少年と銀貨  第一章:始まりの世界

五十嵐 昌人

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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

♯15. 立花マイカの素顔②

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「別に記憶力に自信を持ちたい訳じゃなくて自分だけが
不幸だと思ってて悲劇ひげきのヒロインみたいにひたっていたと
思うし、そんな中で家族の中で取り残された私に出来る
事を常に考えるようになってて、あの頃は本当に周りが
見えてなかったと思う。私には、リカ姐が居たのに一切
相談してなくてゴメン……」
 反省の意味も込めて正座してリカの目を真っ直ぐに見
つめて話す立花。

「復讐の為に武道を習ってると打ち明けられたら私でも
反対したと思うから気にしないで。今、こうしてかかえて
いた悩みを話してくれた事が何より嬉しいし私はあなた
の事を本当の妹だと思ってるよ!」
 真面目な話になったのでベランダの囲いから背中を離
して背筋を伸ばした状態で立花の言葉を真摯しんしに受け止め
るリカ。
「そんな嬉しくなる事をさらっと言われたら涙が出そう
になる……」
 今にも落ちそうな程、涙袋に涙を溜めている立花。
「そう? でも涙は好きな男の人の胸でギュっとしなが
らの方が私は良いと思うよ」
「えっそうかな? ドラマの影響を受けすぎな気がする
けど甘えてるリカ姐が想像出来なくて少し笑えるかも」
 立花は涙がこぼれる前にテーブルに置いてあるティッ
シュを一枚つかんで手元に引き寄せる。
「私の話に置き換えてどうするのよ。私は男の人に甘え
るなんて絶対に無理だから年下の男を捕まえて甘えられ
た方が良いかな。まぁS体質も受け入れてくれる事が第
一条件だけどね! マイカ、真面目まじめな話は終わったんだ
から足をくずしてリラックスしてよ」
 リカの気負きおわないストレートな言葉にあこがれを抱きつつ
も涙を拭き取ると自然と笑みがこぼれた立花だった。
「サディスティックな部分は、やっぱり似てるのかな?」
 立花は照れ隠しの質問をしながらも、さっきまで慣れ
ない正座をして足がシビれていただけに、リカの相手を
思いやる言葉に猛烈もうれつに感動していた。
「さぁどうかしら。少しは似てる気もするけど、この問
題は、お互いに干渉かんしょうしない方が良いかもね」
 左の手の平をあごに当てて下唇の下側に折り曲げた指を
触れながら、あくまでも男女間のプライベートの具体的
な内容を共有するつもりはない事をさらっと会話にまぎ
込ませるテクニックを披露ひろうしたリカだった。
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