならなかった。
 血液が沸騰しているような感覚。 指先まで熱い。 耳の奥が熱い。

 そして何より、秘所の奥が、じくじくと疼いて止まらない。

「うっ……。 くぅ……あぁ……っ」

 呼吸をするたびに、肺の奥から熱風が吹き出る。
 視界が明滅し、世界が水槽の底のように歪んで見える。
 下腹部——丹田のさらに奥の臓器が、まるで別の生き物に乗っ取られたかのように、ドクン、ドクンと禍々しいリズムで脈打っていた。
 その拍動に合わせて、血管の中を煮えたぎった鉛が駆け巡る。
 指先が痺れ、太腿の内側が痙攣し、秘所の奥からとめどなく溢れる蜜が、晒しの下着をぐっしょりと濡らして、股座の泥汚れと混じり合っていく。
 自分の身体から立ち昇る匂いが、鼻についた。
 汗と、土と、鉄錆のような血の匂い。 何より——栗の花にも似た、濃厚で甘ったるい『牝』のフェロモンの香り。 高潔であるはずの巫女が、決して纏ってはならないものだ。

「おい、いつまで這いつくばってる気だ?」

 統也はまだそこにいた。 数歩離れた位置に立ち、腕を組んで、虫でも観察するような目でかなえを見下ろしている。

 その視線から逃れるように顔を背けた時だった。

 不意に、ぶるる、と泥の地面に落ちたスマートフォンが震えた。 無機質な振動音が、静寂を切り裂く警鐘のように響き渡る。
 かなえはビクリと肩を跳ねさせ、恐る恐るその画面を覗き込んだ。

 液晶のバックライトが、暗闇の中で唯一の『光』として輝いている。
 そこに表示された名前を見た瞬間、心が握り潰されそうなほどの衝撃が走った。

『崇護くん』

 着信画面で微笑む彼の写真。 太陽の下で、竹刀を片手に白い歯を見せる、眩しい笑顔。
 今のこの淀んだ闇とは対極にある、清浄な世界の象徴。

(崇護くん……! 助けて……私、おかしくなりそう……!)

 本能が、救いを求めて叫んだ。
 「怖い目にあったの」「動けないの」と泣きつけば、彼はきっと、部活の疲れなど物ともせずに、息を切らして駆けつけてくれるだろう。
 温かい上着をかけて、泥にまみれた背中をさすり、「もう大丈夫だよ」と抱きしめてくれるはずだ。
 その温もりに包まれれば、このおぞましい熱も、悪夢のような記憶も、すべて消えてなくなるかもしれない。

(怖い。 熱いの。 来て、ここに来て……)

 かなえは、すがるように手を伸ばした。 這うようにして、泥で汚れた指先をスマートフォンへ触れる。
 泥で汚れた指先が、緑色の通話ボタンに触れようとする。
 あと数ミリ。 たったそれだけで、日常へ帰れる。



 ——画面に触れる直前、かなえの指先が、ピタリと空中で凍りつく。

 画面の光が、かなえ自身の姿を照らし出していた。

(……だめ)

 泥にまみれた顔。 乱れた髪。 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった表情。 破れた袴。 露わになった太腿。
 充血し、涙で濡れ、トロンと白濁した瞳。  獣のような熱く甘い吐息を漏らす荒い息遣い。
 そして、大きく広げられたまま閉じられない足の間から、泥とは違う透明な粘液が糸を引いている惨状。

 もし、彼が今の私——頬を紅潮させ、だらしなく口を緩めた顔を見たら?

 心配して駆けつけた彼が、街灯の下で、股間を濡らして喘いでいる幼馴染の姿を目撃したら?

 あの綺麗な瞳は、どう歪むだろう。 軽蔑? 嫌悪?
 それとも、見なかったことにして後ずさりするだろうか?

