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8-1. 二度目の初対面
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朝が来た。
リズミカルなノックの音が響き、快活な声がその後に続いた。
「おはようございます。起きてますか?」
早朝とは思えないほど明るいラリアの声に、扉を開けたディエスはこう答えた。
「起きてなかったらどうするんですか?」
「勿論、起きるまで待ちますよ。私は教会の言いなりにならなくなっただけで、教会の敵になったわけではないですから。その事を示す証人として、あなたには付いてもらわなければなりません」
外出の準備を整えた二人は、朝食を取るために宿屋の一階に下りていく。
一階の食堂で、昨日と同じような朝食を食べ終えた二人は、ラリアの先導で歩き出した。
目的地は無く、ラリアの直感に従って歩いていく。
ラリアの後ろに続くディエスは、この道は前に通った事があると気付いた。だが、何も言わなかった。
東から差していた日が真上に昇った頃、二人は三日間彷徨った挙句に何の成果も無かった貧民街、フラジェイスに戻って来た。
「よう、お二人さん。また会ったな」
フラジェイスで歩いていた二人を呼び止めたのは、鼠色のボロボロな服を着た小柄な男。
ディエスはその顔を見ても、いつ、どこで、どのようにこの男と会ったのかを思い出せなかった。だが、ラリアは、男の顔を覚えていた。
「ああ、あなたは店で会った男の人ですね」
そう言われて、ディエスもこの男の事を思い出した。前にフラジェイスで食事をした時に、酔っ払って絡んできた哀れな男だと。だが、ディエスの記憶の中の男は、曇天のような鉛色の雰囲気を纏っていたはずなのだが、目の前にいる男は、晴天に浮かぶ雲のような白色の雰囲気を纏っていた。記憶の中の男から漂っていた酒の臭いは、今の男からはしなくなっていたからなのかもしれない。
「そうだ。よく覚えてたな」
男は、少し驚いたような顔でそう言い、表情を引き締めてから続けた。
「俺は、ムルド・シュタイナーっていうんだ。前は、急に絡んで悪かったな。あの時は、酒を飲み過ぎていたんだ。自分を忘れちまうくらいに」
ラリアは何か違和感のようなものを男から感じていた。初めは、前に会った時よりも明るい顔つきをしていたからかと思ったが、そうではない。
この違和感は、前に出逢ったあの女性から感じたものと似ていた。人間とも魔獣とも違う、不気味だけれど妙な優しさも感じられるような、不思議な感じ。
「あれから、俺も色々あってよ。今はこうして酒も止められているし、前向きに生きる事が出来てるんだ。あんたのおかげなんだよ。あんたのおかげで、希望の光があるって信じる事が出来たんだ」
ムルドは、心からの感謝をラリアに告げた。もしも、ラリアと出会い、あの助言を聞いていなければ、垂れてきた希望の糸を手繰り寄せる事が出来なかっただろうから。
「……そうですか」
ラリアは、ムルドの感謝を素直に喜ぶことが出来なかった。もしかするとムルドは、人間としての生を諦める事によって、幸せを手にしたのかもしれないと思ったから。
「あんたらを呼び止めたのは、俺の感謝を伝えたかったからだけじゃなくて……。俺は、あんたらにも”こっち側”へ来て欲しいんだ」
その言葉でラリアは、自分の仮説の信憑性が高いのだと実感した。
それと同時に、自分が知りたい事をムルドは知っているのだと直感した。
「あなたの言う”こっち側”というのが何のことなのか、説明してもらえますか?」
ラリアは意を決し、尋ねた。
リズミカルなノックの音が響き、快活な声がその後に続いた。
「おはようございます。起きてますか?」
早朝とは思えないほど明るいラリアの声に、扉を開けたディエスはこう答えた。
「起きてなかったらどうするんですか?」
「勿論、起きるまで待ちますよ。私は教会の言いなりにならなくなっただけで、教会の敵になったわけではないですから。その事を示す証人として、あなたには付いてもらわなければなりません」
外出の準備を整えた二人は、朝食を取るために宿屋の一階に下りていく。
一階の食堂で、昨日と同じような朝食を食べ終えた二人は、ラリアの先導で歩き出した。
目的地は無く、ラリアの直感に従って歩いていく。
ラリアの後ろに続くディエスは、この道は前に通った事があると気付いた。だが、何も言わなかった。
東から差していた日が真上に昇った頃、二人は三日間彷徨った挙句に何の成果も無かった貧民街、フラジェイスに戻って来た。
「よう、お二人さん。また会ったな」
フラジェイスで歩いていた二人を呼び止めたのは、鼠色のボロボロな服を着た小柄な男。
ディエスはその顔を見ても、いつ、どこで、どのようにこの男と会ったのかを思い出せなかった。だが、ラリアは、男の顔を覚えていた。
「ああ、あなたは店で会った男の人ですね」
そう言われて、ディエスもこの男の事を思い出した。前にフラジェイスで食事をした時に、酔っ払って絡んできた哀れな男だと。だが、ディエスの記憶の中の男は、曇天のような鉛色の雰囲気を纏っていたはずなのだが、目の前にいる男は、晴天に浮かぶ雲のような白色の雰囲気を纏っていた。記憶の中の男から漂っていた酒の臭いは、今の男からはしなくなっていたからなのかもしれない。
「そうだ。よく覚えてたな」
男は、少し驚いたような顔でそう言い、表情を引き締めてから続けた。
「俺は、ムルド・シュタイナーっていうんだ。前は、急に絡んで悪かったな。あの時は、酒を飲み過ぎていたんだ。自分を忘れちまうくらいに」
ラリアは何か違和感のようなものを男から感じていた。初めは、前に会った時よりも明るい顔つきをしていたからかと思ったが、そうではない。
この違和感は、前に出逢ったあの女性から感じたものと似ていた。人間とも魔獣とも違う、不気味だけれど妙な優しさも感じられるような、不思議な感じ。
「あれから、俺も色々あってよ。今はこうして酒も止められているし、前向きに生きる事が出来てるんだ。あんたのおかげなんだよ。あんたのおかげで、希望の光があるって信じる事が出来たんだ」
ムルドは、心からの感謝をラリアに告げた。もしも、ラリアと出会い、あの助言を聞いていなければ、垂れてきた希望の糸を手繰り寄せる事が出来なかっただろうから。
「……そうですか」
ラリアは、ムルドの感謝を素直に喜ぶことが出来なかった。もしかするとムルドは、人間としての生を諦める事によって、幸せを手にしたのかもしれないと思ったから。
「あんたらを呼び止めたのは、俺の感謝を伝えたかったからだけじゃなくて……。俺は、あんたらにも”こっち側”へ来て欲しいんだ」
その言葉でラリアは、自分の仮説の信憑性が高いのだと実感した。
それと同時に、自分が知りたい事をムルドは知っているのだと直感した。
「あなたの言う”こっち側”というのが何のことなのか、説明してもらえますか?」
ラリアは意を決し、尋ねた。
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