死越者の行進

具体的な幽霊 

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9-1. 亡者の帰還

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 深夜、四騎士が第三騎士団本部ファイロットに帰還した。

 喜びが滲んだ声で「お帰りなさい」と呼びかけたシェーラに、バーデンは何とも言えないような笑みを顔に浮かべて「ただいま」と答えた。そして、こう続けた。

 「俺達は負けたんだ。負けて、殺されて、新しく生まれ変わったんだ」

 唐突過ぎる発言に、ラリアは酷く困惑して、詳しい説明を求めるべく、疲労のためか白くなっているバーデンの顔をしっかりと見るために視線を上げると、腹部に激痛が走った。
 痛むところに視線を向けると、淡い緑色の金剛鉄アダマント製の剣が腹の中心部を貫いているのが見えた。傷口から出ていく血液が、じわじわと服を鮮やかな赤に染めていく。

 「どう、して」

 現実を直視して、ますます現状が理解できなくなったシェーラは、激痛で歪む顔を再びバーデンの顔の方へ向け、振り絞るような声で尋ねた。

 「口で説明するより、こうした方が早いと思ったんだ。今は意味が分からないし、不安だと思うが、すぐに理解できるようになる。俺を信じてくれ」

 バーデンがそう言っている途中で、シェーラは事切れた。
 
 悲しみに打ちひしがれているようなシェーラの表情を見たバーデンの胸の内に、ちくりと小さな痛みが走った。だが、この行為が最も正しいのだという考えが変わる事はなかった。永続的な幸福を享受するためならば、一時的な苦痛を対価として支払うべきだというのが、”新しい知性”がもたらした見解だから。

 ここから、四騎士の虐殺が始まった。
 第三騎士団本部ファイロットに残っている夜勤中の騎士達や事務員を、かつての自分達の仲間を、四騎士は黙々と剣で刺し殺していった。
 多くの人々は抵抗する間もなく、訳も分からないままに死んでいった。中には本能的に死ぬまいと抵抗した者もいたが、圧倒的な実力差の前になすすべなく殺された。
 
 四騎士が築き上げた死体の群れは、しばらくすると独りでに動き出した。
 まず、死因となった傷跡が塞がっていく。それと同時に、大量出血により白くなった全身の可動域を確かめるように、一つ一つの骨格筋が収縮を繰り返す。傷跡が完全に塞がると、死体はゾンビが棺桶から出てくる時のようにゆっくりと立ち上がり、目蓋を開ける。

 こうして、かつて人間だった者は、死という川を越え、彼岸へと至る。

 彼岸へ来た者は、そこに咲き誇る花の鮮やかさに魅せられ、自分が見てきたものの醜さを思い知る。
 そして気付くのだ。この場所こそが理想郷アルカディアだと。

 「ようこそ」

 四騎士の誰かが、新たな同胞達に呼びかけた。
 
 「連れてきてくれて、ありがとう」
 
 新たな同胞達は、口々にそう言った。
 
 
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