 脳裏に、残酷な想像が過ぎる。

『かなえちゃん、どうしたの……その格好……』
『なんか……獣みたいな匂いがする……』



 ——無理だ。こんな浅ましい姿を、あの清潔な笑顔の前に晒せるわけがない。

 死ぬよりも、妖魔に食われるよりも、崇護に『汚い』と思われる方が耐えられない。

 今の自分は、あまりにも『牝』になりすぎている。

 彼の知っている少女——清らかで真面目な『上倉 かなえ』は、ここにいない。



 スマートフォンの画面。 『崇護くん』という文字が、遠い星のように明滅している。

 かなえの指が、震えながら画面をなぞった。

 通話ボタンではない。 拒否ボタン、そして電源ボタンを長押しする。

 ぷつん、と着信が途切れた。 画面が暗くなり、崇護の名前が消える。

 光が消えた。 世界が再び、完全な闇に閉ざされた。
 それは、かなえ自身が自らの意思で、救いの手を振り払い、堕落への道を選んだ決定的な瞬間だった。

 かなえは自分の手を見つめた。 泥で汚れ、震える手。 光を遮断した手。

 自ら日常への扉を閉ざした、裏切り者の手。



  闇が、少しだけ濃くなった気がした。



「……賢明な判断だな」

 頭上から降ってきた声に、かなえは弾かれたように顔を上げた。
 ポケットに手を突っ込み、暗闇に溶けるような溟い瞳で、かなえを見下ろしている。
 その唇の端が、三日月のように冷たく歪んでいた。

「今のお前が相手なら、どんな聖人君子でも興奮するだろうさ」

 統也はゆっくりと膝を曲げ、かなえの目線の高さまでしゃがみ込んだ。
 彼が近づくと、下腹部の熱が一層激しく暴れだす。
 心臓が早鐘を打ち、拒絶したいはずの身体が、磁石のように彼に引き寄せられていく感覚。

「もし誰かがお前を見つけたら、押し倒してメチャクチャに犯すんじゃないか?」

「っ……言わないで……」

 言い返したかった。 「違う、私はそんなんじゃない」と叫びたかった。
 けれど喉からは、か細い喘ぎだけしか出てこない。
 彼の気配を、身体が求めている。 嫌だと思っているのに、本能が彼の方へと傾いていく。

「な、なんなの……これ……。 妖魔は倒したのに、どうして……」

 統也の金色の瞳が、暗闇の中で淡く発光している。 人間のものではない何かを宿した、爬虫類のような瞳。

「性欲を抑え込み、穢れを遠ざけるために施された封印。 それが、壊れかけてるようだな……」

 冷たい熱が、かなえの全身を舐め回した。
 汗ばむ首筋、激しく上下する胸、そしてわななく太腿。 彼の視線が走った表皮から、じっとりと熱が湧き生まれていく。

「巫女だの清浄だのと、普段から綺麗事ばかり並べて抑圧してるから、タガが外れた時の反動がデカいんだよ」

「ち、ちがう……私は、そんな……」

「違わないだろ。 見ろよ、そのザマ。 『種』を受け入れるための『溶鉱炉』みたいになってるぞ」

 統也の視線が、股間に突き刺さる。 否定できない事実として、下着はぐっしょりと濡れそぼっていた。

「放っておけば、答えは二つに一つ。 血管が焼き切れて死ぬか、理性が飛んで、誰彼と構わず腰を振る廃人になるかだ」

 統也の説明は淡々としていた。 まるで教科書を読み上げるように、かなえの身体に起きている異変を言葉にしていく。

 それが、かえって恐怖を煽った。

「そんな……っ。 いやぁ……!」

 かなえは首を振った。 嘘だ、と思いたかった。 身体の奥底で、何かが軋む音がしていた。
 子宮が熱い。 子宮が痛い。 何かを求めて、ぎゅうと収縮している。 限界を訴えるように脈打っている。

 死ぬか、廃人か。

 今の身体の異常さを考えれば、それが脅しではないことは直感的に理解できた。
 流れる血液が沸騰しそうな感覚は、限界が近いことを告げている。

「助かる方法は一つ」

 統也が、悪魔の取引を持ちかけるように、人差し指を立てた。 その声が、耳の奥に直接染み込んでくる。

「俺の陽の気を直接流し込んで、陰陽のバランスを取る。……その意味は、分かるよな?」

 直接、流し込む。

 その言葉の意味を理解した瞬間、かなえの背筋に戦慄が走った。

 分かりたくなかった。 けれど、分かってしまった。

 彼の言葉の意味。
 彼の提案。
 彼が要求していること。



 ——要するに、抱かれろということだ。

 ここで、今すぐに。

「いや……っ! そんなの、絶対いや!」

 かなえは必死に首を振り、泥濘の上を後ずさりしようとした。 けれど、手足に力が入らない。
 それどころか、拒絶の言葉とは裏腹に、統也の匂いを嗅いだ身体が、歓喜するように震え、秘所がキュンと収縮して蜜を吐き出した。

「いやだ、そんなの……崇護くんが……私は、崇護くんのこと……」

「その崇護の電話を、お前が切ったんだろ?」

 統也の手が伸びた。 逃げようとするかなえの足首を掴み、強引に自分の方へ引き寄せる。

「助かる機会は、お前自身が捨てたんだ。 今更、都合のいい事を言うな」

「ひゃっ!?」

 そのまま、破れた緋袴の隙間から、彼の手が滑り込んだ。

 泥のついていない、白く細い指。

 冷たい。 指先が、異様に冷たかった。
 夜気で冷えているのとは違う。 まるで氷の彫刻から削り出したような、無機質な冷たさ。
 それが、汗と愛液でぬめる太腿の内側を這い上がってくる。

「……診てやるよ」

「や、やめ……っ」

 抵抗しようとした。 手を伸ばして、彼の腕を押し返そうとした。
 けれど力が入らない。 指先が痺れている。
 何より——彼の手が秘所に近づくにつれて、身体の芯が、熱を求めて疼いてしまう。

「口では嫌がっても、体は正直だな」

 彼の吐息が、かなえの唇をくすぐる。
 冷たい指が、ぬるりと湿った晒しの縁をめくった。

 そして、露わになった秘裂に、直接触れた。

「や、あ……っ!?」

 声にならない悲鳴が漏れた。
 触れられた瞬間、脳髄を白く焼き尽くすような強烈な電流が走る。

「もうこんなに濡れてるのかよ」

 嘲りが含まれた統也の声。 かなえには、それに反論する余裕もなかった。

 彼の指が、秘裂の上を滑っている。 ゆっくりと、確かめるように、クリトリスの位置を探り当てる。
 そして、そこを軽く押さえた。

「あぁっ……!」

 喉が震えた。 抑えようとしたのに、どうしても勝手に嬌声が零れ落ちてしまう。

 かなえの脳裏に、かつての夜が走馬灯のように駆け巡った。

 誰にも言えない、秘密の儀式の記憶。

 彼への想いが募りすぎて、身体が熱くて、どうしようもなくて——自身を慰めた。

 自分の部屋。 清潔な布団の中。 目を閉じ、崇護の笑顔を思い浮かべながら、そっと自分の手を下腹部へと伸ばしたことがあった。 何度も、あった。

(崇護くん……好き、大好き……)

 想像の中の崇護の手は、いつも優しかった。 汗ばんでいた。 壊れ物を扱うように繊細で、温かくて、少し頼りなくて。
 かなえの身体を大切に扱ってくれる、おずおずとした指先。 自分の指で代用するその感触は、あくまで『確認』のような慎ましさだった。

 けれど、その自慰行為はいつも控えめだった。

(崇護くんを想像の中で汚すことが、どうしてもできなくて……)

 だからいつも、かなえのオナニーは生温いもので終わっていた。
 絶頂に達することも少なく、ただ熱を少し発散して、罪悪感とともに眠りにつく。

 神聖な彼を想う行為だからこそ、指先が触れるか触れないかの愛撫で、淡い恋心と共に微かな快感を得る。

 それが、かなえの知っている『気持ちいいこと』の全てだった。



 ——けれど、今。

 統也の指は、まるで違った。

「ん、ぐッ、うぉ、ぅあ……ッ!?」

 統也の指は、冷たく、硬く、そしてあまりに『巧み』すぎだった。

 遠慮がない。 そして、躊躇がない。

 精密機械が弱点を解析するかのように、クリトリスの最も敏感な一点を正確に捉え、こね回す。
 ぬるぬると濡れた粘膜を滑り、指の第一関節が、そして第二関節が、強引にこじ開けて入り込んでくる。

 クリトリスを捉える角度。
 膣口の周囲を愛撫するリズム。
 粘膜を擦る力加減。
 すべてが、計算し尽くされているかのように正確。

 いや、正確という言葉では足りない。

 どこに触れれば声が漏れるか。
 どこを刺激すれば腰が跳ねるか。
 どうすれば、最も効率的に、快楽を引き出せるか。

 かなえの身体を、全て知り尽くしているかのような指使いだった。

(崇護くんの指は、もっとふわっとしてて……こんなに、鋭くなんて……ッ!)

 かなえは激しく頭を振った。 違う。 これは私の知っている愛撫じゃない。
 想像上の崇護との行為は、水彩画のような淡い世界だったのに。
 なのに、統也の指が与える感覚が、その上からドス黒い油絵具をぶちまける。
 鮮烈で、重く、逃れようのない現実として、感覚を塗り潰していく。

「ひ、あ、やだ……! すごい、入って……指、なか……かき回され……ッ!」

 彼の指は、まるで人間の骨格とは違う作りのように動いた。
 関節が一つ多いのではないかと思うほど、あり得ない角度で内壁を抉っていく。
 蛇がのたうつように、ぬるぬると形を変えながら、かなえの秘所を這い回っている。

 そのたびに、頭の芯が痺れ、腰が勝手に跳ね上がった。
 
 ズチュ、グチュ、ズポッ、と粘つく水音が、静寂な公園に響いた。
 安っぽいポルノ映画のような、淫らで下品な水音。 それが、自分の身体から出ている音だとは信じたくなかった。 
 でも、いやらしい音が耳に入るたび、羞恥心という燃料が注がれ、興奮が爆発的に加速していく。

「や、だめ……こわれ、ちゃう……! しゅう、ごくん、たすけ……っ!」

 口では助けを求めているのに、腰は統也の指を必死に飲み込もうと、自ら押し付けに行っている。
 崇護を想いながら触れていた場所を、今、別の男の指が蹂躙している。
 崇護のために取っておいた感度を、統也が暴いている。
 崇護に捧げるはずだった声を、統也が引き出している。

 統也の与える物理的な快楽が、崇護への純愛を踏みにじり、無残に噛み砕く。

 大切にしていた宝箱を、土足で踏み荒らされるような絶望と、背徳的な快感。

 はくはくと喘ぐかなえの耳元で、統也の声が囁いた。

「崇護、崇護って……。 アイツのことを考えながら、俺の指で感じて——










 ——最低だな、お前」

 その言葉は、かなえ自身が思っていたことだった。 だからこそ、深く刺さった。

 統也の指が、同じ場所を執拗に刺激する。 こりこりとした肉の突起。 かなえ自身、自分の指では届いたことのない場所。
 崇護を想像しながらでも、決して触れられなかった場所。

「あ……っ、あ、あぁ……っ。 あぁぁぁぁぁぁッ!!」

 限界は、あまりにもあっけなく訪れた。
 そして、統也の爪先がが、カリリと一際強く引っ掻いた瞬間。

 ドクンッ!と。 子宮が激しく収縮し、大量の蜜が噴水のように噴き出した。
 全身が弓なりに反り、視界が真っ白に弾ける。

「あ、あ、イクッ……! イッちゃうぅぅッ!」

 巫女としての矜持も、乙女としての恥じらいも、すべてが吹き飛ぶほどの絶叫。
 ただの『牝』として、快楽に溺れ、白目を剥いて痙攣する。
 熱い波が、全身を駆け巡った。 指先が痺れ、足先が痺れ、頭の芯が真っ白になった。
 膣壁が、統也の指をきゅうきゅうと締め付けている。 止められない。 止まらない。

 指一本で。 たったそれだけで。
 崇護を想う控えめな自慰行為では、決して到達できなかった絶頂へと突き落とされた。

 「ハァ、ハァ、ハァ……」

 荒い息だけが残る。 全身の力が抜け、ぐったりと泥の上に横たわるかなえは茫然と空を見上げた。
 夜空に星は見えない。 ただ黒い闘が広がっているだけだ。

 統也の指が、ゆっくりと引き抜かれた。
 チュポッ、と卑猥な音がした。 彼の指先には、透明な液体がべったりと絡みついている。 太い粘液の糸が引かれ、月明かりを受けて銀色に輝いていた。
 かなえの身体から溢れ出した、淫らな証拠。 統也はそれをまじまじと見つめ、鼻で笑った。

「崇護への操を誓ってた割に、随分と派手にイったな。 そんなに俺に指はよかったのか?」

 人差し指と中指を開くと、その間に銀色の梯子がかかる。 ぬらぬらと光る愛液が、夜風に揺れた。

「っ……ぅ……」

 反論できない。 目の前の証拠が、何よりも雄弁にかなえの堕落を物語っていた。

 あんなに彼を想っていたのに。

 身体は、こんなにも統也の指に反応し、喜んでしまった。

「ち、違う……これは、呪いのせいで……」

 言い訳にも聞こえる言葉。 だが実際に、絶頂を迎えたはずなのに、まだ身体の熱は引いていなかった。
 むしろ、一度快楽の味を覚えた牝の身体が、更なる刺激を求めて疼き始めている。
 指では足りない。 もっと太く、硬く、熱いもので満たされたいという『渇き』が、内側から食い破るように襲ってくる。

「へぇ、呪いの所為か」

 鼻で笑う統也の手が、再びかなえの秘所へと潜り込んだ。
 今度は二本。 さっきよりも太い感触が、かなえの中を押し広げていく。

「あ、ぁ……っ!」

「それなら、もっと濡らしてやるよ。 もっと欲しいだろ?」

 二本の指が、さっき絶頂を迎えたばかりの敏感な粘膜を容赦なく掻き回した。
 燻った熱が、情欲という薪を糧にし再燃していく。

「や、やぁ……っ、また、また来る……っ!」

 かなえの身体が、再び絶頂へと登り詰めていく。 抗えなかった。 抵抗する力が、どこにもない。

 二度目の絶頂が、かなえを襲った。

 そして三度目。 四度目。

 統也の指は止まらなかった。 かなえが何度達しても、何度愛液を噴き出しても、彼は冷たい目でそれを見下ろしながら、指を動かし続けた。

「……う、あ……熱い……! まだ、おかしいの……!」

 かなえは涙目で身体をくねらせた。
 股間の疼きが収まらない。 空っぽになった内側が、寂しくてたまらない。

「もう、指じゃ止まらないだろ?」

 統也が立ち上がり、冷酷に告げる。
 その言葉は、かなえ自身が一番理解していた。 理解したくなかったけれど、身体が理解してしまっていた。
 さっきまでとは重さの違う疼き。 まだ、足りない。 もっと太いものを、もっと奥まで、欲しいと叫んでいる。

 今の自分は、もう理性で身体を制御できない。

 この灼熱を——彼に鎮めてもらわなければ、本当に狂ってしまう。

「……場所を変えるぞ。ここじゃ人目につく」

 統也が手を差し伸べるのではなく、かなえの脇に手を入れ、乱暴に立たせた。 足に力が入らず、もたれかかるように彼の胸に倒れ込む。
 鼻孔を満たす彼の匂い。 獣のようで、麝香やムスクのような。 胸を焼くほどに甘い香り。 先ほどまでは恐怖の対象だったその匂いを、今は肺の奥まで吸い込みたいと思ってしまう自分がいた。

 統也に肩を抱かれ、かなえは抵抗できないまま、公園の出口へと歩き出す。
 重い足取り。 泥だらけで脱げかけの履き物が、アスファルトを叩く。

 背後の地面には、電源の切れたスマートフォンが転がったままだった。
 黒い画面の奥には、助けに来てくれるはずだった崇護の笑顔が封印されている。

 置き去りにされる『光』。

 そして、前方に見えるのは、ネオンが毒々しく輝く繁華街の灯り。

 ホテル街の方角だ。

(ごめんなさい、崇護くん……)

 かなえは心の中で謝罪を繰り返した。
 けれど、統也の腰に回した手は、彼が離れてしまわないように、無意識のうちに衣服を掴んでいた。

(私、熱くて……もう、我慢できないの……)

 夜の闇に紛れ、二つの影が重なり合って消えていく。

 高潔な巫女が、光から闇へと堕ちていく——『|契約《陵辱〉』の夜明け前。
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